はじめに
本レポートの目的
本レポートは、ハンドメイド作家の収入実態と、収入を増やすための具体的な戦略を分かりやすく示すことを目的としています。これから販売を始める方、既に活動中で伸ばしたい方、収入の目安を知りたい方に向けて作成しました。
対象と手法
対象は趣味で販売する個人作家から、本格的に収入を目指す作家まで幅広く想定しています。複数の事例や公開情報、作家の声を踏まえて、現実的な目安と実践的な対策をまとめました。
本レポートで分かること
- 月収の分布と平均的な水準
- 年収100万円を達成する難易度
- 活動歴による収入の変化と見通し
- 収入を得ている作家の割合
- 収入を増やすための実践的な戦略
読み方のポイント
数値は目安です。ジャンルや販売チャネル、地域差で変わるため、自分の状況に照らして参考にしてください。各章は短く区切っているので、気になる章からお読みいただけます。
ハンドメイド作家の平均月収水準
全体の分布
ハンドメイド作家の月収は大きくばらつきます。無売上が19.2%、月5,000円未満が32.1%、5,000〜10,000円未満が15.6%と、月5万円以下の作家が大多数を占めます。月5万円以上の売上を得ている作家は約7%程度です。数字から読み取れるのは、小さな売上で活動を続ける人が多く、安定的な収入に到達するのは簡単でない点です。
活動レベル別の目安
- 副業レベル:月1万円〜5万円程度が目安です。趣味や家事の合間に続けやすい範囲です。
- 本業レベル:月10万円〜30万円程度を目指す方もいます。注文対応や製作時間を増やし、販売チャネルを複数持つ必要があります。
- 成功者レベル:月50万円以上も可能です。ブランド化や卸売、定期販路の確保などで実現します。
ジャンル差
ジャンルによって収入差が出ます。洋服は単価とリピート率が高く、比較的高収入になりやすいです。一方、アクセサリーや小物は単価が低い分、量でカバーする必要があります。
読み方のポイント
これらは平均や目安であり、個々の努力や戦略で大きく変わります。制作時間、販売先、価格設定、プロモーションの工夫で結果は変わるため、自分の目標に合わせて計画を立てることが大切です。
年収100万円以上を達成する難易度
現状の数値
ハンドメイド作家で年収100万円を超える人は全体の約1割です。ジャンル別では洋服が約10%、アート/イラストが約7%、アクセサリーが約5%、雑貨が約3%という達成率です。数字だけ見ると高収入は少数派だと分かります。
なぜ達成が難しいのか
- 競争の激しさ:同じジャンルに多くの出品者がいて、差別化が難しくなります。
- 価格設定と原価管理:材料費や手間を正しく計算しないと利益が残りません。
- 時間対効果の問題:制作に時間がかかる一方で単価が低いと収入になりにくいです。
- 販売チャネルと手数料:プラットフォーム手数料や配送費が利益を圧迫します。
- マーケティング不足:宣伝や顧客対応を継続できないと売上が伸びにくいです。
しかし、全く不可能というわけではありません。
実績例とその限界
実績として、3年間で利益が約7倍に成長したケースがあります。これは集中した改善(商品改良、SNS活用、販路拡大)と好条件の組み合わせが効きました。ただし、そのような順調な成長は例外的です。運や市場のタイミング、初期の投入資源などが影響します。
現実的な期待値とすすめ方
年収100万円を目指す場合、段階的に目標を置くと現実的です。まず月数万円の安定化を図り、販売チャネルを複数持ち、原価と時間を見直して利益率を上げます。単価を上げる工夫(包装、限定感、セット販売)やリピーターづくり(顧客対応、SNSでの関係構築)も有効です。外注や効率化で制作時間を減らし、マーケティングに時間を投資すると達成率は上がります。
活動歴による収入の変化
活動年数と増収の傾向
活動期間が長くなるほど、高収入を得ている作家の割合が増えます。統計では、活動歴が2年以上で月2〜5万円を稼ぐ人が約3倍に増え、5年以上では月10万円以上を得る人が約5.6倍に増加します。安定した収入を得るには、最低でも2〜3年の継続が必要と考えてよいでしょう。
増収が起きる理由(具体例を含む)
- 技術と品質の向上:作る速度と仕上がりが良くなり、単価を上げやすくなります。例えば、ハンドメイドアクセサリーなら留め具の精度が上がり評価が上がります。
- リピートと信頼:購入者が増え、口コミやレビューが集まるため安定した注文につながります。定期購入やギフト需要も取り込めます。
- 作業効率と原価管理:材料の仕入れ方や作業工程を見直して利益率を改善できます。
- 販路の拡大:イベント出展、オンライン、委託販売を組み合わせることで売上が安定します。
活動段階別の実践ポイント
- 0〜1年:まずは数を作って評価を集める。価格は試験的に設定し、顧客の反応を観察します。
- 2〜3年:定番商品を決め、再購入を促す仕組み(メルマガやSNS)を作ります。作業効率を上げて利益確保に努めます。
- 3〜5年:販売チャネルを増やし、委託や卸売りを検討します。外注や工程分業で生産性を高めます。
- 5年以上:教室運営やライセンス供与など収入の多様化を図り、安定収入基盤を築きます。
収入を得ているハンドメイド作家の割合
現状の数値
全体の約8割の作家が月々何らかの収入を得ています。販売歴が1年未満でも7割以上が収入を得ているという結果が出ています。ここでいう「収入を得ている」とは、売上が発生している状態を指し、必ずしも利益が出ているとは限りません。
収入の分布イメージ
多くは小さな金額から始まります。例として、週に数点を出品して月に数千円〜1万円前後を得る作家が多いです。一方で、イベント中心や専門性の高い作品で月数万円〜数十万円を稼ぐ方も一部います。大きく稼ぐ人は全体の少数です。
なぜ多くの人が収入を得られるのか
オンライン販売プラットフォームやハンドメイド市の普及で販売のハードルが下がりました。手軽に出品できるため、趣味から売上につながるケースが増えています。また、ニッチな需要を狙うと比較的早く反応が得られることが多いです。
注意点(利益と継続の重要性)
売上があるだけでは利益とは限りません。材料費、梱包費、手数料、発送の手間などを差し引くと実際の収入は小さくなる場合が多いです。例:材料500円、梱包100円、手数料10%で販売価格1,500円だと利益は限られます。継続して改善しないと大きな収入にはつながりにくいです。
今後に向けて
収入を得ること自体は十分に可能です。より大きな金額を目指すなら、価格設計、販売チャネルの分散、作業効率化などの工夫と継続が必要です。次章で具体的な戦略を紹介します。
月収を増やすための戦略
価格設定の基本
材料費+制作時間×希望時給+販売手数料+梱包・送料で価格を決めます。例えばキャンドルなら材料が500〜800円、制作1時間を時給3,000円として表示価格は3,000〜4,500円前後が目安です。送料やプラットフォーム手数料は別枠で計算してください。
制作時間と目標設定
月10万円以上を目指す作家は週20〜30時間を制作に充てる人が多いです。1作品あたりの制作時間を測り、週に何点作れるかを逆算して目標を立てましょう。まとまった時間で作るバッチ生産も有効です。
販売チャネルの分散
自分のオンラインショップ、マーケットプレイス、委託販売、ハンドメイドイベント、SNS販売など複数チャネルを組み合わせます。高収入作家はこれらを同時に運用して安定した売上を作っています。
商品構成と価格帯
定番品(回転率重視)、高単価品(利益率重視)、ギフト向けの組み合わせを揃えます。限定品や季節商品で注目度を上げると販売機会が増えます。
集客とリピート対策
写真は明るく分かりやすく撮ります。SNSで制作過程を見せ、メルマガやLINEで再来店を促します。梱包や手書きメッセージで満足度を高めレビューを増やしましょう。
外注・拡大の考え方
制作が追いつかない場合は部分的に外注するか、協力者を募って作業分担します。ワークショップやレシピ販売など労働と時間を違う形で収益化する方法もあります。
数字で管理する習慣
売上・材料費・手数料・広告費・時間あたり収入を定期的に見直し、価格と制作計画を調整します。記録を続けると改善点が明確になります。












