はじめに
概要
本ドキュメントは、2024年2月からAWSが導入したグローバルIP(パブリックIPv4/Elastic IP)の有料化に対応するための解説書です。料金体系、課金対象、無料枠、節約策、利用状況の確認方法を分かりやすくまとめました。
本書の目的
料金の仕組みを理解して無駄なコストを減らすことを目的とします。請求額の見方や、どのケースで課金されるかを具体例で示し、実務で使える対処法を提供します。
想定読者
AWSを利用しているエンジニア、運用担当者、クラウドコスト管理を担当する方を想定します。専門知識が浅くても読み進められるよう、専門用語は最小限にし実例で補足します。
本書の構成
第2章で有料化の全体像を説明し、第3章で新料金体系を詳述します。第4章で課金対象の具体例を挙げ、第5章で使用状況の確認方法と節約のヒントを紹介します。各章で実務に役立つ手順やチェックリストも提示します。
AWSグローバルIP(パブリックIPv4)有料化の全体像
変更の概要
2024年2月1日から、AWSはパブリックIPv4アドレスの利用に課金を開始しました。従来の「初回無料」の扱いはなくなり、割り当てているだけでも時間単位で課金されます(例:0.005 USD/時間)。請求は利用中・未使用にかかわらず発生します。
課金対象の範囲
対象はVPC内リソースに割り当てたパブリックIPv4、Elastic IP(EIP、未割り当ても含む)、Amazon Global Accelerator、Site-to-Site VPNトンネルなど幅広く含まれます。具体例としては、EC2のパブリックIP、ALBの外部IPなどが該当します。
背景と狙い
世界的なIPv4アドレスの枯渇と、AWS側の取得コスト上昇が主な理由です。同時に、ユーザーのIPv6移行を促す意図もあります。IPv6は多くの場面で無料で割り当てられます。
影響と対応の方向性
小規模なテスト環境や未使用のEIPを多数持っている場合は、コスト増が目立ちます。まずは使っていないEIPの解放、IPv6対応の検討、必要なIPのみを割り当てる運用への見直しをおすすめします。
AWSグローバルIP(パブリックIPv4)の新料金体系
料金の概要
新料金は、ほぼすべてのパブリックIPv4アドレスに対して1IPあたり0.005 USD/時間です。時間課金のため、1か月(概算)は0.005×24×30=約3.6 USD、1年では365日換算で約43.8 USD、30日換算で約43.2 USDになります。
対象となる具体例
- VPC内のパブリックIPv4(NATやロードバランサーに割り当てられるIP等)
- Global AcceleratorやSite-to-Site VPNに割り当てられたパブリックIPv4
- 起動中のEC2インスタンスに割り当てられた追加のElastic IP
- 未割り当て(遊休)のElastic IP
課金の仕組みと注意点
課金は利用時間ベースの従量課金です。短時間の利用は小額ですが、複数IPを常時使うと合算でコストが膨らみます。特に未使用のElastic IPを放置すると、無駄な固定費が発生します。請求は時間単位で集計され、月次請求に反映されます。
コストを抑えるための簡単なポイント
- 未使用のElastic IPは速やかに解放する
- 新しいサービス導入時は必要なIP数を最小限に設計する
- 可能ならIPv6の利用やIP共有アーキテクチャを検討する
上記を踏まえ、IPの利用実態を把握して不要なIPを削減すると、想定外のコスト増を防げます。
どのIPが課金対象になるのか
概要
AWSが提供するパブリックIPv4を利用・保有しているものが課金対象です。どのケースが該当するかを分かりやすく説明します。
課金対象の主なケース
- EC2インスタンスに直接付与されたパブリックIPv4
- インスタンス起動時に割り当てられるPublic IPv4が該当します。短時間でも利用すれば課金対象です。例: テストで長時間放置したインスタンス。
- Elastic IP(EIP)を割り当てたリソース
- EC2やNATゲートウェイ、その他リソースに紐づけたEIPは課金対象になります。
- Global Acceleratorで割り当てられるパブリックIPv4
- Acceleratorが提供するパブリックIPv4アドレスも料金対象です。
- Site-to-Site VPNトンネルで利用するパブリックIPv4
- VPN接続に使うパブリックIPv4が含まれます。
- 未割り当てのElastic IP(放置しているEIP)
- 重要です。割り当てていないEIPを保有しているだけで課金され続けます。
無料利用枠の扱い
Amazon EC2の無料利用枠では、1カ月あたり750時間分のパブリックIPv4利用が無料です。ただしELBやRDSなど他サービスには適用されません。アカウントによっては無料枠が適用されない場合もあります。
実務上の注意点
不要なEIPは速やかに解放してください。どのIPがどのリソースで使われているかを定期的に確認すると、無駄な料金を防げます。
グローバルIPの使用状況を確認する方法
概要
AWSは「Public IP insights」を提供します。これを使うと、アカウント内のパブリックIPv4アドレス一覧と、IPごとにどのサービス・リソースに紐づいているかを確認できます。課金対象IPの特定や不要IPの整理に役立ちます。
コンソールでの確認手順(簡単)
- AWSマネジメントコンソールにログインします。
- 検索ボックスに「Public IP insights」と入力して機能を開きます。もしくはVPCコンソール内の該当メニューを探します。
- 表示される一覧で以下を確認します。
- IPアドレス
- 紐づくリソース(例:EC2インスタンス、NAT Gateway、Load Balancer、Elastic IP)
- リージョン、リソースID、最終検出時刻
- 表のフィルタやソートで未使用・長期間関連情報がないIPを絞り込みます。
CLIやスクリプトでの確認(自動化)
- 簡易コマンド例:
- Elastic IP一覧: aws ec2 describe-addresses –query ‘Addresses[].{PublicIp:PublicIp,InstanceId:InstanceId}’
- EC2のパブリックIP: aws ec2 describe-instances –query ‘Reservations[].Instances[].{InstanceId:InstanceId,PublicIp:PublicIp}’
- NAT GatewayやELBはそれぞれ describe-nat-gateways / elbv2 describe-load-balancers を参照します。
- 各出力を突き合わせて、どのIPがどのサービスに紐づくかを判定します。スクリプトで定期実行すると管理が楽になります。
課金対象の特定と対応例
- 一般に、”割り当てられているがリソースに紐づいていないElastic IP”や特定条件の未使用IPが課金対象になります。Public IP insightsで紐づきが空欄のIPを優先的に確認してください。
- 対応例:不要ならElastic IPを解放、NAT Gatewayや未使用のロードバランサーを削除、必要ならタグでオーナーを確認して運用ルールを整備します。
注意点
- 表示情報はアカウント内の検出結果に基づきます。組織横断で確認する場合は各アカウントで同様の手順を繰り返してください。
- 自動化する際は誤削除を避けるため、削除前にリソースの影響範囲を必ず確認してください。












