はじめに
このドキュメントは、Webパフォーマンス測定に関する調査結果をわかりやすくまとめたものです。WebサイトやWebアプリケーションの表示速度や応答性を適切に測定し、改善につなげることを目的としています。
目的
- ユーザー体験を向上させるために、表示速度や操作感を数値で把握します。
- SEOやコンバージョン率に与える影響を理解し、優先順位を付けて改善します。
対象読者
- サイト運営者、開発者、デザイナー、マーケターなど、Webの品質を高めたい方全般です。
本書の使い方
- 第2章以降で測定の重要性、主要ツール、評価指標、改善のポイントなどを順に解説します。
- 実際の改善作業では、まず現状の測定を行い、問題点を特定してから対策を試してください。
注意点
- 測定結果は環境によって変化します。複数のツールや実機で確認することをおすすめします。
- 継続的に測定・改善することで、確実にサイトの品質を高められます。
Webパフォーマンス測定の重要性
なぜ測定が必要か
Webサイトの表示速度や操作の滑らかさは、訪問者の体験に直結します。表示に時間がかかると離脱が増え、購入や問い合わせといった目的達成が減ります。したがって、現状を数値で把握して改善点を見つける必要があります。
ユーザー行動とビジネスへの影響
遅いページは直帰率を上げ、滞在時間やページ閲覧数を下げます。結果としてコンバージョンが減り、売上や広告収益に悪影響を与えます。モバイル利用が多い場合は特に影響が大きくなります。
検索順位との関係
検索エンジンはユーザー体験を重視します。表示速度や操作性が悪いサイトは順位で不利になります。速度改善はSEO対策の一部と考えてください。
測定のポイント(実務的な視点)
初めに目標となる数値を決め、定期的に測定します。実際の利用環境を反映する『実測(RUM)』と、再現性のある『ラボ測定』を組み合わせると効果的です。小さな改善を積み重ねて継続的に評価しましょう。
主要な測定ツールと使い方
Google PageSpeed Insights
使い方は簡単で、調べたいURLを入力して「分析」を押すだけです。デスクトップとモバイル両方を測定し、Core Web Vitalsを含む複数の指標で点数を出します。提案には「画像を圧縮する」「リソースを遅延読み込みする」「不要なスクリプトを削除する」などがあり、具体例も併記されます。まずは指摘項目を優先度順に実施すると効果が分かりやすいです。複数回実行して平均をとることをおすすめします。
GTmetrix
より詳しくボトルネックを見つけたいときに向きます。URLを入力すると、リソースの読み込み順序やサイズ、リクエスト数をWaterfallチャートで可視化します。チャートを見れば、どのファイルが長く待たされているか、どのリクエストが重いかが一目で分かります。実務では「多数の小さなファイルをまとめる」「遅延読み込みを適用する」「キャッシュの有効化」を検討します。場所や接続速度を変えて計測できるので、実際のユーザー環境に近い設定で測ると有益です。
Chrome DevTools(Lighthouse)
ブラウザ上で手軽に計測できます。開き方はF12またはページ上で右クリック→検証、その後「Lighthouse」または「Performance」タブを選びます。Lighthouseはスコアと改善提案を表示し、Performanceタブは詳細なプロファイル(タイムライン、フレーム単位の描画、ネットワークの遅延)を取得します。NetworkやCPUのスロットル(制限)を設定してモバイル環境を模擬できます。開発中に繰り返し測ることで、どの変更が改善につながるかを確認しやすくなります。
評価される主な指標
LCP(Largest Contentful Paint)
LCPはページの主要な大きな要素(見出しやメイン画像など)が表示されるまでの時間を測ります。目安は2.5秒以下が良好とされます。改善策は画像の圧縮や遅延読み込み、重要なCSSの早期読み込みなどです。
FID(First Input Delay)
FIDはユーザーが最初に操作したとき(タップやクリック)からブラウザがその操作に反応するまでの遅延です。100ms未満が望ましいです。主な対策は長時間実行するスクリプトの分割やWebワーカーの活用です。
CLS(Cumulative Layout Shift)
CLSは表示中に要素が不意に移動する量を数値化します。視覚的なズレが少ないほど良く、0.1未満が目安です。画像サイズを指定したりフォントの読み込みを工夫して対策します。
FCP(First Contentful Paint)
FCPはページで最初のテキストや画像が描画されるまでの時間です。早いほどユーザーに安心感を与えます。重要なリソースを優先的に読み込むと改善します。
INP(Interaction to Next Paint)
INPはページ全体の応答性を評価する新しい指標で、ユーザー操作から次の描画までの時間を総合します。短いほど良く、200ms程度を目安に改善を検討します。多くの短い遅延を減らすことが有効です。
TTFB(Time to First Byte)
TTFBはサーバーが最初のバイトを返すまでの時間です。サーバー応答やCDNの活用、キャッシュの最適化で短縮できます。200ms前後を目指すと良い結果に繋がります。
スコアの目安と改善のポイント
スコアの目安
- 90〜100点: 優れたパフォーマンスです。表示や操作が速く、ユーザー満足度も高い状態です。
- 50〜89点: 平均的です。大きな問題はないものの、改善でより快適になります。
- 0〜49点: 改善が必要です。読み込み遅延や操作のもたつきが発生しやすい状態です。
優先度の判断方法
まずユーザーに影響する箇所を優先します。例えばトップページや購入フローの遅さは最優先です。次に改善の効果と手間を比べ、短時間で効果が出る対策から取り組んでください。
具体的な改善ポイント
- 画像の最適化: 適切なサイズにリサイズし、必要なら軽いフォーマットに変換します。例: 大きな写真は表示サイズに合わせる。
- JavaScript/CSSの圧縮と分割: 不要なコードを減らし、遅延読み込みを使います。重要な処理は先に読み込みます。
- キャッシュの活用: ブラウザキャッシュを設定して再訪時の表示を速くします。
- サードパーティスクリプトの見直し: 外部のウィジェットや広告が遅ければ遅延や非同期化を検討します。
改善の進め方
ツールの提案を一覧にして、影響度と作業量で優先順位を付けます。小さな改善を積み重ねて測定し、効果を確認しながら次を進めます。定期的に再測定して維持することが大切です。
その他の測定方法とツール
Chrome DevTools(パフォーマンスパネル)
開発者ツールの「Performance」パネルで、ページの読み込みと操作中のCPUやメモリ、ネットワークの詳細を記録できます。実際の操作を録画してフレームごとの処理時間を確認し、どのスクリプトや描画が遅延を引き起こすかを特定します。例:スマホの遅さを再現するにはデバイスエミュレーションとネットワーク制限を使います。
Web Vitals拡張機能
このブラウザ拡張はLCPやINP、CLSなど主要指標をリアルタイムで表示します。ページを見ながら値が変わる様子を観察でき、どの操作でスコアが悪化するか直感的に把握できます。
Googleアナリティクス(傾向把握)
個々のユーザーの傾向や時間経過での変化を掴めます。たとえば特定の国やブラウザでレスポンスが悪い場合を見つけ、優先的に改善できます。サンプリングやカスタムレポートで重要ページを継続的に監視します。
その他の方法と使い分け
- WebPageTest:詳細なネットワークとレンダリングの解析に向きます。多様な回線や地域での合成テストに便利です。
- RUM(実ユーザー計測)/CrUX:実際のユーザー環境での体感を把握します。
実務では、合成テスト(DevTools/WebPageTest)で原因を突き止め、RUMやAnalyticsで改善効果と傾向を確認する流れが有効です。テストは主要ページとモバイルを優先し、定期的に記録してください。
まとめ
要点の整理
Webパフォーマンス測定は、ツールで現状を把握し、指標に基づいて課題を特定し、具体的な改善を行うというサイクルが基本です。表示速度はSEOや利用者の満足度、成約率に直結しますので優先的に取り組みます。
現状把握のコツ
ラボ測定(開発環境の測定)と実ユーザー測定(実際の訪問者データ)の両方を使います。例えば、ラボで改善案を試し、実ユーザーのデータで効果を確認します。
課題の見つけ方と優先順位
まずは主要指標(表示に時間がかかる箇所)を見つけます。画像が大きい、外部スクリプトが遅い、レンダリングを阻害するCSSがある、といった具体例で優先順位をつけます。
具体的な改善例
画像の圧縮や遅延読み込み、不要なスクリプトの削除、キャッシュ設定の改善などを行います。変更は一度に多く行わず、効果を段階的に確認します。ここでA/Bテストや再測定を実施します。
継続運用のポイント
自動計測を設定して定期的に確認します。KPIを決め、改善履歴を残してチームで共有すると効果が続きます。小さな改善を積み重ねることが、最終的に大きな成果につながります。
表示速度は短期的な見た目だけでなく、長期の成果にも影響します。まずは測定から始め、少しずつ改善を続けてください。
Webパフォーマンス測定の基礎知識
何を測るのか
Webパフォーマンス測定は、サイトやアプリの「表示速度」「操作の速さ」「表示の安定性」を数値で把握することです。例えば、ページが見えるまでの時間や、ボタンを押して反応が返る時間、画面が飛んだり崩れたりしないかを測ります。
なぜ大事か
表示が遅いと離脱が増え、コンバージョン(申し込みや購入)が下がります。検索結果での評価にも影響します。ユーザー満足度と運営成果に直結するため、定期的に測ると効果的です。
測るポイント(具体例)
- ページが最初に見えるまで(例:画像やテキストが表示)
- 操作に対する反応時間(例:ボタンを押してから新しい画面が開くまで)
- レイアウトの安定性(例:読み込み中にボタン位置が変わらないか)
測定の環境と注意点
実際のユーザー環境(スマホの遅い回線)と検証環境(高速PC)で結果が異なります。条件を揃えて比較することが重要です。キャッシュや広告の有無も結果に影響します。
まず始める手順
1) 目的を決める(読み込み改善、操作性向上など)
2) 測定ツールを1つ選ぶ
3) 定期的に測定して数値を記録
4) 問題点を改善して再測定
日常的に小さな改善を積み重ねることで、着実にユーザー体験は良くなります。
主要な測定ツールとその特徴
はじめに
主要な測定ツールは目的に合わせて使い分けると効果的です。ここでは代表的な3つのツールと、使う場面の目安を分かりやすく説明します。
PageSpeed Insights(Google公式)
- 特長:URLを入力するだけでモバイル・デスクトップ両方を評価します。Core Web Vitalsを中心に6つの主要指標でスコア化します。
- 利点:画像最適化やコード圧縮、キャッシュ設定など具体的な改善提案を示します。初心者でも実行しやすい指示が出ます。
- 例:LCP(表示速度)、CLS(レイアウト安定性)などを数値で確認できます。
GTmetrix
- 特長:より詳しい分析とWaterfallチャートで読み込み順や時間を可視化します。
- 利点:どのリソースがボトルネックか特定しやすく、改善の優先順位を付けやすいです。テスト地点やブラウザ選択もできます。
- 例:特定の画像や外部スクリプトが遅延の原因と判明することが多いです。
Chrome DevTools(Lighthouse)
- 特長:開発者向けの高度なツールで、パフォーマンスプロファイルを取得します。
- 利点:JavaScriptの実行時間やレンダリングブロックの原因を深掘りできます。実際の開発作業に直結する情報が得られます。
- 例:フレームごとの処理時間や、どの関数がCPUを多く使っているかを確認できます。
選び方の目安
- 簡単な健診:PageSpeed Insights
- ボトルネックの特定:GTmetrix
- 深い解析と修正:Chrome DevTools
目的に応じて使い分けることで、効率よく改善できます。
評価指標の詳細とSEOへの影響
LCP(Largest Contentful Paint)
LCPはメインのコンテンツが表示されるまでの時間を測ります。目安は2.5秒以内です。遅くなる原因は大きな画像、重いフォント、サーバ応答の遅れなどです。対策は画像の最適化、遅延読み込み、サーバ改善、CSSの最適化などです。例:大きなヒーロー画像はWebPに変換しサイズを指定します。
FID(First Input Delay)
FIDはユーザーが最初に操作したときの応答遅延で、100ms以内が推奨です。主な原因は長時間実行するJavaScriptです。解決策はスクリプトの分割、Web Workerの利用、イベントハンドラを軽くすることです。
CLS(Cumulative Layout Shift)
CLSは読み込み中のレイアウトずれを合計した値で、0.1以下が望ましいです。原因はサイズ指定のない画像や動的に挿入される広告です。対処法は画像や動画に幅・高さを指定し、広告枠を予約することです。
補助指標:FCP、INP、TTFB
FCPは最初のコンテンツ描画、INPは総合的な応答性、TTFBはサーバ初期応答時間です。これらも併せて見れば改善の優先順位が立てやすくなります。
SEOへの影響
GoogleはCore Web Vitals(LCP・FID/INP・CLS)をランキング要素に利用しますが、コンテンツの関連性が最も重要です。とはいえユーザー体験が向上すると滞在時間やクリック率が改善し、間接的にSEOに良い影響を与えます。優先順位はまずLCPと応答性(FID/INP)、次にCLSを改善するのが現実的です。
スコアの解釈と改善の指針
スコアの目安
PageSpeed Insightsのスコアは0〜100で示されます。90点以上は優良、50〜89点は平均、49点以下は改善が必要です。スコアはあくまで指標なので、低ければまず主要な改善案から着手してください。
優先順位のつけ方
- ユーザー体験に直結する項目を優先します(表示速度、初期表示までの時間)。
- 検出しやすく、効果が大きいものから手をつけます。例:画像最適化や遅延読み込みはすぐ効果が出ます。
- サーバーやインフラに関わる改善は一度に大きな変化をもたらしますが、手続きに時間がかかることがあります。
具体的な改善策(優先順)
- 画像最適化:不要に大きい画像を圧縮し、可能ならWebPに変換します。遅延読み込み(lazyload)を導入すると初期表示が早くなります。
- コードの軽量化:HTML/CSS/JSをミニファイし、重要でないスクリプトは遅延(defer)や非同期(async)で読み込みます。
- キャッシュの活用:ブラウザキャッシュの有効期限を設定し、静的資産にキャッシュヘッダを付けます。CDNを導入すると配信が速くなります。
- サードパーティスクリプトの見直し:不要な外部ウィジェットを削除、重いタグは遅延読み込みにします。
- サーバーとネットワーク:Gzip/Brotli圧縮、適切なTLS設定、レスポンスタイム短縮のためのサーバーチューニングやホスティング見直しを行います。
変更後の確認方法
改善を行ったら、PageSpeed InsightsやLighthouseで再測定してください。実際のユーザー環境を知るために、ブラウザの開発ツールでネットワークや読み込み順を確認し、可能なら実際のユーザー指標(例:ユーザーニャーマトリクス)を観察します。
以上を順に実施すると、スコアとユーザー体験の両方を改善できます。
その他の計測方法とツール
Chrome DevTools(パフォーマンスパネル)
Chrome DevToolsのパフォーマンスパネルは、CPU・メモリ・ネットワークの挙動を時系列で記録します。実際の操作を録画して長時間のスクリプト実行やレイアウト再計算などのボトルネックを特定できます。例えば、長いスクリプトが原因でフレーム落ちしている場合、タイムライン上で該当範囲を選び詳細を確認します。
Web Vitals拡張機能
Web Vitals拡張はCore Web Vitals(LCP・FID/INP・CLS)をリアルタイムで表示します。開発中にブラウザで表示しながら数値を確認できるため、変更の影響を素早く確かめられます。軽いテストやデバッグに便利です。
Googleアナリティクス
Googleアナリティクスは実ユーザーの挙動を長期間にわたり集計できます。ページ速度レポートやカスタムイベントを使うと、地域別やデバイス別の傾向を追跡できます。実際の利用環境で起こる遅延や改善の効果を評価できます。
使い分けと実践ポイント
- Lab(DevTools/Lighthouse)で詳細な原因特定。\n- RUM(GAや専用ライブラリ)で実ユーザーの傾向把握。\n- 拡張機能は開発中の即時チェックに最適。\n計測は複数手法を組み合わせ、開発環境と実運用の両方で確認してください。変更後は指標の変化を比較して効果を検証します。












