aws構成図の基本と応用を図解でわかりやすく解説

目次

はじめに

本資料の目的

本資料は、AWS構成図(アーキテクチャ図)を誰でも分かりやすく作れるようになることを目的にしています。基本の考え方から、実際に図をきれいに早く描くためのテクニック、よくある間違いの回避、そして自動化の導入までを丁寧に解説します。

誰のための資料か

  • システム設計や運用に関わるエンジニア
  • マネージャーや非技術者に説明する必要がある方
  • 図を使ってチーム内外の合意を取りたい方
    専門用語は最小限にし、具体例で補いますので入門者も読みやすい構成です。

この資料の使い方

第2章以降で基礎→実践→自動化の順に学べます。まず第2〜4章で考え方と表現の基本を押さえ、第5章で効率化テクニックを実践してください。第6章は失敗例から学び、第7章で最新の自動化手法に触れます。

読み終えたあとに期待できること

伝わるAWS構成図を効率よく作成できるようになります。設計の意図を共有しやすくなり、レビューや運用の手戻りを減らせます。

AWS構成図とは? 目的と重要性

定義

AWS構成図は、AWS上にあるシステムやサービスの構成と相互関係を視覚化した図です。ネットワーク、サーバー、データベース、負荷分散や監視などを一目で把握できるように示します。視覚化することで、設計意図や運用上の注意点が分かりやすくなります。

主な目的

  • システム全体像の把握:関係性とデータの流れを明確にします。
  • 設計意図の共有:設計者と開発者、運用者の認識を合わせます。
  • トラブルシューティング:障害箇所の切り分けを速めます。
  • ドキュメント化と引継ぎ:運用や保守の際に役立ちます。

重要性

構成図があると、新しいメンバーが理解しやすくなります。運用時にどこを変更すれば影響が出るか判断しやすくなり、ミスを減らせます。可用性やコストの観点でも、ボトルネックや無駄が見つけやすくなります。

公式アイコンの利点

AWS公式のArchitecture Iconsを使うと、誰が見ても何を表すか分かりやすくなります。表現が標準化され、情報共有がスムーズになります。

活用例(具体例)

  • 設計レビュー:構成図を元に構成変更の影響を議論します。
  • 障害対応:ログや監視と照合して原因を特定します。
  • 引継ぎ資料:図を中心に運用手順を書き添えます。

この章では、構成図が単なる図ではなく、設計・運用の共通言語になる点を押さえておくと良いです。

AWS構成図の基本構成要素

グループ(VPC・サブネット)

VPCやサブネットは枠で表現します。VPCは外枠、サブネットは内側の区切りです。例えば「パブリックサブネット(ロードバランサー)」「プライベートサブネット(アプリ/DB)」と分けると構成が伝わりやすいです。

矢印・線(通信・依存)

矢印で通信の方向を示します。線は同期/非同期や公開/非公開を区別すると分かりやすいです。具体例:矢印に「HTTPS/443」や「SQS(非同期)」とラベルを付けます。

AWSサービスアイコン

EC2(サーバー)、S3(ストレージ)、Lambda(関数)など公式アイコンを使うと可読性が上がります。サービス名だけでなく役割(例:静的ホスティング)も添えます。

AWSリソースアイコン

個別インスタンスやRDSなどは小さなアイコンで示します。識別しやすいように名前やIDを短く書きます。

一般リソースアイコン(オンプレ/ユーザー)

オンプレミス環境やエンドユーザーは汎用アイコンで表現します。VPNや専用回線の線で境界を示すと安全ゾーンが分かります。

リージョン/アベイラビリティゾーン

リージョンやAZは枠で分け、冗長構成やデータ配置を示します。AZごとにリソースを複製して可用性を表現してください。

図解作成時のガイドラインとコツ

公式アイコンとガイドラインを使う

AWS公式アイコンを使うと視認性が上がります。アイコンは用途に沿った置き方を心掛けてください。例えばS3は“ストレージ領域”にまとめ、RDSは“データ層”に配置します。アイコンの大きさや余白を揃えると見た目が整います。

色テーマの選び方(ライト/ダーク)

図はライトかダークのどちらかに統一します。背景と文字・線のコントラストを十分にとってください。例:ダーク背景では文字を明るく、ライト背景では線を濃くします。重要な要素はアクセントカラーで強調します。

情報のグルーピング

関連する要素は枠やレーンでまとめます。例:フロントエンド、アプリ層、データ層で横並びに分ける、あるいはVPCごとに枠で囲むと役割が直感的に伝わります。グループ内は上下や左右の順序を統一してください。

説明テキストとラベル付与

短く具体的なラベルを付けます(例:“APIサーバー(HTTPS:443)”)。矢印には通信の方向やプロトコル、必要ならポート番号を添えます。凡例を必ず付けて、図の読み方を補足します。

誤解を招く配置の回避

アイコンの近さだけで関係を示さないでください。例えばDBをインターネットゲートウェイに近づけると“公開DB”と誤解されます。線の交差を減らし、矢印の向きを統一すると誤読が減ります。

実用的な小技

  • アイコンサイズ、フォント、間隔をテンプレート化する
  • まず高レベル図を作り、詳細図を別に用意する
  • 変更履歴とバージョンを残す
  • 同僚にレビューしてもらい、可読性を確認する

以上を守ると、誰が見ても分かりやすく標準化された図が作れます。

AWS構成図を「早く」「きれいに」作るための実践テクニック

概要

思考と作業を分け、テンプレートを用意して工具を活用すると速く美しい図を作れます。ここでは実務で使える手順と具体的コツを説明します。

手順(思考と作業を分ける)

  1. 要素洗い出し:システムの部品(例:ロードバランサー、サブネット、DB)を箇条書きにします。
  2. レイヤー設計:ネットワーク層・アプリ層・データ層などに分けて配置を考えます。
  3. 図作成:テンプレートに当てはめて実際に描きます。

例:まずテキストで「VPC-A: 2 public subnet, 2 private subnet, RDS」など整理します。

テンプレート化のコツ

  • 共通ヘッダー、凡例、アイコン配置を固定化します。
  • 色と線のルールを決める(例:ネットワークは青、ストレージは緑)。
  • 再利用可能なグループ(VPCブロックなど)を部品化してライブラリ化します。

図解ツールと自動化の活用

  • Lucidchartやdraw.ioはドラッグ&ドロップで早く整えられます。
  • AWS公式ツール(例:AWS Perspective、CloudFormation Designer)やDiagram-as-codeは既存構成の可視化や一貫性確保に役立ちます。
  • AIや自動生成サービスは初期レイアウトや説明文の下書きを作る補助に使えます。自動配置は必ず微調整してください。

仕上げチェックポイント(短いリスト)

  • 3秒で主要経路がわかるか
  • アイコンと凡例は一致しているか
  • テキストは簡潔で命名規則に沿っているか
  • バージョン管理(ファイル名と更新履歴)はあるか

これらを繰り返すと、短時間で統一感のあるAWS構成図を作れるようになります。

よくあるアンチパターンとその回避策

よくあるアンチパターン

  • 公式アイコンの誤用・乱用
  • AWS公式アイコンを無断で改変したり、意味の異なるアイコンを使うと誤解を招きます。
  • 独自デザインを多用して統一感がない
  • 色や形がバラバラで、どの要素が重要かわかりにくくなります。
  • 情報過多でごちゃごちゃした図
  • ネットワークや低レイヤの詳細を全部載せて、目的が見えなくなります。
  • 説明不足・凡例の欠如
  • ラベルや凡例がないと図だけでは伝わりません。
  • レイヤ混在(設計図と運用図を混ぜる)
  • 担当者によって必要な情報が違うのに同一図に詰め込むと混乱します。

回避策(実践的な手順)

  1. 用途ごとに図を分ける
  2. 「アーキテクチャ設計」「運用・監視」「ネットワーク配下」など目的別に分割します。例:設計図では論理的な流れを優先、運用図ではIPやサブネットを明記します。
  3. アイコンとカラーのルールを決める
  4. 公式アイコンは原則そのまま使用し、カスタムは最小限に抑えます。色は機能単位で固定します(例:データベースは青、外部連携は緑)。
  5. 凡例・ラベルを必ず付ける
  6. 略語や非標準表現は凡例で説明します。バージョンと最終更新日も入れます。
  7. 抽象化と分割で見やすくする
  8. 詳細は別図や注釈に移し、メイン図は主要コンポーネントとデータフローに絞ります。
  9. セキュリティ境界と権限を明示する
  10. パブリック/プライベート、IAMポリシーの影響範囲を矢印や枠で示します。
  11. テンプレートとレビューを活用する
  12. チェックリスト(凡例/更新日/目的/対象者)を作り、第三者レビューを実施します。

これらを実行すると図の誤解が減り、伝わる設計図になります。読み手の目的を意識して、必要な情報だけを適切な形で提示してください。

AWS構成図の最新トレンドと自動化

Diagram-as-Codeの台頭

コードを元に図を作る「Diagram-as-Code」が広がっています。インフラ定義(例: テンプレートやコード)を入力にし、自動で構成図を出力します。手作業の差分ミスを減らし、設計と図の同期を保ちます。

AIによる図自動生成サービス

最近はAIを使い、テキストや設計書から配置や接続を推定して図を生成するサービスが登場しています。レイアウト案を素早く得られるため初期設計が速くなりますが、出力は必ず人が確認してください。

実践ステップ(簡潔)

1) 真のソースを決める(インフラコードや構成ファイル)。
2) 変換ツールを選ぶ(コード→図へ)。
3) CIに組み込み、変更時に図を自動更新する。例: プルリクで図の差分を確認する仕組み。

自動化で気をつけること

自動生成は便利ですが、詳細すべてを図に表示すると複雑になります。抽象化レベルを決め、関係者別の図を用意してください。AI出力はレイアウト改善に有効ですが、誤解を招く表現を修正するレビュー工程を必ず入れてください。

運用のコツ

図はバージョン管理し、ドキュメントと同じレビュー運用に乗せます。テンプレート化して共通表現を揃えると、見やすさが継続します。

まとめ:AWS図解でシステム設計を「伝わる」ものに

伝えるための要点

AWS構成図は目的を明確にすると伝わりやすくなります。経営層向けは概念図、運用向けは詳細図、開発者向けは依存関係に注目した図を用意します。例:サービス外部公開を示す図では、インターネット境界と公開APIを強調します。

実践チェックリスト

  • 目的(誰に何を伝えるか)を図の冒頭に記載する
  • 公式アイコンとラベルを使い一貫性を保つ
  • 境界(VPC・サブネット・オンプレ)を明示する
  • フロー矢印でデータの流れを示す
  • 版番号・作成者・更新日を残す

使い分けのコツ(具体例)

  • 1ページ目:サービス全体の概念図(色数を抑える)
  • 技術詳細ページ:ネットワークや権限、冗長化を分けて記載

最後に

図は設計の「訳文」です。見る人の立場に立ち、目的に合わせて簡潔に表現してください。小さな改善が伝わりやすさを大きく変えます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次