はじめに
本書の目的
本書は、デジタルサイネージのコンテンツ制作について、具体的な方法や手順を分かりやすく伝えるために作成しました。企業の販促や施設内の案内など、実際に使えるコンテンツ制作の流れを理解していただくことを目的としています。
対象読者
マーケティング担当者、店舗運営者、制作初心者、外注先を選ぶ立場の方など、幅広い方を想定しています。専門知識がなくても理解できるよう、具体例を交えて丁寧に説明します。
本書で扱う内容
- コンテンツ制作の基本的な考え方と進め方
- 利用できるツールとそれぞれの特徴（簡単な例つき）
- 内製と外注の判断基準
- 制作時の注意点とよくある失敗例
読み方のポイント
まず全体像を把握し、必要な章だけを順に読んでください。実務に移す際は、章ごとの手順をそのままチェックリストとして使えます。
期待できる成果
本書を読むことで、目的に合ったコンテンツの設計ができ、制作時間の短縮や費用対効果の向上につながります。具体的な制作手順は次章以降で詳しく解説します。
デジタルサイネージコンテンツの制作方法と手順
はじめに
デジタルサイネージは短時間で情報を伝える媒体です。目的に合った設計と制作手順を踏めば、効果的に訴求できます。ここでは実務で使える流れをわかりやすく説明します。
制作の全体フロー
- 企画（目的・ターゲットを決める）
- 設計（画面サイズ、再生時間、スケジュール）
- 制作（素材準備、レイアウト、アニメ）
- テスト（表示確認、音量、視認性）
- 配信・運用（更新・解析）
企画段階のポイント
- 目的を一つに絞る：販促、案内、ブランディングなど。例：入口で新商品を10秒で告知。
- ターゲットを明確に：年齢、来訪時間帯。短い滞在なら短いメッセージを優先します。
設計・フォーマット決定
- 画面比率（縦型／横型）、解像度を確認します。
- 再生時間は5〜15秒が目安。店頭は短め、待合室は長めに設定します。
制作の具体手順
- 素材準備：高画質画像、短い動画、ロゴ、フォント。著作権に注意。
- ワイヤー／テンプレ作成：要素の位置と優先度を決めます。
- アニメと遷移：目を引くが過度にならないように調整します。
- 音声と字幕：音が出せない場所では字幕を必ず付けます。
テストと実機確認
- PCでの再生確認後、実機で表示・音量・視認性をチェックします。
- 明るい場所ではコントラストを強め、文字は大きめにします。
配信と運用
- 配信スケジュールを決め、定期的にコンテンツを更新します。
- 再生ログや反応を見て改善を繰り返します。小さな改善が効果を生みます。
実装時の注意点
- 文字は短く、読みやすい行間を保ちます。
- 法令・著作権・個人情報に配慮してください。
- 障害発生時のロールバック手順を用意します。
デジタルサイネージコンテンツ制作の3つの主要方法
1. PowerPointを活用した制作
PowerPointで画像や文字を組み合わせ、スライドショーや動画（MP4）に書き出せます。手軽さが最大の利点で、操作に慣れている人が多く短時間で制作可能です。利点：コストが低く修正が簡単。注意点：アニメーションやエフェクトは限定的で、細かい映像編集は難しいです。コツ：あらかじめ表示時間・解像度（例：1920×1080）を設定し、フォントや色の統一を心がけます。
2. 動画制作ツール・ソフトの活用
Premiere ProやFinal Cutなどの編集ソフト、After Effectsでモーショングラフィックスを作れます。BGMやカット編集、色調整が可能で高品質な映像を作成できます。利点：表現の自由度が高くプロ仕様の仕上がり。注意点：習得に時間と費用がかかります。コツ：テンプレートを活用し、尺（例：10〜30秒）とファイル形式（MP4/H.264）を意識して書き出します。
3. クラウドサービスと制作会社への外注
Web上のテンプレートサービスや専門の制作会社に依頼できます。テンプレートは短時間で量産可能、外注はブランディングに適しています。利点：手間を省ける、プロの視点が得られる。注意点：外注はブリーフィング（目的、ターゲット、表示環境）を明確にする必要があります。コツ：サンプルや配信先の解像度を共有し、納品形式とスケジュールを事前に確認してください。
コンテンツ制作の基本的な手順
ステップ1: 目的とターゲットの明確化
まず何を伝えたいか、誰に向けるかをはっきりさせます。例：新商品の認知を高める／来店を促す。ターゲットは年齢層や利用シーンで絞ります。目的が明確だと、映像の長さや表現方法が決めやすくなります。
ステップ2: コンテンツ企画と素材準備
伝えたい内容を短いメッセージに分け、画面ごとの構成（ワンシート）を作ります。写真や動画、ロゴ、音声は高解像度のものを用意します。必要なら撮影リストや台本を作り、素材ごとに使用許諾を確認します。
ステップ3: 実際のコンテンツ制作
PowerPointや動画編集ソフトで素材を組み合わせます。表示サイズに合わせて画像をトリミングし、テキストは見やすい大きさ・色にします。アニメーションは短く、視線の誘導を意識して使います。制作後は実機やプレビューで表示時間や読みやすさを確認し、必要なら修正します。
制作時のポイント
– 1画面は短く（目安は5〜10秒）して見やすくする
– 文字は大きめ、配色はコントラスト重視
– 音声は無くても伝わるようにビジュアル重視で作る
制作チェックリスト
目的設定、ターゲット定義、ワンシート、素材準備、サイズ調整、テキスト配置、動きの確認、最終チェック（許諾・再生テスト）
PowerPointを活用した具体的な制作手順
1. スライドサイズの設定
ディスプレイの比率に合わせてスライドサイズを決めます（横16:9や縦9:16が一般的）。PowerPointでは「デザイン」→「スライドのサイズ」→「ユーザー設定」で比率を選び、縦横の向きを確認します。表示の端が切れないように上下左右に余白（セーフゾーン）を取ることを意識してください。
2. 素材の貼り付けとテキスト挿入
「挿入」から画像や動画、図形、テキストボックスを入れます。画像は高解像度、背景透過はPNGを使うと便利です。フォントは読みやすいものを選び、見出しは大きめ（目安36pt以上）、本文は18〜28pt程度にします。重要情報は画面中央か上寄せに配置すると視認性が上がります。
3. 動きのあるコンテンツの追加
アニメーションやスライド切替で動きを付けます。アニメーションはシンプルな「フェード」や「スライド」を基本に、時間は0.5〜1秒が目安です。複雑な動きは注意を引きますが、情報の伝わりにくさにもつながるので節度を持って使ってください。
4. 音声・BGMの追加
「挿入」→「オーディオ」でBGMや効果音を追加し、再生設定で自動再生やループを指定できます。音量は控えめにし、ナレーションがある場合はBGMを下げます。著作権に注意してフリー素材を使ってください。
5. 書き出しと動作確認
用途に応じてMP4やPNG連番で書き出します（ファイル→エクスポート→ビデオの作成）。解像度は再生機器に合わせて選び、実機で色味や再生を必ず確認してください。ループや自動再生の設定も確認すると安心です。
小さな工夫（コントラストを高める、余白を保つ、フォントを統一する）で見やすさが大きく変わります。
