はじめに
本書の目的
この文書は「web サイト サーバー 変更」を検討している方のために作成しました。サーバーを別の環境に移す際の全体像、具体的な手順、注意点をわかりやすく整理します。専門用語は最小限にとどめ、具体例を交えて説明します。
誰に向けた内容か
- 自社サイトを別のレンタルサーバーやVPSへ移したい管理者
- 制作会社やフリーランスで作業手順を知りたい方
- メールやDNSも含めて安全に移行したい方
この文書で得られること
- 移行の全体フローがつかめます(準備〜バックアップ〜切り替えまで)
- よくあるミスやトラブル回避のポイントを把握できます
- 事前準備のチェックリストを参考に、作業を効率化できます
読み方の案内
全6章構成です。第2章で全体像を説明し、第3章で7ステップの流れを示します。以降は各ステップを順に詳しく解説します。自分の状況に合わせて該当章だけ読んでも役立つ作りにしています。具体的な操作例や注意点は後章で丁寧に解説します。
Webサイトのサーバー変更とは?まず全体像を理解する
概要
Webサイトのサーバー変更とは、今使っているサーバーから別のサーバーへサイトやメールの環境を移す作業です。目的は表示速度の改善、安定性の向上、費用の見直し、管理会社の変更や古いサーバーのサポート終了対応などです。重要なのはダウンやメールの途切れを避け、検索順位やアクセスへの影響を小さくすることです。
よくあるきっかけ(具体例)
- 表示が遅いので、共有サーバーから専用やVPSへ移す
- 月額コストを下げるため、別のプロバイダへ乗り換える
- 制作会社変更に伴い管理先を移動する
- PHPやOSのサポート終了に伴う移行
主なリスクと対策
- サイトが一時的に見えなくなる:DNS切替のタイミングを調整し、TTLを短くするか旧サーバーを残しておく
- メールが届かなくなる:MXレコードやメールボックスの設定を事前に確認する
- データ欠落や設定ミス:必ずバックアップを取り、テスト環境で復元を確認する
- SSLや外部連携の不具合:証明書再発行やAPI設定の見直しを行う
全体スケジュールイメージ(簡易)
- 現状の把握(ファイル、DB、メール設定)
- 移行先の準備(環境構築、SSL、メール設定)
- バックアップ取得とテスト復元
- DNSを切り替え(監視しながら)
- 動作確認とモニタリング
- 問題なければ旧サーバーを停止(一定期間様子を見る)
初めての方でも、計画を立てて少しずつ進めれば安全に移行できます。具体的な手順は次章で詳しく説明します。
サーバー変更の全体フロー(7ステップ)
はじめに
サーバー変更は段取りが大切です。ここでは実務で役立つ7つのステップを順番に説明します。各ステップで確認するポイントや具体例を交えて、失敗を減らす方法を紹介します。
STEP1:現在の環境と契約内容の確認
確認項目:利用中のサーバー会社、契約プラン、ドメイン管理先、メールの扱い、SSLの有無。例:メールが旧サーバーで運用なら移行時にメールを止めないよう注意します。
STEP2:移行先サーバーの選定・契約
必要な性能・バックアップ方針・サポートを基準に選びます。テスト用プランがあると安心です。
STEP3:旧サーバーのバックアップ取得
ファイルとデータベース、メールのバックアップを取得します。定期的なバックアップ手順を記録しておきます。
STEP4:新サーバーの設定とデータ移行
新サーバーでPHPやDBなど環境を整え、データをアップロード。パーミッションや設定ファイルの差分を確認します。
STEP5:新サーバーでの動作確認
ブラウザで表示やフォーム送信、画像表示などを入念にチェックします。hostsファイルで本番切替前に確認すると安全です。
STEP6:DNSの切り替え(ネームサーバー/レコード)
TTLを下げた上で切り替えます。反映時間を考慮し、古いサーバーはすぐに解約しないでください。
STEP7:旧サーバーの解約と最終確認
DNS反映後、数日間はログやメールの受信状況を監視します。問題がなければ旧サーバーを解約します。
STEP1:今のサーバー・ドメイン・メール環境を把握する
1) まず確認する基本情報
- サーバー会社名と契約プラン(例:レンタルサーバー、VPS、クラウド)
- 契約更新日・解約期限・支払い担当者
- ドメイン管理者(誰がレジストラにアクセスできるか)とDNS管理者
2) 詳しく調べるポイント
- Webサイトの種類:静的サイトかWordPressなどのCMSか。WordPressなら「ファイル」と「データベース」が必須です。
- データベースの有無と種類・バージョン(例:MySQL 5.7)
- ファイル転送の方法とアカウント(FTP/SFTP/SSHの接続情報)
- メール:メールアカウント数、保存方法(サーバー上のメールボックスか外部サービスか)、転送やエイリアス設定
- SSL証明書の有無と発行元
- DNSレコードの現状(A、CNAME、MX、TXT、TTLなど)
- 外部サービス連携(CDN、クラウドストレージ、Google Workspaceなど)
3) 調査の手順(簡易チェックリスト)
- 管理画面へログインしてスクリーンショットを保存する
- 契約情報(請求書・契約書)を確認して更新日を控える
- FTP/SFTP/SSH、データベースの接続情報を取得してテスト接続する
- メールアカウント一覧と受信箱容量をエクスポートする
- DNSの管理者を確認し、自社でDNSを書き換えられるか試す
4) 注意点
- DNSを書き換えられない場合、ドメイン移管が必要になることがあります。移管には時間がかかるため、早めに対応を開始してください。
- WordPressなどCMSを使う場合はファイルとDBの両方を確実に把握してから移行準備を進めてください。
上記を整理すると、移行作業でのトラブルを大幅に減らせます。まずは現状を確実に把握することを優先してください。
STEP2:移行先サーバーの選定と契約
目的と全体像
移行先サーバーを決め、契約します。旧サーバーを残したまま新環境を構築し、動作確認を終えてからDNS切替を行うとダウンタイムをほぼゼロにできます。
選定ポイント(簡単な目安付き)
- 容量と転送量:画像や動画が多ければ容量・転送量を余裕を持って選びます(例:写真中心なら200GB以上)。
- 動作環境:PHPやデータベースのバージョンを確認します。使っているアプリが対応するか確かめます。
- SSL対応:無料のSSLがあるか、独自証明書の導入が簡単か確認します。
- サポートと信頼性:障害対応の速さやバックアップの有無を見ます。
- コスト:初期費用・月額・契約期間を比較します。
契約時の注意点
- 旧サーバー解約前に新サーバーを契約する。
- 無料期間や返金ポリシーを確認する。
- バックアップや転送支援の有無をチェックする。
実際の手順(短く)
- 必要要件を洗い出す(容量・PHPなど)。
- 候補を3社程度に絞る。
- テスト用に契約し、実際にファイル・DBを入れて動作確認する。
テストと切替準備
ステージング環境で表示やフォーム送信、メール送受信を確認します。問題なければDNSを切り替え、しばらく並行稼働してログを監視します。
STEP3:旧サーバーのバックアップを取得する
なぜバックアップが必要か
サーバー移行中にデータが壊れたり消えたりするリスクがあるため、必ず事前にバックアップを取得します。万が一でも元に戻せる保険になります。
何をバックアップするか(具体例)
- Webファイル:HTML、画像、CSS、JavaScript、隠しファイル(.htaccess など)
- CMS(例:WordPress):wp-content(テーマ・プラグイン・アップロード画像)とwp-config.php
- データベース:サイトの投稿・設定を含むSQLファイル
- メール:サーバーで管理しているメールはIMAPでローカルに保存
具体的な手順(簡潔)
- ファイルをダウンロード:SFTP/FTPクライアント(例:FileZilla)でpublic_htmlやwwwの全ファイルを取得します。隠しファイルを忘れないでください。
- データベースをエクスポート:phpMyAdminやサーバー管理画面の「エクスポート」機能でSQLファイルを作ります。コマンドが使える場合はmysqldumpでも可。
- WordPressならwp-contentフォルダ一式とwp-config.phpを確実に保存します。
- メールのバックアップ:ThunderbirdなどのメールソフトでIMAPアカウントを追加し、ローカルフォルダへコピーするか、imapsyncで移行用にダンプします。
バックアップの保管と確認
- 圧縮して日付を付ける(例:backup_2025-03-01.zip)。
- オンサイト(自分のPC)とオフサイト(クラウド/外付けHDD)に最低2コピー保管します。
- リストア確認を1回は行ってください。ローカル環境でファイルを展開し、SQLをインポートしてサイトが表示されるか確認します。
チェックリスト(移行前)
- [ ] 全ファイルをダウンロードした
- [ ] データベースのエクスポートを取得した
- [ ] メールを保存した(必要な場合)
- [ ] バックアップを2箇所以上に保管した
- [ ] 確認用の復元テストを行った
この章ではまず“確実に取る”ことを最優先に進めてください。何かあっても元に戻せるように準備しましょう。












