aws transit gateway とは?基礎から特徴と活用法まで解説

目次

はじめに

この章では、本記事の目的と読み方、AWS Transit Gateway(以下、Transit Gateway)をざっくり理解するための簡単なイメージをお伝えします。

この記事の目的

AWSクラウド内の複数のVPCやオンプレミス環境を一元的に接続・管理したい方向けに、Transit Gatewayの基本的な考え方と学ぶべきポイントを整理します。専門用語は必要最小限にとどめ、具体例を使って分かりやすく解説します。

対象読者

  • クラウドネットワークの設計や運用に携わるエンジニア
  • 複数VPCやオンプレミス接続を整理したいIT担当者
  • Transit Gatewayの導入検討を始めた方

本記事の構成(全8章)

第2章〜第7章で、概要、用語、機能、ユースケース、運用時の注意点、他サービスとの比較を順に解説します。最終章で要点をまとめます。

簡単なイメージ

Transit Gatewayは“ハブ(交差点)”のような存在です。複数のVPCや拠点(スポーク)を個別に接続する代わりに、中央のハブに接続するだけで通信経路を整理できます。これにより接続数が減り、設計や管理がシンプルになります。

以降の章で、導入時に押さえるべきポイントや具体的な利用例を丁寧に解説していきます。

AWS Transit Gatewayの概要

概要

AWS Transit Gatewayは、複数のVPC(Virtual Private Cloud)やオンプレミスネットワークを一元的に接続する「ネットワークのハブ」です。従来のように個別に接続を作る代わりに、中央の窓口を通してまとめてつなげられます。これにより接続の数や管理の手間を大きく減らせます。

なぜ必要か

例えば、複数のVPCや拠点を個別に接続すると接続数が増えて複雑になります。Transit Gatewayを使うと、各VPCや拠点はハブへ接続するだけで済み、ネットワーク図がシンプルになります。

基本的な仕組み

各VPCやオンプレ拠点は「アタッチメント」と呼ばれる接続を作り、Transit Gatewayの中でルーティングを設定します。これによりHUBで経路を集中管理できます。VPNやDirect Connectなど既存の接続も統合できます。

簡単な具体例

本番環境のVPC、開発用VPC、オンプレのデータセンターを想像してください。すべてをTransit Gatewayに接続すれば、一度の設定で相互通信や分離が可能になります。

利点(簡潔に)

  • 接続管理を一元化できる
  • ネットワークが分かりやすくなる
  • 将来の拡張が楽になる

導入前は費用やルーティング設計を確認してください。複雑さを減らす一方で、設計の考慮点は残ります。

主な用語と構成要素

アタッチメント

各VPC、VPN、Direct ConnectなどをTransit Gatewayに接続するオブジェクトです。例えると、家と家をつなぐ道路の出入口に当たります。アタッチメントを作ることで、それぞれのネットワーク間で通信が可能になります。

ルートテーブル

Transit Gatewayが持つ経路の表です。どのアタッチメントへパケットを送るかを決めます。デフォルトで1つ作成されますが、用途ごとに複数作れます。例えば、社内用と検証用で別のルートを使うときに有効です。

アソシエーション(関連付け)

アタッチメントとルートテーブルを結びつける設定です。どのアタッチメントがどのルートテーブルを参照するかを指定します。これにより、同じTransit Gateway内でも経路の働きを分けられます。

プロパゲーション(伝播)

アタッチメント側の経路情報をルートテーブルに自動で追加する仕組みです。手動で全て書かなくてもよくなり、複数のルートテーブルへ伝播させることもできます。ただし不要な経路が入ると混乱するため、伝播の制御は重要です。

スタティックルート

管理者が明示的に設定する静的な経路です。特定の宛先を明確にルーティングしたり、ブラックホール(経路遮断)を設定したりできます。自動伝播で困る場合、静的ルートで細かく制御します。

主な機能とメリット

一元管理

AWS Transit Gateway(TGW)は、複数のVPCやオンプレミス回線を一つのハブでつなぎます。ルーティングや接続の設定を中央で行えるため、ピアリングを多数作る必要がなくなり構成がシンプルになります。例えば10個のVPCを接続する場合、個別ピアリングだと組合せ数が増えますが、TGWならそれぞれをハブにアタッチするだけで済みます。

スケーラブルなルーティング

TGWは動的に経路を管理できます。ルートテーブルを用途別に分けて適用し、VPNやDirect ConnectとBGPで経路を伝搬できます。大規模なネットワークでも経路数や接続数を一元管理でき、運用の負荷を下げられます。スポーク間通信もハブ経由で簡単に制御できます。

柔軟な拡張性

TGWはマルチアカウントや複数リージョンの構成に対応します。トランジットゲートウェイピアや接続拡張機能(Connect)を使えば、SD-WANやNVAとの連携も可能です。必要に応じて新しいVPCや回線を速やかに追加でき、企業の成長に追随します。

セキュリティポリシーの統一

中央ハブでルートやアクセス制御を設定することで、セキュリティポリシーを均一に適用できます。トラフィックの検査が必要な場合は、検査用VPCやNVAを経由させる構成が有効です。ログやフローログを使えば監査やトラブル対応も行いやすくなります。

主なユースケース

この章では、AWS Transit Gateway(TGW)がよく使われる代表的なユースケースを、具体例とともに分かりやすく説明します。初めての方にもイメージしやすいように簡潔にまとめます。

1. 複数VPCの相互接続

複数のVPCを一つのハブでつなぎ、直接ピアリングする手間を減らします。たとえば、開発用、検証用、本番用のVPCがある会社で、各環境を中央のTGWに接続すると経路管理が簡単になります。ルート設定を集約でき、運用負荷が下がります。

2. オンプレミスとクラウドの統合

VPNやDirect ConnectとTGWを連携すると、オンプレミスネットワークとAWSの複数VPCをシンプルに結べます。支店やデータセンターからクラウド資源へ安全にアクセスさせたい場合に便利です。通信経路を一元化でき、トラブル対応が早くなります。

3. 大規模ネットワークの一元管理

金融機関や大企業のように多数のVPCや拠点を持つ組織で有効です。セキュリティや監査の設定を中央で統制しやすく、接続追加もスムーズです。運用チームの作業が標準化され、ミスが起きにくくなります。

それぞれのケースでコストやルーティング設計に注意し、必要に応じて段階的に導入すると失敗を避けられます。

運用時の注意点とベストプラクティス

概要

Transit Gatewayを運用する際は、接続仕様とルーティング設計を事前に確認し、各VPC側の設定まで漏れなく行うことが重要です。ここでは日常の注意点と実践しやすい対策を具体例で説明します。

Transit VIF(Direct Connect)の確認

・パートナーやサービスごとにVIFの仕様や経路数上限が異なります。例:経路数が少ない場合は重要なプレフィックスだけ広告するか、広告先を絞る検討をします。
・BGPや経路フィルタの設定ルールを事前に確認して、想定外の経路伝播を防ぎます。

ルートテーブル設計のポイント

・用途ごとにルートテーブルを分け、非公開ネットワークと共有ネットワークで伝播を制御します。例えば、開発環境と本番環境で別々のテーブルを用意します。
・経路伝播(propagation)は必要最小限に留め、手動の静的ルートで重要経路を明示する運用が安定します。

VPC/サブネット側の設定

・Transit Gatewayに接続しただけでは通信できません。必ず各サブネットのルートテーブルにTGWをターゲットとする経路を追加してください。例:0.0.0.0/0をTGWへ向ける場合は影響範囲を事前に確認します。
・セキュリティグループやNACLは別途適用されるため、ルーティングだけでなくアクセス制御も合わせて確認します。

運用・監視の対策

・変更はまず検証環境で試し、変更履歴を残します。タグ付けやドキュメントで誰が何を変更したか分かるようにします。
・CloudWatchやフローログでトラフィックや拒否状況を監視し、異常を早期検知します。

実運用では“簡潔で明示的な設計”と“検証+監視”が鍵です。これらを習慣化すると運用負荷を大きく下げられます。

他サービスとの比較・位置づけ

この章では、AWS Transit Gateway(以下TGW)をVPC PeeringやDirect Connect Gatewayと比べ、どの場面で有利かを分かりやすく説明します。

VPC Peering

VPC同士を一対一で直接つなげます。例えばVPCが5つあると10本の接続が必要になり、設計や運用が煩雑になります。トラフィックはピア間のみ通り、経路は透過しません。小規模で遅延を極力抑えたいケースに向きます。

Direct Connect Gateway

オンプレミスとクラウド間の専用回線を複数VPCへ広げられます。専用回線の安定性や転送コスト削減がメリットです。ただしTGWほどルーティングの一元管理や柔軟なハブ&スポーク設計は得られにくいです。

Transit Gatewayの位置づけ

TGWはハブ&スポーク型を得意とし、多数のVPCやオンプレミスを一元管理できます。ルートテーブルで通信の制御が容易になり、運用負荷を下げます。コストや添付数の制限は考慮が必要ですが、スケールする環境では総合的に有利です。

選び方の目安

  • VPCが少数で単純ならVPC Peering
  • 大容量の専用接続が主目的ならDirect Connect Gateway
  • 多数のVPCや統合管理が必要ならTransit Gateway
    実際はコストや運用体制を踏まえ、これらを組み合わせることが多いです。

まとめ

AWS Transit Gatewayは、大規模なクラウドネットワークをシンプルに管理するための中核的なサービスです。複数のVPCやオンプレミス、支社ネットワークを一元的に接続し、ルーティングやセグメント管理を集中して行えます。例えば、開発用と本番用のVPCを一つの接続点で管理したり、支社と本社を安定的に繋いだりできます。

主な利点は次の通りです。接続設計が簡素化され、運用作業が減り、セキュリティ設定を統一しやすくなります。帯域やコスト、サービスの制限は事前に確認が必要です。運用では、ルートテーブルの設計、監視の自動化、障害時の切替手順を準備することが重要です。例として、ルーティングを用途ごとに分ける、CloudWatchやVPC Flow Logsで通信を追跡する、Terraformなどで設定をコード管理することをおすすめします。

導入判断の目安は、VPCや拠点が多数あること、接続の一元管理や拡張性を重視することです。まずはネットワークの現状を整理し、スモールスタートで検証を行い、運用ルールを整えてから本番展開すると安心です。AWS Transit Gatewayは、クラウドを大きく使う組織で特に効果を発揮します。

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