ハンドメイドで知っておきたい税金の基本知識と節税対策

目次

はじめに

この本の目的

ハンドメイド作品を販売する方が、税金や確定申告について安心して行動できるようにすることが本記事の目的です。副業としての販売、あるいは本業として継続的に制作・販売する場合に必要な知識を、分かりやすく順を追って解説します。

想定読者

  • ハンドメイド作家として作品を販売し始めた方
  • イベント出店やネット販売を行っているが税金に不安がある方
  • 将来を見据えて帳簿や経費の整理を始めたい方
    専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明しますので初心者の方でも読みやすい内容です。

本記事で学べること

  • 税務上の基本的な考え方(収入と所得の違いなど)
  • 確定申告が必要かどうかの判断基準(詳しい条件は第3章で解説します)
  • 所得税と消費税の扱い方の概要
  • 経費にできるもの、節税の基本的な考え方(具体的な方法は第6章で紹介します)

読み方のポイント

各章で具体例や計算の考え方を示します。まずは全体像をつかみ、不明点があれば該当章を詳しくお読みください。帳簿のつけ方や領収書の保管など、実務的な部分は後半で手順を示しますので順番に進めると理解が深まります。

ハンドメイド販売における税金の基本知識

概要

ハンドメイド作品の販売で得た収入は税務上の対象になります。ここでは「収入」と「所得」の違いや、どのように課税されるかを分かりやすく説明します。

収入と所得の違い

収入は売上の合計です。所得は収入から必要経費を差し引いた金額を指します。税金はこの所得に対してかかります。

所得の区分と課税の流れ

ハンドメイド販売の収入は原則、雑所得として扱われます。他の所得と合算して課税所得を算出し、所得税の税率を適用して税額を決めます。

必要経費にできる主な項目(例)

  • 材料費(布・糸・パーツなど)
  • 梱包・発送費
  • 販売手数料(販売サイトの手数料、決済手数料)
  • 宣伝費(広告費、写真撮影費)
  • 設備・道具(高額なものは減価償却)

具体例:1,000円の商品を100個売り上げたとき、売上は10万円。材料費が3万円、手数料が1万円なら、所得は6万円です。

帳簿と証拠書類

領収書や取引履歴、銀行明細、販売サイトの入金明細は保管してください。簡単な帳簿をつけるだけでも計算が楽になります。

税金の基本はまず「記録を残すこと」です。具体的な判断や申告方法は次章で詳しく説明します。

確定申告が必要な条件

基本ルール

副業としてハンドメイド販売を行う場合、年間の『所得』が20万円を超えると確定申告が必要です。給与所得がある方の副収入が対象です。

複数副業がある場合

複数の副業があるときは、すべての雑所得を合算します。合計が20万円を超えれば申告義務が発生します。

専業主婦・夫の場合

専業主婦・夫(扶養に入っている方など)は、利益が38万円以上になると申告が必要です。扶養や配偶者控除の関係で基準が変わるため、こちらのラインに注意してください。

本業としてのハンドメイド販売

本業で行う場合は『事業所得』または『雑所得』として申告します。本業としての所得が48万円を超えると確定申告が必要です。

所得の数え方(簡単な例)

「所得」は売上から材料費や外注費などの経費を差し引いた金額です。たとえば売上30万円、材料費10万円、経費2万円なら所得は18万円となり、給与のある方の副業基準(20万円)では申告不要です。

必要かどうか迷うときは、まず売上と経費を分けて所得を計算してください。

所得税の税率表

所得税のしくみ

所得税は「課税される所得金額」に応じて税率が段階的に上がります。ここでいう課税所得は、売上から必要経費や各種控除を差し引いた後の金額です。税額は「課税所得 × 税率 - 控除額」で計算します。

主な税率表(例)

  • 課税所得 195万円以下:税率 5%/控除額 0円
  • 195万円超〜330万円以下:税率 10%/控除額 97,500円
  • 330万円超〜695万円以下:税率 20%/控除額 427,500円
  • 695万円超〜900万円以下:税率 23%/控除額 636,000円
  • 900万円超〜1,800万円以下:税率 33%/控除額 1,536,000円

※上は分かりやすく示した例です。実際の税率や区分は法改正などで変わることがあります。

具体例(計算の手順)

たとえば課税所得が300万円の場合:
1) 税率=10%、控除額=97,500円
2) 税額=3,000,000 × 0.10 - 97,500 = 202,500円

計算のポイントと注意点

  • 課税所得の算出で何を差し引けるか(経費・基礎控除など)を確認してください。
  • 所得税は国税で、住民税や個人事業税は別にかかります。
  • 正確な税額は税務署や税理士に相談すると安心です。

消費税に関する重要なポイント

概要

消費税は、消費者から預かった税金を事業者が国に納める仕組みです。ハンドメイド販売でも条件を満たすと課税対象になります。日常的に気をつけるべき点を分かりやすく説明します。

課税となる目安

原則として、基準期間(通常は2年前)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。たとえば、2年前の売上が1,200万円なら課税事業者の対象です。新しく始めた事業は免税となる場合が多いです。

軽減税率(8%)について(具体例を含む)

食品や飲料など一部の生活必需品には8%の軽減税率が適用される場合があります。具体例:
– スーパーで売る包装済み食品:8%
– テイクアウトの弁当や飲み物(酒類を除く):8%
– 飲食店での店内飲食:原則10%(持ち帰りと税率が異なる点に注意)

販売する品目がどちらに当たるかを事前に確認してください。税率ごとに売上を分けて記録することが大切です。

免税事業者と課税事業者の選択

年間売上が少ないと免税事業者になり、消費税を納める義務はありません。とはいえ、仕入れで支払った消費税を差し引く「仕入税額控除」を受けられないデメリットがあります。届出を出してあえて課税事業者を選ぶことも可能です。大きな機械や大量の材料を購入する予定がある場合は検討してください。

計算と申告の流れ(簡単)

1) 顧客から受け取った消費税(売上税額)を集計します。
2) 仕入れや経費で支払った消費税(仕入税額)を集計します。
3) 売上税額−仕入税額で納付すべき税額を算出し、所定の期日に申告・納付します。年間の申告が原則ですが、売上規模により中間申告が必要になることがあります。

実務上の注意点

  • 価格表示は税込・税別を明確にします。
  • 売上を税率ごとに分けて記録します。
  • 領収書や請求書は保存し、支払った消費税を証明できるようにします。

これらのポイントを押さえると、売上が増えても慌てずに対応できます。必要があれば税理士などに相談すると安心です。

節税対策と経費計上

経費計上で税負担を抑える基本

ハンドメイド作家は売上から必要経費を差し引いた金額に税金がかかります。材料費や発送費など、事業に直接関係する支出は経費にできます。日々の記録を続けることで、正しく経費計上して税負担を軽くできます。

経費として計上できる主な項目(具体例付き)

  • 材料費:生地、金具、ビーズなど。作品ごとに分けて記録すると分かりやすいです。
  • 包装・発送費:箱代、送料、梱包材。注文ごとの領収書を保管します。
  • 道具・消耗品:針や糸、ハサミ。少額は購入時に全額経費にできます。
  • 減価償却が必要な道具:ミシンや高額なPCは数年に分けて経費化します(例:10万円のPCなら耐用年数で按分)。
  • 家賃・光熱費の按分:自宅の一部を作業場に使う場合は使用部分だけを経費にできます(面積や利用時間で按分)。
  • 宣伝・販売手数料:ネットショップの手数料、SNSの広告費、写真撮影費。
  • 交通費・出張費:イベント出展や仕入れの移動費。

記帳と証拠書類のポイント

  • 領収書・レシートは必ず保管します。電子データでも可です。
  • 売上と経費は日付ごとに記帳します。簡単な帳簿やスマホアプリで続けられます。
  • 振込やカード明細も経費の証拠になります。誰が・何のために使ったかをメモしておくと税務署に説明しやすいです。

青色申告を活用するメリット

  • 青色申告特別控除(簡易簿記なら10万円、複式簿記で65万円)が受けられます。
  • 家族に支払う専従者給与を経費にできる場合があります。
  • 要件は開業届の提出と青色申告承認申請、適切な記帳です。記帳に自信がなければ税務署や税理士に相談しましょう。

事業所得として申告するかの判断

継続的に販売し利益を得る目的があれば事業所得として扱うのが望ましいです。事業所得にすると経費計上の幅が広がり、青色申告の恩恵を受けやすくなります。

節税の注意点

  • 私的な支出を経費に含めないでください。税務署は事業関連性を重視します。
  • 不自然に大きな経費は否認されることがあります。
  • 不安がある場合は税理士に相談して、正しい申告を心がけてください。

まとめ

ハンドメイド販売で得た収入は、原則として税務申告の対象です。ポイントを簡単に整理します。

  • 確定申告の基準
  • 副業の方は、1年間の「所得」(売上から経費を引いた額)が20万円を超えると申告が必要です。専業の方は48万円が目安です。ここでいう「所得」は売上そのままではなく、経費を差し引いた後の金額です。例:売上30万円、経費15万円なら所得15万円で、副業基準は未満です。

  • 複数の副業がある場合

  • 別々に稼いでいても合算して判定します。Aの所得10万円、Bの所得15万円なら合計25万円で申告が必要です。

  • 経費と帳簿の重要性

  • 材料費・送料・梱包・道具・宣伝費などは経費になります。自宅を作業場に使う場合は家事按分の考え方もあります。領収書や記録を残し、日々の収支をつけると正確に税額を下げられます。青色申告を使うと、帳簿要件を満たせば65万円控除などのメリットがあります。

  • 消費税の扱い

  • 年間の課税売上が1000万円を超えると消費税の申告義務が出ます。売上基準は前年や前々年の状況で判定されますので注意してください。

  • 実務的なアドバイス

  • 収支はこまめに記録し、領収書は保存してください。売上や経費用に口座を分けると管理が楽になります。開業届や青色申告の申し出は早めに行うと有利です。不安があれば税務署や税理士に相談してください。

適切な経費計上と帳簿管理で税負担を軽くできます。まずは記録を始めることが大切です。

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