はじめに
概要
この文書は、アクセサリー素材として広く使われるSUS316L(サージカルステンレス)について説明します。医療用器具にも用いられる高品質な素材で、耐食性や肌に優しい点が特徴です。本書ではその特徴や、他のステンレス素材との違い、メリットと注意点をやさしく解説します。
目的
SUS316Lがどんな素材かを知り、アクセサリー選びや製作で役立てていただくことが目的です。専門用語は最小限にし、具体例を使ってわかりやすく説明します。
想定読者
アクセサリーを購入・製作する方、金属アレルギーが気になる方、素材選びを学びたい方に向けています。
本書の構成
第2章で「サージカルステンレスとは」を説明し、第3章で素材の特徴を詳述します。第4章で他のステンレスとの違いを比較し、第5章でメリットと注意点をまとめます。
まずは基礎を抑えて、安心して素材を選べるようにしていきましょう。
サージカルステンレスとは
定義
サージカルステンレスとは、鉄をベースにクロムやモリブデンなどの金属を加えたステンレス合金で、もともと医療現場で使われる「医療用ステンレス」を指します。アクセサリー分野では特にSUS316Lがよく使われます。
SUS316Lについてやさしく
SUS316Lは、さびにくさ(耐食性)に優れたタイプです。身近な例で言うと、汗や水に触れることが多い時計やピアス、ネックレスに向いています。金属の表面が酸化しにくいため、光沢が長持ちします。
日常での応用例
- 医療器具(手術器具や器具のパーツ)
- キッチン用品(調理器具やシンク)
- アクセサリー(ボディピアス、ブレスレット、ペンダント)
なぜアクセサリーに向くのか
汗や海水などの影響を受けにくく、汚れも落としやすい点が理由です。また、研磨(みがき)を施すと美しい光沢が出るため、見た目も良く仕上がります。
注意点(簡単に)
完全にアレルギーが出ないわけではありません。特に金属アレルギーのある方は、実際に肌につけて様子を見るか、専門家に相談することをおすすめします。
素材の特徴
表面の保護膜(酸化被膜)
サージカルステンレスは表面にごく薄い酸化被膜が自然にできます。この膜が金属の内部を守り、金属イオンが溶け出しにくくします。結果として金属アレルギーが起きにくいと考えられますが、完全に起きないわけではありません。肌が敏感な方は着用前にパッチテストを行うと安心です。
錆びにくさと変色の少なさ
クロムなどの成分により酸化被膜が安定します。水や汗で錆びにくく、変色も起こりにくいです。日常使いのピアスや腕時計、キッチン用品に向いています。
お手入れと長持ちのコツ
基本は柔らかい布で拭くだけで十分です。汚れがひどいときは中性洗剤を薄めて使ってください。塩素系や強い酸・アルカリは避けると長持ちします。プラチナや金のように磨けば光る性質はありますが、表面処理(メッキ)が施されている場合はこすりすぎると剥がれることがあります。
注意点
高濃度の塩分や酸性の汗、傷が深いと保護膜が弱まり、錆やアレルギー反応が出ることがあります。長期間の激しい海水や温泉などでの使用は注意してください。
他のステンレス素材との違い
概要
アクセサリー素材としてよく使われるのはSUS316LとSUS304です。どちらも見た目は似ていて錆びにくいですが、性質と向く用途が少し異なります。
耐食性と使う場所
SUS316Lはモリブデンを含むため、海水や汗など塩分に強く、ピアスやネックレスのように肌に長く触れる物に向きます。SUS304は日常生活の水や汗に十分耐えますが、海辺での使用や塩分が多い環境ではSUS316Lのほうが安心です。
加工性とデザインの向き不向き
SUS304は加工しやすく、薄いプレートや細かなパーツを作るのに適します。繊細なデザインや大量生産の普段使いアクセサリーによく使われます。SUS316Lは硬めで加工はやや難しいため、シンプルで耐久性を重視したデザインに向きます。
価格と見た目
同等の仕上げなら見た目の差はほとんど分かりません。一般的にSUS316Lは材料価格がやや高めです。予算と用途のバランスで選ぶとよいです。
その他の違い(アレルギー・磁性)
どちらも比較的アレルギー起こしにくい素材ですが、個人差はあります。基本的に非磁性ですが、加工や熱処理で弱い磁性を帯びることがあります。
選び方のポイント
使用環境(海や汗に触れるか)、デザインの細かさ、予算の順で優先順位を考えてください。頻繁に水に触れるものや長く肌に触れる物はSUS316Lを検討すると安心です。
メリットと注意点
メリット
サージカルステンレスは金属アレルギーが出にくく、日常使いに向きます。アクセサリーや腕時計、キッチン用品などで使われ、汗や水、海水にも強く錆びにくい特長があります。価格も比較的手頃で、手入れが簡単なため普段使いの品として経済的です。
注意点
重度のニッケルアレルギーがある場合は反応が出る可能性があります。全員に安全とは限らないため、心配な方はパッチテストや短時間の着用で様子を確認してください。”サージカル”と表記されていても実際の材質は店や製品で異なります。素材表記(例:316Lなど)を確認し、可能なら販売元に成分を問い合わせてください。
選び方のポイント
・成分表示があるか確認する。数字(例:316L)は耐食性や低アレルギー性の目安になります。・メッキ製品は時間とともに剥がれる場合があるため、長く使うなら無垢のものを選ぶと安心です。・重度のアレルギーがある場合はチタンやニオブなど代替素材を検討してください。
お手入れのコツ
中性洗剤と柔らかい布で洗い、よく乾かしてください。海水や汗に触れた後は水で軽く流すと寿命が延びます。洗剤の強い薬品や研磨剤は避けると表面の保護が保てます。












