はじめに
本資料は「オウンドメディア SaaS」に関する調査結果をまとめたものです。オウンドメディアの基本定義、特徴、種類、運用目的、SaaS企業における活用戦略や具体事例、SEOとの連携、そして複合的なメディア戦略の重要性について、実務に役立つ視点でわかりやすく解説します。
目的
SaaS企業がオウンドメディアを中長期的な顧客獲得とブランディング施策として活用できるよう、具体的なポイントと運用の考え方を示すことを目的としています。戦略立案や日々の運用にすぐ役立つ内容を目指します。
想定読者
SaaS事業のマーケティング担当者、プロダクトマネージャー、経営者、制作会社の担当者など、実務でオウンドメディアを活用したい方を想定しています。専門用語は最小限に抑え、具体例で補足します。
読み方の案内
第2章で基本を押さえ、第3〜5章で特徴や目的、第6〜7章でSaaS向けの戦略と事例を学べます。第8章はSEOとの連携、第9章で複合的なメディア戦略の重要性をまとめます。各章は実務で使える視点で構成しています。
それでは、まず第2章の基本定義からご覧ください。
オウンドメディアの基本定義
定義
オウンドメディア(Owned Media)は、企業や組織が自社で所有し、編集・運用するメディアを指します。自社のウェブサイトやブログ、商品やサービスの情報を集めた専門サイトが典型です。自分たちで情報を作り、発信する「場」を意味します。
含まれるメディア
- 企業のコーポレートサイトや採用サイト
- 企業ブログやナレッジサイト
- メールマガジンや会員向けコンテンツ
- 公式のSNSアカウント(運用と編集を自社で行う場合)
- 会社案内などの紙媒体
なぜ重要か
自社の考えや価値を直接伝えられます。情報を蓄積して資産化でき、検索や会員との関係構築で長期的な効果が期待できます。
主な特徴
- 編集権を自社が持つため、ブランドの一貫性を保てます。
- 発信頻度や内容を自由に決められます。
- ユーザーの行動を計測しやすく、改善につなげやすいです。
メリット
集客、認知、信頼構築、顧客教育など多用途で使えます。広告費に頼らず継続的な接点を作れる点が強みです。
注意点
運用コストやコンテンツの質を維持する必要があります。放置すると逆効果になることもあります。品質と継続性を計画して運用してください。
具体例(簡単)
- サービス紹介と事例を載せた企業ブログ
- 専門知識を深掘りするホワイトペーパーの配布ページ
- 登録者向けに配信するメールマガジン
以上がオウンドメディアの基本的な定義と特徴です。
オウンドメディアの特徴と他のメディアとの違い
1. 主な特徴
オウンドメディアは企業が自分のドメイン上で運用するメディアです。情報の公開頻度や表現を自由に決められるため、ブランドの価値や専門性を積み上げやすいです。長期的にコンテンツを蓄積すると検索からの自然流入が増え、資産として残せます。
2. ペイドメディア(広告)との違い
広告は費用を払って露出を得ます。短期的な効果は出やすいですが、費用を止めれば露出も止まります。一方、オウンドメディアは初期と運用のコストはかかりますが、蓄積された記事やコンテンツが継続的な流入を生みます。
3. アーンドメディア(口コミ・SNS)との違い
口コミやSNSは第三者の信頼を得やすく拡散力がありますが、コントロールは難しいです。オウンドメディアは発信を自社で管理でき、誤解が生じた際にも修正や補足がしやすい特徴があります。
4. 実務での利点と注意点
利点は、専門的な情報発信でリード獲得や信頼構築につながる点です。注意点は、継続した更新と品質管理が必要なこと、成果が出るまで時間がかかることです。運用体制と指標を明確にして取り組むことが重要です。
5. 具体例(使い分け)
・短期の認知拡大:広告
・評判や共感の獲得:SNS
・深い情報提供と長期的資産化:オウンドメディア
以上の違いを踏まえ、目的に応じて使い分けると効果が高まります。
オウンドメディアの主要な種類
はじめに
オウンドメディアは形式ごとに得意分野が異なります。ここでは代表的な種類を挙げ、それぞれの特徴と運用のコツを分かりやすく説明します。
ブログ(企業・オウンドブログ)
- 特徴: テキスト中心で検索流入を狙いやすいです。
- メリット: 専門知識を蓄積でき、長期的な資産になります。
- 活用ポイント: 読者の疑問に答える記事を継続的に投稿します。キーワードを意識して、読みやすい見出しを付けます。
- 具体例: 製品の使い方ガイドや業界の解説記事。
動画コンテンツ(YouTubeなど)
- 特徴: 視覚と音声で直感的に伝えられます。
- メリット: 製品デモやチュートリアルで理解を早めます。
- 活用ポイント: 1本を短くまとめ、シリーズ化して定期配信します。
メルマガ(メールマガジン)
- 特徴: 登録者に直接届く媒体です。
- メリット: 関心度の高い顧客と継続的に接点を持てます。
- 活用ポイント: 有益な情報を定期的に送り、開封率を改善する工夫をします。
ソーシャルメディア(Twitter、Facebook、LinkedIn等)
- 特徴: 拡散力が高く双方向のやり取りに向きます。
- メリット: ブランディングや即時の反応が得られます。
- 活用ポイント: 投稿を短くし、画像やリンクで誘導します。コミュニティ形成を意識します。
ポッドキャスト
- 特徴: 音声で深掘りした話題を提供できます。
- メリット: 通勤などの隙間時間にリーチできます。
- 活用ポイント: 毎回テーマを決めて定期配信し、ゲストを招くと幅が広がります。
その他(ホワイトペーパー、FAQなど)
- 特徴: 詳細な資料や自己解決を促すコンテンツです。
- 活用ポイント: リード獲得やサポート工数の削減に役立てます。
オウンドメディアの運用目的
目的の全体像
オウンドメディアは短期的な広告効果を狙う場ではなく、中長期で顧客を育てブランドを強めるための資産です。企業が自社で継続的にコンテンツを蓄積し、検索意図や顧客課題に応えることで安定した集客と認知向上を目指します。
主要な目的と具体例
- ブランディング
- 自社の考え方や価値観を示し、信頼を築きます。例:企業コラムで導入事例や理念を紹介。
- ナーチャリング(見込み客育成)
- 導入前の情報提供や比較記事で検討段階の顧客を育て、問い合わせや資料請求につなげます。
- リード獲得と収益化
- 無料コンテンツからホワイトペーパーやウェビナーへ誘導し、商談化率を高めます。
- カスタマーサクセス/教育
- FAQや操作ガイドで既存顧客の満足度と継続率を向上させます。
測定指標(KPI)
- オーガニック流入、滞在時間、直帰率
- メール登録数、資料請求数、商談化率
- チャーン率や顧客満足度(既存顧客向け)
優先順位の付け方と運用の注意点
事業目標とターゲットに合わせて目的を絞ってください。例えば新規拡大期は認知とリード重視、成熟期は顧客維持とアップセル重視です。コンテンツは一貫したトーンで提供し、効果測定に基づいて改善を続けることが重要です。
SaaS企業におけるオウンドメディア活用戦略
SaaSマーケティングとオウンドメディアの関係
SaaSは試用や比較が多く、購買までに時間がかかります。オウンドメディアは認知から検討、導入後まで継続的に接点を作れます。例えば、導入前の調査段階では比較記事や業界トレンド、検討段階では導入事例やROIの計算ツールを提供します。
顧客ジャーニーに沿ったコンテンツ設計
見込み客の行動を段階的に想定して、必要な情報を用意します。トップファネル向けは課題提示のブログ、ミドルはケーススタディや比較表、ボトムは無料トライアルやデモ申込への誘導です。各段階でのCTAを明確にします。
コンテンツの種類と役割(例)
- ブログ:課題認知、SEO獲得
- ホワイトペーパー/eBook:リード獲得、詳細説明
- 導入事例:信頼獲得、導入後イメージ化
- 動画/ウェビナー:操作説明、疑問解消
運用体制とKPI
小さな編成でも編集方針、公開頻度、チャネル分担を決めます。KPIはページ滞在時間、リード数、デモ申込数、リードから顧客化率を追います。定期的に成果を見て優先度を調整します。
継続的な信頼構築の工夫
製品アップデートや成功事例を定期発信し、顧客の声を掲載します。教育コンテンツを充実させると解約防止にもつながります。迅速な回答やFAQ整備で導入のハードルを下げます。
SaaS企業の具体的なオウンドメディア事例
事例:株式会社SmartHR
人事労務SaaSのリーディングカンパニーであるSmartHRは、人事・労務に関する幅広い情報を継続的に発信しています。法改正の解説、実務フローの手順、導入事例やテンプレート配布など、ターゲットの課題に直結するコンテンツを揃えています。
コンテンツの特徴
- 法改正や制度のポイントを分かりやすく噛み砕いて説明
- 実務で使える手順書やテンプレートを無料提供
- 導入企業の事例やインタビューで信頼性を補強
読者接点と配信手段
- 記事のほか、メールマガジンやホワイトペーパーで深掘り情報を配布
- セミナーやウェビナーで双方向の関係を構築
成果と学び
- 継続的な有益情報の提供でブランド認知が向上
- 実務に役立つコンテンツがリード獲得につながる
- 製品チームと編集チームが連携することで、読者の課題に即した情報を作成できる
SaaS企業が参考にすべき点
- ターゲットの業務課題に焦点を当てる
- 無料で使える実務資源を用意する
- コンテンツ配信と営業の接点を設計する
- 継続的に更新し、信頼を積み重ねる
オウンドメディアとSEOの連携
概要
オウンドメディアSEOとは、自社が所有するWebメディアを通じて検索エンジンからの流入を増やし、集客・ブランディング・コンバージョンにつなげる施策です。SaaS企業にとって見込み顧客との接点を作る中長期の重要戦略です。
重要なポイント
- ユーザー意図に基づくキーワード設計:検索の背景(課題解決、比較、導入方法)を想像し、記事を作ります。例:『○○の選び方』や『導入ステップ』など。
- 良質で役立つコンテンツ:実用的な手順やケーススタディを中心にして、長く読まれるコンテンツを増やします。
- 内部リンクとコンテンツハブ:関連する記事をつなげてサイト内で回遊を促します。これにより検索エンジンも価値を認識しやすくなります。
- 技術的な最適化:ページ速度、モバイル対応、構造化データを整えます。
測定と改善
オーガニック流入、コンバージョン率、滞在時間などを定期的に確認し、検索順位だけでなくビジネス成果で評価します。
運用のコツ
マーケ、プロダクト、カスタマーサクセスが連携してFAQや導入事例をコンテンツ化すると効果が早く出ます。
最初の3ステップ
- 顧客の検索行動を想定したキーワードリスト作成
- 優先度の高いテーマで長尺の実用コンテンツを制作
- 技術的SEOのチェックと内部リンク設計
これらを継続して運用すると、SaaSの見込み顧客接点が着実に増えます。
複合的なメディア戦略の重要性
はじめに
オウンドメディアは長期的な資産になりますが、単独では効果が出るまで時間がかかります。即効性のあるペイドメディアや口コミを生むアーンドメディアと組み合わせることで、認知と信頼を同時に高められます。SaaS企業では特にこの統合が重要です。
各メディアの役割
- オウンドメディア:製品の使い方や事例を詳しく伝え、顧客教育とブランド資産を築きます(例:導入ガイド、ケーススタディ)。
- ペイドメディア:短期間でトラフィックやリードを集めます(例:検索広告、SNS広告)。
- アーンドメディア:ユーザーの声や第三者評価が信頼を補強します(例:口コミ、レビュー)。
- SNS・メール:接触頻度を高める役割で、オウンドの記事を届けて関係を深めます。
組み合わせの実践例
- 新機能リリース:広告で認知→オウンドで詳細公開→メールで既存顧客へ案内→満足者の声をアーンドへ誘導。
- リード育成:広告で獲得→ホワイトペーパーで教育→ステップメールで商談化。
計測と改善
獲得単価、記事の滞在時間、コンバージョン率、リテンションを指標に定期的に見直します。効果の出やすい組み合わせをA/Bで検証し、成功事例を再利用します。
運用のポイント
一貫したメッセージ、編集カレンダーで継続性を保つことが重要です。既存コンテンツを広告やSNS用に再編集して労力を節約し、顧客の声を積極的に取り上げて信頼を高めてください。











