はじめに
Webサイト設計は、誰のために・何の目的で・どんな情報や機能を・どう配置して見せるかをあらかじめ整理し、サイト全体の構造やページ構成を決める作業です。ユーザーが目的を達成できることと、事業の目的（問い合わせ、購入、認知など）を両立させる設計図づくりと考えてください。
主なポイント
- 対象ユーザー：誰が使うのか（例：買い物をする利用者、情報を探す利用者）
- 目的：ユーザーのゴールとビジネスのゴールを明確にする
- 情報と機能：掲載する内容と必要な操作（例：商品一覧、検索、問合せフォーム）
- 見せ方：情報の優先順位、ナビゲーション、画面の流れを決める
具体例
- ECサイト：商品が見つかりやすく、購入まで迷わせない導線を設けます
- クリニックサイト：診療案内と予約方法を分かりやすく掲載します
本書の進め方
次章以降で、基本の考え方、代表的な設計プロセス、設計で意識したいポイント、関連キーワードなどを具体例を交えて丁寧に解説します。初心者の方でも実践しやすい内容にします。
基本の考え方
目的とターゲット（ペルソナ）を明確にする
まず「このサイトで何をしてほしいか」を短い文章で書き出します。例：「資料を請求してもらう」「商品を購入してもらう」「会員登録してもらう」。次に対象ユーザー像を具体化します。年齢・職業・利用シーン・課題を1〜2人分のペルソナにまとめると設計がぶれません。
必要なコンテンツと機能を洗い出す・優先度をつける
目的に直結するコンテンツと、補助的な情報を分けます。たとえば購入が目的なら「商品詳細」「価格表」「購入ボタン」は必須、「口コミ」「Q&A」はあると良い物です。優先度は「必須／あったほうが良い／将来追加」などシンプルに分類します。MVP（最小実用製品）の視点で最小限を決めると開発も進めやすくなります。
導線（ナビゲーション）と情報の階層設計
ユーザーが迷わないように、目的までのクリック数を減らします。トップ→カテゴリ→詳細→アクションの流れを想定して、各ページのCTA（行動喚起）を明確に配置します。パンくずや検索、明快なラベルで現在地を示すと安心感が増します。情報は重要な順に上に置き、詳細は折りたたむなど段階的に見せます。
実践のコツ：試作と検証を繰り返す
ワイヤーフレームや簡単なプロトタイプを作り、想定ユーザーで試してもらいます。3〜5人のユーザーテストで大きな問題が見つかります。アクセス解析で実際の導線を確認し、優先度を見直してください。
チェックリスト（簡単）
- 目的は1〜2文で書けるか
- ペルソナは具体的か（年齢・場面）
- 必須コンテンツは揃っているか
- CTAは見つけやすいか
- 主要な流れが3クリック以内か
代表的な設計プロセス
以下は一般的なWebサイト設計の代表的なプロセスです。順を追って進めることで、完成までの見通しがつきやすくなります。
1. 要件定義
サイトの目的や達成したいKPI（例：購入数、問い合わせ数、会員登録数）を明確にします。ターゲット像は年齢・職業・課題などを具体的に描き、競合サイトや参考サイトを調べます。掲載すべきコンテンツ（商品情報、導入事例、FAQなど）を洗い出します。
2. 情報設計（IA）
必要なページ一覧を作り、カテゴリ分けと階層を決めてサイトマップを作成します。たとえば「サービス > 製品一覧 > 製品詳細」のように、ユーザーが辿る道を意識して構成します。項目名は分かりやすさを優先します。
3. 導線設計
代表的なユーザーの行動フローを描きます。新規訪問者が「トップ → 商品一覧 → 商品詳細 → 購入」へ進む流れや、情報収集型ユーザーが「ブログ → 導入事例 → 問い合わせ」へ進む流れを可視化します。重要なゴールに向けてCTA（行動を促すボタン）の配置を決めます。
4. ワイヤーフレーム作成
各ページで「何をどこに配置するか」をモノクロのレイアウト図で決めます。ヘッダー、メイン、サイド、フッターの役割を明確にし、見出しやCTAの優先度を示します。これにより開発側と認識を揃えやすくなります。
5. デザイン・実装
ワイヤーをもとにビジュアルデザインを作成し、コーディングで実装します。レスポンシブ対応や動作テスト、アクセシビリティの確認、解析タグの実装などを行い、公開前に動作と導線を検証します。公開後はアクセス解析で効果を測り、改善を繰り返します。
設計で意識したいポイント
クリック階層は浅くする
重要なページへはできるだけ短いステップで到達できるようにします。目安としては主要アクションを2クリック以内にする設計が望ましいです。例：トップ→カテゴリ→商品ではなく、トップ→商品一覧で直接見つけられる動線を用意します。
ナビゲーションは一貫させる
ヘッダーやメニューの位置とラベルを全ページで統一します。パンくずや現在位置表示を入れて、ユーザーが今どこにいるか迷わないようにします。例：選択中のメニューを強調表示して戻る操作を容易にします。
視線の流れを作る
見出し・画像・ボタンの配置で視線を誘導します。F字型やZ字型の視線を想定して、重要情報を視認性の高い場所に置きます。文字量は適切に区切り、強調は色や太字で行います。
ボタンと行動喚起（CTA）の配置
CTAはページ内で目立つ位置に置き、文言は短く具体的にします。ファーストビューに主要CTAを置くとコンバージョンが上がりやすいです。ボタンはタップしやすい大きさと余白を確保します。
モバイルでの配慮
指の届きやすい位置に重要操作を配置し、スクロールの手間を減らします。画像やテキストの読みやすさを優先し、読み込み速度にも配慮します。
アクセシビリティの基本
色のコントラスト、代替テキスト、フォントサイズを意識して、誰でも使いやすい設計を目指します。簡単なチェックリストを作り、実装前に確認すると安心です。
Webサイト設計と関連するキーワード
情報設計（IA）
情報設計はコンテンツを整理し、利用者が目的を達成しやすくする作業です。たとえば商品情報、レビュー、FAQをどの順で見せるか決めます。優先順位をつけることで重要な情報が見落とされにくくなります。カードソートなどで検証すると実務で役立ちます。
サイトマップ
サイトマップはページの構成図です。トップ→カテゴリ→詳細ページといったツリーで全体像を把握できます。開発前に関係者で共有すると、抜けや重複を早く見つけられます。SEOや内部リンク設計の指針にもなります。
ワイヤーフレーム／プロトタイプ
ワイヤーフレームはレイアウトの設計図、プロトタイプは動きを確認する試作品です。紙スケッチやFigmaのようなツールで作ります。早い段階で作ってユーザーや関係者に触ってもらうと、使い勝手の問題を減らせます。
UX設計／導線設計／ユーザーフロー
UX設計は使いやすさ全体を考える作業です。導線設計やユーザーフローは、利用者が目的（購入や問い合わせ）に至る経路を設計します。例として、初回訪問者が商品を見つけて購入するまでのステップを可視化し、離脱ポイントを対策します。
UIデザイン（レイアウト、ナビゲーション、ボタン配置など）
UIは見た目と操作の細部を決めます。レイアウトは視線の流れを意識し、ナビゲーションは一貫性を保ちます。CTAボタンは色や配置で目立たせ、モバイルでは指で操作しやすいサイズにします。具体例として、主要アクションを画面右下に固定する手法があります。
これらのキーワードは個別に重要ですが、互いに影響します。全体を見ながら調整すると、使いやすいサイトを作れます。
他に調べるとよいキーワード例
Webサイト設計を深めるときに役立つキーワードを分かりやすくまとめました。検索するときは「用途＋キーワード」の形で絞ると実務に直結する情報が見つかります。
- 情報設計（情報アーキテクチャ）: ページ構成やナビゲーションの基本。例: “情報設計 企業サイト サンプル”
- サイトマップ 作り方: 全体構成を視覚化する方法。ツール名で検索するとテンプレートが見つかります。
- ワイヤーフレーム Web制作: レイアウトや導線を設計する下書き。静的ワイヤーとプロトタイプ両方を探すと良いです。
- UXデザイン 基本: ユーザー視点での設計手法。ユーザーテストや導線改善の記事が役立ちます。
- ペルソナ 作成例: 代表的なユーザー像を作る方法。具体的な属性と行動パターンを探しましょう。
- カードソーティング: 情報の分類法。ユーザーがどうグループ化するかを知れます。
- コンテンツ監査（コンテンツインベントリ）: 既存ページの整理方法。不要ページの判定基準を調べてください。
- SEO基礎（構造化データ／メタデータ）: 検索で見つけてもらうための仕様。タイトルや説明文の書き方例を確認します。
- レスポンシブ設計／モバイル最適化: 各端末での見え方と触りやすさを考えるキーワードです。
- アクセシビリティ 基本: 色や操作性の配慮。法令と実装例を合わせて調べてください。
- ページ速度 最適化: 表示速度改善の手法。画像圧縮や遅延読み込みの実例を探すと役立ちます.
- CMS 比較（WordPress／Headless CMS）: 運用性に合ったシステム選びの参考検索です。
用途別の絞り込み例
- 企業サイト: “コーポレートサイト 情報設計 ブランディング”のようにブランドや採用など目的を加えます。
- BtoB: “BtoB 導線 記事設計 リード獲得”など意思決定者の導線を重視した検索をします。
- ECサイト: “EC カテゴリ設計 カート導線 レコメンド”など購入までの導線に注目します。
これらのキーワードを組み合わせて検索すると、設計の実務に即した情報が効率よく集められます。
