はじめに
本記事の目的
本調査は「cdn 作り方」に関する情報をわかりやすくまとめたものです。CDNの基本や導入手順、設定時の注意点、サブドメインだけに適用する方法、トラブル対策、主要サービスの選び方まで、初心者でも実践できるように解説します。
対象読者
ウェブサイト運営者、開発者、担当者の方。専門知識が少なくても理解できるよう、専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明します。
本記事で学べること
- CDNの役割とメリット(例:画像や動画の配信を速くする)
- 導入の流れ(DNSやSSLの扱いを含む)
- 設定時の注意点とよくある失敗例
- サブドメインのみに適用する方法と注意事項
- 問題発生時の対策とサービス選定のポイント
読み方のポイント
各章は順番に読むと理解が深まります。とりあえず導入方法だけ知りたい場合は第4章へ、設定の細かい注意は第5章へ進んでください。
CDNとは何か?
概要
CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)は、ウェブの画像や動画、HTMLなどを速く安定して届ける仕組みです。中央のサーバー(オリジン)だけで配信せず、世界中に置いた複数のキャッシュサーバーからユーザーに近い場所で渡します。これにより表示速度が上がり、アクセス集中時の負荷も分散できます。
主要な要素
- DNS(名前解決):ユーザーの要求を近いキャッシュサーバーに誘導します。簡単に言うと住所案内の役割です。
- オリジンサーバー:元のデータを保管するサーバーです。更新や管理はここで行います。
- キャッシュサーバー:コピーを一時保管して即座に配信します。頻繁に使うものほど効果が大きいです。
どんな場合に効果があるか
- 画像やCSS、JavaScriptなどの静的ファイルの配信
- 動画や大きなファイルのストリーミング
- 世界中のユーザーに高速に届けたいとき
注意点(簡単に)
キャッシュが残ると更新が反映されにくくなることがあります。必要に応じてキャッシュの期限設定や削除(パージ)を行います。
例え話
全国にあるコンビニが商品を近くで渡すように、CDNはデータを近くのサーバーから渡して配達時間を短くします。
CDNの配信仕組み
仕組みの全体像
ユーザーがウェブページを開くと、まずDNSがリクエスト先を決めます。DNSは近いCDNの配信点(PoP)を指し示し、ユーザーのリクエストは最寄りのキャッシュサーバーへ送られます。
キャッシュの役割と流れ
キャッシュサーバーは、画像やCSS、JavaScriptなどのコピーを保持します。リクエスト時に目的のコンテンツがあれば「キャッシュヒット」となり、すぐに配信します。ない場合は「キャッシュミス」となり、オリジンサーバーから取り寄せてユーザーへ返し、同時にキャッシュにも保存します(次回は速く配信できます)。
具体例で理解する
たとえば東京のユーザーがロンドンにあるサイトにアクセスすると、DNSは東京近くのPoPを選びます。画像がPoPにあれば東京から配信され、読み込みが速く感じます。
動的コンテンツと静的コンテンツ
静的ファイルは長めの保存期間(TTL)を設定しやすく、効果が大きいです。動的なページは頻繁に変わるため、キャッシュを短くしたり、CDNの機能で一部だけ除外したりします。
HTTPSとキャッシュ制御
HTTPSでもCDNは中継します。ヘッダー(Cache-ControlやExpires)で保存期間を制御します。必要なら手動でキャッシュ削除(パージ)を行い、即時反映します。
効果
ユーザーに近い場所から配信されるため、通信距離が短くなり読み込み速度が上がります。結果として、閲覧体験の向上とサーバー負荷の軽減につながります。
CDN導入の流れ
はじめに
CDN導入は段階を追って進めると安全です。ここでは実務でよく使う手順を、具体例を交えて分かりやすく説明します。
1. CDNサービスの選択
まず目的に合うサービスを選びます。例:
– Cloudflare(簡単な設定で広く使われます)
– Fastly(高速で細かい制御が可能です)
– QUIC.cloud(WordPress向け機能が豊富)
用途(静的ファイル中心か、動的配信か)や予算で決めます。
2. アカウント作成とサイト登録
サービスでアカウントを作成し、配信したいサイトを登録します。多くはドメイン名の入力と簡単なスキャンで初期設定が済みます。
3. DNS設定の変更(最も重要)
DNSの向け先を変更します。主に2つの方法があります:
– CNAMEやAレコードでCDNの指定に向ける(例:www.example.com → CDNのホスト名)
– ネームサーバーをCDNに切り替える(Cloudflare方式)
誤設定は表示障害につながるので、TTLを短めにして段階的に切り替えると安全です。
4. SSLとオリジン設定
HTTPSを使うための証明書設定を行います。多くのCDNは自動で証明書を発行しますが、独自証明書を使う場合はオリジンサーバー側も設定が必要です。オリジンのIPやポートも確認します。
5. キャッシュと動作確認
キャッシュの基本ルールを設定します(例:画像は長め、HTMLは短め)。設定後、各ページを表示してステータスコードやヘッダー(Cache-Controlなど)を確認します。問題があればキャッシュを一時的に無効にして検証します。
6. 切り戻しと監視
万一に備え、元のDNS設定をすぐ戻せるように準備します。導入後はログやレスポンスタイムをしばらく監視し、想定外のエラーがないか確認します。
CDN設定時の注意事項
SSL/TLS(HTTPS)の確認
必ずSSL証明書を確認してください。CDN導入で証明書の再配置や再発行が必要になる場合があります。たとえばオリジンで自己署名証明書を使っていると、CDN側で信頼されず接続が切れることがあります。すべてのリソースがHTTPSで配信されるように設定し、証明書の有効期限も確認してください。
混在コンテンツの対策
ページ内にHTTPで読み込む画像やフォントがあると、ブラウザがブロックします。画像やCSS、JavaScriptは可能な限り相対パスかHTTPSで指定してください。多くのCDNは自動でHTTP→HTTPSにリダイレクトしたり、混在コンテンツを修正する機能を提供します。設定を有効化したら、実際のページ表示で問題がないか確認してください。
DNS設定とメールの注意
CDN導入でCNAMEやAレコードを変更する場合、メール用のMXやSPF、DKIMレコードを消さないように注意してください。これらを移し忘れるとメールの送受信に支障が出ます。DNS変更後は伝播を待ってから動作確認を行ってください。
キャッシュと更新の扱い
静的ファイルはCDNでキャッシュされます。更新が反映されない場合はキャッシュの無効化(パージ)やバージョン付きファイル名の採用を検討してください。重要なAPIやユーザー固有のデータはキャッシュしないように設定します。
セキュリティとアクセス制御
アクセス制限やWAF(Webアプリケーションファイアウォール)設定を確認してください。IP制限や鍵付きURLの運用を検討し、不正アクセスを防ぎます。
テストと段階導入
まずステージング環境やサブドメインで動作検証を行い、本番へ段階的に切り替えてください。ログや監視を有効にし、問題発生時にすぐ元に戻せる手順を準備しておきます。
サブドメインのみにCDNを適用する方法
概要
Cloudflareのようなサービスは通常ルートドメインを登録しますが、DNS設定を工夫すれば特定のサブドメインだけをCDN経由にできます。ここでは実際のドメイン例(example.com と app.example.com)で手順を示します。
前提条件
- ドメインのネームサーバーをCloudflareに変更できること
- origin(元のサーバー)にアクセスできること
手順(例)
- ルートドメイン(example.com)をCloudflareに追加してネームサーバーを指定のものに変更します。Cloudflareが既存のDNSレコードを自動で取得します。
- DNSでサブドメイン(app.example.com)を確認または新規追加します。タイプは通常CNAME(外部サービス)かA(IP直指定)です。
- app.example.com のプロキシ(オレンジの雲)を有効にします。これでCDN経由になります。
- ルートや他のサブドメインはプロキシをオフ(灰色の雲、DNSのみ)に設定します。メールやAPIはDNSのみにしておきます。
注意点
- MXやTXT(メール用)は必ずプロキシをオフにしてください。メール配信に支障が出ます。
- SSL証明書はサブドメインをカバーしているか確認してください。Cloudflareのフレキシブル/フル設定を選べますが、推奨設定はoriginで有効な証明書がある「フル」です。
- origin IPは意図せず公開しないよう、他レコードを直接公開しないでください。必要ならファイアウォールでアクセス制限します。
- TTLやキャッシュは設定に応じて調整してください。CDNで更新が反映されにくければキャッシュをクリアします。
よくある質問
- 「ルートをCDNにしないとサブドメインは使えない?」→ 使えます。ルートをCloudflareに追加する必要はありますが、プロキシはサブドメインだけ有効化できます。
実際の操作は管理画面でのクリック中心です。手順を落ち着いて確認しながら進めてください。
CDN設定時の問題と対策
よく起きる問題
- 更新が反映されない:ページや画像を修正しても古い内容が表示されます。リアルタイム性が必要な箇所で特に起きます。
- 認証やクッキーで動かない:ログイン情報やセッションを使うページが正しく表示されません。
- SSL・混在コンテンツのエラー:HTTPSページで一部のリソースがブロックされます。
原因と対策(具体例付き)
- キャッシュの有効期限が長い
- 対策:更新頻度の高いファイルは短いTTLに設定、またはCache-Control: no-cacheを使用します。例)ニュース一覧は数分、画像は数時間。
- キャッシュを落とさないで更新した
- 対策:デプロイ時にCDNのパージ(キャッシュ削除)APIを呼ぶか、ファイル名にバージョン番号を付けます(app.js?v=123やapp.123.js)。
- 動的ページをそのままキャッシュしている
- 対策:ユーザーごとに変わるページはCDNでバイパスします。パスやクッキーで除外ルールを設定してください。
- クッキーや認証ヘッダでキャッシュが効かない
- 対策:キャッシュ対象のリソースから不要なヘッダを除外するか、ヘッダ別のキャッシュキーを作ります。
- HTTPSやCORSの問題
- 対策:証明書を正しく設定し、CORSヘッダをCDN側で返すようにします。フォントや画像で起きやすいです。
実務的チェックリスト(導入時)
- 更新頻度に応じてTTLを設計する。
- 動的コンテンツは除外ルールを作る。
- デプロイ時にパージやバージョン管理を行う。
- クッキー/ヘッダの取り扱いを明確にする。
- SSLとCORSを確認する。
- 本番前にステージングで動作確認をする。
初心者向けの簡単な方法
プラグインや管理画面からキャッシュクリア、除外ルール、パージ設定を使うと簡単です。まずは小さな範囲で試し、挙動を確認してから本番へ反映してください。
CDNサービスの選択ポイント
比較するときの基本ポイント
- 配信速度:国内向けか海外向けかで重視する拠点が変わります。例えば海外ユーザーが多ければグローバルに広いネットワークを持つサービスを選びます。
- 料金体系:無料枠や従量課金、固定費などを確認します。トラフィックが増えたときのコストをシミュレーションしてください。
- セキュリティ機能:DDoS対策やWAF(不正な攻撃の防御)があるか確認します。簡単に有効化できるかも重要です。
- 設定のしやすさ:DNSの切り替えやSSL設定が分かりやすいかをチェックします。初心者には管理画面が見やすいサービスが向きます。
Cloudflareの特徴
- 高速化と海外配信に強みがあり、大規模なネットワークを活用して応答時間を短くします。
- セキュリティ機能が充実しており、ワンクリックで有効化できる項目が多いです。
- 無料プランから使いやすく、設定ガイドや日本語ドキュメントも整っています。結果として導入のハードルが低く、初心者に向きます。
QUIC.cloudの特徴
- 基本的に無料で利用を始められます。サイトの規模やアクセス数が増えると段階的に料金が発生します。
- WordPressと連携しているケースが多く、キャッシュの最適化や画像配信で効果を感じやすいです。
- 小規模サイトやコストを抑えたい方に適しています。拡張性を確認しておけば将来も安心です。
選び方の実務アドバイス
- 小〜中規模でWordPress中心ならQUIC.cloudを試して費用対効果を見ます。
- 海外ユーザーが多い、大量トラフィックや高いセキュリティを求める場合はCloudflareを検討します。
- サービスは相性があります。まず無料枠やトライアルで実際の改善を計測してください。
導入前に必ず確認すること
- 現在のアクセス分布(国内/海外)と帯域の見積もり
- SSLやキャッシュの挙動がサイトに与える影響(ログインや管理画面)
- 障害時のサポート体制と復旧手順
これらの観点を比べると、ご自分のサイトに合ったCDNを選びやすくなります。












