はじめに
本章の目的
本記事は、パナソニックのPLC上位機種「FP7」に搭載されたWebサーバー機能について、やさしく丁寧に解説することを目的としています。FP7を使ってFP0RなどのPLCをブラウザから監視する仕組みや、専用ユニットの仕様、画面作成方法まで、実務で役立つ情報を幅広く扱います。
誰に向けた記事か
PLCの導入・保守を担当する技術者や、遠隔監視の導入を検討しているご担当者向けです。専門用語はできるだけ減らし、初心者でも理解しやすい具体例を交えて説明します。
本記事で得られること
- FP7のWebサーバー機能の基本的な仕組みが分かります
- Webブラウザからの監視の流れと最低限の設定が分かります
- RS‑232Cでの接続や専用ソフト「Control Web Creator」の役割を把握できます
- FP WEBSERVER 2ユニットの仕様や想定される用途がイメージできます
注意点
機器の電源・ネットワーク設定やファームウェアの互換性は必ず確認してください。運用時は通信の安全性にも注意を払い、適切なアクセス管理を行ってください。
FP7 Webサーバー機能の基本概要
概要
FP7はパナソニックの上位機種PLCで、Webサーバー機能を内蔵しています。ネットワークに接続すると、一般的なWebブラウザからPLCの稼働状況や入出力の状態を確認できます。FP0Rなどの他機種はFP7経由で監視できます。
主な特徴
- ブラウザでの監視:専用ツールがなくても状態を閲覧できます。例:PCやタブレットのブラウザでIPを入力するだけです。
- 中継機能:FP7がネットワークの窓口となり、他のPLC情報をまとめて参照できます。
- 簡易表示画面:ステータスや値を表示する固定ページを用意できます。
動作イメージ
FP7をスイッチやルーターに接続し、IPアドレスを設定します。ブラウザでそのIPにアクセスすると、FP7が用意したページが表示され、リアルタイムで項目を確認できます。
簡単な準備手順
- FP7をネットワーク接続してIPを設定します。2. 必要に応じてControl Web Creatorで表示画面を作成します。3. ブラウザからIPにアクセスして動作を確認します。
注意点
ネットワーク経由のため認証やアクセス制御を検討してください。大量の監視要求はPLCへ負荷を与える場合があります。対応ブラウザや通信環境も事前に確認することをおすすめします。
Webブラウザからの稼働状況監視
概要
FP7のWebサーバー機能を利用すると、オフィスのPCやタブレットのWebブラウザからFP0Rが制御する設備の稼働状況を確認できます。専用ソフトは不要で、ブラウザだけで表示・監視が可能です。
接続構成
- FP0R と FP7 をRS‑232Cで接続します。
- FP7 はEthernetに接続してWebサーバーとして動作します。
- PCは同一ネットワークからFP7のIPアドレスにアクセスします(例:ブラウザでhttp://)。
ブラウザでの確認方法(簡単手順)
- FP7のIPアドレスを確認します。2. PCのブラウザにそのアドレスを入力します。3. 表示された監視画面で入出力状態やアラーム、カウンタなどを確認します。
表示できる主な項目(具体例)
- 入力/出力のオン・オフ状態(ランプ表示)
- アラーム履歴と現在のアラーム状態
- カウンタ値や累積稼働時間
- 簡易グラフや数値パネルでのリアルタイム表示
設定のポイント
- FP7のIPアドレスとサブネットを適切に設定してください。
- 表示の更新間隔は用途に合わせて短くするとリアルタイム性が上がりますが、通信負荷に注意してください。
セキュリティと運用上の注意
- ネットワークを分離するか、アクセス制限を設けて不要な通信を防ぎます。
- 必要に応じてパスワード設定やファイアウォール設定を行ってください。
よくあるトラブルと対処
- ブラウザで開けない:FP7のIP設定やケーブル、ネットワーク接続を確認します。
- 表示が更新されない:FP0RとFP7のシリアル接続設定(ボーレート等)を見直します。
上記を踏まえれば、専用ソフトなしで手軽に稼働監視が行えます。状況に応じて表示内容や更新間隔を調整してください。
FP7とFP0Rの接続方法(RS‑232C)
概要
FP7とFP0RはRS-232Cシリアルケーブルで接続します。FP7がWebサーバーとして動作し、FP0Rのレジスタや状態を取得してブラウザに表示します。接続はシンプルですが、信号線の取り扱いや通信設定の整合が重要です。
必要な機器
- RS-232Cシリアルケーブル(クロス配線/TX↔RX、GND共通)
- 必要に応じて変換アダプター(D-sub9ピン⇔機器端子)
- PCとFP7を設定するための専用ソフト
配線手順
- 電源を切ってから配線を行います。安全のため必須です。
- FP7のTX端子をFP0RのRXへ、FP7のRXをFP0RのTXへ接続します。
- 両機のGNDを必ず共通接地します。
- コネクタを確実に固定します。振動で接触不良が起きやすいためです。
通信設定
- ボーレート、データビット、パリティ、ストップビットは両機で一致させます(例: 9600,8,N,1)。
- 専用ソフトでポーリング間隔や対象レジスタを設定します。
動作確認
- 専用ソフトから通信テストを実行し、応答を確認します。
- レジスタの読み取り・書き込みが正しく行えるか試します。
注意点
- RS-232Cは長距離に弱く、概ね15m以内が推奨です。ノイズ源を避け配線します。
- 電源オンで接続を変更しないでください。機器故障の原因になります。
専用ソフトウェア「Control Web Creator」による画面作成・設定
概要
FP7のWeb画面は、専用ソフト「Control Web Creator」で作ります。PCにインストールして使い、HTMLやJavaScriptの知識がなくても、ドラッグ&ドロップで監視画面を構築できます。作った画面はFP7に転送し、ブラウザで表示します。
インストールと準備
- ソフトをPCにインストールします。メーカー提供のインストーラーを使ってください。
- FP7とPCを同じネットワークに接続し、FP7のIPアドレスを確認します。
- 必要に応じてFP0R(RS‑232C)などの接続設定を事前に行います。
画面作成の基本手順
- 接続設定: FP7への接続情報(IPアドレス、ポート)を入力します。
- 監視データの指定: 温度や圧力など、表示したい変数を選びます。例:温度センサーの値をテキスト表示に割り当てます。
- レイアウト作成: ラベル、グラフ、ボタンなどをドラッグして配置します。ボタンでリセットや出力操作を行うように設定できます。
- プレビュー: 作成中にプレビューで動作を確認します。実機に近い表示を確認できます。
FP7への転送と確認
作成した画面をFP7にアップロードします。転送後、ブラウザでFP7のIPにアクセスすると監視画面が表示されます。動作しない場合は接続設定や変数の割り当てを見直してください。
ヒントと注意点
- 配置はシンプルに保つと見やすくなります。
- 更新間隔や表示桁数は適切に設定してください。
- セキュリティ設定(パスワードなど)を忘れずに行ってください。
FP7 Webサーバー機能でできること・想定用途
概要
FP7のWebサーバー機能は、PLCの入出力や内部レジスタ、アラーム情報をブラウザで可視化し、設備の遠隔監視や簡易HMIとして利用できる仕組みです。専用ソフトで画面を作成し、ネットワーク経由で現場の状態を確認できます。
主なできること
- 入出力点や内部レジスタのリアルタイム表示(ランプや数値で見える化)
- アラーム一覧と履歴の表示、発生時のポップアップ通知
- 計測値の簡易グラフ表示(トレンド確認)
- 遠隔からの読み取り(監視)、限定的な書き込みによる設定変更
- 複数設備をまとめたダッシュボード表示
想定用途(具体例)
- 小規模ラインの監視:現場に操作パネルを置かず、PC+ブラウザで稼働監視を行います。導入コストを抑えたい現場に向きます。
- 保守・メンテナンス支援:故障時に現場の状態やアラーム履歴を遠隔で確認し、復旧手順を速やかに判断します。
- 受託監視や複数拠点の集中管理:VPNを使って離れた場所から設備状態を一元管理できます。
導入時のポイント
- セキュリティ:VPNやアクセス制限で不正アクセスを防ぎます。
- 表示設計:監視者が一目で状態を把握できる画面にすることが重要です。
- 制御の制限:Web画面は主に監視用とし、重要操作は現場で行う設計が安全です。
活用のヒント
- 日常はダッシュボードで稼働率を監視し、異常時のみ詳細画面へ移る運用にすると効率的です。
- アラームとトレンドを組み合わせて根本原因の早期発見に役立ててください。
FP WEBSERVER 2 ユニット(終了品)の仕様
概要
FP WEBSERVER 2は現在は終了品ですが、PLCのシリアル接続をネットワーク化し、遠隔監視や通知を可能にしたユニットです。RS‑232C⇔Ethernetの変換、E‑mail送信、HTTPサーバ機能、汎用通信、PPPサーバ機能などを備えていました。
主な機能
- RS‑232C⇔Ethernet変換:シリアル機器をLANやインターネット経由で接続します(例:PLCの遠隔プログラミング)。
- E‑mail送信:アラーム発生時にSMTPで通知できます。
- HTTPサーバ:ブラウザで稼働状況を監視・一部操作が可能です。
- 汎用通信:TCP/UDPベースの通信やポート変換をサポートします。
- PPPサーバ:リモート接続用の仮想回線を提供します。
ハードウェアと設定
一般的にRS‑232C(DB‑9)とEthernet(RJ‑45)ポート、電源端子、設定用LEDやスイッチを備えます。初期設定は専用ソフトやWeb画面で行います。
運用上の注意点
終了品のためファームウェア更新や公式サポートは期待できません。導入時は設定のバックアップやネットワーク分離、必要に応じてVPNなどのセキュリティ対策を行ってください。
利用シーンの例
遠隔プログラミング、異常時のメール通知、ブラウザによる稼働監視やシリアル機器のLAN化などが挙げられます。
FP WEBSERVER 2のインターフェース仕様
概要
FP WEBSERVER 2は「シリアルPLC ⇄ Ethernet」をつなぎながらWebサーバー機能を提供する機器です。物理的には3種類の端子を備え、用途ごとに使い分けます。
各インターフェースの説明
- RS-232C 端子台(3ピン・PLC接続用)
- 構成は一般にTx(送信)、Rx(受信)、GNDの3線です。PLC側が同じ3線に対応していればそのまま接続できます。ケーブルはシールド付き単対か3芯を推奨します。
- RS-232C D-sub9ピン(モデム接続用)
- 市販のD-sub9ケーブルで接続します。外部モデムやダイアルアップ装置を使う場面で便利です。必要に応じてハードウェアハンドシェイク(RTS/CTS)を確認してください。
- 100BASE-TX(RJ45)Ethernet
- 標準的な100BASE-TXポートです。スイッチやルーターへ直結します。自動ネゴシエーションとMDI/MDIXに対応している場合はストレート/クロスを気にせずに接続できます。
接続時の注意点
- 電源とGNDはしっかり配線しノイズ対策を行ってください。シリアル線は可能な限り短くし、シールドを接地側でまとめると安定します。
- 通信速度(ボーレート)やパリティ、ストップビットはPLC/モデム側と一致させます。
設定と運用のポイント
- Ethernet側はDHCPまたは固定IPのどちらかを使います。Web画面や専用ソフトでIP設定を行ってください。
- シリアル⇄Ethernetの橋渡し設定は、専用ソフトまたは内蔵の設定画面で行います。接続例として、PLCのアドレスを指定してWeb経由で監視・制御する運用が一般的です。
具体的接続例(簡潔)
- PLC(3線)→端子台3ピン:ボーレート9600、パリティなしで接続
- 外部モデム→D-sub9:ダイヤルアップやリモートアクセス用
- 管理PC→RJ45:同一ネットワークに接続しブラウザでWeb画面にアクセス
以上がFP WEBSERVER 2の主なインターフェース仕様と実務上の注意点です。必要ならピン配列や具体的設定手順も詳しく説明します。
サポートプロトコルとWeb関連機能
対応プロトコル
FP WEBSERVER 2はTCP、UDP、IP、DHCP、ETP、TELNET、HTTP、SMTP、PPPなどをサポートします。これらのプロトコルでネットワーク接続やデータ転送、遠隔操作、メール送信が可能です。
各プロトコルの主な用途
- TCP/UDP:データの送受信に使います。TCPは確実なやり取り、UDPは短いメッセージやブロードキャストに適します。例:センサーデータの定期送信。
- DHCP/IP:自動的にIPアドレスを取得するか、固定IPで運用します。現場によって使い分けます。
- TELNET:遠隔コンソールとして設定やトラブル対応に使います。簡単なコマンド操作が可能です。
- HTTP:内蔵WebサーバーでHTMLページを配信します。ブラウザから機器の状態確認や簡易操作ができます。
- SMTP:異常時にメール通知を送るときに利用します。設定済みの宛先へアラートを送信できます。
- PPP/ETP:モデム接続や装置間の簡潔なデータ転送で使います。
HTMLファイルの保存と配信
内蔵メモリにHTMLを保存し、ブラウザからの要求に応じてページを返します。画像や簡単なスクリプトも使えますが、容量と処理能力に配慮してください。
セキュリティと運用上の注意
パスワード設定やアクセス制限を行い、ネットワーク経由の不正アクセス対策をしてください。TELNETは平文通信のため、可能なら専用ネットワーク内に限定して運用してください。
設定のポイント
メール送信先やSMTPサーバー、HTTPのポート、DHCPか固定IPかの選択などを事前に決めておくと導入がスムーズです。テスト運用で通知やページ表示を確認してください。












