はじめに
本書の目的
この文書は、Web制作の始め方を分かりやすく示すために作りました。検索でよくある疑問や、複数の参考記事から抽出した手順を整理し、初心者が迷わず進められるようにまとめています。目的設定から公開・運用までの流れを体系的に学べます。
想定読者
個人でサイトを作りたい初心者、業務で担当になった方、小規模事業者を主な対象とします。専門知識が少なくても読み進められるよう、専門用語はできるだけ避け、具体例で補足します。
本書の構成と使い方
章は順を追って制作の各工程を解説します。最初は目的の明確化、次に企画・設計、デザイン、コーディング、テスト、公開へと進みます。必要に応じて個別の章だけを読んでも実務に使えるよう配慮しています。
進め方の心構え
サイト制作は段階ごとに確認と修正を繰り返す作業です。小さく試して改善することを心がけると、失敗を減らせます。これから順に実践的な手順を説明します。
目的とターゲットの明確化
はじめに
Webサイトは作る目的で形が変わります。最初に「何のために作るか」と「誰に向けるか」をはっきり決めましょう。両方が明確だと企画やデザイン、必要な機能がブレません。
目的の明確化(例と手順)
- 目的の洗い出し:集客(問い合わせ増加)、情報発信(ブランド認知)、EC(販売)など具体的に書き出します。
- 優先順位を決める:複数ある場合は一番重要な目的を先にします。
- KPIを設定する:月間訪問数、コンバージョン率、売上など測れる数値を決めます。
ターゲットを定義する(ペルソナ)
- ペルソナ作成:名前、年齢、職業、目的、課題、よく使うデバイスを具体的に設定します。例:30代女性、育児中、スマホで情報を探す。
- 行動とニーズ:どんな情報を欲し、どのタイミングで訪れるかを想像します。
目的とターゲットを結びつける
- 機能の例:問い合わせ重視ならフォームとFAQ、ECならカートと決済、情報発信ならブログとSNS連携。
- デザインの例:高齢者向けは文字を大きく、若年層向けはビジュアル重視。
優先事項の決定とチェックリスト
- 最低限必要な機能(MVP)を決める
- KPI設定と計測方法を決める
- ペルソナをチームで共有する
この章で目的とターゲットを固めると、以降の作業がスムーズになります。
企画と要件定義
概要
目的が固まったら、次は具体的な企画と要件定義です。ここで決める内容が制作の土台になります。機能やページ、予算、スケジュールをはっきりさせましょう。
機能とページの洗い出し
まず必要な機能を箇条書きで出します。例:お問い合わせフォーム、会員登録、決済、ブログなど。ページならトップ、サービス紹介、料金、よくある質問を挙げます。後で優先順位を付けやすくするため、必ず「必須」「あると良い」「将来追加」の区分を付けます。
非機能要件の確認
表示速度、スマホ対応、セキュリティ、運用のしやすさなどを決めます。例えば「ページ表示は3秒以内」「管理画面は担当者が更新しやすい」のように具体的にします。
予算とスケジュールの設計
機能ごとに工数や費用の目安を出します。優先度の高い機能を先に実装する段階的なスケジュールも作ります。余裕をもったバッファも設定してください。
要件定義書の作り方
目的、対象ユーザー、機能一覧、画面一覧、非機能要件、予算、スケジュール、責任者を記載します。図や簡単なフロー図を入れると認識ズレが減ります。外部の制作会社に依頼する際は、この文書が合意の基準になります。
依頼時のポイント
想定する運用や想定問合せ、現行の素材や制約を事前に共有します。認識ずれを防ぐためにレビュー周期と担当者を明確にしましょう。意思決定のスピードも成功に影響します。
以上の工程を丁寧に進めると、後工程がスムーズになります。
サイト構成の設計
概要
サイトマップを作り、全体構成を見える化します。どのページにどんな情報を載せるか決め、ユーザーが迷わず目的にたどり着ける道順を設計します。
まず目的を整理する
ユーザーの主要な行動(例:商品購入、資料請求、問い合わせ)を洗い出します。目的ごとに必要なページをリスト化すると優先順位が明確になります。
ページの役割を決める
例:トップは導線、商品ページは比較と詳細、問い合わせはコンバージョン専用の導線にします。各ページに明確な役割とCTA(次にしてほしい行動)を設定します。
ページ同士のつながりを可視化する
階層図やフローチャートでリンク関係を描きます。例:カテゴリ→一覧→詳細→購入。重要な導線(検索・お問い合わせ)はどこからでも辿れるようにします。
ナビゲーションの基本
メインメニューは主要カテゴリに限定し、パンくずやフッターで補います。モバイルでは優先度の高い項目を簡潔に示します。
チェックリスト(実践)
- 目的ごとにページを配置しているか
- 主要導線が3クリック以内か
- モバイルでの見え方を確認したか
- CTAが各ページで明確か
- 内部リンクで回遊を促しているか
以上を元にサイトマップを作成し、関係者と共有して調整します。
ワイヤーフレーム作成
目的
サイトマップをもとに、各ページで何を伝え、どこへ導くかを視覚化します。テキストや画像、ボタンの配置を決めて情報の優先順位をはっきりさせます。
手順(実務的な流れ)
- 各ページの主要要素を洗い出す(見出し、本文、画像、CTAなど)。
- 画面の大枠を紙やデジタルで描く。まずはざっくり(ロー)。
- 要素の配置を決める:重要な情報を上部や中央に置く。
- 詳細を詰めて高精細(ハイ)ワイヤーにする。リンク先や動きも明記する。
レイアウトのポイント
- ユーザーの目線を意識する(左上→右下の流れ)。
- CTAは目立つ色や余白で強調する。例:予約ボタンはページ上部と下部に配置。
- 商品ページは画像を左、説明と価格を右に置くと見やすい。
実際の作り方のコツ
- 紙で素早く何案か描くと比較しやすいです。
- 共通パーツ(ヘッダー、フッター、ナビ)はテンプレ化して効率化します。
- モバイルとPCで優先順位を変える。画面幅が狭い場合は重要要素を上に移動します。
チェックリスト(レビュー用)
- 情報の優先順位は明確か
- CTAは見つけやすいか
- ユーザーが迷わない導線か
- 重要な要素がモバイルで隠れていないか
ユーザーテストの簡単な方法
紙やPDFを使って同僚に操作してもらい、目的達成までの時間や迷った点を聞きます。問題点が出たらワイヤーに戻り配置を調整します。
デザイン制作
目的と進め方
ワイヤーフレームをもとに、サイトの見た目(デザインカンプ)を作成します。ターゲットやコンセプトを常に確認し、ページごとの優先順位を決めて進めます。最初にホームと主要な下層ページを作ると効率的です。
色とフォント選定
ブランドやターゲットに合った配色を3〜5色で決めます。例:コーポレートは落ち着いたブルー、飲食なら温かみのあるオレンジなど。フォントは読みやすさ優先で、見出しと本文を分けて選びます(例:見出しにゴシック、本文に明朝系)。
画像・アイコンの扱い
高品質な写真を使い、画面ごとにテーマを揃えます。アイコンは線の太さや角の丸みを統一して、統一感を出します。必要なら社内で撮影するか、素材サイトからライセンスを確認して使用します。
コンポーネント設計(UIキット)
ボタン、フォーム、カードなどのコンポーネントを作り、色や余白、状態(通常・ホバー・無効)を定義します。これにより制作と保守が楽になります。
レスポンシブとレイアウト
まずPCで作成し、次にタブレットとスマホの崩れ方を想定します。グリッドや余白のルールを決め、画像の切れ方やテキストの改行を確認します。
アクセシビリティとコントラスト
文字と背景のコントラストを確保し、リンクやボタンがわかりやすい配色にします。大きめのタップ領域を確保し、キーボード操作も考えます。
プロトタイプとレビュー
静止画カンプだけでなく、簡易プロトタイプで遷移を確認します。チームやクライアントからのフィードバックを受けて調整します。
引き渡し(アセットと仕様)
デザインファイル、画像、フォント情報、カラーコード、コンポーネント仕様をまとめて開発チームに渡します。必要な場合は注釈付きの仕様書を添えます。
コーディング・システム開発
概要
デザインが完成したら、まずHTML/CSS/JavaScriptで見た目と動きを実装します。必要に応じてCMS(例:WordPress)を導入したり、会員管理や受注処理などのバックエンドを開発します。
フロントエンドコーディング
- HTMLで構造を作り、CSSでレイアウトと色を整えます。
- JavaScriptで動的な挙動(フォームの入力チェック、モーダル表示など)を実装します。
- 例:お問い合わせフォームの入力エラー表示やメニューの開閉をJSで制御します。
レスポンシブ対応
- 画面幅に合わせてレイアウトを切り替えます。スマホ・タブレット・PCで見やすくします。
- メディアクエリや柔軟な画像寸法を使い、読み込み速度にも配慮します。
CMS導入のポイント
- 更新頻度が高い場合はCMSを導入します。WordPressは管理画面が使いやすい例です。
- テーマやプラグインは必要最小限にし、セキュリティと更新性を重視します。
バックエンド開発
- 会員登録、注文処理、API連携などの機能を作ります。
- データの保存や認証は安全に設計します。例:パスワードはハッシュ化して保存します。
テストと運用準備
- 各ブラウザと端末で表示と動作を確認します。
- パフォーマンス改善やSEOの基本設定を行い、運用マニュアルを用意します。
テスト・修正
完成したサイトを様々な環境で確認し、不具合を洗い出して修正します。品質を高め、公開時にユーザーが問題なく利用できる状態にするための流れと具体的なポイントを説明します。
目的
サイトの表示や動作が意図通りかを確認し、重大な問題を事前に除去することです。
チェック項目
- 表示確認:PC・スマホ・タブレットでレイアウトや文字の崩れをチェック(例:見出しが折り返すか)
- ブラウザ確認:Chrome・Safari・Edge・Firefoxで主要機能を確認
- リンク・ナビ:リンク切れや遷移先の誤りを確認
- フォーム:入力・送信・バリデーション、完了メールの受信を確認
- パフォーマンス:ページ表示速度や画像最適化の簡易チェック
- アクセシビリティ:代替テキスト、キーボード操作の確認
- セキュリティ:入力チェックと基本的な脆弱性の確認
テスト手順
- 優先度の高い機能(決済、問い合わせ送信など)から順に実行
- 再現手順を記録し、スクリーンショットやログを添付
- 複数人でクロスチェックし見落としを減らす
不具合の分類と修正
- 重度:機能停止やデータ破損→即時対応
- 中度:表示崩れや遷移ミス→優先対応
- 軽度:文言誤りや微調整→リリース前にまとめて対応
修正後は該当箇所で必ず再テストします。
再テストと品質保証
回帰テストを行い、修正が他機能に影響を与えていないか確認します。テスト結果は一覧化し、担当者の承認を得て次工程へ進みます。
注意点
- 本番環境と同等の条件で最終確認してください
- テストデータは個人情報に配慮して用意してください
公開
準備
テストが完了したら公開準備を行います。公開用のファイルを最終確認し、不要デバッグ情報や開発用のログは必ず削除してください。バックアップを作成しておくと安心です。
アップロード手順
FTP/SFTPやホスティングの管理画面からサーバーへファイルを転送します。大きなファイルは分割や圧縮で速度を改善できます。パーミッション設定も適切にしておきます。
ドメイン取得と設定
ドメイン登録業者で希望のドメインを取得し、DNSでホスティング先を指定します。反映に数時間から72時間かかることがありますので余裕を持って作業してください。
SSL証明書の設定
SSLは通信を暗号化します。無料の証明書(例: Let’s Encrypt)か有償の証明書を選び、サーバーにインストールして自動更新を有効にします。
公開後の確認と運用
表示やリンク、フォームが正しく動作するか実地で確認します。アクセス解析やエラーログを設定し、定期的にバックアップと更新を行ってください。
初心者向けのおすすめ
レンタルサーバーは管理画面が使いやすく、設定も簡単です。初めてならサポートが充実したプランを選ぶと安心です。












