はじめに
目的
本ドキュメントは「CDN delivery（コンテンツ配信ネットワーク）」に関する調査結果をわかりやすくまとめたものです。CDNの基本から構成要素、動作の仕組み、キャッシング戦略、配信するコンテンツの種類まで順を追って解説します。技術的な背景が苦手な方でも理解できるよう、具体例を交えて説明します。
なぜCDNを学ぶか
インターネット上のサービスは、利用者に速く確実に届くことが重要です。例えば、動画をスムーズに再生したい場合や、ECサイトのページを短時間で表示したい場合にCDNは役立ちます。本書を読むと、どのように遅延を減らし、安定して配信できるかが見えてきます。
対象読者
ウェブサイト運営者、開発者、ネットワーク担当者、そして技術に興味がある一般の方が対象です。専門用語は最小限にし、必要な箇所では具体例で補足します。
本ドキュメントの構成
第2章から第6章まで順に説明します。各章は独立して読めますが、順に読むと理解が深まります。
CDNの基本定義
基本の定義
CDN（コンテンツデリバリーネットワーク）は、地理的に散らばったサーバーの集まりが、ウェブサイトやアプリの画像・動画・HTML・JavaScriptなどを利用者に近い場所から配る仕組みです。元のサーバー（オリジン）に頼らず、複数の拠点でデータを一時的に保管して配信します。
なぜ必要か
利用者とサーバーの距離が短くなると表示が速くなり、表示遅延や接続切れのリスクを減らせます。例えば同時に多くの人が買い物するセール時や、動画視聴が集中する場面で効果を発揮します。
主な働き（簡単に）
- キャッシュ：よく使うファイルを各地のサーバーに保存します。
- 負荷分散：アクセスを分散してオリジンの負担を下げます。
- 可用性向上：一部の拠点が障害を起こしても別の拠点が応答します。
- セキュリティ補助：攻撃の影響を広い範囲に分散して軽減します。
身近な例
写真が多いサイトの場合、画像を近くのサーバーから配ると数秒の差が縮まります。結果として利用者は快適に閲覧できます。
知っておきたいポイント
CDNは静的なファイルで特に効果的です。しかし、会員専用の最新データなど動的な情報は設定次第で扱いが変わります。導入時はキャッシュの有効期限やどのファイルを配るかを決めることが重要です。
CDNの主要な構成要素
CDN（コンテンツ配信ネットワーク）はいくつかの役割を持つ要素が協力して動作します。ここでは主要な構成要素を分かりやすく説明します。
オリジンサーバー
オリジンサーバーは元のコンテンツを保管・管理する場所です。例えば、企業のウェブサイトや動画ファイルを置くサーバーはオリジンです。コンテンツの更新や元データの管理は必ずオリジンで行います。もしエッジにデータがない場合は、エッジがオリジンから取りに行きます。
エッジサーバー
エッジサーバーはユーザーに近い場所でコンテンツを一時保存（キャッシュ）して配信します。東京や大阪など地理的に分散したサーバーを想像してください。よく使われる画像や動画をエッジが保持することで、読み込みが速くなります。キャッシュがある場合はオリジンにアクセスせずに応答できます。
PoP（ポイント・オブ・プレゼンス）
PoPは複数のエッジサーバーが設置された物理的なデータセンター拠点です。地域ごとにPoPを置くことで、利用者が近い拠点から高速に配信できます。例えばアジア向けは東京やシンガポールのPoP、欧州向けはフランクフルトのPoPといった具合です。
DNSサーバー
DNSサーバーはドメイン名を適切なIPアドレスに変換し、ユーザーのリクエストを最適なエッジへ振り分けます。利用者の位置や負荷状況を見て、最も近いまたは空いているPoPを選びます。結果としてアクセス時間が短くなります。
要素の連携（簡単な流れ）
ユーザーがページを開く→DNSが近いPoPのエッジを指示→エッジにキャッシュがあれば応答、なければオリジンから取得→エッジがユーザーに配信。これらが協力して高速で安定した配信を実現します。
CDNの動作メカニズム
1. ユーザーのリクエストとDNSリダイレクション
ユーザーがウェブページや画像を要求すると、まずドメイン名の問い合わせがDNSに送られます。CDNは地理的に近いエッジサーバーの住所（IP）を返す仕組みを使い、ユーザーを最も近い配信拠点へ誘導します。たとえば東京の利用者には東京のエッジが選ばれます。
2. キャッシュヒットの場合
エッジサーバーに要求されたデータが既に保存されていると、すぐに配信します。画像やスタイルシートなどはこのケースが多く、読み込みが瞬時に近くなります。ユーザーは短時間でページを表示できます。
3. キャッシュミスの場合
エッジにデータがないと、エッジサーバーはオリジンサーバー（元のサーバー）に取りに行きます。このやり取りは裏で行われ、ユーザーは少し待つことになりますが、次回はエッジで配信できます。
4. オリジンサーバーからの取得とキャッシュ保存
オリジンから受け取ったデータをエッジが一時保存します。保存期間は設定（例：保存時間や更新ルール）によって決まります。保存期間が切れると再取得します。
5. なぜ高速化するのか（具体例）
・物理的に近いサーバーから配信するため通信時間が短くなります。
・同じデータを何度もオリジンに取りに行かないため元のサーバーの負荷が下がります。結果としてページ表示が速くなり、利用者の体験が向上します。
6. 基本的な流れ（手順）
1) DNSが近いエッジへ誘導 2) エッジでキャッシュ確認 3) ヒットなら即配信、ミスならオリジンから取得して保存後配信
この仕組みでCDNは高速で安定した配信を実現します。
キャッシング戦略と遅延削減
キャッシュの役割
CDNのキャッシュは、複数の拠点にコンテンツを保存し、ユーザーに近い場所から配信する仕組みです。これにより帯域幅の使用量を抑え、ページの読み込み時間を短縮します。例えば画像や動画をエッジに置くと表示が速くなります。
TTL（有効期間）の設定
TTLはキャッシュの寿命を決める値です。短くすると最新反映が早く、長くすると帯域と遅延が減ります。HTMLは短め、静的画像やフォントは長めに設定するのが一般的です。運用ではバージョニング（ファイル名にバージョンを付ける）で長めTTLを安全に使えます。
配置と地理的戦略
エッジロケーションを多く持つと物理距離が短くなり遅延が下がります。ユーザー分布を見て配置を決め、主要都市やトラフィックが多い地域を優先します。
キャッシュ制御と更新（パージ）
急ぎで更新する必要がある場合はキャッシュパージを行います。自動パージや部分パージを使うと影響範囲を小さくできます。キャッシュヒット率を監視して効果を評価します。
遅延削減の実践策
接続数の削減、ファイル圧縮、HTTP/2やTLS最適化で往復時間を減らします。キャッシュヒット率を上げるために、静的資産は積極的にキャッシュし、動的部分はAPI側で最小限にします。負荷の高い時間帯はプリフェッチやキャッシュウォームアップで対応します。
運用上の注意点
古いキャッシュの残存や不適切なTTLでユーザーに古い情報を見せないようにします。ログと指標を定期的に確認し、設定を調整してください。
配信するコンテンツの種類
概要
CDNは静的コンテンツと動的コンテンツの両方を配信します。世界中にあるサーバーから、利用者に近い場所でデータを届ける仕組みです。以下に代表的な種類と扱い方を分かりやすく説明します。
静的コンテンツ（例：画像・CSS・JavaScript・HTML）
画像やスタイルシート、スクリプトなどは更新が少ないため、エッジに長めに置いておけます。これにより読み込みが速くなり、サーバー負荷も下がります。ファイル名にバージョンを付けると更新時の混乱を防げます。
動的コンテンツ（例：ユーザー別ページ・API応答）
個別化されたページやリアルタイムのAPI応答は都度生成する必要があります。短時間のキャッシュや、個人情報を除外してエッジで一部処理することで応答を速くできます。
動画・ライブ配信
動画は一括で送るより細かく分けて配信する方式が多く、視聴中に画質を調整します。ライブは低遅延を優先する設計が必要です。
大容量ファイル配布
ソフトウェアや大きなデータは断続的にダウンロードを再開できる仕組みや分割配信を使うと安定します。
セキュリティと運用の注意点
HTTPSで配信し、機密情報はキャッシュしない設定が基本です。TTL（保持時間）やキャッシュの無効化手順を運用で定めておくと安心です。
