はじめに
Webサイトの直帰率は、サイト改善やマーケティングでよく話題に上がります。本記事では直帰率の意味や計算方法、業種ごとの目安、直帰率が高くなる原因、改善策、そしてGoogle Analytics(GA4)での見方まで、実務で役立つポイントをやさしく解説します。
この記事の目的
- 直帰率の基本をしっかり理解して、誤解を減らすこと
- 原因の見つけ方と具体的な改善策を学ぶこと
- GA4で正しく数値を見て判断できるようになること
想定読者
- 自分でサイトを運営している方
- マーケティングやアクセス解析に関わる方
- 制作会社やフリーランスでサイト改善を行う方
本記事の構成
第2章〜第10章で、定義・離脱率との違い・平均値・原因・デメリット・改善策・GA4の見方・高くても問題ないケース・まとめを順に解説します。専門用語はできるだけ避け、具体例を交えて説明しますので、初めての方でも読み進めやすい構成です。
直帰率とは何か?基本的な意味と定義
定義
直帰率とは、訪問者が最初に見たページだけを見て、ほかのページに移動せずにサイトを離れた割合を示す指標です。入口ページだけのセッションがどのくらいあるかを表します。
計算式
直帰率(%)=(直帰セッション数 ÷ 総セッション数)×100
例:総セッションが100で直帰が30なら、直帰率は30%です。
具体例
・ブログ記事を読んで満足して閉じる→直帰
・記事から別の記事へ移動する→直帰ではない
・広告をクリックして着地ページだけ見て離脱→直帰
直帰率が示すこと
入口ページの「入りやすさ」や「期待に合っているか」を示す手がかりになります。直帰が多いと入口ページの内容や導線に改善の余地があることが考えられます。ただし、ユーザーが目的を達成して満足して離脱した場合も直帰になる点に注意してください。
注意点
ページの種類や目的によって直帰率の意味は変わります。ランディングページや問い合わせページ、読み物系では評価基準が異なります。直帰率はほかの指標(滞在時間、コンバージョン率など)と合わせて総合的に判断してください。
離脱率との違い
離脱率とは何か
離脱率は「そのページがサイト内で最後に見られた割合」を示します。あるページが何回表示され、そのうち何回がサイトを離れる最後のページだったかを比べます。具体的には「そのページから離脱した回数 ÷ そのページの表示回数」です。
直帰率との違い
直帰率は「訪問者がそのページだけを見て離れた割合」です。つまり直帰はセッション全体が1ページだけで終わる場合を指します。対して離脱率はページ単位の指標で、訪問が何ページ目であってもそのページで終われば離脱になります。
具体例で分かりやすく
例1: 誰かがトップページだけ見て離れた→そのセッションは直帰になり、トップページの離脱にもなります。例2: 誰かがトップ→商品→購入完了の順で見てサイトを離れた→購入完了ページは離脱になりますが、トップページは直帰ではありません。
実務での使い分け
・直帰率はランディングページの品質評価に使います。期待する次の行動が起きないと直帰率が高くなります。
・離脱率は導線の最後の問題点を探すときに見ます。特定のページで離脱が多ければ、そのページの改善を検討します。
どちらも単独で判断せず、ページの役割や流入経路と合わせて見てください。
直帰率の平均値や目安
以下では業種やページの目的ごとの直帰率の目安を具体的に示します。数字はあくまで目安であり、サイトの目的や流入元で変わる点にご注意ください。
- 一般的なWebサイト:40〜60%
-
企業サイトやコーポレートサイトではこの範囲が標準的です。会社紹介や問い合わせページが多い場合、やや低めになります。
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ブログ・ニュース:60〜90%
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記事を読むだけで満足する訪問者が多く、直帰率が高くなりやすいです。関連記事の導線や内部リンクで改善します。
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ECサイト(商品ページ):20〜40%
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商品ごとに次の行動(購入やカート追加)を促すため、直帰率は低い方が望ましいです。高い場合は導線やページ速度を見直します。
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ランディングページ:70〜90%
-
広告やキャンペーンで訪れる単一目的のページは離脱しやすく、直帰率が高く出ます。コンバージョンが取れていれば必ずしも問題ではありません。
-
サービス紹介サイト:30〜50%
- 問い合わせや資料請求につなげる導線がある場合、直帰率は中程度が目安です。
注意点:
– デバイス差(モバイルは高め)や流入元(オーガニックは高め、広告は低め)で数字が変わります。
– 目安と自サイトの指標を比較し、ページ目的に応じた改善を優先してください。
直帰率が高くなる主な原因
直帰率が高くなる原因を分かりやすく整理します。原因ごとに具体例と簡単な確認方法も添えました。
1) コンテンツが期待に合っていない
ユーザーが検索や広告で期待した情報と実際の内容が違うと、すぐに離れます。例:『価格比較』を探しているのに解説記事だけしかない。確認方法:検索キーワードとページ内容を照らし合わせてください。
2) ページの読み込みが遅い
読み込みに数秒以上かかると離脱が増えます。例:画像が最適化されていない。確認方法:ブラウザの開発ツールや速度測定ツールで読み込み時間を測ってください。
3) デザインや操作が分かりにくい
ボタンが小さい、リンクが見つけづらいなどで操作を諦められます。例:スマホでタップしにくいメニュー。確認方法:実際にスマホで操作してみてください。
4) ファーストビューが魅力的でない
最初に目に入る情報で興味を引けないとスクロールされません。例:見出しが一般的すぎる。確認方法:開いた瞬間の印象を第三者に聞いてください。
5) ページ滞在時間が極端に短い
内容が薄い、誤った導線で来たなどが原因です。例:広告や外部リンクで期待と違う流入。確認方法:流入元やランディングページの解析を行ってください。
6) モバイル対応が不十分
レスポンシブでない、表示崩れで操作不能になります。例:フォームが画面外に隠れる。確認方法:各種画面サイズで表示確認してください。
7) 誤った誘導による流入
広告や外部リンクの説明文と内容がずれていると直帰します。例:『無料ダウンロード』と宣伝されているが無い。確認方法:広告文や紹介ページを見直してください。
これらを一つずつ検証すると、直帰率改善の優先順位が見えてきます。
直帰率が高い場合のデメリット
ユーザーが求めていた情報を得られなかった可能性
直帰率が高いと、訪問者がページで目的を達成できなかった可能性が高くなります。説明が不十分や導線の不明瞭さで離脱が増え、満足度が下がります。
ECサイトでの売上機会の損失
商品ページやキャンペーンページで直帰が多いと、購入や会員登録に至る機会が失われます。結果として売上やコンバージョンが下がりやすくなります。
検索エンジンの評価への影響
直帰が極端に高いと、検索エンジンがページの品質を低く判断することがあります。表示順位の低下につながり、流入自体が減る恐れがあります。
広告・マーケティングの無駄
広告経由で呼び込んでも直帰が多ければ投資対効果が悪くなります。成果が出ない施策に予算を割き続けるリスクがあります。
ブランド信頼と印象の低下
情報が探しにくい、見た目が不安という印象が残ると、再訪や推奨につながりにくくなります。長期的にはブランド価値に影響します。
データ分析の困難
直帰が多いとユーザー行動の把握が難しくなり、根本原因の特定や改善施策の効果検証が難航します。次の改善につながりにくくなります。
直帰率を改善する方法
直帰率を下げるには、ユーザーが期待する情報にすぐたどり着けるようにして、ページの使いやすさを高めることが大切です。以下に具体的な方法と実践ポイントをまとめます。
1. ページ内容をユーザー期待に合わせる
- 検索キーワードや流入元を確認し、タイトルや導入文で期待に応える。例:検索で「〇〇の方法」を探して来た人には、最初に手順の要点を示す。
- H1と本文のズレをなくす。最初の数行で結論やメリットを伝える。
2. ページ読み込み速度を改善する
- 画像は圧縮・適切なサイズにする。遅延読み込み(lazy-load)を使う。
- CSS・JavaScriptを最小化し、不要なプラグインを削除する。CDNや高速なホスティングを検討する。
3. ファーストビューを魅力的にする
- 上部で要点と行動を示す(見出し+短い要約+CTA)。
- 余計な要素を減らして視線を誘導する。最初の画面で価値が伝わることを目指す。
4. 内部リンクや関連記事への誘導を強化する
- 本文中に関連コンテンツへの自然なリンクを入れる。クリックしたくなるアンカーテキストにする。
- 記事下やサイドに関連記事カードを置き、アイキャッチと短い説明を加える。
5. モバイル対応とUI/UXの改善
- レスポンシブ設計で文字やボタンを指で押しやすくする。フォームは項目を減らす。
- 読みやすい行間・フォントサイズにし、読み進めやすい構成にする。
6. 他指標と合わせた分析と優先順位付け
- 平均滞在時間や離脱ページ、コンバージョンと合わせて見る。直帰が高くても滞在時間が長ければ意図的な閲覧かもしれない。
- 影響度と工数で改善項目を優先し、小さな改善を繰り返す(A/Bテストで効果確認)。
7. 実践チェックリスト(すぐ使える)
- タイトルと導入の整合性を確認
- 画像とスクリプトの最適化
- ファーストビューにCTAを配置
- 関連記事リンクを3つ以内で目立たせる
- モバイルでの操作性をチェック
- 1つずつテストして効果を計測
これらを順に試し、データで改善効果を確認しながら進めてください。
Google Analytics(GA4)での直帰率の見方
GA4での直帰率の定義
GA4では「直帰率」は、エンゲージメントが発生しなかったセッションの割合として定義されます。エンゲージメントとは次のいずれかです:
– セッション継続時間が10秒以上
– 2ページ以上(または2画面以上)閲覧
– コンバージョンに設定したイベントが発生
つまり直帰率 = エンゲージメントがないセッション / 全セッションです。UA(ユニバーサルアナリティクス)とは定義が異なる点に注意してください。
レポートでの確認手順(簡単)
- 左メニューから「レポート」→「ライフサイクル」→「エンゲージメント」→「概要」を開きます。
- 「指標を追加」や画面右上のカスタマイズで「直帰率」または「エンゲージメント率」を表示します。
- 「探索」→「自由形式」で指標に直帰率を入れると、セグメントやページ別に細かく調べられます。
補足:エンゲージメント率が分かれば、直帰率は(1 − エンゲージメント率)で求められます。
実務で押さえるポイント
- 重要なイベントは「コンバージョン」に設定すると直帰率に影響します。問い合わせボタンのクリックなどを設定すると良いです。
- スクロールや動画再生などは「拡張計測(Enhanced Measurement)」で自動収集できます。これを有効にすると実際のエンゲージメントが拾いやすくなります。
- セグメント別(日付帯、流入元、デバイス)で直帰率を比較し、改善すべきページを絞り込みます。
これらを使って、GA4で正しく直帰率を見て分析してください。
直帰率が高くても問題にならないケース
概要
直帰率が高くても、必ずしも問題とは限りません。ページがユーザーの目的を一度の閲覧で満たす場合、直帰しても成果は達成されています。どのケースで許容されるかを具体例で説明します。
代表的なケース
- ブログやニュース記事
- 記事を読んで情報を得たら離脱する利用が多いです。閲覧と目的達成が一致します。
- レシピやハウツー記事
- 手順を見て作業に移るため、他ページに移らずに離脱することが普通です。
- ランディングページ(広告からの流入)
- 広告で呼び込んで1ページで申し込みや購入が完了する場合、直帰が高くても問題になりません。
- 問い合わせ先や店舗情報ページ
- 電話番号や住所を確認して離脱する行動は目的達成です。
評価のポイント
- ページごとの目標を明確にしてください。購入や問い合わせが目的ならコンバージョン率を重視します。
- 滞在時間やスクロール深度、クリックなどで満足度を判断してください。単純な直帰率だけで評価しないことが大切です。
- 流入元やデバイス別に確認すると、自然な直帰か問題かがわかります。
注意点
- 直帰率が高くても必ず良いとは限りません。事前に期待する行動を定義し、必要なら改善を検討してください。
まとめ
本章では直帰率に関するポイントを簡潔にまとめます。
- 直帰率の意義:1ページだけで離脱した割合を示し、ユーザー期待と導線の合致度を知れます。
- 把握すべきこと:計算方法、離脱率との違い、業界ごとの目安、原因分析、改善策、GA4での見方を理解してください。
- 改善の優先順位:まずはサイトの目的(情報提供・コンバージョンなど)を決め、重要ページの速度改善・導線整備・コンテンツの明確化を行います。
- 高直帰率でも問題ない場合:問い合わせ完了ページや電話発信だけを目的とするランディングなど、1ページで目的が達成されるケースです。
実務的な次の一手:目的を定め、重要ページをリスト化、GA4で計測し変更を加えてABテストで効果を確かめる。この流れを継続すれば、直帰率は意味ある指標として活用できます。応用を通じてユーザー満足と成果向上を目指してください。












