はじめに
本資料は、AWSを使ってWebサーバーを構築するための基本的な知識をやさしくまとめた入門ガイドです。これから学ぶ方が迷わないよう、サービスの役割や使いどころ、レンタルサーバーとの違い、料金の見方まで順を追って説明します。
目的
– AWSの全体像をつかむこと
– 主要サービスが何をするかを理解すること
– 実際の運用で注意する点を知ること
対象読者
– これからWebサイトやWebアプリを公開したい方
– レンタルサーバーから移行を検討している方
– 技術的な背景が浅い方にも読みやすくしています
進め方
各章で具体例を交えながら説明します。専門用語は最小限にし、必要な場合は用語の意味を補足します。実際に手を動かす前に基礎を固めたい方に向けた構成です。
AWSのサーバーサービスの基礎知識
概要
AWSのサーバーサービスは、物理サーバーを自分で用意せずに使える「仮想サーバー」を提供します。AWSは200以上のサービスを持ち、2024年時点で324のサービスを展開しています。個人サイトから大規模アプリまで幅広く使えます。
仮想化をわかりやすく
物理サーバーを1棟のマンションに例えると、仮想サーバーはその中の一室です。設備は共有しますが各部屋は独立して使えます。これにより、必要なときだけ部屋を増やしたり減らしたりできます。
主な特徴と利点
- 初期準備が不要:物理機器の設置や届出がいりません。すぐに始められます。
- 柔軟な拡張性:アクセスが増えたらサーバーを増やせます。短期間の負荷にも対応できます。
- コスト管理:使った分だけ支払います。定額サーバーと違い無駄を減らせます。
セキュリティの基本
AWSはアクセス制御やネットワークの分離などの仕組みを提供します。設定は必要ですが、ベストプラクティスに従えば安全に運用できます。
どんな場合に向くか
- テスト環境や学習用にすぐ立ち上げたい人
- トラフィックが変動するサービス
- 自社で物理設備を持ちたくない企業
簡単な始め方の一例
小さなウェブサイトなら、仮想サーバー1台を立ち上げて運用を始めます。必要に応じてデータベースなどの管理サービスを追加すると管理が楽になります。
AWSの主要サービスと機能
はじめに
ここでは代表的なサービスを具体例で分かりやすく説明します。実際の構成を想像しながら読んでください。
Amazon EC2(仮想サーバー)
EC2は仮想サーバーを立ち上げて、Webサーバーやアプリケーションを動かします。たとえば、小さなコーポレートサイトなら小さなインスタンスで十分です。必要に応じてCPUやメモリを増やせます。
Amazon S3(オブジェクトストレージ)
画像や動画、バックアップなどを保存します。静的サイトのホスティングにも使えます。高い耐久性があり、バージョン管理で誤削除から復元できます。
Amazon RDS(データベース管理)
MySQLやPostgreSQLなどのデータベースを簡単に運用できます。自動バックアップやソフトウェアの適用をAWSが代行するため、運用負荷が下がります。
Amazon CloudFront(CDN)
世界中のユーザーへ高速に配信します。S3と組み合わせると画像や動画の表示が速くなります。
Amazon Route 53(DNS)
ドメインの管理と名前解決を行います。トラフィックの振り分けやヘルスチェックで可用性を高めます。
Amazon VPC(仮想ネットワーク)
ネットワークを分離してセキュリティを確保します。公開用サブネットと非公開サブネットを分け、DBを外部から直接見えないようにできます。
AWS WAF(Webアプリ保護)
不正アクセスや攻撃からWebアプリを守ります。悪意あるリクエストの遮断や、簡単なルールで防御を始められます。
IAM(アクセス管理)
ユーザーや権限を細かく管理します。誰が何をできるかを制御して、安全に運用できます。
AWSとレンタルサーバーの比較
比較のポイント
AWSはクラウド型で従量課金制、必要に応じてリソースを増減できます。レンタルサーバーは月額固定で、共用や専用が中心です。コスト構造や管理の仕方が最も大きく異なります。
コストと支払い
AWSは使った分だけ支払います。アクセスが増えた期間だけ費用が上がるため、短期的に高くなることもあります。レンタルサーバーは毎月定額で分かりやすく、予算管理が簡単です。
管理と運用
AWSはユーザーが細かく設定します。例:数分でサーバーを増やす、自分でバックアップ方針を決める。レンタルサーバーは事業者が多くを管理します。初心者は管理の手間が少ない分、運用が楽です。
パフォーマンスと拡張性
AWSは負荷に合わせて柔軟に拡張できます。海外ユーザーにも高速に応えやすいです。レンタルサーバーは国内向けに安定しますが、急なアクセス増加や海外配信では限界が出やすいです。
信頼性とセキュリティ
AWSは高い稼働率(例:99.99%)と多数の運用ツールを提供します。ただしセキュリティ設定はユーザー責任です。レンタルサーバーは事業者側で基本対策をしてくれるため、設定に自信がない人に向きます。
選び方の目安
小規模サイトや予算重視ならレンタルサーバー、中長期で拡張やグローバル配信を考えるならAWSを検討すると良いです。
AWSの料金体系と特徴
課金の基本(従量課金)
AWSは使った分だけ払う従量課金制です。仮想サーバーは利用時間や秒数で課金され、保存領域は容量とアクセス回数で課金されます。使わないときはコストを抑えられるので、テストや短期プロジェクトに向きます。OSの選択で費用が変わることがあり、たとえばWindowsはライセンス料が上乗せされます。
主な費用項目(具体例で説明)
- コンピュート(例:EC2): CPUやメモリを増やすと料金が上がります。短時間の起動から長期運用まで柔軟に使えます。
- ストレージ(例:S3、EBS): 容量とアクセス頻度で費用が変わります。頻繁に使うデータは高速ストレージ、長期保存は安価な階層に移すと節約できます。
- データベース(例:RDS): 管理されたDBは運用が楽ですがその分の費用がかかります。
- ネットワーク転送: 外部へのデータ転送は別途課金されます。大容量通信が発生するとコストが増えます。
コスト節約の方法(実用的な手段)
- 無料利用枠を活用する。初期の試験運用に便利です。
- リザーブドインスタンスやSavings Plansで継続利用を割引。
- スポットインスタンスは安価だが割り込まれる可能性があります。バッチ処理などに向きます。
- オートスケーリングで需要に応じて台数を増減し、無駄を減らす。
- ライフサイクルルールで古いデータを低コスト層へ移動する。
- Cost ExplorerやBudgetsで費用を可視化し、閾値を超えたら通知する。
運用時の注意点
不要なリソースを放置すると費用が積み上がります。スナップショットやバックアップも容量分で課金されますので定期的に見直してください。ライセンスやデータ転送の差額が意外に大きくなるケースがあるため、導入前に想定シナリオで試算することをおすすめします。












