はじめに
概要
この記事は、Webサーバー、アプリケーションサーバー(APサーバー)、データベースサーバー(DBサーバー)の役割と違いをやさしく解説します。各サーバーの機能、代表的なソフトウェアの例、そして連携の基本を順を追って説明します。
なぜ知るべきか
サーバーの役割を理解すると、トラブル時の切り分けや構成の改善がしやすくなります。たとえば、画面が表示されないときに原因がどの層にあるかを見分けられます。
わかりやすい例え
レストランに例えると、Webサーバーは受付(注文を受ける)、APサーバーはシェフ(料理を作る)、DBサーバーは食材の倉庫(データを保管する)です。役割が分かれることで効率よく動きます。
本記事の構成
第2章:Webサーバー(役割と代表例)
第3章:APサーバー(処理の中身)
第4章:DBサーバー(保存と検索)
第5章:サーバーの連携と役割分担
対象読者
初心者から中級者まで、システムの全体像をつかみたい方に向けた内容です。専門用語は最小限にして、具体例で説明します。
Webサーバー
概要
Webサーバーは、ブラウザからのリクエストを受けてWebページや画像、CSSなどのファイルを返す役割を担います。身近な例では、ブログの本文やサイトの画像を配信する部分です。
主な役割
- 静的コンテンツの配信:HTMLや画像、CSSをそのまま送ります。例)トップページのHTMLを返す。
- リクエストの受付と判別:どのファイルを返すかを判断します。URLに対応するファイルを探します。
仕組み(簡単)
ブラウザがURLを送ると、Webサーバーは対応するファイルを探して返します。見つからなければ404を返し、内部エラーなら500を返します。高速化のため、キャッシュを使うことがよくあります。
代表的なソフトウェア
- Apache:設定が柔軟で歴史が長いです。
- nginx:軽量で高負荷に強い設計です。
運用のポイント
- HTTPSで暗号化する(TLS)。
- ログを定期的に確認する。アクセスが急増したらキャッシュや負荷分散で対応します。
- ファイルの権限とバックアップを忘れないでください。
よくある問題と対処
- 404:URLとファイル配置を確認します。
- 500:設定ミスや権限を見直します。
- 高負荷:キャッシュや静的ファイル配信専用の設定を検討します。
APサーバー(アプリケーションサーバー)
役割と概要
APサーバーは、動的なページや業務処理を作る背後の仕組みです。JavaやPHPなどのプログラムを実行して、ビジネスロジックを処理します。Webサーバーから受け取った要求を元にデータを取り出し、表示用の情報を作って返します。
どのように動くか(具体例)
例:ユーザーがログインすると、WebサーバーがリクエストをAPサーバーに渡します。APサーバーは認証処理を行い、必要ならDBに問い合わせて結果を組み立て、HTMLやJSONを返します。処理の途中でキャッシュや外部APIを使うこともあります。
代表的な製品
- Apache Tomcat:Javaのサーブレットを動かす軽量コンテナです。使い勝手が良く学習コストが低いです。
- WildFly(旧JBoss):エンタープライズ向けの機能が多く、トランザクション管理やメッセージングに強いです。
配置と連携
APサーバーは通常、WebサーバーとDBサーバーの間に置きます。負荷分散装置や複数台でスケールさせ、セッション管理は共有ストアや無状態設計で対応します。
運用上のポイント
メモリや接続数の管理、接続プール設定、タイムアウトの調整が重要です。ログと監視を整えて、処理時間やエラーを早めに検知します。セキュリティでは入力検証と認可の仕組みを必ず入れてください。
DBサーバー(データベースサーバー)
概要
DBサーバーはデータを保存し、検索・更新を行う専門のサーバーです。住所録や商品情報、注文履歴などのデータを効率よく管理します。身近な例では図書館の蔵書管理と同じで、本の所在や貸出状況を整理する役割を担います。
主な役割と機能
- データの永続保存:サーバーが障害で止まってもデータが残るように保存します。
- 検索と集計:大量のデータから必要な情報を素早く取り出せます。
- トランザクション管理:複数の処理をまとめて安全に実行します(例:注文から在庫引き当てまでを一連で処理)。
よく使われる製品
MySQLやPostgreSQLが代表例です。どちらも堅牢で無料版があり、小規模から大規模まで広く使われます。簡単なウェブサイトならMySQL、複雑な分析や拡張性を重視するならPostgreSQLが向きます。
運用のポイント
- バックアップを定期実行し、復元手順を確認します。
- 性能監視(遅いクエリの検出)を行い、インデックスや設計を見直します。
- アクセス制御で必要な権限だけ付与します。
注意点(初心者向け)
同じデータを複数の場所で更新すると矛盾が起きやすくなります。分かりやすくするために設計を単純に保ち、まずは定期バックアップと監視の体制を整えてください。
サーバーの連携と役割
全体の流れ
ユーザーがブラウザで操作すると、最初にWebサーバーがリクエストを受け取ります。必要なときはWebサーバーがAPサーバーに処理を依頼し、APサーバーはDBサーバーからデータを取得して結果を作成します。最後にWebサーバーを通してユーザーへ返します。
各サーバーの役割(具体例)
- Webサーバー:静的なページを返す、リクエストをAPへ振る。例)商品ページのHTMLを配信します。
- APサーバー:業務ロジックを実行する。例)カート計算や在庫チェックを行います。
- DBサーバー:データの保存と検索を担当。例)注文履歴や在庫数を保持します。
連携で気を付けるポイント
- 接続とタイムアウト:応答が遅いとユーザー体験が落ちます。適切なタイムアウトを設定します。
- データ整合性:複数処理が同時に走る場面では、トランザクションで整合性を保ちます。
- 認証と権限:APとDB間の通信も安全に行う必要があります。
- 負荷分散とスケーリング:アクセスが増えたらWebやAPを増やして対応します。
- ログと監視:どの段階で問題が起きたか追いやすくします。
実例(注文処理)
- ユーザーが注文を送信→Webサーバーが受ける
- WebがAPへ依頼→APが在庫をDBで確認
- DBが在庫を返す→APが注文を確定してDBに書き込む
- Webが結果をユーザーに表示
このように役割を分けると設計が分かりやすく運用もしやすくなります。












