はじめに
目的
本記事はAWS Firewall Managerの全体像をやさしく理解していただくことを目的としています。企業や組織で複数のAWSアカウントやリソースを管理する際に、セキュリティルールをどのように一元化し、運用負荷を下げるかをわかりやすく説明します。
誰に向けて
クラウド管理者、セキュリティ担当者、開発チームのリーダーなど、AWS環境のセキュリティ運用に関わる方を想定しています。専門用語は最小限に抑え、具体例で補足します。
この記事で学べること
- Firewall Managerの基本的な役割と仕組み
- 主要な機能(ルールの一元配布・自動コンプライアンスなど)の概要
- 利用することで期待できる運用上の利点
- AWS Shield Advancedとの連携で得られる保護の強化
なぜ重要か(具体例)
例えば、組織で10個以上のAWSアカウントがある場合、それぞれに同じWAFルールやセキュリティグループを手作業で適用すると時間がかかり、人為的ミスが増えます。Firewall Managerを使えば、一度ポリシーを作成して組織全体に適用・監視できます。これによりルールのばらつきを減らし、問題があれば自動で対処する仕組みを導入できます。
次章からは、より具体的な機能と運用イメージを丁寧に解説します。
AWS Firewall Managerとは
概要
AWS Firewall Managerは、複数のAWSアカウントやリソースにわたるファイアウォール設定を一元管理するサービスです。管理者は一度ポリシーを作成すると、対象アカウントに自動で適用できます。たとえば、会社でアカウントが多数ある場合、個別にルールを設定する手間を省けます。
連携する主なサービス
- AWS WAF:ウェブアプリのアクセス制御に使います。例として特定IPの遮断が可能です。
- AWS Shield Advanced:DDoS対策と連携します。
- VPCセキュリティグループ:ネットワーク接続の制御に反映します。
- AWS Network FirewallやRoute 53 Resolver DNS Firewall:ネットワーク層やDNSの保護に対応します。
仕組みの要点
管理者は“ポリシー”を定義してターゲット(組織単位やアカウント、リソース)を指定します。Firewall Managerはルールの適用状況を監視し、新しいアカウントやリソースにも自動で展開します。これにより設定漏れを減らせます。
利用時の注意点
- AWS Organizationsの使用と十分な権限が必要です。
- 既存ルールとの競合に注意してください。まずテスト環境で動作を確認することをおすすめします。
AWS Firewall Managerの主要な機能
概要
AWS Firewall Managerは複数のセキュリティ層を一つの画面とポリシーで管理できます。たとえば、Webアプリ用のWAFルールとVPCのセキュリティグループ設定を同時に整備できます。
WAFとShieldの一元管理
AWS WAFのルールやAWS Shield Advancedの保護を組み合わせて配布できます。全社で同じ不正アクセス対策を適用したい場合、新しいアカウントにも自動で同じ設定を反映できます。
ネットワーク制御(セキュリティグループ/ネットワークACL/AWS Network Firewall)
インバウンド/アウトバウンドの通信制御を含むポリシーを作成し、VPCごとに適用できます。例:全ての環境で管理用ポートを閉じるルールを一括展開します。
DNSレベルの防御(Route 53 Resolver DNS Firewall)
悪意あるドメインへの問い合わせをブロックするルールを配布できます。マルウェアや不正通信をDNS段階で遮断するのに役立ちます。
階層的ポリシーと例外管理
グローバルな必須ポリシーと、アカウントや組織単位の追加要件を両立できます。特定リソースを除外する例外も設定可能です。
自動適用・タグベース保護
既存のリソースだけでなく、新規作成時にもポリシーを自動で適用します。タグを使えば部署や用途に応じた保護を柔軟に割り当てられます。
準拠チェックと自動修復
ポリシーに違反するリソースを検出し、通知や自動修復を行えます。運用負荷を減らし、継続的に安全性を保ちます。
AWS Firewall Managerの主要な利点
一元管理で運用負荷を軽減
AWS Organizationsと連携し、複数アカウントのセキュリティ設定を集中管理できます。例えば、本番・開発アカウントに同じファイアウォールルールを簡単に配布でき、個別に設定する手間を省けます。
新規リソースへ自動適用
既存だけでなく、新しく作成したリソースにも自動でポリシーを適用します。これにより、誤って未保護の環境が生まれるリスクを減らします。例として、新しいロードバランサーを作ったときに自動で保護が有効になります。
迅速な脆弱性対応と統一されたルール適用
ゼロデイ脆弱性や設定ミスが見つかった際、中央からルールを更新して全アカウントへ一斉に反映できます。個別対応に比べて対応時間を大幅に短縮できます。
集中監視での可視化
DDoSや異常トラフィックの状況を一か所で確認できます。問題発生時にどのアカウントやリソースで起きているかを素早く特定できます。
リソース別の柔軟な適用
ロードバランサー、CloudFront、VPCなどリソース種別ごとに細かいポリシーを設定できます。必要な箇所だけにルールを適用して過剰な制約を避けられます。
AWS Shield Advancedとの統合
概要
Firewall Managerは、AWS Shield Advancedの保護を組織全体で自動的に適用できます。例えば、Application Load Balancer(ALB)やEC2、Route 53など主要なリソースをまとめて守ることが可能です。
仕組み
管理者アカウントでShield Advancedを有効にし、Firewall Managerで保護ポリシーを作成します。ポリシーに合致するリソースを自動で検出してShieldに関連付けます。新しいアカウントやリソースが追加されても自動で適用されます。
主な利点
- 一元管理:複数アカウントへ同じ設定を展開できます。
- 自動化:手動の設定漏れを減らせます。
- 迅速な対応:DDoS検知時に統一された通知や対処手順を用意できます。
導入の簡単な流れ
- AWS Organizationsでアカウントを連携します。
- 管理アカウントでShield Advancedを有効化します。
- Firewall ManagerでShield関連のポリシーを作成します。
- タグや条件で対象リソースを指定します。
運用のポイント
運用では、リソースのタグ付けを整え、通知(SNS)とインシデント対応手順を準備してください。定期的にポリシーを見直し、テストで実際の保護対象が正しく適用されているか確認することをおすすめします。












