はじめに
この章では、本記事の目的と読み方をやさしくご案内します。これから紹介する内容は、企画から公開・運用までのWeb制作の基本的な流れを、段階ごとに分かりやすく説明することを目的としています。
この記事の目的
- Webサイト制作の全体像を理解していただくこと
- 各ステップで何を決め、どんな作業をするかを具体的に伝えること
- 初心者の方でも実務で使えるポイントをつかめるようにすること
誰に向けた記事か
- 初めてWeb制作に関わる方
- 自社サイトの制作やリニューアルを検討している方
- 制作の外注先と円滑に進めたい担当者
この記事の使い方
第2章以降で具体的なステップを順に解説します。まずは全体像を把握し、その後、各章で実務的なチェックポイントや具体例を参考に進めてください。短く読みたい方は、章ごとの見出しだけを確認して必要な箇所を読むと効率的です。
続く章で、企画・設計・デザイン・実装・公開・運用、さらにSEOや成功のポイントまで丁寧に説明します。安心して読み進めてください。
Web制作の全体像
はじめに
Web制作は「企画」「設計」「デザイン」「実装」「公開」の5段階で進みます。順序を守ることで無駄を減らし、品質を高めます。
制作の5段階と目的
- 企画：誰に何を提供するか決めます。例：商品の認知を高めるランディングページ。
- 設計：情報の構成や機能を決めます。サイトマップやワイヤーフレームが成果物です。
- デザイン：見た目と操作感を作ります。色や写真、ボタン配置を具体化します。
- 実装：HTML/CSSやシステムを組み立てます。動作確認や調整を行います。
- 公開：サーバにアップし、運用を始めます。バックアップや監視も行います。
順序を守る理由
設計を飛ばすと作り直しが増えます。企画で目的を共有すると、途中で方向転換しにくくなり効率的です。
役割と成果物の例
- プロジェクト責任者：進行管理、要件確認
- デザイナー：デザインカンプ
- エンジニア：動作するサイト
成果物は企画書、ワイヤー、デザインカンプ、実装コード、公開手順書です。
スケジュール感の目安
小規模：2〜4週間、中規模：1〜3か月。内容に応じて調整します。
よくある落とし穴と対策
- 要件不足：最初に目的と優先順位を明確にする。
- コミュニケーション不足：定期ミーティングで認識合わせを行う。
各工程を丁寧に進めることで、安定した品質のWebサイトが作れます。
STEP1：プロジェクト企画・要件定義
概要
サイト制作の土台を作る工程です。目的・ゴール、ターゲット、現状分析、競合調査、コンセプト、要件定義を順に進めます。ここで方針が固まれば、後工程がスムーズになります。
1. 目的とゴール設定
まず目的を明確にします。売上向上、認知拡大、問い合わせ増加など、具体的な数値や期限を決めます。SMART（具体的で、測定可能で、達成可能で、関係性があり、期限がある）な目標を意識します。
2. ターゲットユーザーの明確化
主な利用者像を絞ります。年齢・性別・職業・関心事・利用シーンを想像し、ペルソナを作ると設計がしやすくなります。例：30代子育て中の母、仕事帰りに情報収集する。
3. 現状分析・競合調査
既存サイトやアクセスデータを確認し、課題を洗い出します。競合のサイト構成や強み・弱みも調べ、差別化ポイントを探します。
4. コンセプトと要件定義
サイトの主張やトーン、必要な機能（問い合わせフォーム、会員機能、CMSなど）を決めます。優先度を付けて、必須・後回しを整理します。
5. RFP（提案依頼書）の作成
外注する場合はRFPを用意します。目的、ターゲット、要件、スケジュール、予算、評価基準を明記すると提案比較が楽になります。
6. 進め方のポイント
関係者の合意を早めに取ること、要件を図やユーザーストーリーで共有すること、小さな成果を早めに出して確認を重ねることを心がけます。
STEP2：Webサイト設計
サイト設計では、訪問者が迷わず目的を達成できる構造を作ります。ここでは4つの主要作業を順に行います。
サイト構造設計（サイトマップ／導線）
サイト全体をページ一覧で整理します。例：トップ→サービス一覧→個別ページ→お問い合わせ。新規顧客が問い合わせに至る典型的な導線を想定し、優先度の高いページを上部に配置します。
ワイヤーフレーム作成
画面ごとの要素配置を線画で決めます。ヘッダー、主要CTA、本文、サイドバーの位置を明確にします。ワイヤーで表示優先度を確認し、開発メンバーと共有します。
コンテンツ企画・設計
各ページの目的と主な文言を決めます。例：サービスページは特徴3点＋導入事例＋問い合わせ導線。写真や図の有無、見出しの階層もこの段階で設計します。
システム要件設計（CMS／フォーム）
更新頻度や運用者を考え、CMSの採用可否を決めます。問い合わせフォームの項目や自動返信の有無、データ保存方法もここで設計します。必要なAPIや外部サービス連携をリストアップしておくと後工程がスムーズです。
STEP3：デザイン制作
デザインコンセプト設計
ターゲット、目的、トーン（親しみやすい・信頼感など）を明確にします。例えば、飲食店なら写真を大きく見せる、企業サイトなら余白を多めにして信頼感を出すなど具体的な方向性を決めます。ワイヤーフレームの意図を尊重しつつ、色やタイポグラフィで印象を統一します。
素材準備（ロゴ・写真・アイコン）
高解像度のロゴや写真を用意します。写真は構図やライティングを揃えると仕上がりが良くなります。著作権に注意し、必要ならオリジナルの撮影やライセンスを取得します。アイコンは統一されたスタイルで揃えます。
デザインカンプ作成（Photoshop・Figma）
デザインツールでページごとのカンプを作ります。Photoshopは画像編集が得意、Figmaは共同作業やレスポンシブ対応が楽です。ヘッダー、主要コンテンツ、フッターを含め、主要ページを実寸で作成してください。ボタンやリンクの状態（通常・ホバー）も用意します。
レスポンシブとアクセシビリティ
画面サイズごとの表示（PC・タブレット・スマホ）を想定して調整します。コントラストやフォントサイズ、キーボード操作での利用を確認し、誰でも使いやすくします。色だけで情報を伝えない工夫も大切です。
開発者への引き渡し
アセットは命名規則を決めて整理します（例：logo_primary.png）。Figmaのコメントやスペック機能、またはエクスポート済みファイルで渡すとスムーズです。色コード、フォント、余白ルールを明記してください。
実務的なチェックリスト
- 主要ページのカンプ完了
- 画像・ロゴの最終版を用意
- レスポンシブ確認（3サイズ以上）
- ボタン・リンクの状態を定義
- 開発者へデザインガイドを共有
作業を段階的に進めると修正が少なく効率的です。
STEP4：実装（コーディング・システム開発）
概要
実装ではデザインをコードに落とし込み、動くサイトを作ります。ここではフロントエンド、バックエンド、テスト、レスポンシブ対応、基本的なSEO設定を順に行います。
フロントエンド開発（HTML/CSS/JavaScript）
HTMLは意味のあるタグで構造を作ります（例：header、nav、main、footer）。CSSは可読性を優先し、コンポーネント単位で整理します。JavaScriptは最低限の役割に絞り、例えばハンバーガーメニューやフォームの入力チェックといった動きを担当させます。コードはコメントと命名規則を揃えて保守しやすくします。
バックエンド開発（CMS設定やサーバーサイド機能）
CMS（例：WordPressやヘッドレスCMS）ではテンプレートとパーツを設定します。問い合わせフォームの送信処理、ログイン、データ保存などはサーバー側で検証と制御を行います。セキュリティは入力検証、HTTPS、権限管理を基本に対策します。
表示・動作テスト
主要ブラウザと実機で表示を確認します。画面崩れ、リンク切れ、フォーム送信の動作、エラーハンドリングをチェックします。自動テストやLighthouseでパフォーマンスやアクセシビリティの指標も確認します。
レスポンシブ対応
モバイルファーストの考えで設計し、メディアクエリでレイアウトを調整します。画像はsrcsetで最適化し、タッチ操作やフォントサイズにも配慮します。
SEO初歩設定
各ページに適切なtitleとmeta descriptionを設定し、見出しタグを正しく使います。画像のalt、パンくず、サイトマップ、robots.txtを用意し、表示速度改善にも取り組みます。
STEP5：リリース（公開）と運用開始
公開前の最終準備
公開前に必ずチェックリストを用意します。代表例：ファイルの最終アップロード、環境ごとの設定確認、バックアップの取得、動作確認の手順を明記します。具体的にはSFTPやGitで最新コードをサーバーにデプロイし、設定ファイル（APIキーや環境変数）が本番用になっているか確認します。
ドメイン設定とSSL導入
ドメインのDNS設定を正しく行い、AレコードやCNAMEを指します。SSLはLet’s Encryptなどで自動更新を設定すると安心です。HTTPS化はユーザー信頼と検索結果にも好影響です。
公開後の最終チェック
公開直後に必ずリンク切れ、表示崩れ、フォーム送信、決済やメール送信の動作を確認します。実機（スマホ・タブレット・PC）でチェックし、ブラウザのキャッシュもクリアして再確認します。問題が見つかったら優先順位をつけて速やかに対応します。
アクセス解析とSEOの初期設定
Google Analytics（GA4）とSearch Consoleを導入し、目標（コンバージョン）を設定します。初期のアクセス指標を週次で確認し、離脱率や直帰率が高いページは改善します。
継続的な運用と改善
コンテンツ更新のスケジュールを決め、定期的にバックアップとセキュリティパッチを実行します。ユーザーの行動データをもとにA/Bテストやコンテンツ改善を繰り返し、長期的に成果を高めます。
SEO・検索結果対策の基本
概要
サイトを見つけてもらうための基本を押さえます。ここでは、適切なキーワード選びと、タイトルやメタディスクリプションへの反映、読みやすいコンテンツ作り、内部リンクの整備を中心に解説します。
ターゲットキーワードの選定
誰に何を伝えたいかを明確にします。例：近所のカフェを探す人なら「地域名＋カフェ」、商品の購入を想定するなら「商品名＋比較」など具体語を候補にします。検索数や競合を簡単に調べて、狙える語を決めます。
タイトルとメタディスクリプション
タイトルには主要キーワードを先に入れます。例：「渋谷のおすすめカフェ｜落ち着く空間とランチ」。メタディスクリプションは短く魅力を伝え、行動を促します（例：営業時間や特徴を1行で）。
キーワードを意識したコンテンツ設計
見出しを使い、1ページに1〜2つの主題を絞ります。読み手の疑問に答える形で、具体例や手順を入れると分かりやすくなります。自然な言葉でキーワードを散りばめてください。
内部リンクの最適化
関連する記事やカテゴリへリンクを張り、回遊を促します。アンカーテキストは内容を表す短い語にします（例：「メニュー一覧を見る」）。
計測と改善
検索順位だけでなく、流入数や滞在時間を定期的に確認します。うまくいかない場合はキーワードや見出しを見直し、少しずつ改善を重ねます。
成功するためのポイント
1. 各工程の目的とタスクを明確にする
初めに、工程ごとの目的を一文で定義します。例：「問い合わせを増やすためのLP制作」「情報更新を容易にするCMS導入」など。次に、担当者と期限を決めたタスクリストを作ります。具体例：要件定義（Aさん、4/10まで）、デザイン（Bさん、4/24まで）。
2. 関係者と合意形成を行う
関係者全員でゴールと優先度を共有します。合意はメールや議事録で記録してください。変更が出たら、影響範囲と納期を再確認し、了承を得ます。
3. スケジュール管理と進捗確認を徹底する
短い期間で小さなマイルストーンを設定し、定期的に進捗報告を行います。週次ミーティングや短いデイリーチェックで遅れを早期発見します。遅延時は原因を特定し、代替案を提示して決定します。
4. 公開後の定期的な分析・改善
公開後はアクセス解析や問い合わせ数を定期的に見ます。数値に基づき改善を繰り返します。例：CTAの文言を変えて反応が上がるかABテストを実施する。
5. コミュニケーションを円滑に保つ
進捗や課題はこまめに共有します。ツールに頼りすぎず、重要な決定は直接対話で確認すると効果的です。
まとめ
要点の振り返り
Web制作は「企画 → 設計 → デザイン → 実装 → 公開 → 運用」が基本です。企画で目的とターゲットをはっきりさせ、設計で導線やコンテンツを整えます。デザインは見やすさとブランド性を両立し、実装では性能・セキュリティ・アクセシビリティを確保します。公開後は運用と改善を続け、成果につなげます。
実務で押さえるチェックリスト
- 目的とKPIを明確にする（例：問い合わせ数、購入数）
- ユーザー導線とモバイル表示を必ず確認する
- 画像最適化、表示速度の測定を行う
- SEOの基本（タイトル、見出し、メタ説明）を設定する
- バックアップと更新計画を作る（CMS・プラグインの更新含む）
- アクセス解析で改善点を定期的に洗い出す
継続的に成果を出すために
ユーザー目線を最優先にし、データで判断して小さく改善を繰り返します。チーム内での情報共有とドキュメント整備で属人化を防ぎます。始めは完璧を目指さず、PDCAを回して確実に価値を高めていきましょう。
最後に、丁寧に作ったサイトは信頼を生みます。計画的に進めて、長く使われるWebを目指してください。
