はじめに
本資料の目的
本資料は、Webのワイヤーフレーム作成ツールについて分かりやすく比較・解説することを目的としています。代表的なツールの特徴、操作感、料金、対応プラットフォーム、適用シーンを整理し、ツール選定に役立つ情報を提供します。
対象読者
- デザイナーやディレクター、エンジニアでツール選びに悩んでいる方
- 初めてワイヤーフレームを作る方
- チームでの共同制作やプロジェクト管理を改善したい方
調査範囲と方法
調査は以下の項目を軸に行いました。
– 基本機能(図形、テキスト、プロトタイピング)
– 共同編集やバージョン管理の可否
– 料金プランと対応OS
– 実務での適用例
各ツールの公式情報と一般的なレビューをもとに比較しました。実際の操作例は具体的に示し、専門用語は必要最小限に留めています。
本資料の構成
本資料は以下の章で構成します。
1. はじめに(本章)
2. 主要なワイヤーフレームツール一覧と特徴
3. Figma の特徴と適用シーン
4. Adobe XD の特徴と適用シーン
5. Sketch の特徴と対応環境
6. Balsamiq Mockups の特徴と適用シーン
7. Wireframe.cc の特徴と適用シーン
8. moqups の特徴
各章で操作感や適した場面を具体例で示し、比較表では選び方のポイントを明確にします。
主要なワイヤーフレームツール一覧と特徴
以下に代表的なワイヤーフレームツールを挙げ、それぞれの特徴と向いている場面をわかりやすくまとめます。
- Figma
- 特徴: クラウド上で動作し、複数人が同時に編集できます。ブラウザでもアプリでも使えます。コンポーネント再利用やコメント機能が充実しています。
-
向いている場面: リモートでチームと共同作業する場合や、デザインの共有・レビューを素早く行いたいときに適しています。
-
Adobe XD
- 特徴: Adobe製品との連携が強く、プロトタイプ作成やアニメーションが作りやすいです。パフォーマンスも良好です。
-
向いている場面: PhotoshopやIllustratorを日常的に使うデザイナーや、細かいモーションを含むプロトタイプを作成する場合に便利です。
-
Sketch
- 特徴: Mac専用で、プラグインが豊富にあります。ベクターデザインに強く、UI設計の効率化が図れます。
-
向いている場面: Mac環境で多くのプラグインを活用してワークフローをカスタマイズしたいときに適します。
-
Balsamiq Mockups
- 特徴: 手書き風のラフなワイヤーフレームを簡単に作れます。詳細なデザインより構造検討に向きます。
-
向いている場面: 企画初期のアイデア出しや、クライアントにざっくりした構成を見せたいときに使いやすいです。
-
Wireframe.cc
- 特徴: 非常にシンプルでミニマルなインターフェース。余計な機能がなく、素早くワイヤーフレームを作れます。
-
向いている場面: 短時間で画面構成を作る初期段階や、集中してレイアウトを決めたいときに便利です。
-
moqups
- 特徴: 直感的な操作で、多数のテンプレートや素材を備えています。コラボ機能もあり、プロトタイプ作成まで対応可能です。
- 向いている場面: テンプレートを活用して素早くモックを作りたいときや、チームで試作・共有する場合に適しています。
各ツールには得意分野があります。プロジェクトの規模やチーム環境、目的に合わせて選ぶと良いです。
Figma(フィグマ)の特徴と適用シーン
概要
Figmaはブラウザベースのデザインツールで、ネット環境があればどこでも使えます。リアルタイムで共同編集できるため、遠隔チームの作業に向いています。無料プランでもテンプレートや素材が豊富に使えます。
主な特徴
- リアルタイム共同編集:複数メンバーが同時に編集しコメントできます。例:デザイナーとPMが同時に画面を確認する。
- コンポーネントとライブラリ:ボタンやヘッダーを再利用でき、一箇所更新で全体に反映します。
- プロトタイプ機能:画面遷移を作って動きを確認できます。ユーザーテスト前の確認が簡単です。
- プラグイン:自動レイアウトやアイコン追加など作業を助ける拡張が多数あります。
適用シーン(具体例)
- チームでのワイヤーフレーム作成:複数ページの設計を共有しやすいです。
- リモートワークでのレビュー:画面上に直接コメントして修正指示を出せます。
- エンジニアへの受け渡し:CSSや距離などの計測を確認しながら渡せます。
使い始めのポイント
無料プランでアカウントを作り、テンプレートで練習すると早く慣れます。小さなコンポーネントからライブラリ化すると管理が楽になります。
注意点
オフラインでの作業は制限されます。また、細かいアニメーションや高度なビヘイビアは別ツールが必要な場合があります。
Adobe XD(アドビエックスディー)の特徴と適用シーン
特徴
Adobe XDはワイヤーフレームからインタラクティブなプロトタイプまで作れるツールです。操作が直感的で、初めて使う方でも画面のレイアウト作成や遷移設定を短時間で行えます。テンプレートやUIキットが豊富で、PCやスマホ向けデザインにすぐ使えます。
主な機能
- 画面デザインとプロトタイピングの一体化:アートボードをつなぎ、クリックで動きを確認できます。
- 共同編集とコメント:チームでリアルタイム編集やフィードバックが可能です。
- アセット連携:PhotoshopやIllustratorなどAdobe製品との連携で素材をスムーズに取り込めます。
- プレビュー機能:実機で挙動を確認でき、デザインと動作をすり合わせやすいです。
適用シーン
- 既にAdobe製品を社内で使っている場合、素材のやり取りがスムーズです。
- 画面遷移やアニメーションを含む複雑なプロトタイプを作る必要があるプロジェクトに向きます。
- デザイナーと開発者、ステークホルダーが早期に動作イメージを共有したい場面で有効です。
利点と注意点
利点は操作性の良さとAdobe製品との親和性、共同作業のしやすさです。注意点は、一部高度なアニメーションや特殊な挙動は別ツールや追加の工数が必要になる場合がある点です。
Sketch(スケッチ)の特徴と対応環境
特徴
SketchはMac向けに作られた画面デザインツールです。直感的な操作でUIパーツを並べやすく、繰り返し使える部品(シンボル)を作れます。豊富なプラグイン群と活発なコミュニティがあり、アイコン追加や画面遷移の簡易プロトタイプ、コーディング用の書き出しなどをプラグインで補えます。
リアルタイムコラボレーション
複数人で同じデザインを共有しやすく、変更履歴やコメント機能を通じてチームで作業できます。遠隔でのデザイン確認やフィードバックがスムーズです。
対応環境
SketchはmacOS専用です。Macのデスクトップやノートで動作し、最新のmacOSを使うと安定します。WindowsやLinuxでは動かないため、チームにMacユーザーがいるか確認してください。
利点と注意点
利点は高速な画面作成と豊富な拡張性、コミュニティの資産が使える点です。注意点はMac専用で有料であることです。無料トライアルがあるため、まず試して操作感を確かめるとよいでしょう。
使いどころの例
・iOSやmacOSアプリのUI設計
・デザインシステムの構築(共通部品の管理)
・エンジニアへ渡すアセットの書き出し
これらの点から、Mac環境で本格的にUIデザインを行う場合にSketchは有力な選択肢です。
Balsamiq Mockups(バルサミック モックアップス)の特徴と適用シーン
概要
Balsamiq Mockupsは、ラフで手書き風のワイヤーフレーム作成に特化したツールです。見た目があえて“下書き”風なので、議論の焦点を構成や機能に置きやすく、チームやクライアントとの早い段階の意思決定に向きます。
主な特徴
- 手早く描けるプリセットパーツ:ボタンや入力欄などをドラッグ&ドロップで配置できます。デザインの細部に時間をかけずに済みます。
- 手書き風の見た目:高精度の画面設計ではなく、アイディア出しや要件確認に適します。
- 学習コストが低い:直感的な操作で初心者でも扱いやすいです。
対応環境と料金
- 対応:Windows、Mac、ブラウザ版(クラウド)に対応します。
- 料金:デスクトップ版は買い切り型、クラウド版は月額制です。チームでの共有やコメント機能はクラウド版が便利です。
得意な適用シーン(具体例)
- 企画初期のアイディア出し:手早く複数案を作り比べられます。
- クライアントとの要件確認:見た目が“下書き”なので修正依頼が出しやすいです。
- ワークショップやユーザーテストの準備:短時間でプロトタイプを用意できます。
注意点
- インタラクションやアニメーション表現は限定的です。実際の動きや細かいUIの雰囲気を伝えたい場合は、別の高機能ツールと併用するとよいです。
- 見た目が粗い分、最終デザインへの橋渡しは別工程が必要になります。
Wireframe.cc(ワイヤーフレームドットシーシー)の特徴と適用シーン
概要
Wireframe.ccはブラウザだけで使える、極めてシンプルなワイヤーフレーム作成ツールです。ユーザー登録なしで始められ、最小限のUIでラフな設計を素早く作成できます。
主な特徴
- ミニマルな操作:ドラッグでボックスを作り、テキストやリンクを直接入力します。
- 登録不要の無料利用:簡単な共有リンクで他者と閲覧可能です。
- 集中しやすい画面:余計な機能がないため、アイデア出しに集中できます。
適したシーン
- 早い段階のラフ作成:ワイヤーフレームの骨組みを短時間で作りたいとき。
- 初心者の学習用:UI設計の基本を学ぶ入門に適しています。
- 非デザイナーとの共有:技術的ハードルを下げて意見を集めたい場合。
制限と注意点
詳細なコンポーネントやインタラクション設計には向きません。エクスポートや共同編集機能は限定的なので、本格的なプロジェクトには他ツールとの併用をおすすめします。
簡単な使い方
- サイトを開く。2. 画面上でドラッグして要素を作成。3. 文字を編集し、共有リンクを発行して確認します。
moqups(モクアップス)の特徴
概要
moqupsはブラウザで使えるワイヤーフレーム・プロトタイピングツールです。インストール不要で、ドラッグ&ドロップによる直感的な操作で画面設計ができます。
主な特徴
- 豊富なコンポーネント:ボタンやフォーム、アイコンなど素材が揃っています。具体例として、ログイン画面のテンプレートを選び、要素を置くだけで雛形が作れます。
- リアルタイム共同編集:チームで同時に編集し、コメントでやり取りできます。
- 図形と線の扱いが簡単:フローチャートやワイヤーの接続がスムーズです。
長所
- 学習コストが低く、初めての人でも短時間で操作を覚えられます。
- ブラウザだけで完結するので環境構築が不要です。
注意点
- 高度なアニメーションや複雑なプロトタイプ作成には向きません。しかし、ワイヤーフレーム作成や簡易プロトタイプには十分役立ちます。
- オフラインでは使えない点に注意してください。
使いどころとコツ
- 早い段階の画面設計や、クライアントへの見せ方に向きます。モックを短時間で作り、スクリーンショットやPDFで共有すると効果的です。
- コンポーネントをライブラリ化しておくと、再利用が楽になります。












