はじめに
目的
本ドキュメントは、Webサイトの表示速度と離脱率(ユーザーがページを離れる割合)の関係をわかりやすく説明することを目的としています。表示速度が遅いとどのようにユーザー行動に影響するか、そして改善がもたらす効果を理解できます。
対象読者
サイト運営者、マーケター、制作担当者、または表示速度や離脱率について基礎から学びたい方を想定しています。専門用語は最小限にし、具体例で補足します。
本書で扱う内容
- 表示速度と離脱率が密接に関係する理由
- 離脱率と直帰率の違い
- 離脱率の計算方法と指標の見方
- 表示速度が離脱率に与える具体的な影響(データで理解)
- 表示速度以外で離脱率が高くなる主な原因
読み方のヒント
章ごとに実例や図示を交えて説明します。実務にすぐ役立つ改善ポイントも掲載しますので、自分のサイトと照らし合わせながらお読みください。
表示速度と離脱率はなぜ密接に関係するのか
表示速度とは何か
表示速度は、ユーザーがURLやリンクをクリックしてからページの情報が見えるまでの時間です。具体的には最初に絵や文字が出るまでの時間や、操作できるようになるまでの時間を指します。
ユーザーが待てる時間は短い
人は待ち時間に対して忍耐力が限られます。ページが数秒以上かかると「戻る」ボタンを押す割合が増えます。たとえば買い物中に商品ページの読み込みが遅いと、そのまま別のサイトで買われてしまうことがあります。
スマホ利用で影響が大きくなる理由
スマホは通信環境が変わりやすく、画面が小さいため表示の遅さをより強く感じます。外出先での短い滞在時間では数秒の差が意思決定に直結します。
ビジネスへの具体的な結びつき
表示速度が遅いと閲覧数が減り、問い合わせや購入の機会を失います。コンバージョンが下がれば売上やリード獲得に直接響きます。
感覚的な説明
表示が速いとサイトは「軽くて使いやすい」と感じられ、遅いと「重くて面倒」と感じられます。この感覚の差が離脱率に反映されます。
離脱率とは何か?直帰率との違い
離脱率(Exit Rate)の定義
離脱率は、特定のページを最後にしてサイトを離れたユーザーの割合です。ページ単位で見ますので、そのページがセッションの終わりになっているケースを数えます。
直帰率(Bounce Rate)との違い
直帰率は、訪問者がそのページだけを見て他のページに遷移せずに離脱した割合です。つまり「1ページだけのセッション」に限られます。簡単に言えば、直帰率は離脱率の一部に当たりますが、両者は用途が違います。
具体例で理解する
- ユーザーA:トップ→記事A→問い合わせ→離脱 → 記事Aの離脱率に含まれる
- ユーザーB:検索で記事Bに来て記事Bだけ見て離脱 → 記事Bの直帰率と離脱率の両方に含まれる
指標の見方と注意点
- ページの役割を確認してください。問い合わせ完了ページや購入完了ページは高い離脱率で問題ありません。
- 高い直帰率は入口ページの魅力や期待とのズレを示します。広告や検索流入ごとに分けて確認すると原因が見えやすいです。
- 離脱率だけで判断せず、滞在時間やコンバージョンも合わせて見てください。
これらを押さえると、どのページが改善対象かが分かりやすくなります。
離脱率の計算方法と指標の見方
基本の計算式
- ページ単位の離脱率 =(そのページが“最後に閲覧された回数(離脱数)” ÷ そのページのページビュー数)×100
- サイト全体の離脱率 =(サイト全体の離脱数 ÷ サイト全体のページビュー数)×100
具体例:あるページが1000回表示され、そのうち200回がそのページでセッションが終わったなら離脱率は20%です。
GA4での扱い(簡潔に)
GA4は従来の「離脱率」をデフォルトで出さないため、自分で計算します。方法は主に二つです。1) カスタムレポートや探索で「そのページが最後に見られた回数」と「ページビュー」を集計して計算する、2) 生データ(BigQuery等)を使って同じ比率を出す。ツールに合わせて数値を取り出してください。
指標の見方とページの役割別判断
- 記事ページ:読了後に離脱されるのは普通です。離脱率だけで判断せず滞在時間やスクロール率も見ます。
- カート・申し込みページ:離脱率が高いと問題の可能性が高いです。入力フォームのエラーや表示遅延を疑います。
- ランディングページ:目的が離脱(外部リンクや電話)なら高い離脱率でも正常です。目的に合わせて評価してください。
実務的な確認手順(3ステップ)
- ページごとに離脱数とページビューを集める。2. 比率を計算し、高いページを抽出する。3. そのページの目的と他の指標(滞在時間・コンバージョン・直帰率)を照らし合わせて原因を切り分ける。
必要なら、具体的なGA4での操作手順やスプレッドシートでの自動計算テンプレートを用意します。ご希望があればお伝えください。
表示速度が離脱率に与える具体的な影響(データで理解)
データの要点
Googleの分析では、読み込み時間が長くなるほど離脱率が大きく上がります。具体的には、読み込みが1秒から3秒に伸びると離脱率が約32%増、1秒から5秒で約90%増、1秒から6秒で約106%増、1秒から10秒では約123%増と報告されています。別の調査では、3秒以上かかるページで約40%以上のユーザーが離脱するという結果もあります。
具体例で見る影響
例えばECサイトで1秒→5秒に遅くなると、同じ訪問数でも購入に至るユーザーが大幅に減ります。数秒の遅延で約3~4割のユーザーが離脱するため、売上やコンバージョンに直結します。
ユーザー行動への解釈
人は待ち時間に対して忍耐が小さいです。ページが遅いと「このサイトは使いにくい」と感じ、別のサイトへ移ります。サイトの信頼感や操作のしやすさも損なわれます。
改善の優先ポイント(実践的な例)
- 画像を軽くする(圧縮・遅延読み込み)
- 不要な外部スクリプトを減らす
- キャッシュを有効にして再訪問時の読み込みを速くする
- CDNを使って地域ごとの配信を速める
これらを優先的に改善すると、短期的に離脱率を下げやすくなります。
表示速度以外で離脱率が高くなる主な原因
はじめに
表示速度以外にも離脱率が高くなる要因が複数あります。ここでは代表的な原因を分かりやすく説明し、具体的な改善のヒントを示します。
-
コンテンツの質・内容の不一致
説明: 訪問者が期待する情報とページ内容が違うとすぐに離脱します。例: 検索結果と見出しが合わない。
改善例: 見出しと導入文を揃え、重要な情報を冒頭に置きます。 -
デザインやユーザビリティの問題
説明: 文字が小さい、色が見にくい、読みづらい構成は離脱を招きます。
改善例: フォントサイズを上げ、行間を広げ、コントラストを高めます。スマホでの表示を優先して確認してください。 -
導線設計の不十分さ
説明: 次に何をすればよいか分からないとユーザーは離れます。ボタンが見つからない、リンクが不明確など。
改善例: CTA(行動を促すボタン)を目立たせ、ページ内の移動を直感的にします。 -
フォームや購入プロセスの複雑さ
説明: 必要項目が多すぎる、入力が面倒だと途中でやめられます。
改善例: 必須項目を絞り、入力補助やエラーメッセージを分かりやすくします。 -
広告やポップアップの多さ
説明: 大きな広告や頻繁なポップアップはユーザーの集中を阻害します。
改善例: 表示頻度を下げ、閉じやすく、重要な操作の邪魔にならない場所に配置します。
優先順位の考え方
サイト全体に影響する表示速度は土台です。表示速度を整えた上で、上記5点を順に見直すと離脱率が効果的に下がります。












