はじめに
本記事の目的
本記事は、AWS(Amazon Web Services)で利用できるオペレーティングシステム(OS)について、種類や選び方、運用・管理のポイントを分かりやすく解説します。専門用語を抑え、具体例を交えながら説明しますので、初めてクラウドでOSを選ぶ方にも読みやすい内容です。
対象読者
- これからAWSを使い始める方
- OS選定や運用を任された技術者・担当者
- コストやセキュリティ面を検討したい意思決定者
この記事で学べること
- AWSで選べる代表的なOSの特徴
- 日常的な運用と管理のポイント
- アップデートやサポート体制の違い
- セキュリティやコスト面での注意点
読み方のポイント
具体的な構成は第2章から第5章で詳述します。まずは全体像をつかみ、必要に応じて該当章を参照してください。実際の運用例や簡単な比較表も用意しますので、実務での選択に役立ててください。
AWSで利用できる主要なOSの種類
AWSではさまざまなOSを選べます。用途やサポート、コストに応じて選ぶとよいです。以下に主要なOSと特徴を分かりやすくまとめます。
Amazon Linux
AWSが提供するLinuxです。軽量でAWSサービスとの連携が良く、性能やパッチ対応が最適化されています。無料で使える点が魅力で、Webサーバーやコンテナ基盤に向きます。
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)
有償の企業向けLinuxです。公式サポートと長期サポートが特徴で、ミッションクリティカルな業務に向きます。ライセンス料金が発生しますが、商用サポートが必要な場合に選ばれます。
CentOS / CentOS系
無償でRHEL互換を目指したディストリビューションです。コミュニティ運営のため、用途に応じて注意が必要です。企業では検討時にサポート体制を確認します。
Ubuntu
初心者にも扱いやすく、豊富なパッケージがあります。開発環境やWebサービスでよく使われ、無料で始めやすいです。
SUSE
企業向けの安定したLinuxです。商用サポートがあり、特定業務での採用例があります。
Microsoft Windows Server
Windows系アプリケーションや.NETを使う場合に選びます。ライセンスやバージョンによる互換性を確認してください。
カスタムAMI・サードパーティOS
自社で作成したカスタムAMIや、AWS Marketplaceで配布されるOSイメージを利用できます。特殊なソフトや設定が必要な場合に便利です。
各OSはEC2のクイックスタートAMIやMarketplaceから起動できます。用途とサポート、コストを比べて選んでください。
AWSにおけるOSの運用・管理
概要
AWS Systems Manager(SSM)を中心に、AWS上のOSを一元的に運用・管理できます。SSM Agentが入ったサーバは、パッチ適用や設定適用、問題の自動修復などを実行できます。オンプレや他クラウドも管理可能です。
主な機能と用途
- インベントリ(Inventory):インストール済みパッケージや設定を収集し、可視化します。例:どのサーバに特定のソフトが入っているか確認できます。
- パッチ管理(Patch Manager):適用するパッチ基準を定め、適用状況をレポートします。パッチグループごとにスケジュールできます。
- 実行と設定(Run Command / State Manager):個別コマンド実行や設定の恒久化を自動化します。
- セッション管理(Session Manager):SSH不要で安全に端末へ接続できます。
- 自動化(Automation):問題発生時の復旧手順を自動化します。
導入前の準備
- SSM Agentのインストールとバージョン確認
- 必要なIAMロール(最小権限)を付与
- ネットワーク要件(SSMエンドポイントへHTTPS通信)を満たす
運用のポイント
- パッチ適用はステージング→本番の段階的展開で実施する
- メンテナンスウィンドウを設定し、業務影響を抑える
- インベントリとコンプライアンスレポートで現状を可視化する
- 自動化スクリプトはテストし、失敗時のロールバック手順を用意する
- 定期的にバックアップ(AMIやスナップショット)を取得する
監視と監査
CloudWatchと連携してログやメトリクスを集め、パッチの適用失敗やエラーを検知します。監査用に実行履歴やログをS3へ保存すると証跡が残ります。
まとめのヒント(運用を始めるとき)
まずは小さな環境でSSMのInventoryとPatch Managerを試し、運用手順を確立してから本番へ広げると安全です。
OSのアップデート・サポート体制
概要
AWSのマネージドサービス(例:Amazon RDSやElastiCache)は、基盤となるOSのパッチ適用やセキュリティアップデートをAWS側で実行します。利用者は基本的に設定やメンテナンスウィンドウの指定だけで、OSの維持を任せられます。
マネージドサービスでの挙動
- RDSなどのサービスは定期的にパッチを当て、必要に応じて再起動を行います。メンテナンスウィンドウは指定でき、影響を最小限に抑えられます。
- Fargateなどのサーバーレス実行環境では、基盤の更新を意識する必要がほとんどありません。対照的にEC2やセルフマネージドなEKSノードは利用者がOSパッチを管理します。
サードパーティ製OSとサポート範囲
AWSは公式にサポートしているOSに対して手厚いサポートを提供します。一方で、サードパーティやマーケットプレイスのOSに関してはベストエフォートでの対応となり、根本原因がOS自体の不具合であればOSベンダー側での対応が必要になります。
運用上の実務ポイント
- パッチ適用前にスナップショットやAMIを取得しておく。
- テスト環境でアップデートの影響を検証する。
- AWS Systems ManagerのPatch ManagerでEC2の一括適用を自動化する。
- 重要なセキュリティパッチは優先適用し、メンテナンスウィンドウを短く区切る。
- 問題発生時はログやCloudWatchの情報を揃えてAWSサポート/OSベンダーに連絡する。
運用の基本は「事前準備」「検証」「復旧手順の確保」です。これらを整えることで、アップデートによる影響を小さくできます。
OS選択とセキュリティ・運用上のポイント
セキュリティ設計の基本
OSは外部からの入り口になります。定期的なパッチ適用、不要サービスの停止、最小権限の設定、ディスク暗号化を基本にしてください。例:SSH鍵認証のみを許可し、パスワードログインを無効にするなどです。
定期更新と自動化
パッチは月次程度で確認し、重要な脆弱性は即時対応します。AWS Systems Managerのパッチ管理や自動実行機能を使うと管理負荷が下がります。更新前にAMIスナップショットを取得し、問題時はロールバックできるようにしてください。
マネージドOSとサポート
Amazon Linuxは無料または低コストで、AWSとの相性が良くトラブル対応も早いです。一方、商用Linux(RHEL・SLES等)はサポート契約が必要なので、ミッションクリティカルな環境では検討してください。
カスタムAMIの活用
独自ミドルウェアや特別な設定が必要な場合はカスタムAMIを作成します。インフラコード(CloudFormation/Terraform)と組み合わせ、バージョン管理・テストを必ず行ってください。これにより再現性と迅速な展開が可能です。
運用のチェックリスト(例)
- パッチ適用スケジュールの明確化
- 定期バックアップとAMIの保存
- ログ収集と監視(CloudWatch等)の設定
- IAMロールとネットワーク制限の最小化
- 変更時のテストとロールバック手順の整備
これらを組み合わせることでセキュリティと運用性を両立できます。必要に応じて自動化とドキュメント化を進めてください。
まとめ:AWSでのOS選択の考え方
要点の整理
AWSでのOS選択は「用途」「運用体制」「コスト」「サポート」のバランスで決めます。用途例として、汎用的なWebサーバーならAmazon LinuxやUbuntu、エンタープライズの既存ライセンスを活かすならRHELやWindows Serverが適します。
選定時のチェックリスト
- アプリの互換性と依存関係を確認する。
- 運用チームのスキルと自動化の度合いを評価する。
- セキュリティアップデートやベンダーサポートの有無を確認する。
- コスト(ライセンス+運用)を見積もる。
運用上のポイント
AWS公式の管理ツール(Systems Managerなど)を活用すると定期更新やパッチ適用が効率化できます。サードパーティOSを使う場合は、ベンダーサポートの範囲を明確にし、障害対応の手順を整えておきます。
最後に
最適なOSは一つではありません。要件を整理して優先順位を決め、まずは小さな環境で検証してから本番移行すると失敗を避けやすくなります。丁寧に準備すると運用も安定します。












