はじめに
はじめに
本調査は、Web制作における要件定義の基本と実務手順をわかりやすくまとめたものです。要件定義はサイトの仕様を決める重要な工程で、プロジェクトの進行を円滑にし、成果物の品質を高めます。本書では、5W1Hを用いた項目整理、具体的な4つのプロセス、要件定義書に必要な主要項目を順を追って解説します。
目的
– クライアント、制作チーム、開発者が共通認識を持てる要件定義を作ることを目指します。実務で使える視点と具体例を重視します。
対象読者
– Webサイト制作に関わる全ての方(クライアント担当者、PM、デザイナー、エンジニア、初学者)。用語は最小限にし、具体例で補足します。
使い方
– 各章を順に読み、5W1Hの視点で項目を洗い出してください。テンプレートを活用し、関係者と早めに共有して調整します。
範囲
– 本書は要件定義に焦点を当てます。詳細な設計や実装の手順は含みません。
要件定義とは何か
概要
要件定義とは、Webサイト制作やリニューアルで「何を」「どのように」実施するかを明確にする工程です。単にデザインや画面構成を決めるだけでなく、制作の目的、想定する利用者、スケジュール、体制、予算などプロジェクト全体の条件を整理します。最終的に要件定義書として文書化し、制作会社と発注側で共通理解を持ちます。
要件定義で扱う主な項目
- 目的とゴール:なぜサイトを作るのか、達成したい成果(例:問い合わせ数を月30件に増やす)。
- 想定ユーザー:年齢層や利用シーンなど具体像を描きます。
- 機能要件:必要な機能(フォーム、検索、決済など)を列挙します。
- 非機能要件:表示速度、セキュリティ、運用性といった品質面の条件です。
- コンテンツ構成:ページ構成や既存資産の扱いを決めます。
- スケジュールと予算:納期、マイルストーン、コストの目安。
- 体制と役割:発注側・受注側の責任範囲を明確にします。
出力物(要件定義書)の役割
要件定義書は合意文書です。制作範囲の判断基準になり、見積りや設計、テストの土台となります。変更が生じた場合は要件定義書を更新して履歴を残します。
実務上のポイント
要件は曖昧にせず具体化します。関係者の意見を早期に集め、優先順位を付けると開発がスムーズになります。小さな検証(プロトタイプ)を挟むと認識齟齬を減らせます。
要件定義が必要な理由
はじめに
要件定義は、Web制作やシステム開発で最初に行う重要な工程です。ここで方向性と条件を明確にすると、後の作業がぐっと楽になります。
1) 共通理解をつくる
関係者全員が同じゴールや制約を理解します。例えば、クライアント、デザイナー、エンジニアが「何を」「どの程度」作るかで認識を合わせると、手戻りや誤解を減らせます。
2) 目的と範囲を明確にする
要件定義で目的(売上向上、情報発信など)と範囲(対象ページ、機能、対応ブラウザなど)を定義します。範囲を決めると追加要望の判断がしやすくなります。
3) リスク低減とコスト管理
要件を固めると技術的な難易度や納期の見通しが立ちます。リスクを早く発見できれば、無駄な手戻りや追加費用を抑えられます。
4) 実装の効率化と品質確保
具体的な要件があると実装チームは優先順位をつけやすく、テスト項目も明確になります。結果として納品物の品質が向上します。
5) 要求定義との関係
要求定義で「やりたいこと」を整理し、要件定義で「どう実現するか」を決めます。順序を踏むと仕様のぶれが減り、効率的に進められます。
(各項目は具体例や優先順位を付けて文書化すると、さらに有効です。)
5W1Hフレームワークを用いた項目の整理
Why(なぜ)
目的と背景を明確にします。売上向上、顧客獲得、情報発信など具体的なゴールを書き出します。現状の課題(例:問い合わせ数が少ない、離脱率が高い)も可視化します。ポイントは数値や事実で裏付けることです。
When(いつ)
制作着手日、マイルストーン、公開予定日を決めます。例:デザイン決定→開発→テスト→公開。リリースに余裕を持たせ、想定リスク(遅延要因)も記載します。
What(何を)
作るものの範囲を定義します。ページ構成、必要な機能(フォーム、会員機能、ECカートなど)、デザインの方向性を列挙します。優先度をA/B/Cで分けると管理しやすいです。
Who(誰が)
ターゲットユーザーとペルソナを具体化します。年齢、職業、利用シーン、抱える課題を設定します。社内の担当者や外部ベンダーの役割分担も明記します。
Where(どこで)
対応するプラットフォーム(PC、スマホ、タブレット)、公開ドメインやホスティングの環境を決めます。オフラインの導線(店舗、チラシ)との連携も検討します。
How(どのように)
使用技術や運用方法を示します。例:CMSの採用、レスポンシブ設計、SEO対策、保守体制。開発言語やフレームワークは必要最低限に記載し、理由を添えると伝わりやすいです。
各項目を埋めると要件がつながり、抜け漏れを防げます。具体例や優先順位を添えて進めてください。
要件定義の流れ・プロセス
要件定義は「現状を正しく把握し、解決策を明確にして合意する」一連の流れです。Web制作では、次の4つのステップで進めると失敗が少なくなります。
ステップ1:現状分析と課題整理
現状のデータ(アクセス解析、ユーザーインタビュー、運用フロー)とヒアリング結果を基に課題を洗い出します。UI/操作性、コンテンツ、SEO、システム・運用、集客施策などのカテゴリに分け、優先度と影響度を付けて可視化します。出力物は課題リスト(担当・期限付き)が望ましいです。
ステップ2:仮説立案と方向性決定
想定するユーザー(ペルソナ)と導線を描き、課題に対する具体的施策を仮説化します。例:購入率を上げるためにCTAを統一する、モバイルでの離脱を減らすためにページ表示を高速化する。各仮説に対して測定可能なKPIを設定し、優先度を決めます。
ステップ3:関係者との合意形成
要件を機能要件・非機能要件・運用ルールに分解し、技術・デザイン・営業・運用担当とレビューを重ねます。ワークショップやレビュー会議で意見を取りまとめ、承認フローと議事録を明確にします。担当とスケジュールの合意が重要です。
ステップ4:要件定義書の作成
決定事項を文書化します。主な項目は目的・範囲・画面遷移/導線、機能一覧、非機能要件(性能・セキュリティ)、運用・保守体制、スケジュール、見積り、検収基準です。バージョン管理とサインオフを行い、変更時は更新履歴を残します。
実務上のポイント
プロトタイプで早期に確認する、MVPの優先順位を決める、テスト計画とリスク対策を用意することが大切です。定期的なコミュニケーションを設け、要件は合意と検証を繰り返して固めていきましょう。
要件定義書に盛り込むべき主要項目
1. プロジェクト計画関連
目的と背景、プロジェクトの概要を明確にします。例:新規サービスの認知向上、リブランディング等。スケジュールはマイルストーンで書き、公開日やレビュー日を具体的に示します。予算は制作費だけでなく運用費も含めます。
2. ユーザー・コンセプト関連
対象ユーザー(年代・職業・利用シーン)、サイトのコンセプトを記載します。ペルソナを1〜3人作り、行動や課題を具体例で示すと担当者の理解が深まります(例:30代の購買意欲が高い主婦)。
3. サイト構成・機能関連
サイトマップ、ページ数、コンテンツ種類(記事・商品一覧・FAQなど)を列挙します。必要な機能は優先度とともに書きます(例:検索、会員登録、EC決済、お問い合わせ)。ユーザーフローは代表的な利用動線を図や箇条書きで示します(例:商品検索→詳細→カート→決済)。必要なシステム(CMS、決済システム、外部API)も明記します。
4. デザイン・UI関連
デザインの方向性(シンプル、親しみやすい等)、参考イメージ、レスポンシブ対応、アクセシビリティ基準を記載します。UIでは主要な操作の見え方やボタン配置の例を挙げると実装がスムーズです。
5. 運用・測定・保守
運用担当、更新頻度、コンテンツ管理のルールを決めます。KPI(訪問数、CVR、滞在時間など)と計測方法、ログやバックアップの運用方法、障害時の連絡先を明記します。
6. テスト・品質・リスク
受け入れ基準、主要なテスト項目(表示確認、動線確認、決済テスト、セキュリティチェック)を載せます。想定リスクと優先対応策も書きます(例:決済障害時の代替手段)。
7. 納品物・スコープ・承認フロー
納品物一覧(ソース、デザインデータ、マニュアル等)、成果物の受け渡し条件、変更要求の扱い、承認者と承認手順を明確にしておきます。












