はじめに
本ドキュメントの目的
本ドキュメントは、AWSマネジメントコンソールの動作が遅く感じられる問題について、原因の特定方法と実践的な対策を分かりやすくまとめたものです。技術に詳しくない方でも読み進められるよう、専門用語は最小限に留め、具体例を交えて説明します。
対象読者
システム運用担当者、ウェブ担当者、クラウド利用を始めた技術者などを想定しています。日常のトラブル対応に役立つ手順と考え方を提供します。
取り扱う主な事例
- SSL化後のページ読み込み遅延: HTTPS化に伴う表示遅延の原因と改善例を扱います。
- CloudFormationのデプロイ遅延: リソース作成が遅くなる典型的な原因と優先順位の付け方を解説します。
- コンソール表示トラブル: ブラウザやネットワーク側の問題と具体的な対処法を示します。
調査方針と読み方
まず現象を再現し、ログやブラウザの開発ツールで通信の流れを確認します。続いて原因候補を絞り込み、順を追って対策を試します。各章で「確認すべき手順」と「すぐできる対処」を明確に示しますので、必要な箇所を参照しながら対応してください。
SSL化後のページ読み込み遅延問題の事例と解決策
発生した症状
RailsアプリをEC2にデプロイし、Route53でドメインを割り当て、ACMとALBでHTTPS化したところ、初回ページ読み込みが約20秒かかる問題が発生しました。ブラウザでは2回目以降は速くなることがありました。
原因の特定
Chromeのデベロッパーツール(Networkタブ)で該当リクエストを調べると、「Initial Connection(初期接続)」の時間が長いことを確認しました。これはTCP接続やTLSハンドシェイクで遅延が起きていることを示します。調査の結果、ALBがプライベートサブネットに配置されていたため、インターネットからのトラフィック処理で余分な経路やNATを経由しており遅延を招いていました。
実施した解決策(手順)
- ALBのスキームを確認し、意図が「internet-facing」であることを確認しました。次にALBに割り当てるサブネットはパブリックである必要があります。
- パブリックサブネットを作成し、ルートテーブルで0.0.0.0/0をインターネットゲートウェイ(IGW)へ向ける設定にしました。
- ALBのサブネット設定をプライベートから新たに作成したパブリックサブネットへ変更しました(コンソールまたはCLIで更新)。
- セキュリティグループでHTTPS(443)を許可、ターゲットグループのヘルスチェックを確認し、EC2側のアプリが正常に応答することを確認しました。
効果と検証方法
ALBをパブリックサブネットに移行後、初回の「Initial Connection」が大幅に短縮され、ページロード時間が改善しました。ChromeのNetworkタブでTimingを確認し、Initial ConnectionとSSLの時間が短くなっていることを確認してください。デバッグ時はキャッシュ無効の状態でハードリロードすると正確に測定できます。
注意点
- ALBはパブリックサブネット、EC2はプライベートにしておく構成が安全です。
- サブネットやルートの変更後はヘルスチェックとログ(ALBアクセスログ、VPCフローログ)で動作を確認してください。
CloudFormationのデプロイ遅延の原因と改善策
主な原因
CloudFormationのデプロイが遅くなる主因は三つあります。1) テンプレート解釈やAPI呼び出しなどのエンジン処理時間、2) リソースが『安定化』するまでの待機(例: インスタンスやコンテナのヘルスチェック)、3) 依存関係による順次処理です。影響は数十秒から数分、場合によってはさらに長くなります。
ECSサービスの安定化が遅延要因になる理由
ECSはサービスの望ましいタスク数とヘルスチェックの完了を待ちます。例えば、新しいタスクが立ち上がりアプリが外部へ応答するまでに時間がかかると、CloudFormationは次のステップへ進めません。結果としてデプロイ全体が止まります。
CONFIGURATION_COMPLETEイベントの活用
新しいCONFIGURATION_COMPLETEイベントは、リソースの構成処理が完了したことを示し、これまで見えにくかった段階の可視化を助けます。これにより、どのリソースで安定化待ちが発生しているかを速やかに特定できます。
実践的な改善策
- スタックを小さく分割して並列化する(依存を減らす)。
- ECSのヘルスチェックやgrace periodを適切に調整する。短くしすぎないことに注意。
- CreationPolicyやWaitConditionを使い、期待する安定化基準を明確にする。
- デプロイ中はCloudFormationイベントとCONFIGURATION_COMPLETEを参照し、問題箇所を特定する。
監視と運用の注意点
CloudWatchイベントやサービス固有のログも併用してください。CONFIGURATION_COMPLETEで問題箇所を絞り込み、そのリソースのログやメトリクスを確認すると原因追跡が早まります。
AWSマネジメントコンソールの表示トラブルと対処法
症状
- ページの読み込みが遅い
- ボタンやメニューが正しく表示されない(画面崩れ)
- ログイン後に古い画面が表示される
主な原因
多くはブラウザのキャッシュ(古いデータの蓄積)が原因です。ブラウザは表示を速くするために情報を保存しますが、保存が古くなると表示が乱れます。
対処手順(ブラウザのキャッシュ削除)
- Google Chrome: 右上のメニュー→「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「閲覧履歴データの削除」→「キャッシュされた画像とファイル」を選び「データを削除」
- Firefox: メニュー→「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「履歴」→「最近の履歴を消去」→「キャッシュ」
- Edge: 右上メニュー→「設定」→「プライバシー、検索、サービス」→「閲覧データをクリア」→キャッシュを選択
- Safari(Mac): Safariメニュー→「環境設定」→「詳細」→メニューバーに“開発”を表示→「キャッシュを空にする」
その他の対処法
- シークレット/プライベートウィンドウで開いて問題の切り分け
- ブラウザ拡張機能を一時無効化して影響を確認
- ブラウザを再起動、別のブラウザでの確認
- ログアウトして再ログイン、必要ならクッキーも削除
表示確認のポイント
キャッシュを削除後はページをリロードして、問題が解決したかを確認してください。頻繁に発生する場合は拡張機能や会社のプロキシ設定が原因のことがあります。必要ならIT管理者に状況を共有し、画面のスクリーンショットと発生手順を伝えてください。












