はじめに
本記事の目的
本記事は「セキュリティ機能まるごとWebフィルター」に関する入門ガイドです。企業や個人が安全にインターネットを利用するために、どのような機能があり、どのように選べばよいかを分かりやすく説明します。
想定する読者
ネットワーク管理者や情報システム担当者はもちろん、導入を検討している経営者や在宅ワークを進める個人にも役立つ内容です。専門用語は最小限にし、具体例で補足します。
本記事で扱う内容
- Webフィルターの基本的な役割と仕組み
- 代表的なセキュリティ機能の説明
- 市場にある代表的な製品・サービス例
- 導入時の選び方のポイントと注意点
- SWG(Secure Web Gateway)との関連性
読み方のポイント
各章は独立して読めるようにしています。まずは第2章でWebフィルターの役割を確認すると理解が進みます。導入の判断に迷った時は、後半の選び方のポイントを参考にしてください。
この章は序章として全体像をつかむための案内です。次の章から具体的な機能や比較に入ります。
Webフィルターとは何か?その役割
定義
Webフィルターは、業務や利用目的にそぐわないWebサイトや危険なURLへのアクセスを制限する仕組みです。ウイルスや不正なダウンロードを防ぎ、社内の情報漏えいリスクを下げます。
具体的な仕組み
- ブラックリスト方式:危険と判定したURLを登録して遮断します。たとえば既知のマルウェア配布サイトをブロックします。
- ホワイトリスト方式:許可されたサイトだけ接続を許可します。産業用端末などで有効です。
- カテゴリフィルタリング:アダルト、SNS、動画などカテゴリ別に制限します。業務に不要な閲覧を抑制できます。
- リアルタイム検査:アクセス時にコンテンツを解析し、未知の脅威を検出します。暗号化通信の中身を確認する機能を持つ製品もあります。
役割と効果
- マルウェア感染やフィッシング被害の予防
- 業務に不要なサイトへのアクセス抑制により生産性向上
- 法令・社内規定の順守支援(ログ保存や閲覧制御)
運用では誤検知の対応や定期的なルール見直しが重要です。現場の業務に合わせた設定を心がけてください。
主要なセキュリティ機能まとめ
Webフィルターやまるごとサービスが備える代表的な機能を、できるだけ分かりやすく整理します。
URLデータベースによる精度の高いフィルタリング
最新の危険URL情報を常時反映し、悪質なサイトやフィッシングサイトを自動で遮断します。例えば、ログインを盗む偽サイトやマルウェア配布ページをブロックします。
柔軟なアクセス制限設定
禁止・許可の個別URL登録やカテゴリ単位の制御ができます。業務時間はSNSを制限し、業務で使うクラウドだけを許可する、といった運用が可能です。
外部攻撃対策
標的型攻撃や改ざんサイト、いわゆる“水飲み場”攻撃へ対応します。危険度の高いサイトを検知して接続を遮断し、従業員の端末を守ります。
内部漏洩対策
シャドーIT(社員が勝手に導入したサービス)の検出や、クラウドサービス利用の制限、ファイルの持ち出しを防ぐDLP機能を備えます。重要データの不正アップロードを遮断できます。
運用負担の軽減
クラウド型DBで分類情報を自動更新し、未分類サイトは自動分類します。メーカー側でのDBメンテナンスや更新があるため、社内の作業負担を減らせます。
これらの機能を組み合わせることで、外部の脅威と内部のリスクをまとめて管理できます。
代表的な製品・サービス例
i-FILTER(デジタルアーツ)
- 特長: 独自のデータベース方式で全URLをカテゴリ分類し、未知の新規サイトにも即時対応します。ホワイト運用を実現しやすく、クラウドDBを通じた自動分類・配信で運用負担を軽減します。
- 利用シーン: 学校や企業の内部ポリシーに合わせた厳格なアクセス制御が必要な環境に向きます。
- 補助機能: Dアラートなどサイバーリスク情報の提供やログ管理があり、運用面での支援が充実しています。
InterSafe GatewayConnection(アルシー)
- 特長: クラウド型の次世代Webフィルタリングで、導入が簡単です。テレワークや家庭学習など場所を選ばず安全に利用できます。
- 利用シーン: 在宅勤務や学習端末を多数管理する場合に向きます。端末やユーザー単位でポリシーを適用できる点が便利です。
- 長所: クラウドならではのスケーラビリティと、迅速な更新で新しい脅威にも対応しやすいです。
VxGPlatform(NTTコミュニケーションズ)
- 特長: マネージドセキュリティサービスにWebフィルター機能を組み合わせ、通信制御や業務アプリ連携に強みを持ちます。
- 利用シーン: 運用を委託したい企業や、業務アプリと一体で制御したい場合に適します。
- 長所: NTTの管理体制を活かした運用サポートで、リソースの少ない組織でも導入しやすい点が特徴です。
選び方のポイント
Webフィルターを選ぶときは、自社や個人の目的に合うかを軸に判断します。以下の観点ごとに、具体例を交えてわかりやすく説明します。
1. データベースの精度と更新頻度
悪質サイトや危険なファイル判定の元になるデータベースは重要です。更新が早ければ新しい脅威に対応できます。例:新種のフィッシングサイトを即日で弾けるかを確認します。
2. アクセス制限設定の柔軟性
職種や部署、時間帯ごとに細かくルールを作れるかを見ます。例:営業は外部サイトを許可、総務は一部カテゴリを制限といった設定が可能かです。
3. 提供形態(クラウド/オンプレ/ゲートウェイ型)
クラウドは導入が早く運用も楽、オンプレは社内ポリシーや遅延対策に有利、ゲートウェイ型はネットワーク境界で一元管理できます。自社のネットワーク構成や予算で選びます。
4. 対応OS・ブラウザ・端末
Windows、Mac、スマホ、タブレットなど対応端末を確認します。BYOD環境なら端末制御の方法も重要です。
5. 導入実績と業種別評価
同業種や同規模の導入事例を参考にします。実績が多ければ運用課題も見えやすく、安心して導入できます。
6. PC負荷とネットワーク影響
フィルターが重くて業務PCが遅くなると生産性に影響します。デモや評価版で実際の負荷を計測しましょう。
7. 運用サポート体制と管理画面
ログやレポートの見やすさ、管理者向けの操作性、問い合わせ対応の速さを確認します。誤ブロック時の解除手順も重要です。
8. コストとライセンス
初期費用、年額、ユーザー数に応じた追加費用を明確にします。将来の拡張性(ユーザー増加)も見越して比較してください。
9. 導入の進め方(簡単な手順)
1) 要件整理 2) 候補の絞り込み 3) PoC(評価導入)で負荷と判定精度を検証 4) 本導入と運用体制の整備、という流れが安全です。
最新サービス事情と注意点
現状のポイント
一部事業者のサービスは終了しています(例:NTT西日本の「セキュリティ機能まるごとWebフィルター」は2024年3月に提供終了)。今後はクラウド型や新しいサービスへ移行する必要が増えます。終了後も一部機能を制限付きで使える場合がありますが、詳細は契約先へ確認してください。
移行の選択肢(分かりやすく)
- クラウド型:設定やアップデートを事業者側で行うため管理が楽です。例として社内からでも場所を問わず適用できます。
- 新製品への乗り換え:既存の仕組みと似た操作感が残ることが多く、学習コストが低い場合があります。
移行時に注意すること
- 機能差を確認:フィルターの細かさやログ保存期間など、旧サービスと違う点を洗い出してください。
- 互換性の確認:既存の端末や業務システムと問題なく連携するか事前に試験します。
- データの扱い:設定やログの引き継ぎが必要なら事前にバックアップを取ってください。
契約・運用面での注意
- サービス終了後の提供条件を必ず書面で確認してください。制限付き継続利用の条件やサポート範囲が記載されます。
- 移行期間の二重運用や段階的導入を検討すると業務停止リスクを下げられます。
実務的な進め方(簡単な流れ)
- 利用中サービスの終了・機能差を確認
- 候補サービスを比較して試験導入
- データと設定の引き継ぎ計画を作成
- 段階的に切り替え、安定確認後に旧サービスを廃止
ご不明点があれば、現在の契約事業者へ具体的な影響やサポート内容を問い合わせることをおすすめします。
SWG(Secure Web Gateway)との関連
SWGとは
SWG(Secure Web Gateway)は、単なるWebフィルターよりも広い機能を持つ装置やサービスです。URLのブロックに加え、マルウェア検出、DLP(データ漏洩防止)、SSL復号による検査などを行います。企業ネットワークの入口でWeb通信を詳しくチェックします。
Webフィルターとの違い
Webフィルターは主にサイトのカテゴリやブラックリストでアクセスを制御します。SWGはそれに加えて、ファイルの中身を調べたり、危険な振る舞いを検知したりします。例として、社員が個人クラウドに重要ファイルをアップロードしようとした場合、DLPで遮断できます。
どんな場面で有効か
・クラウドサービス利用が多い企業
・リモートワークで場所を問わずセキュリティを確保したい場合
・機密情報の持ち出しやマルウェア感染を厳しく防ぎたい場合
導入時のポイントと注意点
導入前にトラフィック量やSSL復号の可否、運用体制を確認してください。SSL復号は検査に有効ですが、プライバシーや証明書管理の課題が出ます。誤検知の対応フローを用意し、段階的な導入で影響を抑えましょう。
他技術との連携例
SWGはCASB(クラウド利用の管理)やEDR(端末の検出・対応)と連携すると効果が高まります。ログをSIEMに集めて全体を可視化すると、インシデント対応が速くなります。












