はじめに
概要
本ドキュメントは、Webサイトのリニューアルを段階的に進めるための全体像をわかりやすくまとめたガイドです。企画・準備からデザイン、開発、テストまでの流れと、それぞれで行うべき具体的な作業や目安期間を示します。初めて担当する方でも全体を把握できるようにしています。
対象読者
- 企業でサイトリニューアルを担当する方
- プロジェクト全体の流れを学びたい方
- 外部パートナーと円滑に進めたい方
本書の目的
- フェーズごとの主要タスクと期間目安を提示します。具体例を用いてイメージをつかみやすくしています。
- プロジェクト管理で注意すべきポイントを整理します。役割分担や意思決定のタイミングを明確にします。
読み方の注意点
各章で「目的」「成果物」「関与者」「スケジュール目安」を示します。自社の状況に合わせて調整しながら読み進めてください。小さな改善でも段階的に進めると失敗を防げます。
この章では全体像を提示しました。次章から具体的な企画・準備フェーズに入ります。
企画・準備フェーズ:目的と現状分析(1~2週間)
サイトリニューアルの出発点は「目的の明確化」です。目的がぶれると作業が迷走します。ここでは目的設定から現状のデータ分析、競合調査、チーム編成までを短期間で進めます。
1) 目的と目標設定
• 目的を一文でまとめます(例:問い合わせ数を増やす、ECの購入率を上げる)。
• 具体的なKPIを決めます(例:月間問い合わせ+30%、CVRを2%→3%)。
2) 現状分析と課題抽出
• GA4やサーチコンソールで流入経路、離脱率、CVRを確認します。
• 高離脱ページや流入はあるが成果につながっていないページを洗い出します。
• 定性的にユーザーインタビューや社内ヒアリングで課題を補完します。
3) 競合サイト分析
• 主要競合3社をピックアップし、構成、導線、訴求ポイントを比較します。
• ベンチマークから自社の差別化ポイントを見つけます。
4) プロジェクトチームと役割
• 必要役割:プロジェクト責任者、PM、UX担当、デザイナー、開発担当、コンテンツ担当、意思決定者。
• 週1回の短い進捗確認と意思決定の窓口を決めます。
5) ツールとデータの使い方
• GA4、Search Console、ヒートマップを用いて定量・定性の両面で把握します。
• 現状値をベースラインにして目標を設定します。
6) このフェーズの成果物と進め方(1〜2週間)
• 成果物:目的・KPIドキュメント、現状分析レポート、競合分析、課題一覧、優先順位とリスク。
• スケジュール例:キックオフ→データ収集→分析→ステークホルダーレビュー→最終合意。
計画・分析フェーズ:戦略立案(1~2週間)
概要
現状分析を踏まえ、実行可能なリニューアル戦略を作ります。目標・対象ユーザー・優先機能を明確にし、短期(1〜3か月)と中長期(6か月〜)の目標を分けて設定します。
スケジュール策定
開始から公開までの主要マイルストーンを設定します。例:要件確定(1週)→基本設計(2週)→デザイン(2〜4週)→開発(3〜6週)→テスト・公開(1〜2週)。各工程に余裕(バッファ)を入れ、重要な承認日をカレンダー化します。
予算決定
総費用を見積もり、項目別に配分します。例:設計15%、デザイン20%、開発40%、テスト10%、予備15%。外部ツール費や運用初期費用も忘れずに見積もります。
制作パートナー選定
要件定義書を作成し、複数社に提案依頼(RFP)を出します。評価基準は実績・技術力・コミュニケーション・見積りの透明性です。候補が絞れたら小規模な実務テスト(トライアル)で相性を確認します。
リスク管理とKPI
主要リスク(納期遅延・費用超過・品質不良)を洗い出し、対策と担当を決めます。KPIは訪問数・コンバージョン率・表示速度など、リニューアルの目的に合わせて設定してください。
設計・コンテンツフェーズ:基本設計(2~4週間)
サイトマップ作成
サイト全体の構造を図で整理します。ユーザーが目的の情報に辿り着くまでの階層を明確にします。例:トップ→製品一覧→製品詳細→購入。この順序で重要ページを並べ、不要な深堀りを避けます。
ワイヤーフレーム作成
主要ページの骨格を紙やツールで描きます。ヘッダー、メイン、サイドバー、フッターなどの配置を決め、優先度の高い要素を目立たせます。例えば、製品ページでは写真と購入ボタンをファーストビューに置きます。
ユーザーフロー最適化
ユーザーが行いたい動作(購入、問い合わせ、会員登録)に沿ってページ遷移を設計します。導線を短くし、迷ったときに戻れるナビを用意します。購買フローは3〜5ステップに収めると離脱が減ります。
コンテンツ整理と企画
既存コンテンツを評価し、削除・統合・更新を判断します。各ページの目的(情報提供、集客、販売)を定め、必要なコンテンツを洗い出します。文章、画像、動画の役割を具体的に決めます。
SEO・メタデータの設計
主要キーワードを自然な形で各ページに割り当て、タイトルや説明文(meta description)を設計します。URL構造は短く分かりやすくします。
実施スケジュールとチェックリスト
2〜4週間で完了するよう週ごとのタスクを分けます。チェックリスト例:サイトマップ確定、主要ワイヤー完成、ユーザーフロー検証、コンテンツ一覧作成、SEOキーワード決定。進捗は週次で確認します。
デザイン・コンテンツフェーズ:ビジュアル制作(4~8週間以上)
デザインコンセプト決定
ブランドの核となるイメージを明確にし、色・フォント・写真テイスト・アイコンなどの共通ルールを決めます。ムードボードやスタイルガイドを作成すると、関係者の認識をそろえやすくなります。具体例では、柔らかい印象を出すためにパステル系の配色と丸みのあるフォントを採用する、といった方針を決めます。
モックアップ作成
主要ページ(トップ・サービス・お問い合わせなど)のビジュアルを作ります。デスクトップとスマホの両方でレイアウトを確認し、優先度の高い要素(CTAや重要情報)が目立つ配置にします。プロトタイプで動きや遷移を確認し、レビューで受けた修正を反映します。
コンテンツ作成
テキストは読みやすさを優先して短めの見出しと導線を用意します。画像は高解像度かつ最適化(WebPや圧縮)し、動画は短く要点を伝える編集にします。各画像には代替テキスト(alt)を付け、アクセシビリティにも配慮します。
SEOとパフォーマンス配慮
ページごとの主要キーワードを決め、タイトル・見出し・導入文に自然に組み込みます。内部リンクは関連性を持たせて回遊を促します。画像最適化や遅延読み込みで表示速度を確保し、表示速度は検索とユーザー体験の両面で重要です。
スケジュールとチェックポイント
初期コンセプト(1週)→モックアップ作成(2〜4週)→コンテンツ準備(並行で2〜4週)→最終レビューと承認(1週)。修正は回数を決めて範囲を限定すると遅延を防げます。
関係者レビューと承認
定期的なレビュー会を設け、フィードバックは優先順位を付けて管理します。最終承認ではスタイルガイドと主要ページの承認済みデータを揃え、次フェーズ(実装)へ引き渡します。
開発・コーディングフェーズ:技術実装(3~4週間)
概要
デザインをもとにHTML/CSS/JavaScriptで実装します。レスポンシブ対応やブラウザ互換、読み込み速度を意識し、必要なシステム連携(問い合わせフォーム、CMS、決済など)を組み込みます。
準備:環境と基準
開発用の環境を用意し、コーディングルールを決めます。例:コードの命名規則、フォルダ構成、バージョン管理の方法。これで作業がスムーズになります。
フロントエンド実装
HTMLは意味を持たせて記述し、CSSで見た目を整えます。スマホではレイアウトが崩れないよう、柔軟なレイアウト技術を使います。JavaScriptは必要な動作だけを軽く実装します。具体例:ナビの開閉、画像スライダー、バリデーション。
レスポンシブと互換性
複数の画面幅で表示を確認します。主要なブラウザで見え方をチェックし、小さな調整を行います。
パフォーマンス最適化
画像は適切なサイズとフォーマットにし、不要なスクリプトを減らします。読み込みを速くする工夫で離脱を減らせます。
システム連携(フォーム・CMS・決済)
問い合わせフォームはスパム対策と入力確認を入れます。CMSは運用しやすい導線で組み込み、決済は安全な方式を選びます。外部APIはエラー時の処理を必ず実装します。
テストと品質保証
単体チェック、ブラウザ/端末テスト、動作確認を行います。発見した不具合は優先度を付けて修正します。
デプロイと運用準備
ビルドを行い、本番へリリースします。ログや監視、バックアップの仕組みを整え、ロールバック手順も用意します。
納品物(例)
- コード一式(リポジトリ)
- ビルド手順書
- テスト結果と修正履歴
- 運用マニュアルと連絡先
各工程で共有を密にし、品質を保ちながらスムーズに公開することを目指します。












