はじめに
目的と対象読者
本章では、本記事の目的と想定する読者を明確にします。対象は、AWSを利用している個人開発者、中小企業、またはクラウド導入を検討している担当者です。ストレージ料金の基本を知り、無駄なコストを減らしたい方に向けています。
本記事で学べること
本稿は2025年時点の情報を元に、料金構造の基本、主要サービスの料金例、計算方法、他社比較、値下げ動向、コスト削減のポイント、見積もりのコツまでを網羅します。例えば、写真保存やログ保管で料金がどう変わるか、具体例を交えて解説します。
読み方のポイント
各章は独立して読めます。まずは第2章で料金の仕組みを押さすと、以降の節が理解しやすくなります。専門用語は最小限に抑え、実例で補足しますので安心して読み進めてください。
注意事項(範囲と前提)
料金はリージョンや利用状況で変わります。本記事は一般的な傾向と具体的な計算方法を示しますが、最終的な見積もりは実際の利用状況で確認してください。
AWSストレージ料金の基本構造
要点の概要
AWSのストレージ料金は主に「保存容量」「リクエスト数」「データ転送量」の3つで決まります。シンプルに言えば、置いておくデータ量、アクセス回数、外に出すデータ量が課金対象です。
保存容量(容量課金)
保存容量はGB単位の月額課金です。ストレージの種類や利用量で単価が変わります。例としてS3 Standardは最初の50TB/月が0.023 USD/GBなど、使用量が増えると段階的に単価が下がる仕組みです。
リクエスト数(アクセス課金)
GETやPUTなどのAPIリクエスト数に応じて課金されます。小さなファイルを頻繁に読み書きする場合、保存容量よりリクエスト費用の方が高くなることがあります。ライフサイクルでの移行や復元もリクエスト扱いになる点に注意してください。
データ転送(転送料)
AWSからインターネットや他のリージョンへ出すデータに対して転送料が発生します。受信(アップロード)は多くの場合無料ですが、リージョン間移動や外部送信は料金がかかります。
ストレージクラスと保管期間
スタンダードは即時アクセス向け、低頻度アクセスやアーカイブは保存単価が下がりますが、取り出し時の費用や最小保管期間の制約があります。短期保管だと割高になる場合があるので用途に合わせて選びます。
最低請求単位と注意点
オブジェクト単位や月次の最小請求単位、1,000件単位のリクエスト課金など、細かなルールがあります。運用前に見積もりやモニタリングを行い、ライフサイクルやキャッシュで無駄を減らすと良いです。
主要AWSストレージサービスごとの料金例
Amazon S3
料金は保存容量、リクエスト数、データ転送量、ストレージクラスで決まります。例としてStandardクラスは最初の50TB/月が0.023 USD/GB、GETリクエストは0.0004 USD/回です。具体例:画像ファイル100GBを保存すると月額は約250円、GETリクエスト100万回は約50円(目安)です。アクセス頻度やライフサイクルでクラスを切り替えると料金が変わります。
Amazon EBS
EBSはボリューム容量、I/Oリクエスト数、スナップショット保存容量で課金されます。汎用SSD(gp2)は約0.10 USD/GB/月の目安です。例えば開発用の100GBボリュームを1つ使うと容量だけでおおよそ0.10×100=10 USD/月がかかります。IO性能やスナップショット頻度でコストが増えます。
Amazon OpenSearch Service
OpenSearchはインスタンス利用時間とEBSストレージ容量で課金されます。EBSの汎用SSD(gp2)は約0.135 USD/GB/月の目安です。検索ノード数やインデックス量、スナップショット保管で料金が変動します。運用負荷に応じてインスタンスサイズを調整すると効率的です。
各サービスともリージョン差や無料枠、データ転送の扱いで最終的な請求額が変わります。実際の見積もりは使用パターンを基に細かく計算してください。
Amazon S3料金の計算方法と注意点
計算の基本
保存容量は「実際のサイズ(GB)×保管日数」で計算し、GB-月単位で請求されます。計算式はおおむね次の通りです。
請求GB-月 = 保存サイズ(GB) × 保管日数 / 30
例:100GBを15日保管したら、100×15/30=50GB-月。単価が1単位なら50×単価がその期間のストレージ費用になります。
ストレージクラスごとの注意
各クラスで単価が異なります。一般的にアクセス頻度の低いクラス(IAやGlacier)は単価が低い分、最小保管期間や取り出し料金、リクエスト料金が設定されています。頻繁に削除や取り出しがあると逆に高くなる点に注意してください。
小さなオブジェクトとメタデータ
オブジェクトごとのメタデータや最小請求単位が影響します。大量の小ファイルは、サイズ自体は小さくてもリクエスト数や単位切り上げでコストが増えやすいので、まとめて格納するなど工夫が有効です。
データ転送と取り出し費用
AWS内のサービス間は多くの場合無料ですが、AWS外への転送(アウトバウンド)は有料です。最初の100GB/月が無料で、その後は段階的に課金されます。さらにGlacierなどはデータ取り出し時に別途料金がかかります。
実務的なチェックポイント
- 保存日数を正確に把握して見積もる
- ライフサイクルで適切にクラス移行する
- 小ファイル対策(アーカイブや圧縮)を検討
- 取り出し頻度と最小保管期間を照らし合わせる
これらを確認すると、S3料金の見積もり精度が上がります。
AWSストレージ料金の他社比較
主要料金の比較(目安)
- Amazon S3: 0.023 USD/GB
- Azure Blob Storage: 0.021 USD/GB
- Google Cloud Storage: 0.023 USD/GB
- Oracle Object Storage: 0.0255 USD/GB
例:容量1000GB(1TB)を単純に保管した場合、月額はおおよそS3が23 USD、Azureが21 USD、GCSが23 USD、Oracleが25.5 USDです。単純なストレージ容量だけなら大きな差はありません。
価格差が生まれる主な要因
- リクエスト料金(GET/PUTなど):頻繁にアクセスすると差が目立ちます。
- データ転送(特にインターネットへの送出し):出力量が多いと総額が増えます。
- 取り出しや取り出し遅延のあるクラスの料金:低頻度層では取り出しコストが発生します。
- 地域別料金と通貨レート:リージョンで価格差が出ます。
- 割引・予約・契約条件:長期契約やコミットで単価が下がります。
比較時のチェックリスト(実務向け)
- 月間転送量とリクエスト数を見積もる
- アクセスパターンに最適なストレージ階層を選ぶ
- リージョン別の料金と法令要件を確認する
- ライフサイクルや自動移行で運用コストを抑えられるか検討する
- 割引、無料枠、サポート費用も含めて総コストを比較する
これらを個別に見比べると、初見では差が小さく見えても実際の総コストは変わります。実測データを基に見積もることをおすすめします。
料金の値下げ・最新動向(2025年)
概要
2025年4月、Amazon S3の新しいストレージクラス「S3 Express One Zone」が大幅に値下げされ、最大で85%のコスト削減となりました。これにより、アクセス頻度や耐障害性の要件に応じて、より柔軟にコストを抑えられる選択肢が増えました。
豆知識:S3の値下げの流れ
過去数年でS3の標準ストレージも段階的に単価が下がってきました。ストレージの技術向上や運用効率の改善により、長期的に料金が見直される傾向があります。
円建て料金の注意点
一方で、為替変動で円建て料金が上昇するリスクがあります。ドル建てでの値下げがあっても、円安が進めば請求額が増える可能性があるため、為替の影響をチェックしてください。
実務上の影響と対策
- 使用量の見直し:新しいクラスを導入して、アクセスパターンに合ったクラスへデータを移すと効果的です。具体例として、復旧用のログや再生成可能なデータは低コストクラスへ移行できます。
- 自動化:ライフサイクルポリシーで古いデータを自動的に移行または削除してください。手動より確実にコスト削減につながります。
- 為替対策:請求通貨や見積もりを定期的に確認し、必要に応じて予算を調整してください。
まとめの指針(行動ベース)
まずは利用状況を把握し、S3 Express One Zoneの導入可否を評価してください。小さな試験で効果を測り、問題なければ段階的に移行することをおすすめします。
AWSストレージ料金のコスト削減ポイント
概要
利用頻度やデータの重要度に合わせて保管場所を決めることが基本です。アクセスが少ないデータを安価なクラスに移すと、月次コストを大きく下げられます。以下に実践しやすいポイントをまとめます。
1) ストレージクラスを適切に選ぶ
- 頻繁に使うデータは標準クラス、滅多にアクセスしないものは低頻度(IA)やアーカイブ(Glacier)へ。具体例:ログのうち1年以上参照しないものはGlacierに移す。
2) ライフサイクルポリシーで自動化する
- 保存期間に応じて自動で移行・削除するルールを設定します。手作業を減らせばヒューマンエラーも減り、継続的にコストを抑えられます。
3) データ整理と不要データの削除
- 重複ファイルの削除、古いスナップショットの整理、圧縮保存で容量を減らします。不要データの削除は即効性があります。
4) リクエスト・転送の最適化
- 不要なGET/PUTを減らす、配信はCDNを使う、データ転送先を近いリージョンにすることで転送料金を抑えます。
5) アクセス分析で無駄を発見する
- アクセスログや分析ツールでどのデータが本当に使われているかを確認します。実態に合わせて保管戦略を見直しましょう。
6) 課金モデルの補助施策
- ライフサイクルのほかに、バージョニングの削減、圧縮や重複排除、必要に応じたRequester Pays設定などを検討します。
参考: 効果の目安
- 事例では、上記施策でS3コストが30%以上削減されたケースがあります。小さな改善を積み重ねるだけで大きな効果になります。
実行は段階的に行い、まずはアクセス分析とライフサイクル設定から始めるのがお勧めです。
まとめ・ストレージ料金見積もりのコツ
はじめに
ここでは、実運用で役立つストレージ料金の見積もりポイントを簡潔にまとめます。具体的な数値は公式の料金計算ツールで確認してください。
見積もりで必ず確認する項目
- 保存容量(GB/月)
- 利用頻度(アクセスが多い・少ない)
- データ転送量(特にアウトバウンド)
- リクエスト数(PUT/GETなど)
- レプリケーションやクロスリージョン転送の有無
簡単な見積もり手順(例)
- 1か月分の実測値を集め(保存量・転送量・リクエスト数)
- ストレージを用途別に分類(ホット/コールド/アーカイブ)
- AWS料金計算ツールに入力して試算
- ネットワークやリクエスト費用を加算し、予備を10〜20%見込む
コツと注意点
- ライフサイクルで自動移行すると費用を抑えやすい
- 長期保管はアーカイブクラスを検討する(アクセス頻度が低い場合)
- 小さなファイルが多いとリクエスト費用が増えるのでまとめてアップロードする
- モニタリングで実コストを定期確認し、見積もりを更新する
最後に
見積もりは仮定に左右されます。まずは実測データをもとに公式ツールで試算し、運用中にモニタリングで調整してください。












