はじめに
Webクローラーは、インターネット上のページを自動で巡回して情報を集める仕組みです。本記事では、クローラーの基本的な仕組み、種類、収集する情報の種類、検索エンジン(SEO)との関係、主要なクローラーの例、そしてサイト運営者が取るべき対策までをやさしく解説します。
この記事の目的
- クローラーの役割を理解し、サイト運営やSEOに役立てること
- クローラーがどんな情報を見ているかを知り、適切に対応できること
誰に向けているか
- サイト運営者、マーケター、コンテンツ制作者、技術に詳しくない初心者の方
読み方のポイント
- 用語はできるだけ噛み砕き、具体例を示します。開発者向けの深い技術解説は後章で扱います。
以下の章で、順を追って詳しく学んでいきましょう。
Webクローラーの概要
Webクローラーとは
Webクローラーは、インターネット上のWebページを自動で巡回し、情報を集めるプログラムです。検索エンジンだけでなく、ニュース集約サービスや価格比較サイトでも使われます。
具体的な動き方(イメージ)
クローラーはあるページを読み、そこにあるリンクをたどって次のページへ進みます。たとえばトップページ→記事一覧→個別記事という順で辿り、本文や画像、リンク先を取得します。
どんな情報を取るか(例)
- ページの本文や見出し
- 画像やメタ情報(説明文、更新日時)
- ページ内のリンク構造
呼び名と由来
「クローラー」は英語で“crawler”。「スパイダー」「ボット」とも呼ばれ、蜘蛛が巣を這い回る様子に例えられます。
なぜ重要か
クローラーが集めた情報を基に検索エンジンはインデックスを作り、私たちは速やかに必要なページを見つけられます。サイト運営者はクローラーの挙動を理解すると、ページが適切に認識されやすくなります。
Webクローラーの基本的な仕組み
概要
Webクローラーは決められた初期URL(シードURL)から巡回を始め、ページを辿ってWeb全体の情報を集めます。ここではその流れをやさしく説明します。
シードURLからの巡回
最初に数件のシードURLを登録します。クローラーはそれらをキューに入れ、順番にアクセスしてページを取得します。見つけたリンクはキューに追加します。
ページ解析とリンク抽出
取得したHTMLを解析して、リンク(aタグ)、画像、スクリプトなどを抽出します。抽出したURLを正規化して重複を除き、まだ訪れていないものをキューへ入れます。
コンテンツ取得と保存
各ページのHTMLや画像、テキストをダウンロードしてデータベースに保存します。後で検索エンジンが使えるようにインデックス化します。
robots.txtとメタタグの確認
まずrobots.txtを確認し、クローラーのアクセス可否を判断します。ページ内のmeta robotsタグも見て、インデックスやリンクの追跡可否を判断します。運営者の指示を尊重します。
巡回の優先順位と制限
クローラーは無制限に巡回できません。巡回予算(crawl budget)を設け、優先度の高いページ(外部リンクが多い、アクセスが多い、評価が高いサイト)を先に巡回します。過度な負荷を避けるためアクセス間隔や同時接続数を制御します。
実例
たとえばニュースサイトは更新頻度が高いため優先的に巡回します。個人ブログは更新が少なければ巡回頻度が下がります。これにより効率的に重要な情報を集めます。
クローラーが収集する情報の種類
HTMLと本文テキスト
クローラーはまずHTMLファイルを取得し、タイトルや見出し、本文のテキストを読み取ります。たとえば記事の本文や各ページの説明文(meta description)を収集して索引化します。
CSSやJavaScript
見た目を整えるCSSや機能を追加するJavaScriptも取得します。JavaScriptで動的に生成された内容は、クローラーが実行して取得できる場合とできない場合があります。リンクや非表示の要素の検出に使われます。
画像・音声・動画などのメディア
画像(JPEG、PNGなど)や動画、音声ファイルも対象です。画像のalt属性やキャプションを合わせて収集することで、内容の理解に役立てます。
PDFやWordなどのドキュメント
公開されているPDFやOfficeファイルも巡回します。テキスト抽出が可能なら中身を索引に加えます。
リンク・構造情報・メタデータ
内部リンク・外部リンク、サイトマップ、canonicalタグ、hreflangなどの構造情報を取得して、サイトの関係性や優先ページを判断します。
除外される情報
ログインが必要なページやパスワード保護領域、非公開のAPI、ユーザーの個別データ(セッション情報、フォーム送信内容)は原則収集しません。
クローラーの種類
はじめに
クローラーには目的や動作が異なる主な3タイプがあります。ここでは特徴と実例、運営者が知っておくべき管理ポイントを分かりやすく説明します。
1. 検索エンジン用クローラー
役割: 検索結果に表示するためにサイトを巡回し、ページを収集します。例としてGooglebotやBingbotがあります。
特徴: サイトの構造やリンクを重視し、定期的に訪問します。一般にrobots.txtを尊重します。
2. データ収集用クローラー
役割: 企業や研究機関が特定データを自動で集めます(価格調査や学術データなど)。
特徴: 目的が明確で、対象ページに集中してアクセスします。頻度や範囲は用途により大きく異なります。法的・倫理的配慮が必要です。
3. SEO/分析ツール用クローラー
役割: サイトの状態を診断するためにページ情報を取得します。例: AhrefsBot、SemrushBot、Screaming Frogなど。
特徴: メタ情報や内部リンク、ページ速度などをチェックします。ツールによってはJavaScriptを実行して表示を確認します。
識別と管理のポイント
- サーバーログでUser-Agentを確認する
- 正当性を確かめるには逆引き(reverse DNS)を行う
- robots.txtで許可・制限を設定する
- 過度な負荷があればアクセス制限やレート制御を検討する
これらを理解すると、サイト運営の安定性と検索パフォーマンスを両立できます。
クローリングとスクレイピングの違い
定義
- クローリング:クローラーがサイト内のページを順に訪れてリンクや構造を把握し、情報を体系的に収集します。サイト全体を網羅する目的で巡回することが多いです。
- スクレイピング:特定のページや要素から必要なデータだけを抽出します。商品価格や連絡先など、目的に特化した取り出し方です。
主な違い(わかりやすい例)
- 範囲と目的
- クローリングは「サイト全体を見て回る」作業です。検索エンジンがウェブ全体を把握するのに使います。
- スクレイピングは「このページのこの情報だけ取る」作業です。価格比較やデータ収集で使います。
- 実行の仕方
- クローラーはリンクを辿り、サイトマップを作ったり、更新を検出したりします。
- スクレイパーはHTMLの特定要素(例えばCSSセレクタやXPath)を指定して値を抽出します。
実務での使い分け
- データを広く集めて解析したいならクローリングを使います。
- 目的の値だけ短期で集めたいならスクレイピングが向きます。
注意点(ルールとマナー)
- robots.txtや利用規約を確認してください。過度なアクセスはサーバーに負荷をかけます。
- APIが用意されている場合はAPIを優先すると安定して安全にデータを得られます。
具体例を交えて説明すると、違いがより明確になります。
SEOとクローラーの関係
概要
検索エンジンはクローラーでサイトを巡回し、ページを評価して検索結果に表示します。クローラーに正しく巡回・インデックスされないと、良いコンテンツでも見つけてもらえません。
なぜ重要か
クローラビリティ(巡回のしやすさ)を高めると、インデックスされやすくなり、検索順位向上につながります。サイト構造や技術的な設定が評価に直結します。
基本の対策
- サイトマップ(XML)を用意してクローラーにページ一覧を知らせます。例:新しい記事をすぐ伝えたいとき有効です。
- robots.txtとメタrobotsでクロールの可否を制御します。管理したいページだけを制限できます。
- 内部リンクを整理し、重要ページへリンクを集めます。パンくずリストも有効です。
- 重複コンテンツはcanonicalや統合で排除します。重複は評価低下を招きやすいです。
技術的な留意点
クロール予算を意識して無駄なページを減らします。モバイル対応や読み込み速度もクローラー評価に影響します。
具体例
新記事はサイトマップで通知し、重要記事へ内部リンクを張る。不要なタグページはnoindexにしてクロールを節約します。
主要なWebクローラー・ボット一覧
主なクローラーと特徴
- Googlebot(Google): 検索インデックス作成のためにサイト全体を巡回します。モバイルとPC版のユーザーエージェントがあります。
- Bingbot(Microsoft): Bing検索用のクローラーです。Googlebotと同様にサイト構造やページ内容を取得します。
- Baiduspider(Baidu): 中国向け検索を担います。中国語コンテンツを重視して巡回します。
- YandexBot(Yandex): ロシア圏の検索用です。地域別の最適化に関わります。
- DuckDuckBot(DuckDuckGo): プライバシー重視の検索エンジン用クローラーです。
SEOツール系のボット
- AhrefsBot、SEMrushBotなど: サイト解析やバックリンク調査のために巡回します。頻度が高い場合は負荷になることがあります。
その他よく見るもの
- FacebookのFacebot、Twitterbot、Applebotなどはソーシャルカード生成やプレビュー表示で訪れます。
見分け方と対応の基本
- サーバーログでUser-Agentやアクセス元のIPを確認します。公式ドキュメントで正当性を確認してください。
- robots.txtで許可・不許可を設定できます。負荷が問題ならクローリングの頻度制限を検討してください。
各ボットは目的と巡回の仕方が異なります。サイト運営では誰が何を見に来ているかを把握すると管理が楽になります。
サイト運営者のためのクローラー対策
概要
クローラーに正しく認識されると検索表示に良い影響があります。ここでは基本的な設定と日常点検の方法を分かりやすく説明します。
robots.txt の基本
- サイトルートに robots.txt を置きます(例: /robots.txt)。
- 許可・拒否の簡単な例:
User-agent: *
Disallow: /private/
Allow: /
Sitemap: https://example.com/sitemap.xml
- 機密情報は robots.txt のみで隠さず、認証や noindex を使って保護します。
サイトマップの送信
- XMLサイトマップを作成し、/sitemap.xml に置きます。
- サーチコンソールなどに送信してクロールの優先度を伝えます。
サーバー応答とリンク管理
- 4xx・5xx エラーやリンク切れは放置しないでください。301 リダイレクトで正しい場所へ誘導します。
- サーバーログやコンソールの「カバレッジ」レポートを定期的に確認します。
クロール負荷と速度対策
- 大量クロールでサーバー負荷が上がる場合は、サーバー側でレート制限やキャッシュを設定します。
- モバイル対応、画像圧縮、ブラウザキャッシュ、CDN を導入して表示速度を改善します。
継続的な点検
- 変更時や定期的に robots.txt とサイトマップを確認します。
- エラー発生時は優先的に修正し、修正後は再クロールを依頼します。
これらを実践すると、クローラーに正しく認識され、SEO 効果を高めやすくなります。












