はじめに
背景
クラウド利用が広がる中、リソース管理やコスト把握が難しくなっています。AWSのタグはその課題を解決するための基本機能です。具体的には、サーバーやストレージなどのリソースに名前や属性を付けることで、分類・検索・集計を容易にします。
本ドキュメントの目的
この資料は、AWSタグの基本概念、具体的な用途(コスト管理、アクセス制御、自動化)、および設計の考え方を分かりやすく整理します。実務で使える設計のヒントも紹介します。
対象読者
- AWSを利用しているエンジニアや運用担当者
- コスト管理やガバナンスに関心のあるマネージャー
専門知識が深くなくても理解できるよう配慮しています。
章構成と進め方
第2章で基本概念を説明し、第3章で主な用途とメリットを示します。第4章でタグ設計の実践的な考え方を扱います。順に読むと理解が深まります。
前提条件
AWSアカウントの基本操作が分かれば十分です。実際のタグ付けはハンズオンで試すことをおすすめします。
AWSタグとは何か ― 基本概念と役割
タグの定義
AWSタグはリソースに付ける「キー」と「値」の組み合わせによるメタデータです。名札のようにリソースの属性情報を示します。たとえば、キーに「Environment」、値に「Production」を設定すると、そのリソースが本番環境であると分かります。
構成と仕組み
タグはシンプルに扱えます。1つのリソースに最大50個のユーザー作成タグを付けられ、キーは大文字小文字を区別します。aws:で始まるキーはAWSのシステム用に予約されています。タグはコンソール・CLI・SDKから追加・更新できます。
対応リソースと利用範囲
EC2、S3、RDS、Lambdaなど多くのサービスでタグを使えます。ただしサービスごとに適用の仕方や継承の有無が異なるため、利用前に確認してください。
注意点
個人情報や機微情報をタグに入れることは推奨されません。請求や管理に便利ですが、アクセス権限の設定と組み合わせて安全に運用してください。
具体例
- cost-center: 会計用のコード
- owner: 担当者名
- environment: dev/stage/prod
これらを組み合わせると、検索やフィルタ、請求分析が容易になります。
AWSタグの主な用途とメリット
概要
タグはリソースに付ける名前付きの属性で、目的に合わせて検索や分類を簡単にします。たとえば環境=prod/stg、app=web-apiのように付けると、特定の環境やアプリだけをすばやく抽出できます。
1. 論理的な整理と検索
タグでサービス横断のリソースをまとめられます。例:環境=production、オーナー=田中。これで管理コンソールやAPIでフィルタして対象を限定できます。
2. コスト管理(課金配分)
コスト配分タグを使うと、部門別やプロジェクト別の費用を集計できます。例:department=営業、project=Alpha。月次レポートでプロジェクト単位の支出を把握できます。
3. アクセス制御
IAMポリシーの条件にタグを入れると、特定タグ付きリソースへの操作を制限できます。例:owner=teamA のリソースだけ削除を許可する、というルールが作れます。
4. 運用自動化
バックアップやアーカイブ、ライフサイクル処理のトリガにタグを使えます。例:backup=true、retention=30 のタグを付けたリソースだけ自動バックアップする運用が作れます。
5. 可視化とコンプライアンス支援
タグを集計すればダッシュボード表示や監査用の一覧が作れます。古いリソースを発見して削除判断に役立ちます。
タグは少ないルールで大きな効果を出せます。最初に利用目的を決めて運用ルールを統一すると、効果がより高まります。
タグ設計の考え方 ― タググループとカテゴリ
設計の基本方針
タグは用途ごとにグループ(カテゴリ)に分けて設計します。グループごとにルールを決めると運用が安定します。キー名・値の形式・必須/任意を予め定めてください。
代表的なタググループと例
- 技術タグ(Technical tags)
- 目的:アーキテクチャや環境、アプリ識別
- 例:Name: web-frontend、ApplicationID: app-123、Environment: prod、Version: v1.2
- 自動化用タグ(Tags for automation)
- 目的:スクリプトや運用ツールが参照する情報
- 例:Backup: daily、AutoScale: true、MaintenanceWindow: sun-02:00
- ビジネスタグ(Business tags)
- 目的:課金・コスト配分や担当部署の識別
- 例:CostCenter: CC1001、Project: marketing-campaign、Owner: yamada
- セキュリティタグ(Security tags)
- 目的:アクセス制御やコンプライアンス管理
- 例:DataClassification: confidential、Encryption: enabled
実践的な運用ルール
- 必須タグを決めてテンプレート化します。2. 値は短く一貫性ある形式にします(小文字、ハイフンなど)。3. 所有者情報を必須にすると対応が早くなります。4. タグ数は必要最小限に絞ります。5. 自動化ツールで検証ルールを設けると定着します。












