はじめに
調査の目的
本調査は、ハンドメイド作家が実際にどのくらい売上を上げているかを分かりやすく示すことを目的としています。月間売上の分布や初心者と経験者の違い、販売チャネル別の特徴など、多角的に現状を整理して現実的な期待値を提示します。
調査の範囲と構成
調査は以下の項目を中心にまとめています。
– 月間売上の分布
– 初心者の現実的な売上例
– 経験年数別の売上成長パターン
– イベント販売やプラットフォーム別の客単価
– 業界全体の規模感
各章で具体的な数字や事例を挙げ、実務に役立つ視点を提供します。
読者へのメッセージ
これからハンドメイド販売を始める方、既に活動している方どちらにも役立つ内容を目指しました。短期で大きな成果を求めるのではなく、現実的な成長モデルを理解して次の一手を考える材料にしてください。
データの見方と注意点
集計は実例や公開データをもとにしていますが、個々の作品ジャンルや地域、集客方法で差が出ます。数字は目安と捉え、自分の状況に合わせて読み替えてください。
ハンドメイド作家の月間売上分布
概要
ハンドメイド作家の月間売上は非常に幅があります。調査では月5,000円未満が32.1％で最も多く、売上ゼロは19.2％でした。合わせて約半数が月5,000円未満で、月5万円以上は全体の約7％、月10万円以上はわずか2.3％です。高収入に届く作家は少数派です。
なぜ差が大きいのか
差が生まれる要因は複数あります。価格設定や商品ライン、写真や説明文の見せ方、販売チャネル（EC・イベント・委託など）、告知やリピーターづくりへの取り組み、制作に充てられる時間です。趣味で作る方は販売に割く時間が少ないため売上が低くなりがちです。
実務的な示唆
売上を改善したい場合、以下を順に試すと効果が出やすいです。
– 商品写真とタイトルを見直す
– 価格帯を分けてテストする（低価格〜中価格のバランス）
– 出品先を分散する（オンライン＋イベント）
– SNSやメルマガでの告知頻度を上げる
どれも即効性は限定的ですが、継続して改善を重ねることで売上の底上げが期待できます。
初心者の現実的な売上
概要
副業で始めた初心者の事例を紹介します。5か月間の合計売上は40,700円でした。月別は次の通りです。
– 1か月目：6,400円
– 2か月目：3,800円
– 3か月目：7,000円
– 4か月目：12,500円
– 5か月目：11,000円
月1万円を安定して超えることが、次のステップに進む重要なマイルストーンです。
月別推移の読み方
初期は試作や出品慣れの段階で売上が安定しません。2か月目の落ち込みは商品や写真、説明文の見直しで回復できます。4か月目以降の増加は、出品数の増加やSNSでの認知拡大、イベント参加などの積み重ねが効いています。
月1万円が示す意味
月1万円は手間対効果の目安です。材料費や手数料、梱包・発送の時間を考えると、月1万円を超えると収支管理や時間配分を見直す価値が出てきます。ここを越えると継続的な投資（材料のまとめ買い、プロ用道具の導入）を検討できます。
具体的な改善策（短期・中期）
- 写真と説明を改善：見た目で伝わる写真を複数用意します。
- 価格帯を見直す：類似品の価格を参考に設定します。
- 出品頻度を上げる：掲載数が増えると見つかりやすくなります。
- リピーターを作る：梱包メッセージや割引クーポンで次回につなげます。
- 集客チャネルを増やす：SNSや委託先、イベント出店を試します。
注意点
売上だけでなく利益を見ます。材料費や手数料、発送コストを差し引いた実益を把握してください。短期間の増減に一喜一憂せず、改善を続けることが大切です。
経験年数による売上成長
背景と実績
提示された実績では、初年度（7か月）で利益562,542円、2年目で2,297,962円、3年目で4,024,383円を達成しています。数字上は継続と工夫で約7倍に成長しています。読みやすく、実務に結びつく視点で説明します。
数値で見る変化
- 初年度（月平均）: 約80,363円（562,542円÷7か月）
- 2年目（月平均）: 約191,497円（2,297,962円÷12か月）
- 3年目（月平均）: 約335,365円（4,024,383円÷12か月）
このように月平均は年々着実に上がっています。
成長の主な要因
- 継続した出品と改善: 商品ページや写真を少しずつ改善して、検索や購入率が上がります。具体例として、写真の明るさや使用シーンを追加すると反応が良くなります。
- 商品ラインナップの拡大: 種類を増やすことで購入機会が増えます。人気商品の派生を作ると効率的です。
- 集客力の向上: SNSやメルマガ、店頭での接客を続けるとリピーターが増えます。
- 価格と原価の見直し: 適正な価格設定と仕入れ・材料のコスト管理で利益率が改善します。
年次ごとの実務的アドバイス
- 初年度（基礎作り）: 品質と説明文に注力し、3〜5商品に集中して実績を作ります。顧客の声を集めることが大事です。
- 2年目（拡大期）: 出品数を増やし、販売チャネルを広げます。写真やSEO（商品名・説明）を改善して集客を強めます。
- 3年目以降（安定化と成長）: ブランディングや作業の仕組み化を進めます。外注や効率化で生産量を増やし、定期的なプロモーションを計画します。
これらの取り組みを段階的に続けると、提示されたような成長が現実的になります。
イベント販売での売上
概要
初出展でも約3割が1万円以上の売上を達成し、中には1日で10万円以上を上げる例もあります。イベント販売は実績を作りやすいチャネルで、対面での反応を直接得られる点が強みです。
イベントが初心者に向く理由
- 直接販売で商品の良さを伝えやすいです。実物を見て触れることで購入に結び付きやすくなります。
- SNSやネットショップより短期間で実績を作れます。顔が見えることで信頼が生まれます。
売上の実例と目安
- 初出展：来場者数や立地で差が出ますが、約30％が1万円超えの実績があります。
- 上位事例：人気のブースでは1日で10万円以上販売することもあります。季節や集客イベントで売上が伸びます。
準備と工夫
- 商品：人気商品の在庫を多めに用意し、見本を分かりやすく並べます。
- 価格設定：名刺サイズの値札を付け、セット販売や割引を用意すると客単価が上がります。
- ディスプレイ：高さやライトを使い視認性を高めます。
- 決済：現金に加えキャッシュレスを導入すると購入のハードルが下がります。
接客とフォロー
- 短い会話で商品の特徴を伝え、試用や試着の機会をつくります。名刺やチラシでSNSや通販の案内を忘れずに配布してください。
- 試し買い後のフォローでリピーターを増やせます。
測り方
- 売上金額、客数、客単価、成約率を記録します。次回改善点が見えやすくなります。
プラットフォーム別の平均客単価
平均客単価の数字
2023年の調査では、minneの平均客単価が3,743円、Creemaが5,339円でした。差は約1,600円で、Creemaの方が高めです。これは単純に数字の違いだけでなく、売上構成に影響します。
なぜ差が出るのか
- 出品の傾向：minneは手軽な小物やアクセサリーが多く、低価格帯の商品が集まりやすいです。一方Creemaは一点物や素材にこだわった作品が目立ち、高単価になりやすいです。
- 顧客層：価格に対する許容範囲や購入目的が違います。ギフト用途や高品質を求める層が集まると平均単価は上がります。
- 見せ方と検索性：写真や説明、カテゴリ分けで高価格帯の商品が目に留まりやすくなります。
作家が取るべき具体的な対応
- 自分の商品特性を見直す：シンプルなアクセならminne、高級感や一点物を売りたいならCreemaが向く可能性があります。例：簡単なピアスは2,000円前後、手作りの陶器は5,000円〜10,000円。
- 価格帯を明確にする：商品ラインを分け、低価格帯はセット販売、高価格帯は単品で丁寧に見せると効果的です。
- クロス出品とテスト：両方で少数出品して反応を見比べる。写真・説明を変えてA/Bテストすると分かりやすいです。
- 表示方法を工夫する：送料や納期を明示し、信頼感を高めることで客単価向上につながります。
プラットフォーム選びは売上の重要な要素です。数字を参考に、自分の商品と顧客像に合った場を選んでください。
業界全体の規模
市場の現状
国内最大級のハンドメイドマーケット「minne」が累計流通額1,000億円（2023年6月時点）を突破しました。この数字は市場が単なる趣味の延長ではなく、経済として成立していることを示しています。購入者層は幅広く、ギフト需要や個人の嗜好に合った一点物を求める人が増えています。
規模の内訳（イメージ）
- 出品ジャンル：アクセサリー、インテリア、小物、服飾、子ども向けなどが主要です。例えばアクセサリーは単価が低めで回転が早く、インテリアは単価が高めで利益が出やすい傾向があります。
- 流通チャネル：オンライン（マーケット、SNS）、対面（イベント・委託）が並存します。イベントで認知を得てオンラインへ誘導する例が多いです。
作家にとっての示唆
市場が大きいということは機会が多い一方で競争も激しいという意味です。差別化やブランド化、品質と顧客対応が重要になります。具体的には写真の見せ方を工夫したり、ラッピングで付加価値をつけたり、定期的なSNS発信でファンを育てることが効果的です。
実践のポイント
- 価格設定は原価と時間を考慮して明確にする。例：材料費＋制作時間×時給。
- 複数チャネルを持つ（オンライン＋イベント）と安定しやすい。
- リピーターを増やすための梱包やメッセージを大切にする。
まとめと重要なポイント
以下は本章のまとめと、今後取り組む際に優先すべき点です。
概要
初心者の月間売上は一般に3,000〜5,000円程度で、最初の現実的な目標は月1万円です。1年以上継続して工夫を重ねれば月10万円程度を目指せますが、月10万円以上を得ている作家は全体の約2.3％と少数です。高収入には戦略的な取り組みと継続が必要です。
重要ポイント（優先度順）
- 作品の質と独自性を磨く：写真・仕上げを改善し、他と差をつけます。
- 価格設定を見直す：原価と時間、相場を考えて適正価格にします。
- 集客を計画する：SNSと販売プラットフォームを組み合わせ、継続的に発信します。
- 商品説明を充実させる：購入者が知りたい情報を分かりやすく書きます。
- 販売チャネルを分散する：オンラインとイベントを使い分けて露出を増やします。
数字で押さえる現実
- 初心者：月3,000〜5,000円
- 初期目標：月1万円
- 継続1年超で目指せる範囲：月10万円（到達者約2.3％）
行動のコツ
作品だけでなく、販売面の工夫が売上を左右します。小さな改善を繰り返し、結果を記録して調整してください。まずは「価格設定」と「写真・商品説明」の改善を同時に行うことをおすすめします。焦らず、しかし計画的に取り組んでください。
