目次
はじめに
本書の目的
本ドキュメントは、AWSのマネージドサービスについて分かりやすくまとめたガイドです。定義から主要な分類、具体例、導入時の利点と注意点まで、実務で使える情報を提供します。クラウド利用の検討やサービス選定の参考にしてください。
想定読者
クラウド導入を検討中の担当者、技術的な選定を行うマネージャー、初めてAWSを触るエンジニアを想定しています。専門用語は最小限に抑え、具体例で補足します。
本書の読み方
第2章で基礎的な定義を説明し、第3章で主要なカテゴリを紹介します。第4章では実際のサービス例を挙げ、導入時の判断材料を提示します。小さな事例や比較を交えて、実務に役立つ形で解説します。
注意事項
本書は設計や運用の全てを網羅するものではありません。実際の導入ではコストやセキュリティ、社内ポリシーとの整合性を必ず確認してください。
AWSマネージドサービスとは
概要
AWSマネージドサービスは、AWSがインフラの運用や管理を代行するサービスの総称です。サーバーの保守、パッチ適用、バックアップ、自動スケーリングなどをAWS側が実行するため、利用者はアプリケーションやビジネスロジックに集中できます。
主な特徴
- 運用自動化:バックアップやスケールを自動で行います(例:データベースの自動バックアップ)。
- 専門管理:セキュリティパッチや監視をAWSが実施します。
- SLAと運用サポート:可用性や復旧に関する契約があることが多いです。
利点
- 運用負担の軽減で開発に集中できます。
- 専門知識が不要な分、導入が早くなります。
- 想定外の障害対応やスケールでの安心感が得られます。
適した場面
- 小規模チームで運用担当を置けない場合
- 早くプロダクトを立ち上げたい場合
- 安定性を重視し短期間で信頼性を確保したい場合
注意点
- カスタマイズ性が限定される場合があります。特殊な構成が必要なら検討が必要です。
- コスト構造が従来のセルフホストと異なります。利用量で増減します。
- 運用の可視性が薄れることがあるため、モニタリング設計は重要です。
導入の流れ(簡潔)
- 要件整理(性能、可用性、セキュリティ)
- マネージドサービスの選定と費用見積もり
- テスト導入と監視設定
- 本番移行と運用
運用時のポイント
- モニタリングとアラートを事前に設定します。
- バックアップと復旧手順を定期的に検証します。
- コストを定期的に見直して無駄を削減します。
AWSマネージドサービスの主要なカテゴリー
以下では、AWSのマネージドサービスを大きく二つのグループに分け、各項目をやさしく説明します。
インフラストラクチャ管理関連
- サーバー管理:仮想サーバーの起動や停止、パッチ適用、スケール設定などをサービス側で代行します。例えばトラフィック増加時の自動スケールで負荷を吸収できます。運用負荷が減り、手作業ミスが減ります。
- データベース管理:データベースのセットアップ、リストア、スケーリング、バックアップを自動化します。運用チームがパフォーマンス調整や障害対応に集中できます。
- ストレージ管理:オブジェクトやブロックストレージの保存を管理し、冗長化や暗号化、ライフサイクルの自動化を行います。容量管理の手間を省けます。
- ネットワーク管理:仮想ネットワークの構築、ルーティング、負荷分散を簡単にし、可用性の向上や接続の最適化を助けます。
運用・保守関連
- セキュリティ管理:認証やアクセス制御、脅威検出をサービスで提供します。ログや監査機能も整っているので、規程遵守やインシデント調査がしやすくなります。
- バックアップ・復旧:定期バックアップやスナップショット、復旧手順を自動化します。障害時の復旧時間を短くでき、データ保全が容易になります。
- モニタリング・監視:システムの状態を常時監視し、アラートや可視化ダッシュボードを提供します。問題の早期発見と原因追跡がしやすくなります。
各カテゴリーは重複する機能を持つことがあります。運用負荷を軽減し、信頼性や拡張性を確保したい場合はマネージドを検討すると良いです。ただし、細かい制御や独自仕様が必要なケースでは自分で管理する選択肢も残ります。
具体的なマネージドサービスの例
データベースサービス
- Amazon RDS:リレーショナルDBを簡単に運用できます。例:ECサイトの注文情報を保存します。
- Amazon Aurora:RDSの高性能版で、大量トラフィックに強いです。読み書きが多いアプリ向けです。
- Amazon DynamoDB:キー値型の高速NoSQLです。セッション管理やゲームのスコア保存に向きます。
- Amazon Neptune:グラフDBで、SNSのつながり分析などに使います。
コンピューティングサービス
- AWS Lambda:サーバー管理不要で短時間処理を実行できます。画像変換などに便利です。
- Amazon EKS:Kubernetesをマネージドで使えます。コンテナ運用を自動化できます。
- AWS Elastic Beanstalk:アプリを簡単にデプロイできます。設定を自動で行います。
データ分析・ストリーミング
- Amazon Redshift:データウェアハウスで大量分析に適します。
- Amazon Kinesis:リアルタイムのログやイベントを処理します。
- Amazon MSK:Apache Kafka互換のマネージドサービスです。
- Amazon QuickSight:ダッシュボードを作り、可視化します。
モニタリング・管理
- Amazon CloudWatch:メトリクスやログを収集し、監視します。
- AWS CloudTrail:操作履歴を記録して監査に使えます。
- AWS CloudFormation:インフラをコードで定義します。
- AWS Systems Manager:サーバーの一括管理や自動化を支援します。
セキュリティ
- IAM:ユーザーや権限を管理します。
- KMS:暗号鍵を安全に管理します。
- Secrets Manager:パスワードやAPIキーを保管します。
- Amazon Inspector:脆弱性を自動検出します。
- Amazon Macie:機密データの不正アクセスを検出します。
アプリケーション統合
- Amazon AppFlow:SaaSとデータ連携できます。
- Amazon EventBridge:イベントでサービスをつなげます。
- Amazon MQ:既存のメッセージブローカーを移行できます。
- MWAA:Airflowをマネージドで運用し、ワークフローを管理します。
ネットワーク・接続
- Amazon Route 53:DNSを管理します。
- Amazon VPC:ネットワークを分離して安全に構築します。
- AWS Direct Connect:専用回線で安定接続を確保します。
- AWS Global Accelerator:グローバルなトラフィックを高速化します。
各サービスは運用負担を減らし、本来のビジネスに集中できるよう設計されています。具体的な用途に合わせて組み合わせると効果が高まります。












