はじめに
この章では、本ドキュメントの目的と読み方をやさしく説明します。
このドキュメントの目的
AWS(Amazon Web Services)を初めて学ぶ方や、導入を検討している方が、全体像と主要な利用例を理解できるように作成しました。専門用語はできるだけ控え、具体例を交えてわかりやすく解説します。
想定する読者
ITの基礎知識がある方から、まったくの初心者まで幅広く対応します。サーバーやデータベースの用語が初めてでも読み進められるよう配慮しています。
本書の構成と読み方
全6章で、まず全体像を示し、その後にサーバー、ストレージ、データベース、ネットワーク・セキュリティの主要分野を順に説明します。興味のある章だけを先に読むこともできます。
読んだあとに期待できること
AWSの主要なサービスがどのような場面で使えるかイメージでき、実際に触ってみる準備が整います。無料枠(Free Tier)を使った実習もおすすめです。
学習のコツ
まず概念を押さえ、次に小さな実験を繰り返してください。実際に手を動かすことで理解が深まります。
AWSとは何か?まず全体像を理解する
概要
AWS(Amazon Web Services)は、インターネット経由でコンピュータ資源をレンタルできるサービス群です。サーバーや保存場所、データベース、ネットワーク、AIなど多くの機能を必要なだけ使えます。従来のように機器を買って置く必要がない点が特徴です。
なぜ使うのか(利点)
- すぐ用意できる:数クリックや数分でサーバーが使えます。具体例:新しいウェブサイトをすぐ公開できます。
- 必要な分だけ払う:使った分だけの料金です。始めやすく、無駄が減ります。
- 拡張が簡単:アクセスが増えてもリソースを追加できます。
- 運用負担の軽減:ハードの保守や電源管理を気にしなくて済みます。
主なサービスカテゴリ(具体例で理解)
- コンピューティング:EC2(仮想サーバー)、Lambda(イベントで動く処理)
- ストレージ:S3(ファイル保存。写真やバックアップに便利)
- データベース:RDS(関係データベースの管理を簡単に)
- ネットワーク:VPC(自分専用のネットワーク)、Route 53(ドメイン管理)
- セキュリティ:IAM(ユーザーと権限管理)
地域と可用性のしくみ(簡単に)
AWSは世界の「リージョン」にデータセンターを持ち、さらに細かい「ゾーン」に分かれます。離れた場所にコピーしておけば、障害でもサービスを続けやすくなります。
どのように始めるか
公式サイトでアカウントを作り、管理画面(コンソール)から試せます。無料利用枠があるので、小さく始められます。
よくある利用シーン(イメージ)
個人ブログ、社内システム、データのバックアップ、テスト環境や機械学習の実験など、用途は多岐にわたります。
AWSでできること①:サーバー構築・アプリ実行(コンピューティング)
概要
AWSではクラウド上にサーバーや実行環境を用意できます。用途に応じて仮想サーバー、サーバーレス、簡易ホスティングなどを選べます。初心者でも小さく始めて必要に応じて拡張できます。
代表的なサービス
- Amazon EC2:OSやミドルウェアまで自由に設定できる仮想サーバー。社内のファイルサーバーやActive Directoryの移行に向きます。
- AWS Lambda:サーバーを管理せずに関数単位で処理を実行。定期処理や画像変換、APIのバックエンドなどに便利です。
- Amazon Lightsail/AWS App Runner:手軽にWebサイトや小規模アプリを公開できる簡易サービス。設定が少なく初学者向けです。
具体例と使い分け
- 会社の共有ファイルやADサーバーをクラウドに移すならEC2を選び、既存ソフトの互換性を保ちます。
- 画像アップロード後の自動変換や通知はLambdaでイベント駆動にします。
- ブログや小さなWebアプリはLightsailやApp Runnerで短時間に公開できます。
スケールと運用のポイント
トラフィックが増えたら自動で台数を増やすオートスケールを設定できます。負荷分散やログ・監視の仕組みで稼働状況を確認し、必要に応じてリソースを増減します。費用は使った分だけ課金されるので、まず小さく試してから拡張するのがおすすめです。
AWSでできること②:ストレージ・バックアップ
概要
AWSは大量のデータを安全に、かつ柔軟に保存できます。写真や動画、ログ、業務データ、システムのバックアップなど用途ごとに最適な保存方法を選べます。ここでは主要なサービスと実際の使い方を分かりやすく説明します。
Amazon S3(オブジェクトストレージ)
S3はファイルをオブジェクトとして保存する場所です。画像や動画、ログの保管に向きます。耐久性が高く、バージョン管理や暗号化、アクセス制御が使えます。例:ウェブサイトの画像やアプリのアップロードファイルをS3に置くと、簡単に配信・管理できます。
S3とCloudFrontでの静的サイト配信
静的なHTML/CSS/画像だけのサイトなら、S3に置いてCloudFrontという仕組みで世界中に高速配信できます。結果として読み込みが速くなり、負荷にも強くなります。費用は転送量と利用頻度に応じて変わります。
バックアップ管理:AWS Backup
AWS Backupは複数のAWSリソースのバックアップを一元管理します。自動化したスケジュールや保持期間のルールを設定でき、リストアも簡単です。例:EC2のディスクやRDSのデータを定期的に保存しておく運用に便利です。
ブロック・ファイルストレージ:EBS・EFS
EC2サーバーの添付ディスクとして使うEBS(ブロック)は、データベースやアプリケーションのストレージに適します。複数サーバーで共有するファイルならEFS(ファイルストレージ)が向きます。用途で選ぶと運用が楽になります。
アーカイブ:S3 Glacier
長期保管や法令対応のためにアクセスがまれなデータは、S3 Glacierに移すとコストを下げられます。取り出しに時間がかかる点だけ注意してください。
運用のポイント(実践例)
- ライフサイクル規則で古いファイルを自動でアーカイブまたは削除する。
- 暗号化とアクセス制御でデータを守る。
- 定期的にバックアップのリストア確認を行う。
具体的な要件に応じて、保存方法や料金最適化の設計を進めると良いです。
AWSでできること③:データベースの利用
概要
AWSは運用を代行する「マネージド」なデータベースサービスを提供します。手動でのサーバ管理や細かな運用作業を減らし、データ保存・検索・分析を効率よく行えます。
主なサービスと特徴
- Amazon RDS(リレーショナル): MySQLやPostgreSQLなどの従来型データベース向け。トランザクション(例:決済処理)に強く、整ったデータ構造を扱います。
- Amazon DynamoDB(NoSQL): 高速で自動的にスケールします。大量アクセスや柔軟なスキーマが必要な場面に向きます(例:ゲームのセッション管理)。
- Amazon Redshift(データウェアハウス): 大量データの集計・分析に特化。BIツールと連携してレポート作成や意思決定に使えます。
具体的な利用シーン
- Webサービスのユーザー情報や注文履歴:RDS
- 高トラフィックなキー・バリュー参照:DynamoDB
- 売上データの集計や分析基盤:Redshift
選び方のポイント
- 一貫性・トランザクションが重要ならRDS
- スケールや低レイテンシが優先ならDynamoDB
- 分析用途はRedshiftを検討
運用上の注意
- バックアップや自動フェイルオーバーは必ず設定する
- 暗号化やアクセス制御(IAMやVPC)でセキュリティを確保する
- コストは利用パターンで変わるため、モニタリングと適切なインスタンスタイプ選定が大切です
AWSでできること④:ネットワーク・セキュリティ
VPC(自社専用の仮想ネットワーク)
AWSではVPCを使って、自社専用のネットワークをクラウド上に作れます。学校の敷地を区切るようにサブネットで分け、公開用と内部用で役割を分ける例が分かりやすいです。IPアドレスの範囲も自由に決められます。
サブネット・ルーティング
サブネットごとに通信の流れを決めるルートテーブルを設定できます。例えば、外部とやり取りするサブネットはインターネットゲートウェイ経由、社内専用は外部接続しないといった運用が可能です。
セキュリティグループとネットワークACL
セキュリティグループはサーバー単位での入出力制御、ネットワークACLはサブネット単位のフィルタリングです。簡単に言えば、家の鍵(セキュリティグループ)と玄関の門(ネットワークACL)のように組み合わせて使います。
VPN・専用線(ハイブリッド構成)
オンプレミスの社内ネットワークとAWSをつなぐにはVPNや専用線(Direct Connect)を使います。これでクラウドと社内を安全につなげ、段階的にクラウド移行できます。
グローバル配信・WAF
CloudFrontは画像や動画を世界中に高速配信します。WAFは悪意あるアクセスをブロックする仕組みで、よく使われる攻撃を防げます。
実務上のポイント
・最小権限でアクセスを制限する。\n・公開部分と内部部分を明確に分離する。\n・ログを取得して異常を監視する。
これらを組み合わせることで、安全で柔軟なネットワーク環境を実現できます。












