はじめに
本書の目的
本書は、これからAWS(Amazon Web Services)を学び使いたい初心者向けの入門ガイドです。専門用語は最小限にし、具体例や手順を交えて分かりやすく解説します。学習の道筋を示し、実際に手を動かせるように導きます。
対象読者
クラウドが初めての方、社内で導入を検討している方、これから資格取得をめざす方などを想定しています。ITの基礎知識があれば読みやすいですが、初学者でも無理なく進められます。
本書の読み方
まずは全体像を把握し、基礎を学んでから実際の操作に進む流れを推奨します。章ごとに実践的なステップと注意点を示しますので、順に読みながら手を動かしてください。
学習のポイント
小さなゴールを設定し、ハンズオンで試すことを重視してください。無料枠(Free Tier)を活用すると費用を抑えて学べます。疑問が出たら記録し、次の章で確認してください。
次章からは、AWSの基本的な仕組みと主要サービスについて具体的に説明します。
AWSとは何か?最初に知っておくべき基礎知識
概要
AWS(Amazon Web Services)はAmazonが提供するクラウドサービスの総称です。サーバーやストレージ、データベース、ネットワーク、機械学習などの機能をインターネット経由で利用できます。必要な分だけ支払う仕組みで、初期費用を抑えて短期間で始められます。
オンプレミスとの違い
オンプレミスは社内でサーバーを設置・管理する方法です。設備投資や運用の負担が大きくなりがちです。クラウドは設備を持たずに必要なリソースを借りるイメージで、導入や拡張が容易です。簡単な比喩として、オフィスにサーバールームを作るのがオンプレ、レンタル倉庫を使うのがクラウドです。
サービスモデル(SaaS / PaaS / IaaS)
- SaaS:完成したアプリをそのまま使う(例:メールサービス)。
- PaaS:アプリ開発と実行の土台を提供(例:アプリのデプロイ環境)。
- IaaS:仮想サーバーやネットワークを提供し自由に構成できる(例:OSを入れた仮想マシン)。
AWSはIaaSの要素が強い一方、PaaSやSaaS的なサービスも多数あります。
よく使う基本サービスの例
- EC2:仮想サーバー(自分でOSやソフトを入れて使う)
- S3:ファイル保存(画像やログの保管に便利)
- RDS:データベース管理(運用を自動化)
- Lambda:サーバー管理不要でコードを実行できる(イベント駆動)
- VPC:仮想ネットワーク(ネットワーク設計の基礎)
最初に抑えておきたいこと
最初はクラウドの基本概念を理解し、S3やEC2、Lambdaのような基本サービスを実際に触ることをおすすめします。実際に手を動かすことで概念がより分かりやすくなります。
AWS学習・導入のための基本ステップ
はじめに
AWSを学ぶときは、段階を踏んで進めると効率よく身に付きます。ここでは初心者向けに「やること」を順に示します。具体例を交えてわかりやすく説明します。
1. クラウドの基本を理解する
クラウドは「遠くのサーバを借りる」イメージです。例えば写真をスマホに入れる代わりにネット上の倉庫に置くようなものです。利点は必要なときだけ使える点と、管理が楽な点です。
2. AWSの全体像をつかむ
主要サービスをざっくり把握します。例:S3はファイル保存、EC2は仮想サーバ、RDSはデータベース、IAMはアクセス管理です。用途ごとにどれを使うかイメージできると学習が進みます。
3. 主要サービスを深く学ぶ
一つずつ詳しく学びます。料金の仕組みや起動・停止方法、良くある使い方を試します。たとえばS3で画像を公開する手順を実践します。
4. ハンズオンで実践力を養う
アカウントを作り、無料枠を使って小さな実験を行います。静的サイトをS3に置く、簡単なEC2サーバを立てるなど、手を動かすことが大切です。費用管理は常に意識してください。
5. 資格や講座を活用する
学習の節目に認定資格や講座を利用すると理解が深まります。試験対策だけでなく、実務で使える知識を身につける目的で活用しましょう。
学習の進め方のコツ
小さな目標を設定して徐々に範囲を広げます。分からない点は公式ドキュメントやコミュニティで確認すると効率的です。
AWSを学ぶためのおすすめ教材・学習方法
はじめに
AWS学習は公式教材を軸に、実践を繰り返すことが近道です。ここでは初心者が効率よく学べる教材と進め方を具体的に紹介します。
AWS Skill Builder(公式)
AWS公式の学習プラットフォームです。無料でハンズオンラボ、模擬試験、ラーニングパスが利用できます。サービスごとの短いコースが多く、実際に操作しながら学べます。
公式ドキュメントとホワイトペーパー
各サービスのDeveloper GuideやUser Guideは必読です。機能説明だけでなく、設定例やベストプラクティスが載っています。分からない点は検索して公式ページで確認すると確実です。
動画とオンライン講座
YouTubeの初心者向け動画は概念をつかむのに便利です。UdemyやCourseraなどのオンライン講座は、演習やサンプルがまとまっているので短期間で基礎を固めたい人に向きます。
書籍・個人ブログ
入門書で全体像をつかみ、個人ブログで実践的なTipsを補うと学習効率が上がります。コード例やトラブルシュートが載った記事は貴重です。
コミュニティ(JAWS-UG等)
JAWS-UGや地域の勉強会、Slack/Discordは質問や情報交換に役立ちます。他人の失敗談や実例から学べます。
認定講座・スクール
体系的に学びたい場合は有料講座やスクールも検討してください。講師のフィードバックが得られ、短期間でスキルを伸ばせます。
学習の進め方(実践例)
1) 公式の入門コースを1つ終える。2) 無料枠で簡単なハンズオン(S3に静的サイト、EC2でWebサーバー)を作る。3) 小さな課題を繰り返し、模擬試験で理解度を確認する。実践と復習を繰り返すことが大切です。
AWSアカウント作成から初めての実践まで
アカウント作成前に準備するもの
・使えるメールアドレス
・クレジットカード(請求確認のために必要です)
・携帯電話(本人確認用)
準備が整ったら公式サイトからサインアップします。作成後はすぐにルートアカウントに多要素認証(MFA)を設定してください。
アカウント作成のポイント(簡単手順)
- 公式のサインアップページにアクセスして必要情報を入力
- 支払い情報と本人確認を済ませる
- コンソールにログインしたら、まずはルートアカウントを使わずにIAMユーザーを作成
- 管理者権限が必要な場合は管理者グループを作ってユーザーを所属させる
- 請求アラートや予算(Budgets)を設定して予期せぬ課金を防ぐ
Free Tierの活用法
初めての場合は無料利用枠(Free Tier)を活用して実験してください。代表的なサービスは無料枠が用意されていますが、リソースを残したままにすると課金が発生するので、使い終わったら必ず削除します。
最初に触るべき3つのサービス
- EC2(仮想サーバー): インスタンスを立ち上げてSSH接続を試します。小さなインスタンスで始め、不要なら停止・終了します。
- S3(クラウドストレージ): ファイルをアップロードして公開やバックアップを体験します。静的サイトホスティングにも便利です。
- Lambda(サーバーレス): 小さな関数を作って実行してみます。API Gatewayと組み合わせると簡単なWeb APIが作れます。
ハンズオンの進め方と参考
公式のチュートリアルをまず試し、QiitaやZennのハンズオン記事を参考に手を動かしてください。手順を写すだけでなく「なぜこの設定か」を考えると理解が深まります。
実践後の注意点
不要なリソースやIP、ボリュームは削除し、請求画面で利用状況を確認してください。ルートアカウントは普段使わず、MFAを常時有効にしておきます。
つまずきやすいポイント・注意点
料金に関する注意
クラウドは使い始めると、知らないうちに料金が発生します。無料枠(Free Tier)は期間や対象サービスが限られます。例えば仮想サーバー(EC2)を起動したままにすると課金されます。対策として予算アラートを設定し、使い終わったリソースは必ず停止・削除してください。タグで用途を付けると後から見つけやすくなります。
学習や導入の進め方
サービスが多くて圧倒されやすいです。まずは必要な機能だけに絞り、段階的に学びます。最小構成で試し、安定したら機能を追加する流れが安全です。リージョン(設置場所)を誤ると意図しない課金や遅延が起こるので、作成前に確認しましょう。
セキュリティの注意点
アクセス権は慎重に設定してください。管理者(ルート)アカウントは日常的に使わず、多くの権限を与えない「最小権限」のユーザーを使います。多要素認証(MFA)を必ず有効にし、アクセスキーは公開しないでください。ログ記録を有効にすると、後で問題を追跡できます。
その他の小さな注意点
- リソースのデフォルト上限(クォータ)に注意。足りないと作業が止まります。
- データのバックアップとバージョン管理を習慣にしてください。
- テスト環境と本番環境は分けて管理すると安心です。
AWS認定資格と学習ロードマップ
資格の全体像
AWS認定は学習の道しるべになります。主に「Foundational(入門)」「Associate(基礎〜実務)」「Professional(上級)」「Specialty(分野特化)」の階層があり、目的に合わせて選びます。たとえばクラウドの一般理解ならCloud Practitioner、設計を目指すならSolutions Architect、データやセキュリティに特化したいなら各Specialtyが向きます。
役割別のおすすめルート
- 初心者:Cloud Practitioner → Solutions Architect Associate または Developer Associate
- 開発者志向:Developer Associate → DevOps Engineer Professional
- 運用・監視:SysOps Administrator Associate → DevOps Engineer Professional
- 専門分野:Associate/Professional取得後にSecurity、Data Analytics、Machine Learning等のSpecialty
学習ロードマップ(例:6か月)
1–2か月:基礎(Cloud Practitioner)- 用語・サービスの概要を押さえる
3–4か月:Associateレベルの学習(設計・実装の基本)- 公式ドキュメントとハンズオン
5か月:実践プロジェクト(小さなWebアプリやサーバーレス構成を構築)
6か月:模擬試験・弱点補強・受験
学習のコツ
- まず実際に手を動かす(無料枠でEC2、S3、Lambda、DynamoDB等を触る)
- 公式のホワイトペーパーやFAQを参照する
- 模擬試験で弱点を洗い出す
- 小さなプロジェクトを作り目的別に技術を定着させる(例:静的サイトをS3でホスティング、APIにLambda)
試験後の運用
資格は定期的な更新が必要な場合があります。資格を単なるゴールにせず、学んだ知識を業務や個人プロジェクトで使い続けると効果が高まります。
コミュニティ・イベント・実践のすすめ
なぜ参加するか
コミュニティやイベントは最新情報や実践例に触れる近道です。講演やハンズオンで実際の使い方を見て学べますし、質問すると具体的な解決策が得られます。独学より効率よく理解が進みます。
参加先の具体例
- JAWS-UG(日本AWSユーザーグループ):地域ごとの勉強会やLT会があります。実務者の話を聞けます。
- AWS公式イベントやウェビナー:サービスの紹介やベストプラクティスを学べます。
- MeetupやSlack/Discordのコミュニティ:気軽に質問や情報交換をできます。
参加のコツとマナー
初めてなら観覧中心で構いません。疑問は短くまとめて質問すると答えを得やすいです。名刺交換や挨拶は丁寧に行うと関係が築きやすいです。
アウトプットして理解を深める
学んだことはブログやSNS、社内共有で発信してください。短いハンズオンメモや図を残すだけでも記憶に定着します。発信はポートフォリオにもなります。
小さな実践プロジェクト例
- 静的サイトをホストして公開する
- 簡単なログ収集を試す
コストを小さく抑え、期限を決めて取り組むと続けやすいです。
継続のコツ
月に1回イベントを覗く、学んだことを1つは書くなどルールを作ると習慣化します。仲間と一緒に進めると継続しやすいです。
まとめ・これからAWSを始める人へのアドバイス
アカウント作成と無料枠でのハンズオン
まずはAWSアカウントを作り、無料利用枠で実際に手を動かしてください。例えば、S3に静的サイトを置く、無料枠のEC2で小さなサーバーを立てる、Lambdaで「Hello World」を動かすといった簡単な実験がよいです。実際にやることで理解が深まります。
公式ドキュメントと信頼できる教材を使う
公式ドキュメントは正確で最新です。操作手順や料金の説明をまず確認してください。入門書や動画講座、ハンズオンサイトも併用すると学習が早まります。具体例のある教材を選ぶと実践しやすいです。
コミュニティと公式サポートを活用する
分からない点はAWS re:PostやStack Overflow、地域のユーザー会で質問しましょう。公式サポートは重要な課題解決に役立ちます。質問する際は環境や試した手順を具体的に書くと回答が得やすいです。
小さな成功体験を積む
最初から完璧を目指さず、短い課題(静的サイト公開、簡単なバックアップ、メール送信など)をこなしてください。成功体験を重ねると自信がつき、より大きな構築に挑戦できます。
セキュリティとコストに注意する
MFAの設定や不要なリソースの停止・削除を習慣化してください。請求アラートを設定して想定外の料金発生を防ぎましょう。
学習は継続が鍵です。小さな実践を繰り返し、わからないときは周りに頼り、少しずつ範囲を広げていってください。応援しています。












