はじめに
目的
このドキュメントは、ホームページのURLにおける「www」の役割と、その有無による運用の違いをわかりやすく解説することを目的としています。技術的な設定やSEOへの影響、具体的な統一方法まで順を追って説明します。
対象読者
- ウェブ担当者やサイト運営者
- WordPressを使っている方
- これから独自ドメインでサイト運営を始める方
専門用語は必要最小限にし、具体例で補いますので、初心者の方でも読み進めやすい内容です。
本書の構成と読み方
- 第2章で「www」の歴史と意味を説明します。
- 第3章〜第4章でwwwあり・なしのメリットと統一の必要性を扱います。
- 第5章〜第7章で実際の設定方法(301リダイレクト、canonical、WordPressでの具体手順)を示します。
- 第8章で確認作業を案内します。
この章では全体の見取り図を示しました。以降の章で順に設定と確認方法を学んでいきましょう。
wwwとは何か?その歴史的背景
wwwとは何か
「www」はURLの先頭に付くことが多いサブドメインです。簡単に言えば、あるドメイン(例: example.com)の中で「Web(World Wide Web)用の場所」を示す名前です。www.example.com と example.com は見た目は似ていますが、技術的には別の名前として扱えます。
歴史的背景
インターネット初期は、1台の計算機が限られた役割を担いました。サービスごとに名前を分ける必要があり、ftp(ファイル転送)、mail(メール)、www(Web)といったホスト名が定着しました。これにより、どのサービスに接続するかが一目で分かりました。
技術の進化と現在
現在は、1台のサーバーが複数の役割を担えます。DNS(ドメイン名を住所に変える仕組み)や仮想ホスト技術で、同じ機器がwwwあり・なし両方の応答を返せます。つまり、wwwを省略してもWebサイトにアクセスできます。ただし、管理上はwwwあり・なしをどちらかに統一する方が分かりやすく、後述する設定で対応します。
日常での具体例
普段はブラウザのアドレス欄でexample.comと入力して問題ありません。メールやAPIなど、別サービスと明確に分けたい場合はwwwを使うと便利です。
wwwあり・なしの形式と基本的な選択
1) 形式の違い
ホームページのURLは主に2種類あります。
– wwwあり: https://www.example.com/
– wwwなし: https://example.com/
見た目以外の機能差はほとんどありません。どちらも同じページを表示できます。
2) 選び方のポイント
- ブランディング:会社名や商標で「www」が馴染むかを考えます。短く見せたい場合はwwwなしが好まれます。
- 覚えやすさ:口頭で伝える頻度が高ければ短い方が伝わりやすいです。
- 技術面:将来サブドメイン(shop.example.comなど)を多く使うなら、wwwを残すと設定が分かりやすくなることがあります。
3) 実際の運用例
- コーポレートサイト:ブランドを重視してwwwなしを採用する企業が増えます。
- 大規模サイト:サブドメイン運用を見越してwwwありを維持する例が多いです。
4) 統一の重要性
どちらを選んでも構いませんが、選んだ形式に統一しないと検索やアクセスで混乱が起きます。第4章以降で統一方法を説明します。
wwwあり・なしの統一が必要な理由
概要
wwwあり(例: www.example.com)となし(例: example.com)の両方がアクセス可能だと、検索エンジンは別々のページと見なします。したがって評価や被リンクの効果が分散し、SEOに悪影響を及ぼします。
検索結果と評価の分散
検索エンジンはURLごとに評価を集めます。あるページの被リンクが両方の形式に分かれると、各々の評価が弱まり順位が下がることがあります。クローラーの巡回回数も無駄になります。
被リンク(バックリンク)の影響
外部サイトがwwwありにリンクし、別のサイトがなしにリンクすると、リンク効果が分散します。例えば10件のリンクが両方に分かれると、片方だけに集めた場合より評価が下がります。
重複コンテンツとインデックスの問題
同じ内容が別URLで存在すると重複コンテンツ扱いになる恐れがあります。検索エンジンはどちらを主に表示するか迷い、期待通りのページが上位表示されないことがあります。
ユーザーと技術面での問題
ユーザーがブックマークや共有をすると混乱します。技術的にはCookieやSSL、CDN設定が片方だけに最適化されていると不具合が出る場合があります。
次に進むために
上記の理由から、どちらか一方に統一することが重要です。次章では301リダイレクトでの具体的な統一方法を説明します。
301リダイレクトによる統一方法
目的と基本の流れ
wwwあり・なしを統一する際、最も一般的で確実な方法は「301リダイレクト」です。301は恒久的な移転を意味し、検索エンジンに新しいURLを正式なものとして伝えます。手順は簡単で、一方のURLへアクセスがあったら自動的にもう一方へ転送する設定を入れます。
Apache(.htaccess)の例
共有レンタルサーバーでよく使われます。例:
- wwwありに統一する場合(example.com → www.example.com)
RewriteEngine On
RewriteCond %{HTTP_HOST} ^example\.com [NC]
RewriteRule ^(.*)$ https://www.example.com/$1 [R=301,L]
- wwwなしに統一する場合(www.example.com → example.com)
RewriteEngine On
RewriteCond %{HTTP_HOST} ^www\.example\.com [NC]
RewriteRule ^(.*)$ https://example.com/$1 [R=301,L]
パス(/page)やクエリ(?id=1)も自動で引き継ぎます。
Nginxの例
サーバー設定に以下を追加します(wwwなしへ統一の例):
server {
listen 80;
server_name www.example.com;
return 301 $scheme://example.com$request_uri;
}
設定時の注意点と確認方法
- SSL(https)の設定と合わせてリダイレクトしてください。
- ループや無限転送が起きないよう、両方に設定しないで片方だけに正しく向けます。
- 動作確認はブラウザだけでなく、curlやオンラインのリダイレクトチェックツールでHTTPステータス(301)を確認します。
- サイトマップや外部サービス(検索管理ツール)に設定した正規ドメインを反映してください。
これらの手順で、統一したURLへ安全に誘導できます。
canonicalタグによる補強設定
canonicalタグの目的
301リダイレクトでメインのURLに統一した後も、検索エンジンにさらに明確に伝えるためにcanonicalタグを使います。検索エンジンがどのURLを正規(正しい)として扱うかの指示になります。
設置場所と書き方の基本
HTMLの内に以下のように記述します。必ず絶対URL(スキーム、ホスト、パスを含む)を使ってください。
<link rel="canonical" href="https://example.com/" />
ここでhttpsやwwwの有無、末尾のスラッシュなどを統一した正規URLに合わせます。各ページは自己参照(そのページ自身の正規URLを指定)するのが安全です。
よくある用途と注意点
- パラメータ付きURL(例: ?sort=asc)や印刷用ページがある場合、元のコンテンツURLをcanonicalにします。
- 重複する複数ページを別のページにcanonicalすることで、評価を集約できます。
- canonicalはあくまで“指示”であり、301リダイレクトのように強制的に移動させるものではありません。検索エンジンが従わない可能性がある点に注意してください。
チェックポイント
- hrefに絶対URLを使う。
- 表示中のURLと正規URLが一致するように自己参照を設定する。
- ホームやカテゴリを誤って大量のページに指定しない。
これらを守ると、301リダイレクトと合わせてURL統一の効果が高まります。
WordPress環境での統一設定方法
WordPressでは「ツール > Redirection」の「優先ドメイン」設定で、wwwあり・なしの統一を簡単に行えます。以下の手順で進めてください。
- プラグイン確認
-
Redirectionプラグインをインストール・有効化します。既にある場合は最新版に更新してください。
-
設定画面へ
-
管理画面の「ツール > Redirection」を開き、「優先ドメイン(Preferred domain)」を探します。
-
統一方法を選ぶ
- 「Remove www from domain」を選ぶとwwwなし(example.com)に統一されます。
-
「Add www to domain(wwwをドメインに追加)」を選ぶとwwwあり(www.example.com)に統一されます。
-
更新と反映
-
選択後に「更新」ボタンを押します。これで自動的に301リダイレクトが作成されます。
-
注意点(短く)
- キャッシュやCDNを利用している場合は、設定後にキャッシュをクリアしてください。
- SSL(https)を使っている時は、http↔httpsのリダイレクトに影響が出ないか確認してください。
- 内部リンクやサーチコンソールなど外部設定が残る場合がありますので、必要に応じて修正してください。
この方法は手軽で失敗が少ないため初心者にも向いています。
設定完了後の確認作業
以下は、統一設定(wwwあり・なし)を行った後に必ず行う確認手順です。分かりやすい例として「example.com」と「www.example.com」を使って説明します。
1) ブラウザで直接確認
– ブラウザのアドレスバーに「example.com」と入力して表示を確認します。次に「www.example.com」も入力します。どちらを入力しても希望する形式(例:wwwあり)に最終的に表示が変わるか確かめます。
2) 確認ポイント
– アドレスバーが希望の形式に変わること。
– ページが正しく表示され、画像やスタイルに崩れがないこと。
3) ステータス確認(任意の上級手順)
– コマンドを使える場合は、HTTPステータスが「301」で返るか確認します(例: curl -I https://example.com)。
4) サイト内部の確認
– サイト内のリンクやサイトマップが希望形式で統一されているか確認します。
5) キャッシュ・CDN対応
– キャッシュやCDNを使っている場合はキャッシュをクリアして再確認します。
6) 問題がある場合の見直し箇所
– リダイレクト設定(.htaccessやサーバー設定)、CMSのサイトURL設定、プラグインやDNS設定を点検します。
最後に、公開後しばらくしてからアクセスログや検索コンソールで正しく統一されているか継続的に確認してください。問題が見つかれば設定を調整して再確認します。












