はじめに
本書の目的
この文書は、WordPressサイトのリニューアルを安全かつ効率的に進めるためのロードマップです。検索意図の分析や複数記事の知見を統合し、企業のWeb担当者や中小企業の運用者が実務で使える具体的手順をまとめました。
対象読者
- 社内でサイト運用を担当している方
- 外注先と進める前に方針を固めたい方
- 小規模なECやコーポレートサイトの運用者
専門的な知識がなくても読めるよう、用語は最小限にとどめ具体例で補います。
この記事で得られること
リニューアルの目的設計、要件の決め方、既存サイトのバックアップ方法、テスト環境の作り方、移行・リダイレクトの注意点、公開後の検証まで、実務で必要な流れと確認ポイントを網羅します。
読み進める前の準備
作業に入る前に、管理者アカウント、FTP/ホスティング情報、CMSのログイン情報を手元に用意してください。関係者の承認フローを決めると作業がスムーズになります。
WordPressサイトリニューアルの全体フロー
WordPressサイトのリニューアルは段階ごとに進めると安全で効率的です。以下は一般的な全体フローと各ステップの要点です。
- 目的の明確化
-
何を達成したいか(例:集客改善、表示速度向上、ブランド刷新)を定め、KPIを決めます。
-
要件定義
-
必要な機能とデザイン範囲を決め、優先順位をつけます。関係者の合意を取ります。
-
現行サイトのバックアップ
-
ファイルとデータベースを完全に保存します。複数世代のバックアップを残すと安心です。
-
テスト環境の構築
-
本番と同等の環境で作業します。ここで実装と動作確認を行います。
-
テーマ・デザイン・機能の実装
-
モバイル対応、アクセシビリティ、プラグインの互換性を確認して実装します。
-
コンテンツ・メディア・SEO・ユーザー移行
-
URLのマッピング、メタ情報、画像、投稿、ユーザーを順序立てて移します。
-
本番への切り替え
-
メンテナンスモード、DNSやホスティング設定を調整しダウンタイムを最小化します。
-
リダイレクト設定
-
古いURLから新しいURLへの301リダイレクトを設定し、検索流入を保ちます。
-
公開後の確認・動作テスト・モニタリング
- フォーム、ページ速度、アナリティクス、404をチェックし、問題があれば迅速に対処します。
各ステップでチェックポイントと責任者を明確にし、段階的に進めるとトラブルを減らせます。したがって、計画とテストを重視してください。
①リニューアルの目的を明確にする
目的の代表例
- デザイン刷新:見た目を変えて信頼感や操作性を高める
- コンテンツ刷新:情報を整理して読みやすさや説得力を向上
- 機能追加:予約や会員機能など利便性を増す
- SEO改善:検索流入を増やすための構成見直し
- パフォーマンス向上:表示速度を速め離脱を減らす
目的による違い(具体例)
- デザイン重視ならテーマ選定とCSS調整が中心です。コンテンツ重視なら記事の移行方針や構成が重要になります。機能追加はプラグインやカスタム実装の検討が必要です。
目的を言語化する手順
- 現状の課題を簡潔に書く(例:直帰率が高い、問い合わせが少ない)
- 期待する成果を数値で決める(例:直帰率を10%改善)
- 優先順位をつける(必須・できれば・将来)
- 関係者と合意を取る
KPI例(評価指標)
- PV/UU、直帰率、平均滞在時間、コンバージョン率、表示速度
チェックリスト(最初にやること)
- 目的を1文でまとめる
- 測る指標を決める
- 優先度と期限を設定する
- 関係者に共有する
目的が明確だと設計や作業範囲がぶれません。まずはなぜリニューアルするのかを丁寧に言語化しましょう。
②要件定義で「何をどこまでやるか」を決める
はじめに
要件定義は「誰に何を届け、いつまでにどのくらいの成果を出すか」を明確にする作業です。ここで決めることで後の仕様変更や工数膨張を防げます。
ターゲットとサイトコンセプト
- ターゲット:年齢・性別・職業など具体像を作ります(例:20〜40代の子育て中の女性)。
- コンセプト:サイトの価値や提供する体験を一文で定義します(例:忙しい親に向けた時短レシピの情報サイト)。
デザインの方向性
- 見た目の感触(例:シンプルで温かみのある配色、写真を大きく見せる)。
- 参考サイトを3つほど挙げ、良い点を具体的に書き出します。
数値目標(KPI)
- 月間ページビュー、直帰率、コンバージョン率などを数値で決めます(例:PVを月10万、会員登録率2%)。
予算・スケジュール・担当体制
- 予算感:概算で提示(例:50万〜200万円)。
- スケジュール:フェーズごとの期限(要件定義→デザイン→開発→検証)。
- 担当:発注者側と制作側の責任範囲を明確にします。
リニューアル対象範囲
- 対象ページ(トップ、カテゴリ、個別ページ等)。
- プラグインやフォーム、会員機能など含むか否か。
追加機能の実装方法
- 既存プラグインで対応するか、カスタム開発するかを判断します。例:予約機能は既存プラグインで安価に構築可能。
- セキュリティやパフォーマンスの要件もここで決めます。
使用テーマの種類
- オープンソースの無料テーマ、購入テーマ、完全オリジナルのいずれかを選び、理由を記載します。例:更新性重視なら購入テーマ、差別化ならカスタム。
運用・保守方法
- バックアップ頻度、WordPressやプラグインの更新方針、障害時の連絡フローを決めます。
- 月次の改善計画(解析→改善案→実施)を組み込みます。
各項目は関係者で合意を取り、要件書として文書化してください。明確にすると後工程がスムーズになります。
③現行WordPressサイトのバックアップ
なぜバックアップが必要か
リニューアル前にフルバックアップを必ず行います。作業中のミスや想定外の不具合で元に戻す必要が出たとき、元サイトをすぐに復元できると安心です。
バックアップ対象
- WordPress本体・テーマ・プラグイン
- uploads(画像やアップロードファイル)
- wp-config.php などの設定ファイル
- データベース(MySQL)
バックアップ方法(例)
- レンタルサーバーのバックアップ機能を使う:管理画面で簡単に取得できます。サーバー側のスナップショットがあればまず試してください。
- プラグインを使う:BackWPup、UpdraftPlusなどを使うとファイルとDBをまとめて保存できます。自動スケジュールも便利です。
- 手動バックアップ(FTP + phpMyAdmin):FTPでwp-contentと設定ファイルをダウンロードし、phpMyAdminでデータベースをエクスポートします。細かく管理したい場合に有効です。
保管と復元確認
バックアップはローカル、外部ストレージ(クラウドや別サーバー)に必ず複数保存してください。復元テストを一度実施し、実際に戻せることを確認します。
注意点
- 個人情報を含むファイルは暗号化またはアクセス制限してください。
- バックアップはリニューアル直前に取り、作業途中でもこまめに更新します。
④テスト環境の構築パターン
本番サイトを止めずにリニューアルするための代表的な構築パターンと手順を、分かりやすく説明します。
パターンA:別サーバーに用意する
手順:新しいサーバーを用意し、現行サイトのファイルとデータベースをコピーします(例:staging.example.net)。wp-configで接続情報を設定し、URLを置換します。利点は本番と完全に独立する点です。欠点は費用や環境差の管理です。
パターンB:同一サーバーのサブディレクトリにインストール
手順:/new-site/ のようなディレクトリを作り、新しいWordPressをインストールします。既存ファイルと混ざらないようにディレクトリ権限・URLを確認します。利点は手軽さ、欠点は誤操作で本番に影響するリスクです。
パターンC:同一サーバーのサブドメインで構築
手順:dev.example.com を作成し、ファイル・DBをコピー。DNSやVirtualHost設定だけで切り替えできる点が便利です。利点は分離と運用のしやすさ、中規模に向きます。
共通の注意点:
– データベースのURLは必ず置換してください(シリアライズに注意)。
– 検索エンジンにインデックスされないようrobotsやBasic認証を設定します。
– メディア同期はrsyncやプラグインで管理し、ユーザーやフォームはテストアカウントで動作確認してください。
最終的な切り替え時はキャッシュを無効化し、URLを本番に置換してから公開してください。












