はじめに
本記事の目的
本記事はWeb制作の請求書作成に関する基本的な知識と実践的な方法を、わかりやすく解説します。請求書の必須項目やWeb制作特有の記載内容、税金の計算方法、記載ルールや注意点を順を追って説明します。フリーランスや小規模事業者が正確に請求できるよう支援します。
対象読者
Web制作に携わるフリーランス、個人事業主、または請求書作成が初めての方を想定します。経理の専門知識がなくても理解できるよう、具体例を交えて説明します。
本記事の使い方
各章を順に読むと請求書作成の流れが身につきます。第2章で基本項目を確認し、第3章でWeb制作特有の書き方を学びます。第4章で税金の計算方法を扱い、第5章で記載ルールや注意点を確認してください。テンプレートや記載例は第3章で紹介します。
注意事項
法令や税制は変わることがあります。最新の扱いに不安がある場合は税理士や公的機関に確認してください。実務での運用は、ここで示す基本をもとに各自の状況に合わせて調整してください。
請求書の基本構成と必須項目
概要
Web制作の請求書には、法的に定められた(又は慣習的に必須とされる)項目と、取引を円滑にするための推奨項目があります。ここでは項目ごとに何を書くか、なぜ必要かを分かりやすく説明します。
必須項目
- 発行日:請求書を作成した日付。例)2025年6月1日。支払期限の起点となります。
- 請求金額:税込・税抜の区別を明記します。例)¥220,000(税10%込み)
- 請求先:取引先の名称と住所。請求先が法人か個人かも明示します。
- 請求元:自分の氏名または屋号、住所、連絡先(電話・メール)。受け取り側が問い合わせや支払いを行いやすくなります。
- サービス内容と数量:提供した業務の内訳(例:デザイン制作:1件、コーディング:10ページ)。日付や工数を付け加えるとより親切です。
推奨項目
- 取引先担当者名:誰に届けるか明確になります。
- 件名(業務の概要):請求書が何の請求か一目で分かります。例)「コーポレートサイト制作費(第1回)」
- 支払期限:具体的な日付で記載。例)2025年6月30日
- 支払方法と振込先口座:銀行名、支店、口座番号、名義を正確に書きます。振込手数料の負担についても明記してください。
簡単な記載例(行形式)
発行日:2025-06-01
請求書番号:INV-20250601-01
請求先:株式会社○○ 〒111-1111
請求金額:¥220,000(税10%込)
件名:コーポレートサイト制作費(第1回)
支払期限:2025-06-30
振込先:○○銀行 ○○支店 普通 1234567 山田 太郎
上記をそろえると、支払い遅延や問い合わせを減らせます。必要に応じて工数表や成果物の納品一覧を添付するとさらに丁寧です。
Web制作特有の記載内容と記載例
取引先と発行者情報
請求書の最上部に取引先の正式名称(法人は法人名、個人は氏名)を正確に記載します。発行者は氏名または屋号、住所、電話番号、メール、インボイス制度で登録済みなら登録番号も記載します。
件名(請求書のタイトル)
「請求書(Webサイト制作費)」など具体的なタイトルを入れます。件名で何の請求かが一目で分かるようにします。
取引内容(明細)の書き方
摘要、数量、単価、金額を明確にします。Web制作では項目を細かく分けると誤解が生じにくくなります。例:
– デザイン制作(トップページ+下層5ページ)/1式/¥150,000
– HTML/CSSコーディング/5ページ/¥20,000/¥100,000
– レスポンシブ対応/1式/¥30,000
– 初期SEO設定(タイトル・メタ設定)/1式/¥15,000
修正作業の扱い
軽微な修正は無料とする場合と、有料にする場合があります。有料の場合は時間単位(例:1時間¥5,000)で計算することを明記します。修正上限や無償回数をあらかじめ記載すると安心です。
支払条件と備考
支払期限、振込先、振込手数料の負担、納品条件(検収の方法)を記載します。必要に応じて納期や遅延利息の扱いも明確にします。
記載例(簡単なテンプレート)
請求日:YYYY/MM/DD
請求先:株式会社サンプル 様
発行者:山田太郎(屋号:Yamada Web)
明細:デザイン制作 1式 ¥150,000
合計(税込):¥198,000
支払期限:YYYY/MM/DD
振込先:銀行名・口座情報
上記を参考に、具体的で分かりやすい明細を心がけてください。
税金の計算と記載方法
基本の考え方
請求書では「税抜金額」「消費税額」「税込金額」を明確に分けて記載します。消費税が内税(価格に含む)か外税(価格に上乗せ)かもはっきり示してください。源泉徴収税はクライアントが報酬から差し引くことがあり、Web制作では一般に請求金額の10%が目安です。
計算の手順(わかりやすい例)
例:税抜報酬が300,000円の場合
– 税抜金額:300,000円
– 消費税(10%):30,000円
– 税込請求金額:330,000円
– 源泉徴収(10%):30,000円
– 最終請求額(支払金額)=税込請求金額 − 源泉徴収=300,000円
このように、最終的にクライアントが支払う金額は消費税を加えた金額から源泉徴収を差し引いた額になります。
請求書への具体的な表記例
- 金額(税抜):300,000円
- 消費税(10%):30,000円
- 税込請求金額:330,000円
- 源泉徴収(報酬の10%):−30,000円
- お支払い金額:300,000円
また、消費税が内税の場合は「税込表示(内税)」と明記し、税額を別途注記すると親切です。
注意点と実務上の確認事項
- 源泉徴収の適用可否や率は契約内容や業務の種類で変わる場合があります。契約書やクライアントに確認してください。
- 消費税の税率は変更される可能性があるため、請求時点の税率で計算してください。
- 請求書に「内訳」や「計算式」を記載すると、受取側での処理がスムーズになります。
請求書の記載ルールと注意点
基本ルール
請求書に細かい決まりはありません。受け取る側の指定があれば、それに従うことが第一です。指定がない場合は、支払いに必要な情報(発行日、請求先、金額、支払期限、振込先)を分かりやすく記載します。
クライアントの指示への対応
クライアントからフォーマットや宛名、支払条件の指定があれば優先します。事前にメールで確認し、合意した内容を保存すると後で役立ちます。
備考欄の活用法
複数業務や納品物が混在する場合は備考欄で内訳や条件を明記します。例えば「デザイン費(Aページ分)」「保守費(3か月分)」のように具体的に書くと誤解が減ります。
請求書番号の重要性
請求書番号を一意に付けて管理します。番号は発行年度や連番を組み合わせると検索しやすくなります(例:2025-001)。紛失・照合ミスの防止に役立ちます。
発行・送付の注意点
電子メールで送る際はPDF化してパスワード設定を検討します。送付履歴や送信日時を保存し、送付後に確認の連絡を入れます。
訂正・再発行
誤りがあれば訂正書や再発行で対応します。訂正理由と元の請求書番号を明記して、混同を防ぎます。
保存と証拠性
税務やトラブルに備え、請求書は適切に保存します。電子保存をする場合は相手と合意し、データのバックアップを取ります。












