はじめに
本書の目的
複数のホームページを効率よく管理したい方向けに、主に3つの方法をお伝えします。各方法の特徴と利点を分かりやすく説明しますので、自分に合った運用方法を選べます。
対象となる場面
- 別ブランドごとに独立したサイトを持ちたい
- 1つのドメイン内でカテゴリごとに分けたい
- 複数の似たサイトをまとめて管理したい
主なアプローチ(概要)
- マルチドメイン管理
- 説明: ブランドごとに異なるドメインを持ちます(例: brandA.com、brandB.com)。
- 利点: ブランディングが明確で、個別に最適化できます。
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注意点: ドメインごとに設定や運用が必要です。
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サブドメイン・サブディレクトリ管理
- 説明: メインドメインの下に配置します(例: shop.example.com、example.com/shop)。
- 利点: 管理と資源の共有がしやすく、導入が簡単です。
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注意点: SEOやアクセス管理で違いが出る場合があります。
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WordPressマルチサイト機能
- 説明: 1つのWordPressで複数サイトを作り、共通のユーザーやテーマを使えます。
- 利点: 更新やバックアップを一括化でき、運用コストを下げやすいです。
- 注意点: 一部プラグインが使えない場合や、設定に慣れが必要です。
この章ではまず全体像をつかみ、次章以降で各方法の具体的な運用と選び方を詳しくご案内します。
マルチドメイン管理
マルチドメインとは
同じレンタルサーバーに複数の独自ドメインを割り当て、別々のWebサイトを運用する方法です。たとえば example1.com と example2.net を同じサーバーで公開できます。コストを抑えつつ複数サイトを管理したいときに向いています。
利点
- コスト削減: サーバー契約を1つにまとめられます。
- 管理の一元化: コントロールパネルでドメインごとの設定を切り替えられます。
- 独立性: 各ドメインは別サイトとして運用でき、コンテンツやデザインを分けられます。
基本的な設定の流れ
- ドメインを取得する(例: example2.net)。
- DNSでレンタルサーバーのネームサーバーを設定する。
- サーバーの管理画面で『マルチドメイン追加』や『ドメイン設定』を行い、公開フォルダを指定する。
- CMSやファイルをそのフォルダに設置する。
注意点
- SSL: ドメインごとにSSL証明書を発行してください。無料のLet’s Encrypt対応が便利です。
- メール: 各ドメインで独自メールを使う場合、MXレコードなどの設定が必要です。
- リソース制限: 同一サーバーで負荷が高まると他サイトに影響します。アクセスが増えたらプラン見直しを検討してください。
実例
ブログを example1.com、店舗サイトを example2.net に分ける運用が分かりやすい例です。管理画面でそれぞれ公開フォルダを指定すれば、訪問者は別々のサイトとして閲覧できます。
運用を始めるときは、まずドメインのDNS設定とサーバー側のドメイン追加を丁寧に行ってください。設定ミスは表示やメールに影響します。
サブドメイン・サブディレクトリ管理
概要
サブドメインは、ドメインの前に文字列を付けて別サイトにする方法です(例:https://aaa.example.com)。サブディレクトリは、同じドメイン内でフォルダを分ける方法です(例:https://example.com/aaa)。どちらも複数サイトを運営できますが、設定や運用の手間が異なります。
メリット・デメリット
- サブドメインのメリット:独立性が高く、別サーバーや別CMSで運用できます。デメリットは設定(DNSやSSL)や管理が増える点です。
- サブディレクトリのメリット:追加のドメイン設定が不要で管理が簡単です。デメリットは、同一ドメインの影響を受けやすく、分離が難しい場合があります。
SSLとクッキーの扱い
サブドメインは個別にSSL証明書が必要な場合があります。ワイルドカード証明書でまとめて保護できます。クッキーはドメイン単位で送受信されるため、サブディレクトリは共通のクッキーを使いやすく、サブドメインは分けて管理できます。
SEOとコンテンツ戦略
検索エンジンは基本的にどちらも認識しますが、サブドメインは独立サイトとして評価される傾向があります。主要サイトの評価を引き継ぎたい場合はサブディレクトリが有利です。サイト目的やユーザー体験を基準に選んでください。
運用の具体例と選び方
- ブログやサポートなどブランド内で一貫させたい場合:サブディレクトリを推奨します。
- 完全に別サービスや別ブランドとして見せたい場合:サブドメインが向きます。
設定や保守の手間も考慮し、将来の拡張計画に合わせて選んでください。
WordPressマルチサイト機能
概要
1つのWordPressインストールで複数のサイトを管理する機能です。例えば、本社サイトと支店ごとのミニサイト、あるいは複数のブログを1つでまとめるときに便利です。管理画面は統一され、テーマやプラグインを共有できますので運用が楽になります。
メリット
- 管理の一元化:1つのダッシュボードで全サイトを更新できます。
- リソース節約:サーバーやライセンスの重複を減らせます。
- 一括配布:テーマやプラグインを全サイトに素早く適用できます。
デメリット
- 障害の影響範囲が広い:1つのインストールで問題が起きると複数サイトに影響します。
- 権限の管理が複雑:サイトごとの細かい権限制御は工夫が必要です。
導入の流れ(簡単)
- バックアップを取る。
- wp-config.phpでマルチサイトを有効化し、ネットワークを作成する。
- サブドメイン方式かサブディレクトリ方式を選ぶ(例:site.example.com または example.com/site)。
- 必要に応じてドメインマッピングやSSL設定を行う。
運用のポイント
- テーマやプラグインは信頼できるものだけをネットワーク有効化する。
- サイトごとのユーザー権限を明確にする。例:編集者は自分のサイトのみ編集可能にする。
- 定期的なバックアップとテスト環境での検証を習慣にする。
- サーバー負荷を監視し、必要ならリソースを増強する。
よくある質問
Q: 各サイトごとに独立したドメインは使えますか?
A: はい、ドメインマッピングで可能です。プラグインやサーバー設定が必要になる場合があります。
Q: プラグインはサイトごとに別々にできますか?
A: ネットワーク管理者が有効化すると全サイトで使えますが、サイト管理者が個別に有効化できるものもあります。












