はじめに
本記事の目的
この章では、本記事の狙いと読み方を丁寧に説明します。Webサイト設計・制作で役立つ「サイトマップ案」の作り方と参考デザイン事例を、実務で使える形で整理して紹介します。初めてサイト設計をする方も、既に制作経験がある方も活用できる内容です。
誰に向けた記事か
- 個人でサイトを作る方
- 企画・ディレクションを担当する方
- デザイナーやフロントエンド担当者
専門用語をできるだけ減らし、具体例でわかりやすく説明します。
本記事で学べること
- サイトマップの種類と目的
- 代表的な構成パターン
- 作成手順と実際のデザイン例
- 使いやすいツールと注意点
読み方のアドバイス
章ごとにステップを踏んで理解すると効率が良いです。まず第2章で基礎を押さえ、第4章で実際に作成してみてください。実務で使えるテンプレートやヒントも随所に示します。
サイトマップとは?種類と役割
サイトマップの定義
サイトマップはWebサイト全体のページ構成や階層関係を視覚化した図やリストです。ページの位置や関係を一目で確認でき、設計や運用でよく使います。具体例としては、親ページと子ページの関係をツリーで示した図や、全ページをリスト化した一覧があります。
主な種類
- 構成図(設計者向け)
- サイト全体の設計図です。画面遷移や機能ごとのまとまりを示し、ワイヤーフレーム作成や要件定義で使います。
-
例:トップ > サービス > 料金 > お申し込み
-
HTMLサイトマップ(ユーザー向け)
- サイト内の主要ページを一覧で表示するページです。訪問者が目的のページを見つけやすくなります。
-
例:サイトのフッターに「サイトマップ」のリンクを置く
-
XMLサイトマップ(検索エンジン向け)
- 検索エンジンにページの存在や更新情報を伝えるためのファイルです。機械向けに最適化されています。
- 例:Google Search Consoleに送信するsitemap.xml
役割とメリット
- ユーザー:目的のページにたどり着きやすくなります。特に多数の情報があるサイトで有効です。
- 制作者:情報の抜けや重複を発見できます。設計確認や担当分担がスムーズになります。
- SEO:XMLサイトマップでクローラーに正しく届けば、インデックス促進に役立ちます。
使い分けのポイント
設計段階では構成図を優先し、公開時はHTMLサイトマップで利用者に配慮します。XMLサイトマップは更新時に忘れずに送信すると効果的です。各種サイトマップを連携させると運用が楽になります。
サイトマップ案の代表的なパターン
サイトマップ案には目的や規模に合わせていくつかの代表的なパターンがあります。ここでは使い分けのポイントと、作成時のコツをわかりやすく紹介します。
シンプル型(テキスト一覧)
- 特徴:ページ名をカテゴリーごとに文字で並べた一覧です。扱いやすく、早く作成できます。
- 長所:情報を素早く把握できます。小規模サイトや最初の骨子作りに向きます。
- 短所:視覚的な階層が分かりにくく、ページ数が増えると見づらくなります。
- コツ:見出しとインデントを揃え、重要なページを太字などで強調します。
階層構造視覚化型(ツリー型)
- 特徴:親子関係を線や箱でつないで表現します。サイト全体の構造が一目で分かります。
- 長所:ナビゲーション設計やユーザー導線の検討に適します。
- 短所:複雑になると縦横に広がり、紙面や画面での表示が難しくなります。
- コツ:深さを3階層程度に抑え、重要な経路を強調します。
色分け型(カテゴリー別カラー)
- 特徴:カテゴリーごとに色を割り当てて視認性を上げます。
- 長所:担当分けや優先度を直感的に伝えられます。
- 短所:色数が多いと逆に混乱することがあります。
- コツ:3〜5色に抑え、色の意味は凡例で必ず説明します。
縦2分割型(左右レイアウト)
- 特徴:左にサイト全体、右に詳細や補足を表示するレイアウトです。
- 長所:概要と詳細を同時に確認できます。要件定義時に便利です。
- 短所:情報量が多いと見切れやすくなります。
- コツ:右側は短い説明文やリンクのみとし、長文は避けます。
グラフィカル型(画像・アイコン活用)
- 特徴:アイコンや絵を使い視覚的に表現します。非専門家にも親しみやすいです。
- 長所:直感的でプレゼン資料に向きます。
- 短所:作成に時間がかかり、再編集が難しい場合があります。
- コツ:アイコンは統一感を持たせ、テキストで補足します。
説明付き型(ページ概要を添える)
- 特徴:各ページに目的や主要コンテンツを短く記載します。
- 長所:制作メンバー間の認識合わせが簡単になります。
- 短所:情報量が増え、全体把握がやや重くなります。
- コツ:1ページあたり1〜2行にまとめ、テンプレートを用意します。
各パターンは単独で使うほか、組み合わせて使うと効果的です。目的(社内共有、クライアント提案、制作指示など)に合わせて最適な形式を選んでください。
サイトマップ案作成のための基本手順
はじめに
サイトマップ案作成は、情報の整理と利用者導線の設計が目的です。以下の5つの手順で進めると分かりやすくなります。
ステップ1:必要なページの洗い出し
まず提供する情報や機能を書き出します。例:トップ、会社情報、サービス一覧、事例、料金、ブログ、お問い合わせなど。ユーザーの目的(購入、問い合わせ、情報収集)ごとに必要ページを想定すると抜けが少なくなります。
ステップ2:ページのカテゴリー別分類
似た役割のページをグループ化します。トップレベル(例:サービス、企業情報、サポート)とユーティリティ(お問い合わせ、利用規約)に分けると整理しやすいです。
ステップ3:階層構造の整備
各カテゴリーの下に何階層置くか決めます。目安は深さ2〜3階層。深すぎると辿りにくく、浅すぎると一覧が煩雑になります。ナビやパンくず、URL設計も合わせて検討してください。
ステップ4:デザイン性・分かりやすさの重視
ページ名は短く直感的にします。重要なページは目立たせ、CTAを明確に配置します。モバイル表示や読みやすさ、アクセシビリティも考慮しましょう。
ステップ5:全体の見直し・最適化
競合サイトやユーザー視点でチェックを行い、重複や不要なページを削除します。必要に応じてXMLサイトマップを作成し、運用しやすい管理方法を決めます。
最終チェックリスト
- 主要ユーザー行動に対応しているか
- 階層が深すぎないか
- ページ名は分かりやすいか
- モバイルやアクセシビリティを考慮しているか
- 管理・更新がしやすい構成か
これらの手順を順に進めれば、利用者に優しく運用しやすいサイトマップ案が作れます。
サイトマップ案の具体的デザイン事例
企業サイト
- 典型はシンプルなツリー型です。例:
- ホーム
- 会社情報(会社概要/沿革)
- サービス(サービスA/サービスB)
- ニュース
- 採用
- お問い合わせ
- ポイント:深さは原則3層以内に抑え、採用や問い合わせへはトップから短い動線を作ります。
大学・教育機関
- 階層を可視化し、学部・学科・コースを色分けします。例:学部ごとに色を割り当て、カリキュラムや入試情報を同じグループにまとめます。
- ポイント:検索性を高めるため学内の利用者向けと外部向けを分けて表示します。
ECサイト
- 商品カテゴリ別や案内型が多いです。例:
- カテゴリ(メンズ/レディース)
- ブランド
- 特集・セール
- カート・購入フロー
- ポイント:フィルターや購入導線を優先して、情報ページは別セクションに集約します。
自治体・公共施設
- 利用目的別(子育て・税金・暮らし)や色分け型が有効です。例:暮らしの手続き/観光情報/施設予約
- ポイント:利用者の行動(手続きの開始→必要書類→窓口案内)を意識したフロー化を行います。
デザイン上の共通注意点
- 色分け・アイコンで視認性を上げる。
- スマホ表示を想定し、横幅の広いツリーは分割する。
- 重要ページはトップから2クリック以内に収める。
以上の事例を参考に、サイトの目的とユーザーを基準にデザインを選んでください。
サイトマップ案作成に役立つツール
概要
無料・有料を含め、目的に合わせたツール選びが重要です。直感的に構成を作るツールと、SEO観点で補助するツールを組み合わせると効率が上がります。
ビジュアル系(ドラッグ&ドロップ)
Miro、Whimsical、draw.io、Lucidchartなどが代表例です。要素をドラッグ&ドロップで並べられ、テンプレートや共同編集機能を使って短時間で構成図を作成できます。PNGやPDFで共有しやすい点も便利です。
サイトマップ専用・自動生成ツール
SlickplanやDynoMapperのように階層管理やXML出力に対応するツールは、実際のサイト構成へ落とし込むときに役立ちます。既存サイトのスキャン機能を持つものもあります。
マインドマップ・設計ツール
XMindやMindMeisterは初期アイデア整理に向きます。ページの役割や情報のつながりを視覚化し、後でビジュアル系に移しやすくします。
キーワードマップ・SEOツール
Ahrefs、SEMrush、Googleキーワードプランナーなどでキーワードを抽出し、意図ごとにクラスタリングしてページに割り当てます。キーワードマップツールはSEO観点のページ設計を支援します。
選び方のポイント
- 共同編集やテンプレートの有無
- エクスポート形式(XML/CSV/PDF)
- 学習コストと料金
- CMSや他ツールとの連携
簡単なワークフロー例
- キーワード抽出→2. マインドマップで分類→3. ビジュアルツールで階層化→4. 専用ツールで出力・共有
注意点
ツールごとに強みが違います。目的に合った組み合わせを選び、設計と実装の間で情報が抜けないように確認を行ってください。
サイトマップ案設計のコツ・注意点
ユーザーの目的を最優先に設計する
ユーザーが何を達成したいかを明確にします。例:商品を買う、問い合わせをする、情報を得る。主要な行動が2〜3クリックで完了する構造を目指してください。
主要ページを優先して簡潔に載せる
全ページを載せる必要はありません。トップ、カテゴリ、代表的な商品・サービス、問い合わせ、会社情報、FAQ、ブログなど主要ページを優先します。例として「トップ→カテゴリ→商品詳細」の流れを必ず示します。
階層とナビゲーションは分かりやすく
グローバルナビ、パンくず、フッターの役割を決めます。階層は深くし過ぎず、3層以内に収めるとユーザーが迷いにくくなります。
将来の拡張を見越した設計
カテゴリ追加や特集ページを想定して余裕を持たせます。URLとカテゴリ命名は汎用的にし、CMSでの管理がしやすい設計にします。
競合の良い点を取り入れる
競合サイトを参考にし、使いやすい要素を取り入れます。ただしそのままコピーせず、自サイトのユーザーに合うか検討してください。
テストと運用で改善する
ワイヤーやプロトタイプで動線を確認し、実際のユーザーテストやアクセス解析で改善を続けます。更新ルールを決めて古いページが放置されないようにします。
よくある注意点
重複ページを増やさない、重要ページを深い階層に埋めない、専門用語を並べすぎないことに注意してください。ユーザーが迷わず目的に到達できることを最優先にしてください。
第8章: まとめ
本書で扱ったサイトマップ案作成の要点を、読みやすく振り返ります。
-
サイトマップ案はサイト設計の最初の一歩です。目的を明確にし、想定するユーザーを軸に考えることで方向性が定まります。
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規模や目的に応じて、シンプルな階層型、ブログ型、EC型など適切なパターンを選びます。具体例を参考にするとイメージが湧きやすいです。
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作成手順は、目標設定→コンテンツ棚卸→分類・グルーピング→ナビゲーション設計→プロトタイプの順で進めます。早めに可視化して関係者と共有すると齟齬(そご)を防げます。
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デザイン事例やツールを活用して効率化します。ツールはドラフト作成や版管理、可視化に役立ちます。
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設計時はユーザー視点を最優先にし、導線の無駄や重複を減らします。公開後も分析やユーザーテストを繰り返し、改善を続けてください。
最後に、完璧を目指しすぎず、目的に沿った使いやすさを重視して案を作ることが重要です。小さな改善を積み重ねることで、より良いサイトに近づきます。












