はじめに
目的
Webサイトやアプリの制作に関わる「Web制作」と「プログラミング」。この二つは似ている言葉ですが、役割や使うスキルが違います。本書では、両者の違いをわかりやすく整理し、仕事や学び方の選び方に役立てていただくことを目的とします。
対象読者
初心者の方、転職や副業を考えている方、学校で学ぶ内容を実務に結びつけたい方に向けています。専門用語は最小限にし、具体例でイメージしやすく解説します。
この記事でわかること
- Web制作とプログラミングの役割の違い
- それぞれに必要なスキルと日常の仕事例
- 学び始めるときの優先順位や目標の立て方
読み方のヒント
まず第2章〜第4章で基礎を掴んでください。第5章以降で具体例や将来性を見て、自分に合う道を考えると理解が深まります。気になる点はメモを取りながら読むことをおすすめします。
Web制作とは?
概要
Web制作とは、Webサイトの「見た目」を作る作業です。ユーザーがアクセスしたときに目にするレイアウト、色、フォント、画像の配置といった視覚的要素をデザインし、それを実際のページにします。たとえば会社のホームページやお店の紹介ページなどが該当します。
主な役割
- ユーザーにわかりやすく情報を伝える見た目を作る
- 見た目だけでなく操作のしやすさ(使いやすさ)も考える
- ブランディング(ブランドイメージの表現)を視覚化する
必要なスキル
- デザイン力:色やレイアウトを決める力
- コーディングの基礎:HTMLやCSSでデザインを形にする力
専門用語は少なく、具体的には「見た目を決める」「決めた見た目をコードにする」という二つの力が中心です。
制作の流れ(簡単な例)
- 目的を決める(何のためのサイトか)
- ワイヤーフレームで構成を決める(大まかな配置)
- デザインを作る(色や画像、文字の見せ方)
- HTML/CSSで実装する(実際のページにする)
- テストして公開する
デザイナーとコーダーの役割分担
- Webデザイナー:見た目を考え、デザインデータを作ります
- コーダー(マークアップエンジニア):そのデザインをHTMLやCSSで実装します
小規模な場合は同じ人が両方を担当することもあります。
ユーザー視点の大切さ
見た目がきれいでも、使いにくければ意味がありません。ユーザーが目的にたどり着けるかを常に考え、見た目と使いやすさの両方をバランスよく作ることがWeb制作の基本です。
プログラミングとは?
短い説明
プログラミングとは、Webサイトやアプリの「動き」や「機能」を作る作業です。言葉(プログラミング言語)を使って、何が起きるかをコンピューターに伝えます。わかりやすく言うと、設計図に従って機械を動かす指示を書くようなものです。
主な役割
- ユーザーがボタンを押したときに何が起きるかを決めます(例:送信、ページ切替)。
- データベースから情報を取り出して表示したり、保存したりします(例:ログイン、商品情報)。
- ECサイトのカートや決済処理など、重要な機能を実現します。
具体例
例えば「ログイン」では、入力された情報を確認して本人かどうか判断し、合えば画面を切り替えます。検索機能なら、キーワードに合うデータを探して一覧で見せます。こうした一連の流れをコードで作ります。
作り方の流れ
- 要件を決める(何をさせるか)。
- コードを書いて動作を作る。
- 動作を確認して修正する。
学ぶときのポイント
小さな機能を作って動かす経験を積むと理解が早まります。実際に動くものを作ることを重視してください。
Web制作とプログラミングの違い
役割の違い
Web制作は見た目と使いやすさを作ります。ページのレイアウト、色、文字の見え方、画像の配置などを整えて、訪問者が迷わず目的を達成できるようにします。プログラミングは機能や動きを作ります。データのやり取り、検索・保存、フォーム送信、ログイン機能などを実際に動かします。
使う技術とツール
- Web制作: HTML、CSSを中心に、PhotoshopやIllustrator、ワイヤーフレームツールを使います。コーディングは見た目を再現するために行います。
- プログラミング: JavaScript、Python、PHPなどの言語や、データベース、API、デバッグツールを使います。動作の検証と保守が重要です。
担当する範囲の違い
制作はユーザーが見る“外側”。プログラミングはサイトの“内側”や動作です。たとえばボタンは制作がデザインし、クリックで何が起きるかはプログラミングが作ります。
協力の流れ
最初にデザインや画面設計を制作が決め、プログラマーが仕様に沿って機能を実装します。細かい見た目の調整や動作の修正は両者でやり取りしながら詰めます。互いに理解を深めるとスムーズに進みます。
どちらを学ぶか迷ったら
まずはWeb制作の基本(HTML/CSS)を覚えると全体像が見えます。その後、興味がある動きを作りたいならプログラミングに進むと良いです。どちらも需要があり、両方できると仕事の幅が広がります。
具体的な例
ブログサイトの場合
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Web制作:ページの見た目や読みやすさを整えます。トップページや記事ページのレイアウトを決め、色使いやフォント、余白、画像の配置を工夫します。スマホで読みやすくするためにレスポンシブ対応や見出しの階層を整えることも含まれます。読み手の導線を考え、直感的に操作できるデザインにします。
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プログラミング:記事の投稿機能や編集画面、公開・下書き管理を実装します。コメント機能やスパム対策、タグやカテゴリでの検索、投稿の自動保存や予約公開など、動的な仕組みを作ります。データベースと連携して記事を保存・取得するのもプログラミングの役割です。
ECサイトの場合
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Web制作:商品の見せ方を工夫します。商品一覧や商品詳細ページのデザイン、写真の配置、価格表示の見やすさ、購入までの導線設計を行います。ブランドに合わせた配色や信頼感のあるレイアウトを作り、購入ボタンを目立たせるなど視覚的な工夫をします。
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プログラミング:カート機能や在庫管理、決済処理、注文履歴の管理を実装します。ユーザー認証や住所入力の自動補完、送料計算、決済サービスとの連携、安全なデータ保存など、取引を安全に行うための仕組みを作ります。
コーディングとプログラミングの違い
定義
コーディングとは、デザインや仕様を実際の画面に表示させるためにコードを書く作業です。主にHTMLやCSSで見た目を整え、簡単な動きを加えるためにJavaScriptを使います。
一方、プログラミングはもっと広い概念です。仕様の設計、問題を分解して解決する方法の検討、アルゴリズムの作成、テストやバグ対応まで含みます。コーディングはプログラミングの一部だと考えてください。
具体的な違い(作業例)
- コーディング:ページのレイアウトを作る(HTML)、色や配置を整える(CSS)、簡単な動きを付ける(JavaScriptのDOM操作)
- プログラミング:ユーザー認証やデータベース連携、業務ロジックの実装、API設計、単体テストやデバッグ
流れと役割の違い
通常は要件定義→設計→実装→テストの流れになります。実装フェーズの一部がコーディングで、設計やテスト、運用を含めるのがプログラミングです。
必要なスキル
- コーディング:マークアップとスタイリングの知識、ブラウザの挙動理解、レスポンシブ対応
- プログラミング:問題分解力、データ構造やアルゴリズムの基礎、テストやデバッグ技術、バージョン管理
仕事での違い
小規模な仕事では同じ人が両方を担当します。大きなプロジェクトではコーダー(フロントエンド)とプログラマー(バックエンドやシステム設計)に分かれることが多いです。
ここでのポイントは、コーディングは目に見える部分を作る技術で、プログラミングは問題解決全体を扱う技術だという点です。
Web制作とプログラミングの需要・将来性
需要の現状
Web制作とプログラミングはどちらも高い需要があります。企業はウェブサイトやWebアプリを通じて顧客とつながるため、デザインと技術の両方を求めます。小さな店舗のホームページから大規模なECサイト、業務システムまで幅広い仕事があります。
スキル別の需要
- Webデザイナー:見た目や使いやすさ(UX/UI)に強みがあります。ブランド表現や配色、レイアウトの提案が主な仕事です。クライアントとのやり取りが多く、プレゼン能力も求められます。
- プログラマー:データ処理や機能実装が中心です。サーバー連携やデータベース、パフォーマンス改善など技術的な課題を解決します。自動化や効率化を担います。
将来の見通し
AIやツールの進化で一部の作業は自動化されますが、人の創造力や問題解決力の価値は高まります。特にフロントエンドの設計から実装まで一貫してできる人材は重宝されます。リモートワークやフリーランスの需要も増え、場所にとらわれない働き方が広がります。
キャリアの勧め
デザイナーは基本的なコーディングを学ぶと仕事の幅が広がります。プログラマーはユーザー視点を意識すると設計が良くなります。どちらも継続的な学習と実践経験が将来を左右します。
まとめ
ここまでの内容をやさしく振り返ります。
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Web制作は見た目と使いやすさを作る仕事です。レイアウト、色、文字、画像、操作のしやすさを考え、訪問者にとって心地よい画面を作ります。具体例では、ボタンの配置やフォントの選び方が該当します。
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プログラミングは動きや仕組みを作る仕事です。入力の処理やデータの保存、計算や自動化など、サイトがどう動くかを決めます。具体例では、フォーム送信の仕組みやログイン機能が該当します。
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両者は別の専門性を持ちながら、協力して一つのサイトを完成させます。制作側が見た目と操作性を整え、プログラミング側が機能と安全性を担います。協業によりユーザーにとって使いやすく、信頼できるサイトが生まれます。
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自分の進む道は、興味と得意分野で決めましょう。色やデザインが好きならWeb制作、論理的に問題を解くのが好きならプログラミングがおすすめです。両方学べば仕事の幅が広がります。
最後に一言。どちらを選んでもユーザーを大切にする視点が役立ちます。小さな改善を積み重ねて、自分らしいスキルを育ててください。












