はじめに
概要
本ドキュメントは、AWS環境の運用監視に関する検索意図の分析と、それに基づく記事内容の調査結果をまとめたものです。運用監視の基礎知識から、主要なツールやサービス、監視対象のリソース、監視の自動化や運用自動化、セキュリティ対策まで幅広く扱います。具体例を交えて分かりやすく解説します。
目的
読者がAWSの運用監視を体系的に理解し、実務で使える知識と手順を得ることを目指します。監視の優先順位や自動化の進め方、実際に注意すべきポイントを明確にします。
対象読者
- これからAWSの監視を学ぶエンジニア
- 日常運用を改善したい運用担当者
- 監視設計の方針を知りたいマネージャー
本書の構成
第2章:運用監視の基礎と重要性
第3章:Amazon CloudWatchの役割と機能
第4章:監視対象となる主要なリソース
第5章:APIを使った監視の自動化
第6章:Rundeckを利用した運用自動化
第7章:セキュリティと異常検知
第8章:その他の監視ツール
読み方のコツ
まず第2章で基礎を押さし、その後CloudWatch部分を実際に触ってみてください。小さな環境で試験し、アラートや自動化は段階的に導入すると失敗が少なくなります。具体例と手順を追うことで理解が深まります。
AWS運用監視の基礎と重要性
なぜ監視が必要か
AWS環境では、インスタンスやデータベース、ネットワークなど多くの要素が連携して動きます。監視は問題を早く見つけて対応するために必要です。例えば、EC2のCPUが急上昇するとレスポンスが遅くなり、ユーザーに影響します。適切な監視で影響範囲を小さくできます。
監視の基本要素
- メトリクス(指標): CPU、メモリ、ディスクI/O、ネットワークなど。時間ごとの変化を追います。
- ログ: アプリケーションやOSが記録する詳細な情報です。障害原因の特定に役立ちます。
- トレース(分散トレーシング): リクエストがどのサービスを通ったか追跡します。遅延箇所の特定に有効です。
- アラート: 指標やログの条件で通知を行います。問題の早期発見に直結します。
- ダッシュボード: 状況を可視化し、運用チームが一目で状況を把握できます。
アラート設計のポイント
- 行動につながるアラートにする(誰が何をするか明確にする)。
- 閾値は過去の正常値を基に設定する。単純な閾値だと誤検知が増えます。
- ノイズを減らすために集約や抑止(サイレント)設定を使う。
- 通知経路(メール、チャット、オンコール)とエスカレーションを定義する。
運用体制と手順
- ランブック(手順書)を用意し、アラートごとに対応手順を記載します。
- オンコール体制を整え、責任の所在を明確にします。
- インシデント対応は検知→分類→一次対応→復旧→振り返りの流れで運用します。例として、CPUアラートで自動スケールや再起動を行う手順を用意します。
ベストプラクティス
- 観測性を高めるために適切な粒度でメトリクスとログを収集する。
- リソースにタグを付けて監視対象を整理する。
- 定期的にアラートとSLOを見直す。実際のインシデントで改善点を記録する。
- ログの保存期間や権限管理を明確にし、必要なときに参照できるようにする。
Amazon CloudWatchの役割と機能
概要
Amazon CloudWatchはAWSの統合モニタリングサービスで、運用監視の中心となります。インフラやアプリケーションの状態を可視化し、問題を早期に発見して対応できます。
メトリクス監視
CloudWatchはCPU使用率やメモリ、ディスクI/O、ネットワークなどのメトリクスを定期的に収集します。例えばEC2のCPUやRDSの接続数をグラフ化し、閾値超過を確認できます。
ログ分析(CloudWatch Logs)
ログを一元管理してリアルタイム検索やフィルタリングが可能です。アプリケーションログやシステムログを取り込み、特定のエラーやパターンを速やかに見つけられます。
アラートとイベント
CloudWatch Alarmsで条件を設定すると、閾値を超えた際に通知(SNSやLambda実行)を送れます。イベントはスケジュールや状態変化をトリガーし、自動処理につなげられます。
ダッシュボードと可視化
カスタムダッシュボードで複数のメトリクスを一画面にまとめられます。チームで重要指標を共有し、状況判断を迅速に行えます。
実運用での活用例
- 異常検知で自動スケールや再起動を実行
- ログフィルタで特定エラーの通知
- 定期レポートでトレンドを把握
この章ではCloudWatchの主要機能を紹介しました。実運用ではメトリクス、ログ、アラートを組み合わせて監視設計を行うと効果的です。
監視対象となる主要なAWSリソース
はじめに
AWS運用では複数のリソースを日常的に監視します。ここでは代表的な項目と、具体的に見るべき指標や注意点をやさしく説明します。
Amazon EC2(仮想サーバ)
主な指標:CPU使用率、メモリ(エージェント経由)、ディスクI/O、ネットワーク、インスタンスステータスチェック。
例:CPUが長時間高いとスケールアウトやアプリ最適化が必要です。ディスクI/O急増はI/O待ちでレスポンス低下の原因になります。
RDS(データベース)
主な指標:CPU、接続数、ストレージ使用量、読み書きレイテンシ、レプリケーション遅延。
例:接続数が増えるとタイムアウトや性能低下が起きるため接続プールやスケールを検討します。
S3(オブジェクトストレージ)とアクセス記録
主な指標:リクエスト数、データ転送量、オブジェクト数。アクセスパターン急変は不正アクセスの兆候です。S3アクセスログやCloudTrailと組み合わせて詳細を追えます。
ログとトレーシング
CloudWatch LogsやOpenSearchでアプリ・システムログを集約します。エラーレートや応答時間の急変を自動検知するクエリを用意すると便利です。
ネットワークとロードバランサ
VPC Flow LogsやALB/ELBの5xx件数、ターゲットのヘルスを監視します。ネットワーク障害や不正なトラフィックを早期に発見できます。
その他の重要リソース
Lambda:実行時間・エラー率・スロットリング。EBS:I/Oやスループット、スナップショットの状態。Auto Scaling:望ましい台数と実際の台数差。
以上を組み合わせて監視し、しきい値やアラートルールを整備すると日常運用が安定します。
API活用による監視の自動化
概要
CloudWatchのAPIを使うと、監視の手作業を減らし自動でアラートやレポートを作れます。プログラムからメトリクスを取得・登録し、アラームを作成・変更できます。初心者でも小さな自動化から始めると良いです。
基本的な使い方
- メトリクス取得:CPUやディスク利用率などを定期的にAPIで取得します。
- アラーム操作:閾値を超えたときにアラームを作り、通知先を設定します。
- イベント連携:異常時にLambdaやSNSへ通知して追加処理を行います。
具体的な自動化例
- EC2の状態確認と障害通知:インスタンスのステータスをAPIで定期チェックし、停止や再起動があれば通知します。自動で再起動するフローも作れます。
- RDSのバックアップ時刻チェック:スナップショット状況を確認し、未実行ならアラート送信します。
- S3使用量確認:バケットの合計サイズを取得し、閾値超過で通知します。
- 定期監視レポート生成:日次でメトリクスを集めCSVやメールで配布します。
実装のポイント
- 最小権限でAPIキーを設定してください。
- エラーやレート制限を考慮しリトライを組みます。
- テスト運用で誤通知を防ぎます。
これらを組み合わせると、手間のかかる監視作業を安全に自動化できます。
Rundeckによる運用自動化
概要
Rundeckは運用タスクを定義して実行・管理するツールです。AWS監視と組み合わせると、定期処理や障害対応の自動化が容易になります。
導入の流れ
- サーバーにRundeckを導入します。簡単な例ではDockerやパッケージで稼働させます。
- プロジェクトを作成し、実行ノード(EC2やオンプレ)を登録します。
- ジョブを作成してスケジュールやトリガーを設定します。
ジョブ設計のポイント
- 小さな処理単位で作ると再利用しやすいです。
- ロールや環境ごとにジョブを分けると安全です。
ログと実行証跡の活用
Rundeckはジョブ出力を自動保存します。出力ログを残すことで、いつ誰が何をしたか追跡できます。トラブル時にログを確認して原因特定に役立てます。
通知連携(Slack/Email)
Rundeck PluginでSlackやEmailに実行結果を送れます。成功・失敗で通知内容を変えると運用が効率化します。
RBACによる権限管理
ジョブ単位でユーザーやグループに実行権限を割り当てます。誤操作を防ぎ、必要最低限の権限で運用できます。
プラグイン活用例
- AWSプラグイン:EC2停止やAMI作成を簡単に実行
- Notificationプラグイン:Slackやメール送信
注意点
- 機密情報はキー管理(Vault等)で扱いましょう。
- ジョブ実行による影響を事前に確認してから運用します。
セキュリティと異常検知
なぜセキュリティ監視が必要か
AWS環境では、サービスの可用性だけでなく不正アクセスや情報漏えい対策も重要です。早く異常を検知すると被害を小さくできます。
CloudTrailでのアクセスログ
CloudTrailはAPI操作やコンソール操作を記録します。S3のオブジェクト操作は「データイベント」を有効にすると詳細に残ります。ログはS3やCloudWatch Logsへ送って検索や分析に使います。例えば、特定IPから短時間で多数のGetObjectがあれば不正の疑いです。
S3不正アクセスの検知例
- 短時間で大量ダウンロード
- バケットやオブジェクトの公開設定変更
- 通常使わない時間帯のアクセス
- 新しいIPや国からのアクセス
これらをルール化して監視します。具体例:1分間に同一バケットへ100回以上のGetObjectがあればアラート。
CloudWatchと自動化の活用
CloudWatch Logsのフィルタでパターンを検出し、アラームをSNSへ送ります。さらにLambdaで自動対応できます(例:一時的にバケットを非公開にする、問題のIAMキーを無効化する)。
異常検知の進め方
まずはルールベースで検知を始め、誤検知を減らしつつ運用します。必要に応じてGuardDutyなどの脅威検出サービスを導入し、自動復旧手順や通報フローを整備してください。
運用上の注意
通知は多すぎると対応が遅れるため閾値の調整が重要です。定期的にログ保持期間と検知ルールを見直し、インシデント対応手順を演習してください。
その他の監視ツール
概要
CloudWatch以外にも多くの監視ツールが存在します。用途ごとに特長が違うため、目的に応じて選びます。たとえばMaxGaugeはデータベースの情報を自動取得し、性能指標を可視化して監視できます。サードパーティ製を組み合わせると、より柔軟で高度な監視体制を作れます。
代表的なツールと用途
- MaxGauge:データベースの性能可視化とボトルネック検出。定期レポートや履歴分析に便利です。
- Grafana:複数データソースのダッシュボード作成に強みがあります。CloudWatchやPrometheusのデータを一画面で確認できます。
- Prometheus:メトリクスの収集とアラートに適します。短い間隔での監視に向きます。
- Elastic Stack(Elasticsearch, Logstash, Kibana):ログ収集と検索、可視化を行います。トラブルシュートに役立ちます。
- Datadog/New Relic:インフラとアプリ両方を一元監視し、相関分析や機械学習ベースの異常検知機能を提供します。
- PagerDuty:インシデント通知とオンコール管理に使えます。
導入時の注意点
ツールは目的に合わせて選びます。例として、短期間のメトリクス監視はPrometheus、長期保存や検索はElastic Stackが適します。コスト、運用工数、サポート体制も比較します。データの重複や監視の重複を避けるため、役割分担を明確にします。
運用のコツ
小さく始めて段階的に拡張します。まず重要な指標を決め、ダッシュボードとアラートを整備します。自動化(API連携やRundeckなど)を活用し、通知や復旧手順を定型化すると運用負荷を下げられます。現場の声を反映し、定期的に見直してください。












