はじめに
本記事の目的
この連載は、Webサーバー、アプリケーションサーバー(APサーバー)、データベースサーバーの役割の違いと、それらを組み合わせた「3層構成」について、初心者向けにやさしく解説することを目的としています。専門用語は最小限にし、身近な例を使ってイメージしやすく説明します。
対象読者
- Webの仕組みに興味がある方
- 開発や運用の入門者
- 仕事で用語を整理したい方
本記事で学べること
- 各サーバーが何を担当するか
- それぞれの役割を分ける理由とメリット
- 単一構成(1台で全部)との違い
- 実際の連携イメージ(処理の流れ)
章構成(全5章)
- はじめに(本章)
- そもそも「サーバー」とは何か
- Webシステムの「3層構成」とは
- Webサーバーとは?役割・特徴
- アプリケーションサーバー(APサーバー)とは?
読み方のヒント
各章は独立して読みやすく作っています。まずは本章で全体像をつかみ、気になる章から順にお読みください。具体例を交えて進めますので、実務に移す際の参考になります。
そもそも「サーバー」とは何か
概要
サーバーとは、ネットワークを通じて他のコンピューター(クライアント)にサービスを提供する専用のコンピューターやソフトのことです。簡単に言えば「誰かの頼みごとを受けて応える存在」です。家庭のパソコンと違い、外からの要求に対して常に応答するように設計されています。
サーバーの役割
サーバーはリクエスト(要求)を受け取り、適切な応答を返します。たとえば、ウェブページを見たいときはブラウザがサーバーに「このページをください」と頼み、サーバーがページのデータを返します。メールを受け取り保存したり、ファイルを配ったり、認証(本人確認)を行ったりする役目もあります。
主な種類(今回扱う3つ)
- Webサーバー:静的なファイルやブラウザからの最初の応答を返します(例:画像やHTMLファイル)。
- アプリケーションサーバー(APサーバー):業務の処理や計算を行い、動的に内容を作ります(例:ログイン処理や買い物かごの管理)。
- データベースサーバー(DBサーバー):データを安全に保存し、検索や更新に応じます(例:ユーザー情報や注文履歴の保存)。
なぜ分けるのか
役割を分けると、処理を効率的に分担できます。負荷が高い部分だけ増強したり、障害が起きたときに影響範囲を小さくできます。保守やセキュリティも管理しやすくなります。
実際の形
サーバーは専用の機械で動くこともあれば、クラウド上の仮想サーバーやコンテナという形で動くこともあります。見た目は違っても、基本は「要求に応えてサービスを提供する」点で同じです。
Webシステムの「3層構成」とは
概要
Webシステムの3層構成とは、処理を役割ごとに分けた設計です。プレゼンテーション層(Webサーバー)、アプリケーション層(APサーバー)、データ層(DBサーバー)の三つに分けます。多くの業務システムやECサイトで採用され、負荷分散やセキュリティ、開発効率の向上につながります。
それぞれの役割
- プレゼンテーション層(Webサーバー):利用者の画面表示やリクエストの受け付けを担当します。例として、商品一覧ページの表示や画像配信があります。
- アプリケーション層(APサーバー):業務ロジックを処理します。カートの計算や在庫チェック、ログイン認証などをここで行います。
- データ層(DBサーバー):データを安全に保存し、検索や更新を行います。注文履歴や顧客情報はここに置きます。
メリット
役割を分けることで負荷を分散できます。WebやAPは必要に応じて台数を増やせます。DBを内部ネットワークに置くことで外部から直接触られにくくなり、セキュリティが高まります。開発面でも、フロント担当とバックエンド担当で作業を分担しやすくなります。
実際の運用上の注意
構成が増えるとネットワーク通信が増え、遅延や障害の影響範囲が変わります。DBは単純に増やせないためレプリケーションやバックアップ設計が必要です。監視とログの整備をして早期に問題を検知する運用を心がけてください。
Webサーバーとは?役割・特徴
概要
Webサーバーは、ブラウザなどからのHTTP/HTTPSの要求を受け取り、HTMLや画像、CSS、JavaScriptといった静的なファイルを返す役割を持ちます。動的な処理は別のアプリケーションサーバーに任せることが多いです。
主な役割
- 静的コンテンツ配信: ファイルを高速に返します。キャッシュを使うとさらに速くなります。
- リバースプロキシ: リクエストを内部のアプリケーションサーバーに振り分けます。負荷分散にも使えます。
- SSL/TLS終端: HTTPSの暗号化処理を担当し、内部は平文でやり取りする構成も可能です。
代表的なソフトウェア
Apache HTTP Server、Nginxがよく使われます。Nginxは軽量で多数の同時接続に強く、Apacheは柔軟な設定が得意です。
特徴と使いどころ
- 高速なファイル配信に向く
- キャッシュや圧縮(gzip)で通信量を減らせる
- SSL終端やリバースプロキシでセキュリティと拡張性を高められる
運用で気を付けること
設定ミスは情報漏えいや通信の遅延につながります。ログやパフォーマンス指標を監視し、証明書の更新やセキュリティ設定を定期的に確認してください。
アプリケーションサーバー(APサーバー)とは?
概要
アプリケーションサーバー(APサーバー)は、Webサーバーから受け取った要求を処理し、動的なページや機能を生成する役割を持つサーバーです。Java、Ruby、PHPなどで書かれたプログラムを実行し、業務の「しくみ」(ビジネスロジック)を動かします。
主な役割・特徴
- ビジネスロジックを実行して結果を返す
- 複数の処理を効率よく並行実行する
- データベースや外部APIと連携して情報をやり取りする
よくある具体例
- ECサイト:在庫確認、注文処理、ポイント計算
- 金融系:口座照会、残高計算、振込処理
- 会員サイト:ログイン認証、会員情報の更新
主な機能(簡単な説明)
- DB接続管理:接続を使い回して性能を保つ
- トランザクション管理:処理のまとまりを安全に扱う
- セキュリティ/認証:ログインや権限チェックを行う
- 外部API連携:配送サービスや決済サービスとつなぐ
- ビジネスロジック実行:業務ルールを反映する処理を行う
導入のメリット
- 負荷分散やスケールアウトがしやすくなる
- 開発者が業務ロジックに集中でき、保守が楽になる
- 高負荷時でも安定して処理を継続しやすい
注意点
- 状態(セッション)管理に気をつける必要がある
- パフォーマンス監視やログ管理が重要になる
- 設計次第で複雑さが増すため、簡潔な構成を心がけることが望ましい












