はじめに
本ドキュメントは、サイトリニューアルにおける「要件定義」について、検索意図を整理し、関連する複数の記事や実務知見を横断的にまとめたものです。要件定義の重要性、具体的な手順、盛り込むべき項目、合意形成のポイントまで、実務で使える視点で解説します。
対象は、プロジェクトを主導するご担当者、制作会社や社内の関係者、初めて要件定義に関わる方です。たとえば「問い合わせ数を増やしたい」「既存サイトが遅くて離脱が増えている」といった課題を抱える方に役立ちます。具体例を交えて説明するため、専門用語は最小限にし、実務でそのまま使えるチェック項目や考え方を提示します。
本書は全7章で構成します。第2章で要件定義の定義と役割を説明し、第3章で重要性を掘り下げます。第4章は全体フローを示し、第5〜7章で実務のステップを順に解説します。章ごとに読むこともできますし、プロジェクトの進行に合わせて順番に読んでいただくと実務に落とし込みやすい構成です。
このドキュメントを通じて、リニューアルの初期段階での迷いを減らし、関係者間での合意を効率よく作る手助けができれば幸いです。
サイトリニューアルにおける「要件定義」とは何か
要件定義の説明
Webサイトリニューアルの要件定義とは、目的・コンセプト・実装する機能・予算・スケジュールなどを整理し、プロジェクトの全体像を明確にする工程です。事前に関係者で内容を共有・合意しておくことで、途中で目的がぶれずに進められます。
主な項目(具体例で補足)
- 目的:例)ECなら「購入率を上げる」、採用サイトなら「応募数を増やす」
- コンセプト:例)「シンプルで信頼感のある見せ方」
- 機能:例)レスポンシブ対応、会員機能、決済連携、検索機能
- 予算・スケジュール:概算見積とマイルストーンを明示
- 利害関係者と責任範囲:誰が意思決定するかを決める
要件定義は文書作成だけではない
要件定義は「要件定義書を作ること」だけにとどまりません。現状分析、課題抽出、方向性の決定、施策整理、関係者の合意形成までの一連のプロセスを指します。ワークショップやユーザーヒアリングで深掘りすることが多いです。
合意形成のポイント
優先度(必須/望ましい)を明確にし、フェーズ分けで実装範囲を決めます。見積の前提やリスク、受け入れ条件も書いておくと後々のトラブルを防げます。
まとめ代わりの一言
要件定義はプロジェクトの設計図です。丁寧に作るほどリニューアル成功の確率が上がります。
要件定義が重要な理由
要件定義を怠るリスク
サイトリニューアルで要件を曖昧にすると、次のような問題が起きます。
– リニューアル後も目的が達成できず、課題が残る。
– 要件の追加・修正が続き、予算とスケジュールが膨らむ。
– 制作会社との認識齟齬で、想定と違う成果物になる。
例:問い合わせを増やしたいのに導線設計を決めておらず、アクセスは増えても成果に結びつかない。
明確にすると得られる効果
要件を整理しておくと次のメリットがあります。
– 投資対効果を測りやすくなる(KPIで評価できる)。
– 制作会社にブレのない指示が出せるため、無駄な手戻りを減らせる。
– 社内の関係者調整がスムーズになり、意思決定が速くなる。
例:目標とKPIを共有しておけば、デザインや機能の優先順位が明確になります。
実務的なポイント(すぐできること)
- 背景と目的を一枚にまとめる。
- KGI/KPIを具体数値で決める(例:6か月で問い合わせ+30%)。
- 必須機能と優先度の低い機能を分ける。
- 関係者の承認フローを明確にする。
これらをやるだけでリスクを大きく減らせます。
サイトリニューアル要件定義の全体フロー
前提
要件定義は「何をどう直すか」を決める工程です。関係者の合意を得ながら進める点が重要です。
フロー(6つのステップ)
- 現状調査・分析
- 目的:現サイトの利用状況や問題を把握する。
-
成果物:アクセス分析、ユーザーヒアリング、問題点リスト(例:離脱が多い、情報が見つけにくい)。
-
目的・ゴール設定(KGI/KPI)
- 目的:リニューアルで達成したい目標を数値化する。
-
例:問い合わせ数を年20%増、掲載ページの検索到達率を80%以上。
-
施策・機能・コンテンツ方針の整理
- 目的:問題を解決する具体案を出す。
-
成果物:機能一覧、コンテンツ案、優先順位表。
-
RFP作成(必要時)
- 目的:制作会社に求める要件を明確化する。
-
ポイント:目的、必須機能、想定予算・スケジュールを明記。
-
制作会社/社内チームとの合意形成
- 目的:実装方法や役割を決める。
-
方法:ワークショップやレビューで調整。プロトタイプで確認すると効果的です。
-
要件定義書の作成
- 目的:合意内容を文書化し、開発の基準とする。
- 成果物:要件定義書(機能仕様、非機能要件、スケジュール、受け入れ基準)。
実務でのポイント
- ステークホルダーを早期に巻き込む。
- 優先度を明確にし段階実施を検討する。
- レビューを短い周期で回し、認識ずれを防ぐ。
以上が全体フローです。各ステップで作る資料と合意が、スムーズなリニューアルの鍵になります。
ステップ1 – 現状サイトの調査・分析と課題の洗い出し
概要
現状サイトの問題を整理する第一歩です。数値と利用者の声を組み合わせて、何が原因で成果が出ていないのかを明確にします。具体的な課題が見えると、その後の要件定義がブレません。
調査項目(具体例つき)
- アクセス解析:PV、セッション、離脱率、コンバージョン率(例:問い合わせフォームの送信率)や流入チャネルを確認します。Google Analyticsやサーチコンソールを使います。
- ユーザビリティ:導線が分かりにくい箇所、スマホ表示での崩れ、操作のしにくさを確認します。簡単なタスクでユーザーテストを行うと分かりやすいです。
- コンテンツ:情報の古さや不足、更新頻度をチェックします。FAQや商品説明が古いと信頼を損ないます。
- 集客:SEO上の課題、広告やSNSからの流入と成果を比較します。
- システム・運用:CMSの操作性、更新フロー、セキュリティやバックアップ状況を確認します。
調査手法
- 定量データ分析:アクセス解析で数字を把握します。
- ヒアリング:社内担当者や実際のユーザーに話を聞きます。
- 競合・ベンチマーク:類似サイトと比較して優劣を洗い出します。
課題の洗い出しと優先度付け
課題は影響度(売上への影響など)と実施コストで評価します。影響度が高く費用対効果の良い項目から優先的に対応します。
レポート化と次のステップ
発見した課題を一覧化し、証拠(画面キャプチャ、数値)を付けてレポートします。次はリニューアルの目的・KPI設定に進みます。
ステップ2 – リニューアルの目的・ゴール(KGI/KPI)の設定
目的の定義
整理した課題をビジネス観点で目的に落とし込みます。たとえば「問い合わせ件数を増やす」「ECの売上を伸ばす」「採用エントリーを増やす」「運用コストを下げる(更新の内製化)」など、具体的な成果を言葉で明確にします。
KGIとKPIの違いと設定例
KGIは最終的に達成したい成果(CV数、売上、問い合わせ件数)です。例:月間問い合わせ200件、EC月商300万円。KPIは途中の指標で、CVR(コンバージョン率)、セッション数、検索順位、滞在時間などを設定します。例:CVRを2.0%→2.5%に、オーガニック流入を月1万セッションに。
目標の決め方(実務ポイント)
- 現状の数値を基準に、達成期限を決める(例:6か月でCV+20%)。
- 数値は具体的かつ現実的に。短期・中期の目標を分けると運用しやすいです。
- 担当者(オーナー)と計測方法を明確にして、週次/月次でレビューします。
リニューアル設計との関係
設定したKGI/KPIが、サイトのコンセプト、構成、機能要件の判断基準になります。目標達成のために優先するページや導線、計測タグなどを決めましょう。
ステップ3 – 施策・コンテンツ・機能の方向性整理
概要
課題と目的に基づき、どんなサイトにするかと具体的な施策を整理します。ここでは「誰のためか」「どんな価値を伝えるか」「どんな情報をどう見せるか」「どの機能が必要か」を明確にします。
ターゲット・ペルソナ
具体的な利用者像を1–3パターン作ります。年齢、職業、悩み、サイトを使う場面を記載します。例:30代・子育て中の母、商品説明を短時間で知りたい。ペルソナは設計やコンテンツの優先度を決める基準になります。
サイトコンセプト
伝えたい価値(信頼・手軽さ・専門性など)とトーン(親しみやすい/専門的)を決めます。トップで伝えるメッセージと、主要ページで繰り返すキーフレーズを1〜2文にまとめます。
コンテンツ方針
情報の見せ方(例:Q&A、比較表、動画、事例紹介)を決めます。既存コンテンツは「残す・更新・削除」を判定し、追加すべき新規コンテンツ(ランディングページ、導入事例、FAQなど)を挙げます。検索性と読みやすさを重視し、見出しと導線を統一します。
機能要件
問い合わせフォーム、検索、会員、EC、予約、採用管理など必要機能を洗い出します。各機能を「必須(MVP)」「推奨」「将来検討」に分類します。例:問い合わせは必須、会員は推奨、複雑なCRM連携は将来検討。
優先順位とロードマップ
まずMVPを決め、リリース後に段階的に機能追加します。期間は短期(1–3か月)、中期(3–6か月)、長期(6か月以上)で分けます。リスクと工数を見積もり、依存関係を整理してください。
次のステップ
この整理を基に要件書を作成し、ワイヤー/ページ構成案を作ります。関係者の合意を得た上で、制作見積もりとスケジュールを確定します。












