AWSで始めるWorkload Discoveryの基本と活用法完全解説

目次

はじめに

本記事の目的

本記事は「AWS Workload Discovery」に関する入門的なガイドです。AWS上のリソースや稼働状況を自動で見つけ、可視化・整理する仕組みをわかりやすく説明します。運用効率の向上、セキュリティの強化、コスト管理の改善に役立つ点を中心に解説します。

読者対象

クラウド運用担当者、SRE、セキュリティ担当、クラウド移行を検討する技術者やマネージャーを想定しています。AWSの基礎知識があれば読み進めやすいです。

記事で学べること

  • Workload Discoveryの概要と仕組み
  • 主な構成要素と機能の使い方(具体例つき)
  • 実運用での活用例と注意点
  • トラブルシューティングとサードパーティー製ツールの紹介

読み方のコツ

章ごとに実例や図のイメージを交えて説明します。まずは第2章で全体像をつかんでから、必要な章を順に読んでください。

AWS Workload Discoveryとは何か

概要

AWS Workload Discoveryは、AWS環境にあるサーバーやデータベース、ネットワークなどの“何があるか”を自動で見つけ出し、関係性を分かりやすく示す公式ソリューションです。手作業での調査を減らし、現状把握を短時間で行えます。

主な特徴

  • 自動インベントリ化:EC2、RDS、Lambda、VPCなどを一覧化します。
  • 構成図の自動生成:サービス間の依存関係を可視化します。
  • マルチリージョン・複数アカウント対応:広範囲の環境をまとめて把握できます。

具体的な例

例えば、WebアプリのEC2+RDS+ALB構成を自動で検出し、どのサブネットやセキュリティグループが関連するかを図で示します。未使用のボリュームや意図しない公開設定も発見しやすくなります。

利点

運用効率が上がり、セキュリティやコスト最適化の基盤として使えます。移行や監査の準備にも役立ち、誤認や見落としを減らせます。

Workload Discovery on AWSの主要な構成と機能

構成の全体像

Workload Discovery on AWSは、React製のWeb UIを中心に、AWS Amplifyでホスティングされたフロントエンド、AppSync(GraphQL)でのAPI、Lambdaでのサーバーレス処理を組み合わせます。データ保存にはDynamoDBやS3を用い、必要に応じてCloudWatchやEventBridgeでイベント連携します。

主なコンポーネントと役割

  • Web UI (React):リソース一覧や関係図を表示します。使いやすいフィルタや検索を提供します。例:EC2やRDSの依存関係をグラフィカルに表示。
  • AWS Amplify:認証やホスティング、環境管理を簡素化します。開発者はフロントエンドに集中できます。
  • AWS AppSync:クライアントとサーバー間の柔軟なデータ取得を実現します。リアルタイム更新も可能です。
  • AWS Lambda:収集処理やデータ変換を行います。スケジュールやイベントで起動します。
  • ストレージ (DynamoDB/S3):メタデータやスナップショットを保存します。低レイテンシのクエリとコスト効率を両立します。

データ収集と可視化の流れ

1) コネクタやAPIでAWSリソース情報を取得(タグ、設定、関係性)。
2) Lambdaで整形・正規化し、DynamoDB/S3へ保存。
3) AppSync経由でWeb UIがデータを取得し、図やテーブルで表示。

セキュリティと権限設計

最小権限のIAMロールを用い、読み取り専用権限を基本にします。認証はCognitoやAmplifyを使い、ユーザーごとの表示制御を行います。

運用上のポイント

定期スキャンの間隔やデータ保持期間を明確にし、コストと精度のバランスを取ります。ログはCloudWatchに集約し、障害時の追跡を容易にします。

以上が主要な構成と機能の概要です。必要なら各コンポーネントの設定例や運用手順も詳しく説明します。

AWS Workload Discoveryの活用例と応用

はじめに

AWS Workload Discoveryは、クラウド上の資産や振る舞いを可視化して、運用や改善の判断を助けます。ここでは主な活用例を具体的に挙げ、現場でどう役立つかを説明します。

1. 現状把握・棚卸

例:VPC、EC2、RDS、ストレージの利用状況を一覧化します。手順としては、スキャンでリソースを収集し、タグや用途ごとに分類します。これにより、使われていないボリュームや重複した環境を発見できます。

2. セキュリティ・コンプライアンスの強化

例:不要な公開ポートや過剰権限のIAMを検出します。ディスカバリー結果を元にアクセス設定を見直し、監査ログと照合して不整合を発見できます。

3. コスト最適化

例:アイドル状態のインスタンスや過剰プロビジョニングを特定し、サイズ変更や停止を提案します。スポットやリザーブドの利用候補も見つけやすくなります。

4. システム移行・設計支援

例:オンプレミスからの移行時に依存関係マップを作成し、移行グループを決めます。アプリケーション単位での設計や段階的移行計画を立てやすくなります。

5. 運用改善と自動化の素材

例:定期スキャン結果を監視ルールや自動修復ワークフローに組み込みます。たとえば未使用リソースを自動でタグ付けして申請フローへ回す、といった運用が可能です。

トラブルシューティングと注意点

概要

導入・運用時には設定の競合やネットワーク、権限周りで問題が起きやすいです。想定される障害を把握し、順序立てて確認することで短時間で復旧できます。

よくあるトラブルと対処法

  • AWS Configとの競合
  • 原因: 既存のルールやリソース検出設定が重複する。例として同一リソースを別ツールが同時に管理すると状態差が発生します。
  • 対処法: 影響範囲を把握し、片方を無効化するかスコープを分けます。まずテスト環境で変更を試してください。

  • ネットワーク設定不備によるタイムアウト

  • 原因: VPC、セキュリティグループ、NATやVPCエンドポイントの誤設定。
  • 対処法: 対象インスタンスから外部サービスへの疎通(pingやcurl)を確認し、必要に応じてルートやポリシーを修正します。

  • CloudFormationのロールバック

  • 原因: テンプレートエラーやIAM権限不足でスタック作成が失敗します。
  • 対処法: Change Setで差分を確認し、作成前にIAMロールやポリシーを検証します。失敗時はイベントログを確認して原因箇所を特定します。

  • 権限エラーとサービスリンクドロール

  • 対処法: 必要最小限の権限を割り当て、サービスが作成するリンクドロールを許可します。ポリシーの不足はCloudTrailやエラーメッセージで確認します。

トラブル対応の基本手順

  1. 状況確認(影響範囲、ログ、エラーメッセージ)
  2. 再現手順を単純にして問題箇所を分離
  3. ログ(CloudWatch/CloudTrail)とメトリクスを収集
  4. 仮の修正をテスト環境で検証
  5. 本番へ反映する際は段階的に行う

注意点と推奨設定

  • 詳細ログを一時的に上げて原因特定を早める
  • CloudFormationはChange Setで確認してから適用
  • ネットワークは最小構成で疎通を確かめる
  • 事前に権限とサービス連携を確認する

これらを順に確認すれば、多くのトラブルは迅速に解決できます。

サードパーティによるクラウドディスカバリー例

主な製品例

  • Device42:ネットワーク機器、サーバー、仮想マシンを自動で検出し、依存関係を可視化します。オンプレとクラウド双方を一元管理できます。
  • Flexera / CloudHealth:クラウドコストの可視化や最適化提案を行い、移行先やインスタンスタイプの自動レコメンドを提供します。
  • Dynatrace / Turbonomic:アプリケーションの実行状況とリソース利用を結び付け、性能観点から最適化案を提示します。

主要な機能と具体例

  • 自動検出:APIやエージェントでEC2、RDS、S3などをスキャンし、在庫リストを作ります。例:新しいEC2を起動すると自動で登録されます。
  • 依存関係マッピング:どのサーバーがどのデータベースを使うか図示します。障害対応や移行計画で役立ちます。
  • ハイブリッド管理:オンプレの物理機器とAWS資源を同じダッシュボードで見られます。運用負荷を下げます。
  • 移行レコメンド:CPUやメモリの実績から最適なインスタンスタイプを提案します。コスト見積もりも可能です。

導入時の注意点

  • 権限設定:クラウドAPIを読むための最小権限を用意してください。安全性を確保します。
  • データ整合性:既存のタグや命名規則を整えると精度が上がります。
  • 運用定着:発見結果をCMDBや運用プロセスに組み込み、継続的に更新してください。

これらのサードパーティ製品は、AWSのWorkload Discoveryを補完し、マルチクラウドやハイブリッド環境での統合的なワークロード管理を支援します。

関連するベストプラクティス・補足情報

ワークロードの定義と管理範囲の明確化

ワークロードを明確に定義します。「何を監視するか」「誰が管理するか」を決めると運用が楽になります。例えば、開発環境と本番環境で別々のタグやアカウントを使うと責任範囲が分かりやすくなります。

ログと可観測性の強化

CloudTrailを有効にし、操作ログを中央のS3バケットに集めます。監査ログは短期間で消さず、バージョン管理とライフサイクル設定で保存期間を決めます。加えて、メトリクスやトレースも収集すると問題発見が早くなります。

セキュリティ対策とアクセス管理

最小権限の原則でIAMを設計します。ロールやポリシーを細かく分け、アクセスの理由と期限を記録します。データは暗号化し、ログやバックアップにも同様の方針を適用します。

コストとパフォーマンスのバランス

Workload Discoveryは多くのデータを生成します。必要なログやメトリクスだけを収集し、保存期間やサンプリングを調整します。定期的にコストレビューを行い、使っていないリソースを整理します。

運用の自動化と監査

検出ルールや通知を自動化します。例えば、新しいリソースが作成されたら自動でタグ付けする仕組みを作ると管理負荷が減ります。定期的に検出結果をレビューして運用フローを改善します。

簡単なチェックリスト

  • ワークロードの境界とオーナーを定義する
  • CloudTrailと監査ログを中央で管理する
  • IAMは最小権限で設計する
  • ログの保存期間と暗号化を決める
  • コストを定期的に見直す
  • 自動化で一貫性を保つ

以上を実践すると、可観測性とセキュリティが向上し、運用効率も上がります。

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