はじめに
本資料の目的
本資料は、オウンドメディアの目標設定について、わかりやすく丁寧に解説するために作成しました。目標を明確にすることがなぜ重要か、目的と目標の違い、KGIやKPIの役割、具体的な設定手順や実例までを順を追って説明します。初心者から実務担当者まで、幅広く役立つ内容を目指しています。
対象読者
- これからオウンドメディアを始める方
- 現在運用しているが成果が出にくいと感じる方
- マーケティングや広報で目標設定を担当する方
具体的な用語は最小限にし、例を交えて説明しますので、専門知識がなくても読み進められます。
この章で伝えたいこと
まずは全体の目的を共有します。本書は単なる理論書ではなく、実務で使える手順と指標を提供します。各章で具体的なステップや指標例を示しますので、自社の状況に合わせて実践してください。次章から、目標設定の重要性と具体的な作り方に入ります。
オウンドメディアの目標設定が重要な理由
はじめに
オウンドメディア運営は、ただ情報を発信するだけでは成果につながりません。まずは何を達成したいのかを明確にすることが出発点になります。目標が定まれば、行動や評価の軸がブレずに済みます。
目標が曖昧だと起きる具体的な問題
- 効果測定ができず、改善点が見えにくい
- コンテンツの方向性が迷走し、読者が定着しない
- リソース配分が不適切になり、時間や費用が無駄になる
実例:アクセス増だけを追うと、短期の流入は増えても購買や問い合わせにつながらないことがあります。
明確な目標がもたらす効果
- 成果を数値で把握でき、改善の優先順位をつけやすくなります
- チーム内で役割分担が明確になり効率が上がります
- 読者に届く価値あるコンテンツを継続して提供できます
段階的に計画する重要性
目標は短期・中期・長期に分けて設定してください。短期は検証、長期はブランドや売上の向上に焦点を当てます。段階的に設計すれば、小さな成功を積み上げて大きな成果へつなげられます。
目的(Purpose)と目標(Goal)の違い
定義
目的(Purpose)は組織やオウンドメディアが目指す理想の状態や成し遂げたいことを指します。例としてブランド認知の拡大やリード獲得など、長期的で抽象的な方向性を表します。
目標(Goal)は目的を達成するための具体的で測定可能な数値や期限です。たとえば「3か月でリード100件獲得」「半年でサイト訪問者を30%増やす」など、短期的で明確に評価できる内容にします。
違いのポイント
- 抽象度:目的は抽象的、目標は具体的
- 期間:目的は長期的、目標は短期〜中期的
- 測定性:目的は方向性、目標は数値や期限で測れる
具体例
- 目的:ブランド認知を高める
- 目標:6か月でオーガニック流入を20%増やす
- 目的:見込み客(リード)を増やす
- 目標:3か月でホワイトペーパーダウンロード100件
使い分けと実務への応用
目的を起点に、目標を複数設定して施策を組み立てます。目標を立てる際は具体的な数値、期限、担当を決め、効果測定の方法を明確にします。こうすると日々の施策がぶれず、結果に対する改善も行いやすくなります。
KGIとKPIの関係・役割
KGIとは
KGIは最終的に達成したい数値目標です。例として「年間売上12億円」「新規リード月間100件」など、事業の成否を判断する尺度になります。
KPIとは
KPIはKGIに到達するための中間指標や行動目標です。たとえば「月10本記事公開」「月間PV数」「資料請求数」「主要キーワードの検索順位」など、日々の施策で計測できる項目です。
KGIとKPIの関係・役割
KGIはゴール、KPIはその過程を表す地図です。KPIは原因と結果の関係を示し、どの施策がKGIに効くかを検証できます。KPIを定めることで施策の優先順位を決めやすくなります。
KPIツリーで可視化する
KGI→主要KPI→サブKPI→具体的アクション、の順で階層化します。例:
KGI:年間売上12億 → 主要KPI:新規リード月100件 → サブKPI:月間PV10万・資料請求率1% → アクション:月10本記事・LP改善
このように分解すると、担当者がやるべき具体行動まで落とし込めます。
実務でのポイント
・KPIは少数に絞る。複雑にしすぎると運用が止まります。
・定期的に見直す(週次・月次)。数値の変化から仮説を立て改善へつなげます。
・定量指標だけでなく、質的な観察も併用すると原因解析が深まります。
目標設定の具体的な手順
オウンドメディアの目標は、段階的に決めると達成しやすくなります。ここでは実務で使える4つの手順をわかりやすく説明します。
1. 自社の課題・目的を明確化
- まず何を解決したいかを言語化します(例:新規顧客開拓、ブランド認知向上、既存顧客のLTV向上)。
- 対象顧客や提供価値を簡潔にまとめ、優先順位を付けます。
2. KGIの設定(数値化+期限)
- 最終的な成果を数値と期限で決めます(例:半年で月間リード50件)。
- KGIは1つに絞ると運用がぶれません。現状(ベースライン)を把握して差分を見ます。
3. KPIの設定(KPIツリー作成)
- KGIを達成するための主要な要因を上位KPIに分解し、さらに施策レベルに落とします。
- 例(KGI=月間リード50件):
- 記事本数(月10本)→PV増加
- 検索流入(上位10位以内)→オーガニック流入
- 訪問あたりのコンバージョン率(例2%)→リード数に直結
- 定量と定性を混ぜてツリー化すると、どの施策が足りないか分かります。
4. KPIの妥当性確認と定期レビュー
- ベースライン、リソース、工数から現実性を評価します。
- 進捗は週次で短期チェック、月次で詳細レビュー、四半期でKGIの見直しを行います。
- 指標が現状と大きく乖離する場合は原因を分析し、目標か施策を修正します。
実行時は各指標の担当者を決め、期限と評価方法を明確にしてください。小さな仮説検証を繰り返して改善を重ねると、着実に成果が出ます。
オウンドメディアの主な目的とKPI例
1. 企業・サービスの認知拡大
- 主なKPI: PV(ページビュー)数、ユニークユーザー数、SNSシェア数、リーチ
- 説明: 多くの人に知ってもらう段階では閲覧数やシェアが大事です。例:記事のPVが増え、SNSで拡散されれば認知が広がったと判断できます。
2. リード(見込み客)獲得
- 主なKPI: 問い合わせ数、資料請求数、ホワイトペーパーダウンロード数、メルマガ登録数
- 説明: 興味を持った人が具体的なアクションを取るかを測ります。問い合わせの質も確認するとよいです。
3. 採用強化
- 主なKPI: エントリー数、書類選考通過数、面接実施数、採用決定数
- 説明: 採用目的なら募集ページの誘導や応募率を高める施策に注力します。
4. 商品・サービスの購入拡大
- 主なKPI: 売上、販売数、注文数、コンバージョン率(購入率)、利益
- 説明: 実際の購入に結びつく指標を重視します。サイト内の導線改善で購入率を上げます。
5. フェーズや目的に応じたKPI選定
- ガイド: 初期は認知系KPI、中盤はリード系、最終は売上系を重視します。短期の「入口」指標(例:PV)と長期の「成果」指標(例:売上)を両方持つとバランスよく運用できます。
現実的かつ達成可能な目標設定のポイント
概要
運用初期は達成可能な数値目標から始め、段階的に引き上げます。過大な目標は挫折を招くため、小さな成功を積み重ねる姿勢が大切です。
具体的なポイント
- ベースラインを把握する:過去データや初期の指標を基準にします。例)現在の月間PVが1万なら、初期目標は3か月で20%増など現実的に設定します。
- 段階的な引き上げ:3か月単位で目標を見直し、達成率に応じて次の目標を決めます。
- 競合と比較する:主要競合3社の指標を調べ、自社の立ち位置を理解します。流入経路やコンテンツ傾向をチェックします。
チームでの共有方法
- KGI/KPIを可視化したダッシュボードを用意します。
- 週次の進捗会議でKPIの変化を確認し、課題を明確にします。
- ロードマップをチームで共有し、各自の担当と期限を明示します。
チェック頻度と改善サイクル
- KPIは週次で確認、戦略は月次で見直します。
- 小さな実験を繰り返し、効果が出た施策をスケールします。
注意点
- 成果が出るまで時間がかかる指標(SEOなど)は忍耐が必要です。
- 目標は柔軟に見直し、状況に合わせて調整してください。
具体的な目標設定事例・KPIツリー例
概要
具体例を通してKGI→KPIの分解方法と、KPIツリーの作り方を示します。数値は分かりやすい例です。
事例1:半年後に月間リード100件(KGI)
- 上位KPIの例
- 月間記事数:10本(新規流入の母数を増やす)
- 月間PV:10,000(集客指標)
- 資料請求:20件(サイト経由の直接リード)
- 考え方
- PV→資料請求のコンバージョン率(CVR)を仮定して逆算します(例:PV1万×0.2%=20件)。
- 残りのリードはメール登録や営業チャネルで補うなど、複数指標で合算してKGIを達成します。
- 記事はテーマ別に担当を割り当て、公開スケジュールを定めます。
事例2:検索順位の段階的目標
- フェーズ目標
- 3ヶ月後:主要キーワードで30位以内
- 6ヶ月後:主要キーワードで10位以内
- KPI例(各フェーズで計測)
- 平均掲載順位、インプレッション、クリック数、CTR、被リンク数、コンテンツ数
- 初期は記事量と内部対策、中期以降に外部施策を強化します。
KPIツリー作成の手順(簡易)
- KGIを明確にする(例:月間リード100件)
- KGIを達成するための主要要素に分解(流入・誘導・成約)
- 各要素に具体的なKPIを設定(PV、記事数、CVRなど)
- 数値を逆算して目標値を決定
- 役割・期限・計測頻度を定める
簡易KPIツリー(テキスト図)
KGI: 月間リード100
├─ 流入: PV10,000 (記事10本)
├─ 誘導: 資料請求20 / メール登録50
└─ 成約: 営業対応で30件化
このように段階的に分解すると具体的な施策と担当が見えやすくなります。
目標設定後の運用と改善
モニタリングの頻度と方法
KPIは週次と月次で見ます。週次は短期の異常検知や改善施策の効果確認、月次は傾向と原因分析に使います。ダッシュボードで主要指標を自動集計し、担当者が見やすくします。
データ分析と課題発見
未達の指標は原因を深掘りします。例えば流入減なら流入経路別に分解し、コンテンツ別の滞在時間や離脱率も確認します。定量データに加え、ユーザーヒアリングやコメントも活用します。
改善施策の立案と優先順位付け
課題ごとに仮説を立て、小さな実験で検証します。影響度と工数で優先順位を付け、まず費用対効果の高い施策から実行します。
PDCAの回し方(実践ステップ)
1) Plan:目標と仮説、成功基準を明確化
2) Do:施策を実行(A/Bテストやコンテンツ修正)
3) Check:データで効果を検証
4) Act:効果があれば標準化、なければ次の仮説へ
短いサイクルで繰り返します。
組織での運用と関係者の巻き込み
役割と責任を明確にし、週次の報告会で進捗と学びを共有します。外部パートナーや営業部門とも連携して施策を実行します。
よくある落とし穴と対策
- バニティ指標に惑わされる:最終成果につながる指標を重視
- KPIを頻繁に変える:最低3か月は様子を見る
- シロ化:横断チームで情報共有する
定期的な検証と柔軟な改善で、設定した目標に近づけます。












