はじめに
オウンドメディアとは何か
オウンドメディアは自社で運営する情報発信の場です。自分たちの強みや価値を伝え、見込み客の信頼を育てる役割を果たします。SNSや広告のように外部に依存せず、長期的な資産になります。
まず決めることの重要性
最初に「何のためのメディアか」「誰に何を届けるか」を決めます。目的が曖昧だと更新が続かず、読者の反応も得られにくくなります。目的は売上貢献、ブランディング、採用、既存顧客のフォローなどに分かれます。届ける相手は年齢や職業だけでなく、困りごとや興味で分けると設計しやすくなります。
成功のための基本サイクル
オウンドメディアは一次的なプロジェクトではなく、戦略→制作→公開→効果測定→改善のサイクルを回します。効果を見て改善を続けることで、読者にとって有益で信頼される媒体になります。
この章の読みどころ
この後の章では、構築前に決めるべき具体項目、制作の手順、技術的な選択、コンテンツ設計、運用と効果測定まで順を追って説明します。まずは目的とターゲットを明確にして、続けられる体制を整えることを心がけてください。
構築前に決めること
目的とKPIを絞る
まずサイトの目的を明確にします。目的は「認知を広げる」「問合せを増やす」などに絞り、KPIは1〜2個に限定します。例:月間PV(認知向上)と月間問い合わせ数(見込み客獲得)。KPIは達成期限と現在値も決めます。
ターゲット・ペルソナを具体化する
誰に向けるかを業種・職種・課題・検索行動で具体化します。例:中小企業の人事担当(30代、採用コストを下げたい、”採用方法 比較”で検索)。ペルソナごとに悩みと最適なコンテンツを洗い出します。
テーマ・キーワード方針
自社の強みとターゲットの課題から中核テーマを決めます。中核テーマに対し、主要キーワード群(トップ語句・ミドル語句・ロングテール)を設定します。例:中核テーマ「採用コスト削減」、重点キーワード:採用代行、採用コスト 比較、中小企業 採用 方法。
カテゴリ構造の設計
ユーザーの疑問に沿うカテゴリを設計します。例:
– トップ:サービス紹介
– 採用の基礎
– 導入事例
– 料金プラン
– よくある質問
カテゴリはURLやパンくずの設計にも反映します。
決めるべきチェックリスト
- 目的とKPI(数値・期限)
- ペルソナ(業種・職種・課題・検索キーワード)
- 中核テーマと重点キーワード群
- 上位カテゴリと主要ページ
- 成果測定の方法(ツール・目標値)
これらを事前に決めると、制作と運用が効率よく進みます。
サイト構築の基本ステップ
1. 技術的要件の整理
目的ごとに必要な機能を洗い出します。例:ブログなら投稿管理と検索、ECならカート・決済・在庫管理。想定トラフィック、セキュリティ要件(個人情報の扱い)や法的要件も決めます。運用体制は更新頻度、担当者、バックアップと監視の方法を具体的に決めてください。
2. ドメイン・CMS選定
サイトは自社サイト直下(example.com/blog)か独自ドメイン(example-site.com)かを決めます。直下はSEOや管理の一貫性で有利、独自ドメインはブランドを分けたい場合に有効です。CMSは予算と運用人員で選びます。例:低予算で柔軟性が欲しいならWordPress、更新を簡単にしたいならSaaS型、厳しい要件があるならスクラッチ開発を検討します。ホスティングは共有・VPS・マネージドの違いを確認してください。
3. デザイン・構成(ワイヤーフレーム)
トップ、カテゴリ、記事の役割を決め、ワイヤーフレームで配置を確定します。優先順位を付けてコンテンツを配置し、CTAは視線が集まる場所に置きます。モバイル優先で考え、読みやすさと読み込み速度を意識してください。プロトタイプで動作を確認し、必要なら修正します。
構築方法の違い
概要
サイト構築には主に三つの選択肢があります。スクラッチ開発、無料CMS(例:WordPress等)、有料CMS・SaaSです。それぞれ費用や自由度、運用負担が異なります。
スクラッチ開発
フルスクラッチは機能の自由度が最も高い方法です。必要な機能を一から作れるため、特殊な業務フローや大規模なトラフィックに対応できます。利点は完全なカスタマイズ性と最適化ができる点です。欠点は開発費用と期間が大きく、保守やセキュリティ対応も自社で行う必要がある点です。例:大手の業務システムや独自の会員サービス。
無料CMS(例:WordPress)
WordPressなどの無料CMSは初期コストを抑えやすく、テーマやプラグインが豊富です。設定や情報が多く、比較的短期間で公開できます。中小規模の企業サイトやブログに向いています。利点は低コストと拡張性、コミュニティの情報が豊富な点です。注意点はプラグイン同士の相性や定期的な更新、セキュリティ対策が必要な点です。EC機能も専用プラグインで対応できますが、要件次第では限界が出ます。
有料CMS・SaaS
有料のCMSやSaaSはホスティング、セキュリティ、サポートを一括で提供するため、運用負担が軽くなります。内製リソースが少ない企業や、早く安定運用したい場合に適しています。利点は安定した運用とサポート体制、定期的な更新が含まれる点です。欠点はランニングコストとカスタマイズの制約です。例:会員管理や決済機能を標準で持つサービス。
選び方のポイント
- 予算:初期費用と運用コストを確認します。
- 要件の複雑さ:特殊要件ならスクラッチ、標準的ならCMSで十分です。
- 内製体制:運用を外したいならSaaS、内製できるならCMSやスクラッチを検討します。
- 将来の拡張性:長期的な増改築を見越した選択が大切です。
用途別の目安も示すと、個人ブログや小規模サイトは無料CMS、中規模の企業サイトは無料CMSかSaaS、大規模・特殊要件はスクラッチが向いています。
コンテンツ設計と制作
コンテンツタイプの決め方
目的に応じてタイプを決めます。製品の使い方を伝えるならハウツー記事、信頼を高めるならノウハウ・事例、共感を呼ぶならインタビュー・ストーリーを選びます。ターゲットが抱く具体的な疑問やゴールを想像して優先順位を付けます。
キーワードと構成案の作り方
検索意図を一つに絞り、主要キーワードと関連語をリスト化します。見出しは「問い→答え→行動」の順で組み、各見出しに要点と想定文字数、CTA(行動喚起)を入れます。ライターが執筆できるように本文要旨と参考資料を明記します。
制作フロー(企画→公開)
標準フローは企画→構成案作成→執筆→編集(事実確認・表現調整)→校正→SEO最終チェック→公開です。担当と期限を明確にし、レビュー回数を決めて遅延を防ぎます。テンプレートを用意すると効率が上がります。
品質チェックと公開後の準備
見出しの一貫性、内部リンク、画像の権利確認、要約メタの作成を確認します。公開後はアクセスや検索順位、滞在時間を定期確認し、反応が良ければ深掘り、悪ければ導入や見出しを改善します。
ライターへの指示書例とテンプレート
指示書は「タイトル、ターゲット像、目的、キーワード、見出し案、各見出しの要点、禁止表現、参考URL、納期」を箇条書きで渡します。テンプレート化すると品質と制作速度が安定します。
運用・効果測定のポイント
運用体制の作り方
編集長、企画担当、ライター・デザイナー、分析担当の役割を明確にします。編集長は方針決定と品質管理、企画担当は記事テーマの立案、ライター・デザイナーは制作、分析担当はデータ収集と改善提案を担当します。小さなチームでも「誰が最終判断をするか」を決めておくと運用がスムーズです。
更新スケジュールと役割分担
週や月ごとに更新本数を決め、カレンダー(例:Googleカレンダーやスプレッドシート)で公開日・担当を管理します。例として週3本更新なら、企画→執筆→校正→公開の流れをタイムライン化します。公開前チェックのリストを作るとミスが減ります。
分析と改善のサイクル
アクセス解析は週次の概況チェック、月次の詳細分析を基本にします。見る指標はPV、滞在時間、直帰率、コンバージョン(問い合わせや申込)です。データからは「タイトルの改善」「リライト」「内部リンク追加」「CTA見直し」など具体的な施策を出して実行します。
中長期のKPI管理と見直し
成果は半年〜1年で出ることが多いです。したがって短期の変動に一喜一憂せず、3か月ごとのKPIレビューと四半期ごとの戦略見直しを行ってください。目標は流入数、質(コンバージョン率)、継続性の3点で設定します。
具体的な改善アクション例
- 低CTRの記事:タイトルとメタ説明を改善
- 直帰率が高いページ:導線をシンプルにして内部リンクを追加
- 滞在時間が短い記事:本文に具体例や図を追加
- コンバージョンが低い場合:CTAの文言・配置をテスト
注意点
データは必ず複数期間で比較してください。一つの指標だけで判断せず、定性的なユーザーフィードバックも合わせて見ると改善策が見つかりやすくなります。











