はじめに
本記事の目的
本記事は、NTTグループが提供するWebセキュリティ診断サービスを分かりやすく紹介することを目的としています。企業の情報システム担当者がサービス選定や導入検討を進める際に参考となるよう、特徴や診断内容、導入メリット、サポート体制まで幅広く解説します。
読者想定
対象は中堅・大企業の情報システム担当者やセキュリティ責任者です。専門用語は最小限に抑え、初めて診断を検討する方でも理解できるように説明します。
この記事で得られること
- NTTグループ各社の診断サービスの違いが分かります。
- 診断の流れや実務での注意点、サポート体制を把握できます。
- AIや最新技術の活用例から、今後の導入の方向性を検討できます。
本稿の構成
全8章で構成します。以降の章で、サービス内容、診断の進め方、導入メリットや教育支援などを順に解説します。まずは全体像をつかんでください。
NTTグループのWebセキュリティ診断とは
概要
NTTグループのWebセキュリティ診断は、WebサイトやWebアプリ、サーバー、ネットワーク機器などを専門家が調べ、脆弱性を発見して具体的な対策を提案するサービスです。たとえばログインフォームの不備やファイルアップロードの設定ミス、サーバーの公開設定などを点検します。
対象と方法
自動ツールによるスキャンと、専門家の手による手動検査を組み合わせます。自動化は広い範囲を素早く確認し、手動検査は複雑な攻撃の可能性を深く検証します。対象は公開サイトだけでなく開発段階のアプリやAPIも含められます。
診断の特徴
- リリース前後、定期診断、緊急対応など柔軟に対応します。
- 発見した問題は優先度を付けて報告し、具体的な修正方法を提示します。
- 修正後の再検査や運用面でのアドバイスも行います。
利用の際のポイント
診断は「一度」で終わらせず、定期的に実施することをおすすめします。開発の流れに組み込むと、公開前に問題を減らせます。
主な診断サービスと特徴
以下では、NTTグループ各社が提供する代表的な診断サービスと、その特徴を分かりやすく説明します。実際の用途に合わせて選びやすいよう、サービスの違いと利点を具体例で示します。
NTTセキュリティ・ジャパン
- 提供サービス: Webアプリケーション診断、プラットフォーム診断(OS/ミドルウェア設定など)。
- 実施形態: リモート(遠隔)とオンサイト(訪問)に対応します。小規模はリモート、大規模や複雑環境はオンサイトが向きます。
- 特徴: 自動ツールによるスキャンに、専門家の手作業(マニュアル検証)を組み合わせたハイブリッド診断を用意。例えば、ログイン画面の脆弱性は自動検出後に専門家が再現確認します。
- セルフ診断: 自社で手軽に使えるツールも提供。簡易チェックを行い、初期の脆弱性把握に便利です。
NTT東日本
- 提供サービス: 簡単申込で始められる定期自動診断。
- 実施形態: 完全自動の定期スキャンを設定でき、夜間に自動実行して継続的にチェックします。
- 報告: 診断結果はメール通知とPDF報告書で受け取れます。運用担当者がすぐ確認でき、改善の優先順位付けに役立ちます。
NTT ExCパートナー
- 提供サービス: 現地調査と対面の報告会(ワークショップ)を重視した支援。
- 特徴: 実際の運用環境を確認して、問題点を可視化します。報告会で改善策を議論し、現場で実行しやすい対策提案を行います。たとえば、設定ミスや運用手順の改善を具体的に示します。
選び方の目安: 小規模で手早く確認したいならセルフや自動診断、大規模や重要システムはハイブリッドやオンサイト、運用改善まで含めるなら現地調査+報告会が適しています。
AI活用と最新動向
概要
近年、AIを使ったWebアプリ診断が進み、診断の速度や精度が向上しています。NTTデータはAI診断ツール「AeyeScan」を活用し、手動診断の補助や診断サイクルの高速化、コスト削減を図っています。
AeyeScanの役割
AeyeScanは自動で脆弱性の候補を検出し、手動確認が必要な箇所を絞ります。例えば入力フォームの不正な値や既知の脆弱性パターンを発見し、診断者に優先順位を付けて提示します。これにより同じ作業を繰り返す時間を減らし、人的リソースを重要な判断に集中させます。
生成AI・LLMを使った診断
生成AIや大規模言語モデル(LLM)を用いて、コードの静的解析結果を自然な言葉で説明したり、脆弱性の修正案を提案したりします。NTTデータは「OWASP Top 10 for LLM Applications 2025」に準拠した診断メニューも提供し、LLM特有のリスクを考慮したチェックを行います。
メリットと活用例
AIは大量ログの初期解析、再現手順の生成、誤検知の削減に有効です。CI/CDパイプラインへ組み込み、開発サイクル内で早期に問題を発見できます。
注意点と対策
AIは誤った結果(誤検知や過小評価)を出すことがあります。出力は必ず専門家が確認し、モデルの学習データやログを適切に管理することが重要です。また、機密情報の扱いに配慮し、入力データを匿名化するなどの対策を講じます。
導入のポイント
AIツールは万能ではありません。自動診断と手動診断を組み合わせ、人の判断を残す運用が最も効果的です。導入時はトライアルで効果を測り、運用ルールを整備してください。
診断の流れ・サポート体制
以下では、実際の診断の流れと提供されるサポート体制について、わかりやすく順を追って説明します。
1. ヒアリング・見積もり
まず担当者が現状を詳しく伺います。対象となるWebサイトやAPI、サーバ構成、利用者数や公開範囲などを確認します。例:会員サイトと決済機能がある場合は、それぞれの範囲を明確にします。これに基づき、必要な診断手法と工数を提示し、見積もりを作成します(通常数日〜1週間)。
2. 契約・調整
診断の範囲やスケジュール、守秘義務(NDA)を取り決めます。診断中の業務影響を避けるため、実施時間帯やテスト環境の確認も行います。必要に応じて社内の連絡窓口やオンコール体制を設定します。
3. 診断実施
経験豊富な診断員が実際に脆弱性を探します。自動ツールで広く網羅した後、手作業で深掘りします。例:フォーム入力の脆弱性や認証周りの挙動を実際に確認します。スケジュールは数日〜数週間で、対象の規模や複雑さで変わります。
4. 報告・フォロー
発見した脆弱性を分類し、優先度と対策案を提示した報告書を作成します。報告会で技術担当と経営側に分かりやすく説明します。必要な場合は修正後の再検査(リテスト)を行い、対策が有効か確認します。
サポート体制
- プロジェクトマネージャー:日程調整や進捗管理を担当します。
- 診断員(エンジニア):実作業と技術説明を行います。
- セキュリティコンサルタント:優先度付けや改善計画策定を支援します。
24時間内の初期応答や重要脆弱性の緊急対応など、SLAに沿ったサポートを提供することが一般的です。報告書の補足説明や技術トレーニング、長期的な監視サービスの提案まで、導入後の支援も充実しています。
注意点(チェックリスト)
- 対象範囲を明確にする
- テストでの業務影響を事前に調整する
- 重要脆弱性は速やかに共有する
- 修正後の検証スケジュールを確保する
これらの流れと体制により、安全性の高い運用に向けた実行可能な改善策をスムーズに進められます。
導入メリットと利用シーン
導入メリット
NTTグループのWebセキュリティ診断を導入する主な利点は、専門家のノウハウによる高精度な脆弱性発見と、現場で使える改善提案が得られる点です。自動診断の効率性と人による精査を組み合わせ、誤検知を抑えつつ見落としを減らします。定期的な診断でセキュリティを維持し、脆弱性の再発を防ぎます。AIや自動化で検査時間やコストを削減できます。診断後は詳しい報告書と再検査、ベストプラクティスの提示で運用改善を支援します。
利用シーン
- 新規リリース前の最終チェック:リリース直前に脆弱性を発見し品質を担保します。
- 既存システムの定期診断:レガシーアプリや継続開発中のサービスに適します。
- 緊急対応・脆弱性有無の確認:脅威情報が出た際の迅速な検査に役立ちます。
- SaaSやECサイトの運用:顧客情報を扱うサービスで信頼性を高めます。
- 外部委託先の品質管理:開発会社に対する第三者チェックとして活用できます。
導入で期待できる具体効果
- インシデント発生率の低下
- 開発サイクルでの問題早期発見
- セキュリティ対応コストの最適化
- 見える化された報告で社内改善が進む
導入時はスコープ設定と業務影響の確認を丁寧に行うことで、より効果的に活用できます。
最新技術・教育支援
現役診断員が講師となる教育プラン
NTTデータ先端技術では、現役で診断を行う技術者が講師を務めます。実務で得た知見を交え、脆弱性の見つけ方や優先度の付け方を具体例で教えます。座学だけでなく、実践的な演習を重視します。
最新ツールと手法の導入支援
自動化ツール(脆弱性スキャンやログ解析)や、AIを使った報告の優先順位付けを活用します。これにより、人的負担を軽くしつつ精度を高めます。導入に際してはツール選定から運用ルール作成まで支援します。
開発部門のスキルアップと内製化支援
安全な設計やコーディングの実践、コードレビューの仕方、脆弱性対応のフロー構築などを個別に支援します。短期集中のワークショップや、継続的なメンタリングも行います。
実践的演習と評価
模擬攻撃やハンズオン、CTF形式の演習で実戦力を伸ばします。演習後は改善点を明確にし、次の学習計画へつなげます。これにより、現場で使える技術が確実に身につきます。
まとめ・今後の動向
要点
- サイバー攻撃の脅威が増す中、NTTグループのWebセキュリティ診断は最新技術と専門家の知見を組み合わせ、幅広い企業ニーズに対応します。
- AIや自動化の導入で診断の効率と精度が向上し、クラウドやAPI、IoTなど新しい環境にも対応しやすくなっています。
今後の動向
- 診断の自動化と継続的な監視がさらに進み、より短いサイクルでの脆弱性発見が期待されます。
- 行動分析や異常検知の精度向上により、未知の攻撃への備えが強化されます。
企業への提言
- 定期的な診断を導入し、開発工程にセキュリティを組み込むことをおすすめします。
- 診断結果をもとに対策を継続的に実施し、社員教育や運用体制の整備も並行してください。
今後も技術と人の力を組み合わせたサービスが重要になります。適切な診断と対策でリスクを低減し、安心してサービスを提供できる体制を整えましょう。












