はじめに
本稿の目的
本稿では、オウンドメディアと自社サイト（コーポレートサイト・公式サイト）の違いをわかりやすく解説します。役割や目的、扱うコンテンツ、更新頻度、想定するターゲット層を比べ、それぞれをどう使い分けると効果的かを示します。
なぜ区別が大切か
表面は似て見えても、目的が違えば作り方や運用が変わります。例えば、読み物中心のブログであれば頻繁に更新して信頼を積み上げます。一方で会社の沿革や採用情報は正確さが重要で、更新は少なくとも構造化します。目的を明確にすると、時間と予算を無駄にしません。
対象読者
マーケティングや広報を担当する方、経営者、制作を外注する方に向けた内容です。専門知識がなくても理解できるよう、具体例を交えて丁寧に説明します。
本稿の構成
第2章: 役割・目的の違い
第3章: コンテンツと更新頻度の違い
第4章: ターゲット・導線の違い
第5章: オウンドメディアと自社サイトの比較表
第6章: どう使い分ければよいか
次章から順に、それぞれの特徴を具体的に見ていきます。
役割・目的の違い
目的の違い
自社サイトは企業の公式な案内所です。会社概要、サービス説明、採用情報、問い合わせ先などを整理して、信頼を伝えることが主目的です。一方、オウンドメディアは見込み客やファンを増やすための発信拠点です。コラムやブログで問題解決や興味を引き、検索やSNSからの流入を狙います。
伝える内容の違い
自社サイトでは「何をしている会社か」「どう連絡するか」を明確に示します。具体例として、料金表や導入事例、社長メッセージを掲載します。オウンドメディアでは「読者の悩みを解決する情報」や「業界の知識」を提供します。例えば、使い方ガイド、比較記事、実践的なノウハウ記事が該当します。
見込み客との関係の違い
自社サイトは信頼の獲得とお問い合わせの窓口として機能します。購入や相談に至る最終段階を支えます。オウンドメディアは関心を引いて関係を育てる役割を担います。初めて知る層を取り込み、継続的な接触でファン化を促します。
運用や評価の違い
自社サイトは正確さや最新情報の更新が重要で、直帰率や問い合わせ数で効果を見ます。オウンドメディアは記事の数や更新頻度、流入数、エンゲージメントで評価します。両者を連携させると、流入から信頼獲得、問い合わせまでの導線が整います。
コンテンツと更新頻度の違い
自社サイトに向くコンテンツ
自社サイトでは会社概要、サービス紹介、料金表、お問い合わせ、採用情報、プレスリリースなど固定的な情報を中心に掲載します。目的は信頼形成と問い合わせ誘導です。たとえば事業内容ページや代表あいさつは頻繁に変えません。
オウンドメディアに向くコンテンツ
オウンドメディアは読者の課題解決や興味を満たす記事が中心です。ノウハウ、事例インタビュー、比較記事、How-to、業界のトレンド解説などを掲載します。具体例として「導入事例」「使い方ガイド」「失敗しない選び方」などが挙げられます。
更新頻度の目安
自社サイトは更新頻度が低めで、必要なときに随時更新します。年に数回から四半期ごとが目安です。オウンドメディアは週次から月次で継続的に投稿し、蓄積で効果を高めます。SEOや読者維持を考えると最低でも月数本の更新がおすすめです。
運用上のポイント
・自社サイトは正確さと安定性を重視し、更新履歴を管理します。
・オウンドメディアは読者視点で企画し、定期的な編集カレンダーを作ります。
・両者を連携させ、オウンド記事からサービスページへ導線を張ると効果的です。
ターゲット・導線の違い
ターゲットの違い
自社サイトは企業名やサービス名を知っている“指名検索者”に向けた公式情報を届ける場です。住所や料金、サポート情報のような確定的な情報を求める人に向いています。一方、オウンドメディアは自社を知らない潜在層に届くことが役割です。課題や疑問を検索する人に寄り添い、関心を育てます。
導線（導く流れ）の違い
自社サイトは問い合わせや購入ページへの直接的な導線を重視します。ナビゲーションやフォーム、商品ページを明確に配置します。オウンドメディアはまず読了や信頼獲得を目的にし、その後に自社サイトや資料請求ページへ誘導します。記事内リンクやおすすめ記事、記事末のCTA（行動喚起）を使って段階的に誘導します。
具体例：導線設計の例
- 自社サイト：トップ→料金ページ→申し込みフォーム。企業名で来た人が短時間で申し込める導線を作ります。
- オウンドメディア：問題提起の記事→解決策の紹介記事→事例記事→「詳しくは公式サイトへ」ボタン。まず関心を高め、徐々に問い合わせにつなげます。
計測と改善のポイント
導線ごとにKPIを分けます。自社サイトは直帰率や申込数、オウンドメディアは滞在時間や記事から公式サイトへのクリック数を重視します。導線の途中で離脱が多ければリンクやCTAの文言、配置を変えてテストします。少しの改善でもコンバージョンに大きく効きます。
オウンドメディアと自社サイトの比較表
以下に主要な観点ごとの比較表と、補足の説明を示します。
| 項目 | 自社サイト | オウンドメディア |
|---|---|---|
| 主な目的 | 企業情報の提示と信頼の担保 | 集客・リード獲得・エンゲージメント向上 |
| コンテンツ | 会社概要・サービス紹介・採用・お知らせ | ブログ・コラム・事例・ハウツー記事 |
| ターゲット | 企業名やサービス名を知っている人 | 課題やキーワードで検索する潜在層 |
| 更新頻度 | 低め（必要時更新） | 中〜高（定期的な発信） |
| 位置づけ | 公式の名刺・受付窓口 | 集客の入口、認知拡大の核 |
| 導線（CTA） | 会社概要・問い合わせ・資料DL | メール登録・資料請求・コンテンツ誘導 |
| 計測指標 | 信頼度・コンバージョン（問い合わせ） | PV・流入経路・リード数 |
| 具体例 | 企業の会社案内ページ、IR情報 | 業界トレンドの解説記事、導入事例 |
補足説明
- 主な目的: 自社サイトは会社の顔として信頼を示します。対してオウンドメディアは関心を引いて関係を深めます。
- コンテンツ: 自社サイトは公式情報中心、オウンドメディアは読者の課題解決に役立つ記事を意識します。
- ターゲット: すでに社名を知る人には自社サイト、課題解決を探す人にはオウンドメディアが有効です。
- 更新頻度と運用: 自社サイトは安定的な情報提供、オウンドメディアは継続的な発信でSEOや認知拡大を狙います。
- 導線設計: 自社サイトは問い合わせや購入につなげ、オウンドメディアは関心を育ててリード獲得に導きます。
必要なら、この表を元に自社の使い分け方や運用体制の作り方もご提案します。
どう使い分ければよいか
まず基本方針として、自社サイトは名刺の役割を担わせ、会社情報やサービスを整理してください。会社概要、料金、導入事例、問い合わせフォームは自社サイトに必ず置きます。
自社サイトの使い方
– 目的：信頼形成と問い合わせ誘導
– 内容：固定ページ中心（会社情報、サービス詳細、FAQ、導入事例）
– 更新頻度：必要なときに都度更新（安定性重視）
オウンドメディアの使い方
– 目的：集客と検索流入の拡大
– 内容：ブログ記事、ハウツー、業界トレンド、ユーザー課題の解決記事
– 更新頻度：定期的に（週1〜月2回が目安）
– 技術面：別ドメインかサブディレクトリを選び、SEOの戦略に合わせて設定します。小規模ならサブディレクトリで始めると管理が楽です。
導線設計とCTA
– 記事からはサービスページや問い合わせへ明確に誘導します。具体例：記事末に「導入事例を見る」「無料相談はこちら」のボタンを置く。
運用の現実的な分け方（ケース別）
– リソース少：自社サイト内にブログ（サブディレクトリ）で始める
– ブランド強化・専門性重視：オウンドメディアを別ドメインで独立運用
最後に運用チェックリスト
– 自社サイトに必須情報が揃っているか
– オウンドメディアからの流入で問い合わせが増えているか
– 記事に明確な導線とCTAがあるか
これらを確認しながら、目的に応じて両者を使い分けてください。
