cdn, purgeの基本仕組みと効果的戦略を詳しく解説

目次

はじめに

本書の目的

このドキュメントは、CDNのキャッシュを強制的に削除する「CDN Purge(パージ)」について、分かりやすく解説することを目的としています。技術的な背景だけでなく、実務での使いどころや注意点、具体的な操作方法までを順を追って説明します。

対象読者

ウェブサイトやアプリの運用担当者、開発者、またはCDNを使い始めた方を主な対象としています。専門用語は最小限に抑え、具体例を使って説明しますので初めての方でも理解しやすい構成です。

本章で扱うこと

この「はじめに」では、ドキュメント全体の流れと各章の簡単な説明を示します。続きを読むことで、どのような場面でパージが必要か、どのように実行するか、最適な戦略とは何かが分かるようになります。

なぜパージを知っておくべきか

ウェブ上のコンテンツはCDNに一時保存され、表示速度を速くします。一方で、更新をすぐに反映したいときはキャッシュが邪魔になることがあります。たとえば重要な文言の修正や画像差し替え、セキュリティ修正などでは、TTL(有効期限)を待たずに最新の状態に切り替えたい場面が出てきます。こうしたときにパージの手段を知っていると、素早く確実に対応できます。

読み進め方のヒント

各章は実務で使える順に並べています。まず第2章で概念を押さえ、第3章で具体的な適用場面を確認してください。コマンドやAPIの例は第6章に集めていますので、実際の操作はそこを参照すると便利です。

CDN Purgeとは

概要

CDN Purge(CDNパージ)は、CDN上にキャッシュされたコンテンツを強制的に削除し、無効化する操作です。パージ後のリクエストはキャッシュを経由せず、オリジンサーバーから最新のデータを取得します。通常はTTL(Time To Live)でキャッシュを管理しますが、緊急の修正や誤配信時に有効期限を待たず実行します。

仕組みの要点

  • CDNは静的ファイルや応答を複製して配信します。パージはその複製を削除する命令です。
  • 多くのCDNはURL指定やパターン指定で対象を指定します。指定されたオブジェクトだけが無効化されます。
  • パージは即時に見える場合と、ノード間の伝播に時間がかかる場合があります。完全に消えるまで短時間の遅延が生じます。

使う場面(例)

  • サイトのレイアウトやCSS、JavaScriptを修正したとき
  • 画像やダウンロードファイルを差し替えたとき
  • セキュリティに関わる誤配信や機密情報が公開されたとき

注意点

  • パージはキャッシュを空にするため、オリジンサーバーへの負荷が増えます。トラフィックやサーバーの負荷を確認してから実行してください。
  • 一部CDNではAPIや管理画面に使用制限や料金がある場合があります。運用ポリシーを確認してください。
  • テスト環境での確認をおすすめします。本番で広範囲にパージする前に限定的な対象で試してください。

簡単な運用アドバイス

頻繁な更新がある場合は、長いTTLを避け、キャッシュ戦略を見直してください。必要に応じて部分的なパージやバージョニングを併用すると運用が安定します。

パージが必要な場面

コンテンツ更新直後にすぐ新バージョンを配信したいとき

ウェブページや画像を更新して、訪問者に新しい内容をすぐ見せたい場合にパージが必要です。例えばニュース記事を訂正したり、商品ページの価格や在庫情報を更新した直後に使います。個別のファイルだけ消す場合はURL単位のパージ、すべて差し替えたいときはワイルドカードや全体パージが有効です。

キャッシュされたコンテンツに誤りがあるとき

誤った文章や壊れた画像、壊れたスクリプトが配信されている場合は、利用者体験を守るために速やかにパージします。誤りの原因を修正した後、修正版が確実に配信されるように対象のキャッシュを削除します。

緊急の変更対応が必要なとき

個人情報や機密情報が誤って公開された場合、または脆弱性を悪用される恐れがある場合は即時にパージして配信を止めます。緊急時は全ノードの強制パージやAPIを使った自動化が役に立ちます。

古いコンテンツを削除したいとき

サービス終了や契約上の理由で古いページを消す必要がある場合にパージします。検索結果や外部リンクで古い情報が見え続けないよう、該当ファイルを確実に消去してください。

パージの仕組み

概要

キャッシュされたオブジェクトは通常、設定されたTTL(有効期限)が切れるまで配信されます。パージを送信すると、CDNは当該オブジェクトの配信を止め、以後のリクエストでオリジンサーバーから新しいオブジェクトを取得します。

キャッシュの流れ(簡単な手順)

  1. エッジノードにキャッシュが存在する。2. クライアントがリクエストを送る。3. エッジがキャッシュを返す。4. パージリクエストを送るとエッジはキャッシュを無効化する。5. 次回のクライアント要求でエッジはオリジンへフェッチする。

ハードパージとソフトパージの違い

  • ハードパージ:キャッシュを即時に無効化し、以後はエッジから配信されません。コンテンツをすぐ差し替えたい場合に使います。例:誤った画像を即時差し替える。
  • ソフトパージ:エッジ上で「古い」とマークしつつ、条件によっては古いキャッシュを配信し続けます。フェールセーフとして利用できます。例:オリジンが一時的に遅いときにサービスを維持する。

配信時の挙動と注意点

パージ直後に全ノードで即座に更新されるとは限りません。ネットワーク遅延やノード間の反映タイミングに差が出ることがあります。複数ファイルやリダイレクトを伴う変更は、順序や依存関係を考えてパージを行ってください。

AEMでの取り扱い(簡単)

AEM環境では、DispatcherやFlush Agentを通じてパージ(フラッシュ)を実行します。ハード/ソフトの考え方は同様で、サイトの一貫性と可用性のバランスを意識して選びます。

パージの種類と方法

概要

CDNごとに用意されるパージ方法は異なります。ここでは代表的な種類を分かりやすく説明します。どの方法を使うかは更新頻度や範囲で決めるとよいです。

単一URLパージ

特定のファイルだけを無効化します。ページや画像を個別に更新したいときに使います。

例(汎用的):

POST https://api.cdn.example/purge
Authorization: Bearer <API_TOKEN>
Body: {"url":"https://example.com/path/to/file.jpg"}

サロゲートキー(Surrogate Key)によるパージ

複数のURLをまとめて管理できるタグ方式です。記事IDやコンテンツ種別をキーに設定し、そのキーで一括パージします。例:記事123に関連するCSSや画像をまとめて消す場合に便利です。

例(ヘッダでキーを付与):

Response/Store: Surrogate-Key: article-123

パージ時:

POST /purge
Body: {"surrogate_key":"article-123"}

完全パージ(Purge All)

配下の全てのキャッシュを無効化します。大規模な更新や設定変更時に使います。負荷が大きくなるため注意が必要です。

例:

POST /purge_all

その他の方法

  • キャッシュタグ(Cache-Tag): サロゲートキーと似ていますが、CDN固有の仕組みです。
  • ホスト名やURLプレフィックス: サブドメインや特定パス配下をまとめて消すときに使います。例: /images/*
  • ゾーンバージョン: 設定ごとにバージョン管理し、バージョン切替でキャッシュを反映する方式です。

curlでの汎用例

単一URLパージ:

curl -X POST "https://api.cdn.example/purge" \
 -H "Authorization: Bearer $API_TOKEN" \
 -d '{"url":"https://example.com/image.jpg"}'

サロゲートキー:

curl -X POST "https://api.cdn.example/purge_by_key" \
 -H "Authorization: Bearer $API_TOKEN" \
 -d '{"key":"article-123"}'

各CDNでコマンドやパラメータが異なります。導入時は公式ドキュメントを確認し、運用ルールを決めてください。

パージの実行方法

手動パージ(GUI / API / CLI)

  • GUI: CDN管理画面からURLやパス、タグを指定して実行します。操作は直感的で、少量の更新向けです。確認ダイアログや履歴があるサービスが多く、誤操作を防げます。
  • API: HTTPリクエストでパージを送信します。例:POST /purge {“url”:”/path/image.jpg”}。自動化やアプリ連携に便利です。
  • CLI: コマンドで一括処理やスクリプト実行ができます。運用担当が手早く行う場合に有効です。

自動パージ(イベントトリガー)

  • WebhookやCMS連携で、コンテンツ更新時に自動でパージを発行します。開発者がトリガーを設定すれば常に最新を保てます。
  • CI/CDに組み込むとデプロイ時に関連キャッシュをクリアできます。

実行時の注意点

  • 対象を限定する(URL、パス、タグ)ことで不要な全消去を避けます。
  • レート制限やバッチ処理を利用し、短時間に大量のリクエストを出さないようにします。
  • ログと通知を有効にし、失敗時は自動リトライや再発行を行います。
  • テスト環境で一度試し、本番へ適用してください。

実行方法はシンプルですが、安全性と効率を重視して設定すると運用が楽になります。

パージ戦略

はじめに

パージ戦略は「いつ」「どの範囲」をキャッシュから消すかを決める方針です。目的はユーザーに最新の情報を届けつつ、CDNの性能を損なわないことです。

主な戦略

  • フルパージ
    全キャッシュを無効化する強力な方法です。サイト全体を一気に更新する場合やキャッシュが壊れたときに使いますが、配信性能に大きく影響します。
  • ターゲットパージ(URL/タグ)
    特定のページやタグ単位で消去します。たとえば「商品ページ」だけ更新する場合はタグでパージすると効率的です。
  • バージョニング
    画像やCSSにファイル名のバージョンを付けて、新しい名前で配信します。既存のキャッシュを触らずに確実に差し替えられます。
  • TTLと自動更新
    短い有効期限(TTL)を設定すると、古いキャッシュが自動で置き換わります。頻繁に変わる情報に向きます。

戦略の選び方(例)

  • ニュースサイト:重要度が高く頻繁に更新するため、タグパージ+短TTLを推奨します。
  • ECサイト:価格や在庫は部分的に変わるので、商品ごとのターゲットパージとアセットはバージョニングで管理します。
  • コーポレートサイト:更新は稀なので長めのTTLと、更新時はバージョニング中心にするとよいです。

運用上の注意

  • フルパージは必要時のみ行い、実行はアクセスの少ない時間帯にすることを推奨します。
  • パージ後は重要ページをプリフェッチ(ウォーム)して体験を守ります。
  • APIのレート制限や伝播遅延を考慮し、段階的に実施して動作を確認します。

これらを組み合わせると、パフォーマンスを維持しながら確実に最新化できます。

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