はじめに
この文書は「Webサイト 保守」に関心を持つ方へ向けた、実務に役立つやさしいガイドです。検索ユーザーの疑問や上位記事の要点を参考にし、公開後のサイトを安全かつ安定的に運用するための知識と具体的な作業を分かりやすくまとめました。
本書の目的
Webサイトの保守に必要な基本概念を整理し、実際に行う作業を具体例で示します。初めて保守を担当する方でも、何を優先すべきか判断できるようにします。
対象読者
- 個人でサイトを運営する方(ブログ・小規模ECなど)
- 企業の運用担当者や制作会社に依頼する前に知識を得たい方
- 制作後に起こりやすいトラブルを未然に防ぎたい方
本書で学べること
- 保守の基本的な考え方(例:定期的な点検、更新の流れ)
- 「運用」と「保守」の違い(役割の具体例)
- 日常的な保守作業の全体像(更新、バックアップ、監視など)
- ドメイン・サーバー管理やSSLなどの重要ポイント
読み方の提案
章ごとに独立して読めますが、まず本章の後に「保守とは何か?」を読むと全体像がつかめます。必要に応じて、実務に直結する章を参照してください。
Webサイト保守とは何か?基本概念と目的
定義
Webサイト保守とは、公開中のサイトを安全で安定した状態に保つ作業全般を指します。故障や古くなった状態を修復・更新して、当初の機能や見た目を維持します。
主な目的
- 安全性の確保:ハッキングやデータ漏えいを防ぐために、ソフトの更新や脆弱性対策を行います。例:CMSやプラグインのアップデート。
- 可用性の維持:サイトが止まらないように監視や定期バックアップを実施します。例:定期バックアップ、障害発生時の復旧。
- 情報の正確性と鮮度:古い情報を更新し、リンク切れを修正します。例:営業時間やキャンペーン情報の更新。
保守の性格(予防と対応)
保守は予防的作業(定期点検、更新)と対応的作業(障害対応、ログ調査)に分かれます。予防で問題を減らし、対応で被害を最小化します。
誰が行うか
サイト運営者、自社エンジニア、または保守業務を請け負う外部の業者が担います。役割分担を明確にするとスムーズに進みます。
なぜ重要か
定期的な保守は停止や情報漏えいを防ぎ、ユーザーの安心と企業の信頼を守ります。コスト面でも、緊急対応より計画的な保守が有利です。
「運用」と「保守」の違いとは?
概要
Webサイトには「運用」と「保守」という二つの働きがあります。どちらも重要ですが目的と作業内容が異なります。ここでは分かりやすく整理します。
運用とは
運用は成果を出すための活動です。具体例を挙げると:
– コンテンツ制作や更新(記事、商品情報)
– キャンペーンや広告の実施
– SNS連携やメール配信での集客
目的は訪問者を増やし、問い合わせや売上につなげることです。日々の改善や効果測定も含まれます。
保守とは
保守はサイトを安全に、正常に動かし続けることが目的です。主な作業例:
– サーバー監視・障害対応
– バックアップの定期実行
– CMSやプラグインの更新(CMS=記事を編集する仕組み)
– セキュリティ対応(不正アクセス対策や証明書更新)
保守は問題が起きないようにする、あるいは起きたときに迅速に復旧する役割です。
具体的な違い(例で比較)
- 表示が遅い → 保守がサーバー設定や負荷対策で対応
- 新しいキャンペーンページを出す → 運用が企画・作成・公開
多くの場合、運用の中に保守業務が含まれますが、専門性や優先度を明確にして役割分担すると効率が上がります。
役割分担の目安
- 日々の更新や効果改善は運用担当
- 安定稼働や緊急対応は保守担当
小規模なら兼任でも構いませんが、トラブル時の対応責任を明確にしてください。
Webサイト保守の主な作業内容【全体像】
概要
代表的な保守作業を分かりやすく並べます。日常的なチェックから障害対応まで幅広く、優先順位をつけて実施します。
ドメイン管理
ドメインの有効期限や登録情報を確認します。更新期限が近づいたら早めに更新手続きを行い、連絡先情報は常に正確にしておきます。
サーバー管理
サーバーの稼働状況やディスク容量を定期確認します。負荷や異常を検知したら設定調整やリスタートで対処します。
SSL証明書の管理
証明書の期限切れを防ぐために更新スケジュールを管理します。自動更新が使えない場合は手動で更新します。
CMS・プラグインのアップデート
ソフトウェアは最新に保ちます。まずステージング環境で動作確認を行い、本番へ反映します。
セキュリティ対策・監視
不正アクセスや改ざんを監視します。定期的なスキャンとログ確認で早期発見に努めます。
バックアップと復旧テスト
定期的にバックアップを取得し、復元テストを実施します。バックアップは別の場所へ保存します。
表示・動作チェック
主要ブラウザやスマホで表示を確認します。フォームや決済など重要な機能は定期的に動作確認します。
障害対応
障害発生時は原因を特定して迅速に対応します。復旧後は原因と対応を記録します。
軽微なコンテンツ更新
テキストや画像の小さな修正は短時間で対応します。変更履歴を残すと安心です。
リンク切れ・SEOチェック
リンク切れや404を定期的にチェックします。ページ速度や重要なメタ情報も確認します。
以上が主要な作業項目です。作業頻度はサイト規模や目的で調整します。
ドメイン・サーバーの保守管理
はじめに
ドメインはWebサイトの住所、サーバーは家そのものです。どちらも定期的な点検と管理が必要です。ここでは具体的な作業と注意点を分かりやすく紹介します。
ドメインの保守管理
- 有効期限管理:自動更新設定やリマインダーを使い、更新忘れでサイトやメールが止まらないようにします。
- 登録者情報(WHOIS)の更新:連絡先や組織名を最新に保ち、通知を確実に受け取れるようにします。
- ネームサーバー設定:サイト提供元の指定に合わせて正しく設定します。
- DNSレコード管理:A(IP)、MX(メール)、TXT(SPFなど)の設定を確認します。例:MXが誤るとメールが届かなくなります。
サーバーの保守管理
- 契約・更新管理:契約期間や支払い方法を確認します。
- 稼働状況の監視:応答監視やページ表示速度の監視を設定し、異常はすぐ通知します。
- OS・ミドルウェアのアップデート:セキュリティパッチはテスト後に適用します。重大な脆弱性は優先対応します。
- 容量・転送量の管理:ディスク残量や通信量を監視し、不要ファイルは定期削除します。
- エラーログ確認:ログを定期点検し、繰り返すエラーは原因を突き止めます。
- バックアップと復旧:自動バックアップを取り、復元手順を定期的に検証します。
運用のコツ(頻度の目安)
- ドメイン情報:月1回チェック
- DNS設定変更:夜間やアクセスが少ない時間帯に実施
- バックアップ:日次または用途に応じて週次
- OS更新:月1回+緊急パッチは随時
運用体制や連絡先を明確にし、作業手順を書面で残すと復旧が速くなります。
SSL証明書・セキュリティ関連の保守
なぜ重要か
SSL証明書はブラウザとサーバー間の通信を暗号化し、個人情報やログイン情報を守ります。証明書切れや設定不備はブラウザ警告や検索順位への影響、ユーザーの信頼低下を招きます。
証明書の管理(実務ポイント)
- 有効期限の把握:発行日と期限を一覧化し、自動更新の可否を確認します。例:Let’s Encryptは自動更新を使うと便利です。
- 種別選定:個人情報を扱う場合は組織認証(OV)や企業認証(EV)を検討します。簡易サイトならドメイン認証(DV)で十分です。
設定と確認作業
- 設置手順:CSR作成、秘密鍵の保管、証明書と中間証明書のインストールを確実に行います。
- 動作確認:ブラウザで警告が出ないか、混在コンテンツ(HTTP読み込み)がないか確認します。SSL Labs等でスコアをチェックします。
セキュリティ対策の具体例
- TLSバージョン制限:古いTLS1.0/1.1を無効化し、TLS1.2以上を有効にします。
- 強い暗号スイートを優先設定します。
- CMS・プラグインは定期的に更新し、既知の脆弱性をふさぎます。
- Webアプリファイアウォールやログ監視、IP制限、二段階認証を導入します。
監視と緊急対応
- 証明書期限を通知する仕組み(メールやツール)を用意します。
- 定期バックアップと復旧手順を文書化します。
- 異常検知時は迅速に証明書再発行、設定反映、ユーザーへの影響確認を行います。












